【TS】自作武器使い女体化娘、男の娘嫁と爆速で添い遂げようとする。   作:秘密の豚園

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第4話 女体化娘は気絶から醒めて。現実を見据えて。【ユウオ視点】

 窓に当たる雨の音を頼りに、俺は外界に足を踏み入れる。

「んびょ…ほっ!?」

眠りから切り離された自然な起床とは違う、慣れ親しんだ()()失神からの帰還だった。ベッドを軋ませて、飛び起きると、サクハの体臭と、薄いマリン系の香水が鼻をくすぐった。

 

「お、落とされたのか………。」

俺は肩を落として、周りを見渡す。せっかくのマーキングだったのに。

 

「ってアレ?」

俺は、薬指に付くはずだった独占欲の跡を考えながら、辺りを見まわす。揺れる髪から嗅ぎ馴れない皮脂と体臭のにおいが香った。

 

 そこは何かが欠けていた。根本的な何かが、そう…強いて言えば、俺の可愛すぎる嫁が…。もっと強いて言えば、俺の()()()()()()()が……。

 

「さ、サクハは!?俺のッ…。」

 

「もう行った、セエカも車に乗せてもらってさ。あの子らは学校。」

小さい呟きと共に、チョコチップスティックパンが渡される。細長いパンを目で辿り、手から腕へ目線を移動させると、呆れた母ちゃんの顔が俺の顔を捉えていた。

 

 淡く染まった茶髪に、太縁の黒メガネ。着古された無地のトレーナーはえりぐりを大きく広げて、黒いシャツの紐を隠すことはない。そんな起き抜けの母ちゃんが立っていた。

 

「え…い、いない?う、嘘………。」

起き上がろうと体を捻らせるが、両足がピッタリとくっついて動かない。な、何が起こって……あ、足が動かない…!?まさか…。

 

 俺は足元に視線を降ろし、製作者に牙を剥き、拘束する【羅波矢(らなみや)ウェポン】を睨みつけた。プラスチックで成形されて太く広がった輪は、その中に攻撃性を詰め込んでる。

 

痺れるような甘い束縛(ビッチ・ワッパ)】が、俺の足首を掴み、離さない。クソ…。女体化して細くなったから足にも簡単にワッパがかかるのか…。

 

「アンタのガラクタも使いようだね。」

母ちゃんが小さく呟く。

 

「ちょ!外せよ!な、なんのつもりだよッ!」

母ちゃんは、手元のリモコンと手錠に交互に目線を送り、俺に一瞥もくれずに口を動かした。

 

「だって、そのままにしてたらサクちゃんの事、襲うじゃん。」

何を馬鹿な事を言って…。そんな事ッ…。

 

「襲うに決まってんだろッ!常識も知らねぇのか!?このババアッ!オメェは、自動ドアの前に立って、『開いてくれませんか?』って頼みこむのガギョギョギョ!?…お゛ぉ゛!?」

俺の足を起点に電流が迸る。思考が解けて、痺れが頭を覆う。

 

「アンタのそれは、一般社会じゃ非常識なんだよ。」

 

「コレ、サンダージョーがランチャーで攻撃されるアレだね。哀れ、元息子。あと、ブレワイで、ガーディアンのビームを盾で反射するアレ。」

母ちゃんがゲーム知識を広げて、今の状況に合致したシチュエーションを言葉にし始めた。この…ババア…呑気に…。

 

「の、呑気に喋ってんじゃねぇッ…!…早く止めヒョギィッ…。」

ダメだ。痺れが、俺の体の電気信号より有利を取る。

 

「お灸にはちょうどいいか。アンタ、お父さん帰ってきたらお説教だからね。それに、サクちゃんにもあとでちゃんと謝ること。ったく、朝っぱらからこんなバカみたいなことして…。」

リモコンの電流ボタンから指を離した母ちゃんが、窓に目を向けた。俺も母ちゃんの目線の先に首を動かす。部屋の床には濡れた縄梯子が転がっていて、空は依然、灰色に曇っていた。とめどない弱い雨は地面を静かに濡らしている。

 

「…ま、今日は役所行って性別変更手続きして、病院行って検査かな。むこう1週間は学校休みだろうね。」

淡々と告げられるこれからの予定に、俺は吠えた。

 

「は、はぁ!?ヤダァッ!早く学校行きたいッ!サクハにベッタリくっついて、放課後の教室で【()()()】して、わざとバレて既成ジジジィジィジィ!?!?!?」

ぐおッ…。またか…。

 

 母ちゃんは目を細め、リモコンの電流ボタンを力強く押し続けている。

 

「ゆ、ゆるじで……くらざ………。」

俺は涙目で、降伏宣言を口から漏らした。悔しい…。妹にも落とされて…、母親には電流を流されて……………。俺が、俺が何かしたってのかよ…。

 

「この阿保。まずは着替えなさいな。その後、病院だよ。」

 

「……そ、その前に児童相談所にッ…。もごっ…んごっ…ごふッ…。」

俺が言い返すや否や、口の中にチョコチップスティックを突っ込まれる。悔しい。こんなの凌辱だ…。クソッ…。うまいッ…。むっちりした生地の中で、チョコの存在感が死んでいない…。もう一本欲しい………。

 

「……はぁ…。あ、そうそう。あの子、サクちゃん言ってたよ。」

ため息交じりに母ちゃんが開錠ボタンを押して、俺の足首から【痺れるような甘い束縛(ビッチ・ワッパ)】を取り外す。

 

「な、なんて言ってたんさ。」

 

