俺の命を守るためなら、お前らを盾にする   作:最高司祭アドミニストレータ

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勘頼り

 湯けむりの温泉郷「セレネ」で起きた、タチバナにとっての未曾有の大惨事から数日後。

 

 王都の諜報部から届けられた新たな指令書に基づき、勇者一行は鬱蒼とした深い森の奥、巨大な岸壁にぽっかりと口を開ける薄暗い洞窟の前に立っていた。

 

 

「ここが古代迷宮『賢者の試練』か。情報によれば、次の魔王軍四天王、”策士”のインテリオは、この迷宮の最深部を根城にしているとのことだが」

 

 

 王女騎士アリシアが、洞窟の入り口に刻まれた風化しかけた古代文字を鋭い視線で睨みつける。

 

 その横顔の真剣さ、張り詰めた緊張感とは裏腹に、タチバナの視線は彼女の顔ではなく、首から下へと釘付けになっていた。

 

 古代迷宮から吹き出してくる空気は、長年日の光を浴びていないせいか、異常なほどに湿度が高くじめじめとしていた。

 

 その湿気が、アリシアが白銀の鎧の下に着用している黒いインナーを彼女の白い肌へと、ピッタリと張り付かせた。普段の装甲では隠されている引き締まった腹筋のラインや胸の膨らみの起伏を、いつも以上に生々しく浮き彫りにしていたのだ。

 

 

(…ふむ。ジメジメして不快な環境というのも、一概に悪いことばかりではないな。水気を含んだ布地というものは、女性の肉体の造形美を極限まで引き出す最高のアタッチメントだ)

 

 

 タチバナは、自らの下劣な視線を「環境がもたらす物理的な副産物の観察」と最もらしい理屈で正当化し、芸術鑑賞を楽しむように目を細めた。その高尚な鑑賞の時間は、目の前に広がる陰鬱なダンジョンの暗闇によって、すぐに現実に引き戻される。

 

 

(はぁ。それにしても、なんで俺が、こんなカビ臭くて、どこから魔物が飛び出してくるかも分からない穴ぐらに、わざわざ自らの足で入っていかなきゃならねえんだよ…早く宿屋に帰って、綺麗なシーツの上でごろごろしたい…)

 

 

 彼の冒険に対するモチベーションは、もはやマイナスに達していた。魔王討伐などという命の保証がないボランティアよりも、安心安全なヒモ生活こそが彼の人生の至上命題なのだ。

 

 

『…貴方がこの迷宮に入らなければ、貴方の後ろを歩く三人の乙女たちが、そしてゆくゆくは貴方自身が、魔王軍の脅威によって確実に命を落とすことになるからですよ。極めて単純な因果と論理の帰結です』

 

 

 タチバナの隣の空間で透明化している精霊フィリアから、氷のように冷たく、一切の反論を許さない正論の思念が脳髄へと突き刺さった。

 

 

(うるさい! 分かってるっつーの! 言われなくても入ってやるよ!)

 

 

 タチバナは内心で激しく悪態をつきながら、ヒロインたちに「よし、行くぞ」と重々しく促されるまま、鉛のように重い足取りで迷宮の暗闇の中へと足を踏み入れた。

 

 

 迷宮に入ってすぐ、冷たい石造りの通路は前触れもなく二手に分かれていた。

 

 右と左、全く同じ構造に見える二つの通路が、松明の光も届かない奥深くまで暗い口を開けている。この先の道を選ぶため、三人の乙女たちはそれぞれの専門知識を駆使し、真剣な表情で議論を交わし始めた。

 

 

「左の通路は、足元の敷石や壁の石材の劣化が少ない。つまり、建設された年代が右の通路よりも新しい可能性がある。通常、より重要な防衛区画は、中枢を隠すために後から増設されると考えるのが築城の定石だ。左が正解の道である確率が高い」

 

 

 アリシアが、王宮騎士として学んだであろうダンジョン構造学の知識を理路整然と披露する。

 

 