「……『待ってるから、早く学校来い』って。」

母ちゃんのぶっきらぼうな抑揚が、俺の顔に向けられる。

 

「………そ、そっか…。」

伝言役の母ちゃんしかここにはいないはずなのに、サクハの顔が頭をめぐる。64マリオでピーチ姫の手紙を読むときに、背景にピーチ姫が浮かぶみたいに。

 

「…()()…か…。ねぇ、母ちゃん………。」

胸が熱く疼いて、その言葉の意味を俺の中で何度も反芻させる。

 

「ん?」

 

「……あのさ…。」

サクハの言葉が胸の中で死なないうちに、脳みその中で記憶にならないうちに、心の中で俺を熱くしているうちに、決意を固める。

 

「なにさ。」

 

「……俺、女かな…?」

俺は自分の体を見つめながら、母ちゃんに問いかけた。

 

 窓に映る整った顔も、膨らんだ胸も、消失した男としてのアイデンティティも俺が男ではないとは物語ってる。

 

 でも肝心なのは、生き方と中身だった。

 

「生物学的にはね。ま、中身は、イカれたウチの馬鹿息子のままだけど。さ、準備しなさいな。」

リモコンを机に置いて、俺に背を向ける母ちゃんを、俺は呼び止める。

 

「ま、待ってッ!」

 

「もお、どしたのよ。」

 

「………お、俺、ちゃんと女の子になりたい………。」

口から漏れたのは、俺の中から出たとは思えない、小さくてか細い切実な願いだった。

 

「……ほ?…【()()()()】だの、男同士だの言ってたアンタがねぇ。」

母ちゃんが眼鏡を直し、俺に向き直った。目線を下から上に動かしながら、じっくりと吟味するように俺を見定める。

 

「い、言う言葉がコロコロ変わってるのは、分かるけど……。サクハへの好きは変わらない。…か、体が変わったんなら、生き方も、愛し方も変えたい…。」

 

「………アンタねェ…。」

 

「は、はい…。」

 

「…男の理想を詰め込んだ願望機と、本当の女の子ってのは違うんだよ?」

諭すような、それでいて刺すような、いつもの怒りとはまた違う、どこか冷たい声が部屋の中に響いた。

 

 そこには、創作物を嗜む人間だからこそ理解している現実と理想の乖離があった。女体を手に入れて、後天的変容に狂い、堕ちて、愛と性に歪んでいったそんな()をいくつも見てきた眼があった。

 

「…わ、分かってるよ。で、でも、なっちゃったモンは変えられないし…。それに…女の子として、アイツと過程を愉しむために…。」

口から、言葉と思いが漏れると、眼に涙が溜まりだした。

 

「…女の子っていう………性別には………誠実になりたい………。」

それでも、一度決めた軸はもう変わらない。頬を伝う涙が、シーツにシミを作り出しても、俺は口を止めない。

 

 アイツが好きだって言ってくれた()を殺しはしない。羅波矢(らなみや)ウェポンは捨てない。

 

 でも変わりたい。

 

 もう生き方は決めた。

 

 俺が満足する愛し方じゃない。二人の幸せのための愛し方を、愛され方を取る。

 

 だから。

 

「俺、ちゃんと…女の子になりたい………。………だから…女の子…わ、私に…教えてください……。」

胸の内と組み立てた矜持を吐き出しても、胸中がクリアになることもなかった。むしろ、もっと靄がかかって、答えから遠のいた気がした。

 

「ハァ…。」

 

「…ぐずッ…じゅる……わ、私ぃ…お、女の子に゛ィ……。」

 

「そんな急に、一人称変えることないでしょ?」

母ちゃんが腰に手を当てて、変わらない呆れを俺に向けてきた。

 

「…ごめ…。」

 

「ま、恋愛は繁殖のために遺伝子が組み込んだポルノだし、人間賛歌はただの美辞麗句でカルトだし、人間は遺伝子を乗せるただの船だよ。」

母ちゃんが一定の声色で、感情の無い声で言葉を続けた。なんか、このババア、急にメタ視点で、人間の事分解し始めたんだけど?酷いよ。なんでそんな寂しいこと言うの?

 

「え、こわぁ…。こういう時って、深くて響く事言うもんじゃないの?」

俺は、人間冷笑女がこちらに向けるのと、同程度の呆れと諦念を返した。

 

「説教も、人生訓も、言ってるやつが酔いたいだけでしょ。ま、アレよ、アレ。アンタ次第よ、頑張んな。」

肩をポンポンと叩き、俺の目を見つめる母ちゃん。でも、そこには悪感情も、今までのマイナスな感情も……あるにはあるけど、まぁ、ちょっとは無くなってた。

 

「またテキトーに…。」

 

「でも、病院終わったらさ、化粧品、見に行こっか。」

肩を小さく叩いていた手が、頭に移ると、小さく俺を揺らした。

 

「………あ、ありがと。色々、教えて…。」

 

 外は依然雨だった。靄は心にも、外にもかかった。

 

 でも、だからといって快晴が正解ということでもないし、正義というわけでもない。

 

 雨は、俺の靄をさらに増やす。新しい体は俺にいくつもの過程と悩みを与える。

 

 でも、『それを愉しめ。』なんて言うように、雨は窓に当たって、ガラスを素早く流れていった。

 

 外は依然雨だった。それでも涙はようやく収まった。






うっふぅん。作者よぉん
次回から学校編が始まるわァん。
そして次回はサクハ視点よぉん。
気軽にコメントちょうだぁいん、モチベになるわァん。
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