「うーん。でも空気中の魔力の残留濃度を測ってみると、右の方の通路が、ほんの少しだけ高いんだよね。これは、過去に、より強力な魔術的なトラップや、膨大な魔力を持つ存在が、右の通路に配置されていたってことじゃないかな? 重要な道ほど、警備の魔術は厳重なはずだよ。だから、右の方が怪しい」

 

 

 メグがアリシアの物理的な見地とは全く逆の、魔導士としての魔力感知の観点から反論を展開する。

 

 

「お二人とも、お待ちください。通路の奥から反射してくる、風の反響音の質が、左右でわずかに異なります。右の通路の奥は、音がより拡散していくような響きを持っていますわ。つまり広い空間…あるいは、巨大な落とし穴のような空間が存在する可能性も、捨てきれません」

 

 

 セシリアが、僧侶ならではの鋭敏な聴覚と空間認識力で、新たな危険の可能性を示唆する。

 

 構造学、魔力探知、音響解析。三者三様の、実に高度で、学術的であり、そして全く結論の出ない平行線の議論。

 

 その光景を、タチバナは壁に背中を預け、腕を組んで、さも「お前たちの意見を全て聞いた上で最終判断を下してやろう」といった思慮深い態度で、黙って見守っていた。

 

 しかし、彼の頭蓋の中で展開されている思考は、彼女たちの高尚な議論とは次元の違う、極めて生物的で低レベルなものであった。

 

 

(腹が減ったな。そういえば、さっき温泉宿で出た朝飯、山菜ばかりで肉が少なかったんだよな。もっと腹に溜まるものを食っておけばよかった…)

 

 

 彼の思考は、魔王軍の脅威よりも「自らの空腹」という目の前の欲求に完全に支配されていたその時である。

 

 タチバナの鼻が、くんくんと微かに動いた。右の通路の奥の暗闇のずっと先からほんの、本当にわずかにだが、何か甘く香ばしいような匂いが漂ってくるような気がしたのだ。

 

 

(ん? なんだこの匂い…どこかで嗅いだことがあるぞ…? そうだ。これは宿屋の厨房から漂ってきた、焼きたてのパンにハチミツを塗ったような匂いじゃないか!)

 

 

 迷宮の奥深くで焼きたてのパンの匂い。普通に考えれば、魔物の罠か幻覚を疑うべき不自然な現象である。タチバナの論理回路は、「食欲」という圧倒的な本能の前に、極めて都合の良い解釈を導き出した。

 

 

(おそらくは、この迷宮の奥で野営している他の冒険者のパーティーがいるか、あるいは魔物が食料を溜め込んでいる倉庫があるに違いない。どちらにせよ、あの先に行けば食い物にありつける可能性がある!)

 

 

 そう判断したタチバナは三人の議論を遮るように、迷わず結論を下した。

 

 

「右だ」

 

 

 彼の唐突な一切の迷いがない絶対的な自信に満ちた一言に、議論を戦わせていた三人がハッと顔を上げて彼を見つめた。

 

 

「ッ! タチバナ様…」

 

 

 アリシアが、感服したように短く息を呑む。

 

 

「我々の議論のその全てをお聞きになった上で、全ての可能性の利と危険を天秤にかけ、それでもなお揺るがぬ結論を即座に導き出された。我々凡人には見えない何か確固たる『真理』を、その眼で感じ取られたのですね!」

 

(ああ、感じ取ったぞ。腹を満たす焼きたてパンの匂いをな)

 

 

 タチバナは内心で俗物的な答えを返しながら、さっさと右の通路へと歩き出した。

 

 その先には、次の階層へと続く巨大な扉が、あっけなく存在していた。彼の食欲に任せた勘頼りの選択は、結果的に「正解」のルートを引き当てていたのである。

 

 

 その後も、タチバナの「神がかり的」としか思えない進軍は続いた。

 

 通路の石畳の形状が変わった場所。

 

 

「タチバナ様、お待ちを。この床、重量を感知して無数の矢が飛び出してくる物理トラップの可能性があります。私が魔力探知で、安全な床の法則を見つけ出すから、少し待ってて!」

 

 

 メグが前に出ようとするが、タチバナはそれを手で制した。

 

 彼は床をじっと見つめる。

 

 

(なんだこれ。矢が飛び出す? 馬鹿馬鹿しい。よく見れば、通路の真ん中の石畳だけ、埃が全く被っておらず、ピカピカに綺麗になっているじゃないか。端の石畳にはカビや蜘蛛の巣が張っている。つまり、この迷宮の管理者が定期的に歩いて掃除しているのは、この真ん中のルートだけだということだ。ならば、そこを歩けば安全に決まっている)

 

「俺語の辞書に、待つという言葉はない」

 

 

 タチバナは、己の『極度の面倒くさがり』ゆえの「単純に、掃除されていて綺麗な床だけを歩けば靴が汚れない」という視点で、真ん中の石畳だけをひょいひょいと歩いていく。

 

 結果として、彼は全ての矢のトラップを起動させることなく、無傷で通路を抜け切ってしまった。

 

 その直後である。通路の先の空間が、突如として魔力供給を断たれたように、完全に真っ暗になった。

 

 

「きゃっ!?」

「急に暗闇が…!」

 

 

 ヒロインたちが不測の事態に驚きと警戒の声を上げる。その暗闇の中で、タチバナの顔に、邪悪で下劣な笑みが浮かんだ。

 

 

(チャンス!! 暗闇のドサクサに紛れれば、どんな不可抗力も「事故」として処理される完璧な免罪符が完成する!)

 

 

 タチバナは「うわっ、足元が!」と、大根役者も顔負けのわざとらしい悲鳴を上げ、暗闇を利用して、すぐ目の前の気配──メグの方向へと倒れ込んだ。

 

 そして、彼が事前に頭の中で弾き出していた三次元的な座標計算通りに、彼の手は、メグのダイナマイトボディの象徴たる、豊かな胸の膨らみを、見事に、そして正確無比に鷲掴みにしたのである。

 

 

(おおおおおおおおお!! なんだこの圧倒的な柔らかさは! この絶妙な弾力、この手のひらに収まりきらない質量! セシリアの神々しいまでの巨大さとはまた違う、若々しさと生命力に溢れた極上の果実! まさに神の創造物!)

 

 

 タチバナはこの千載一遇の好機を最大限に活かすべく、「暗くて何も見えないから、壁か何かだと思って必死に掴んでいるだけだ」という体で、確かめるようにその柔らかな果実をもみもみと動かした。

 

 

「ひゃあっ!? ゆ、勇者様!? そ、そこは…!」

 

 

 メグがこれまでに聞いたこともないような甘い悲鳴を上げた瞬間、迷宮の魔力供給が復活し通路の明かりがパッと灯った。

 

 タチバナは光が戻ると同時に何食わぬ顔でパッと手を離し、メグの肩を支えるポーズへと瞬時に移行した。

 

 

「す、すまん、メグ。急な暗闇で平衡感覚を失い、何かの石柱にぶつかったかと思って、思わず強く掴んでしまったようだ。怪我はないか?」

 

 

 己の欲望を隠蔽するためのあまりにも白々しい、当事者でなければ反証不可能な完璧な言い訳を披露した。

 

 続いて一行が直面したのは、複雑な古代文字が刻まれた巨大な仕掛け扉であった。

 

 

「この文字の配列…王宮の書庫で見た文献と照らし合わせれば、解除の法則が導き出せるはずだ。…解読に、少し時間がかかりそうだ」

 

 

 アリシアが、扉の前に立ち、眉間に皺を寄せて唸っている。

 

 だが、タチバナはそんな知的な作業を待つ気など毛頭なかった。

 

 

(暗号解読? 面倒くさい。そんなもん、この扉に並んでいる五つのボタンのうち、一番自分の手の高さにあって、一番『押しやすそうな位置』にあるボタンが正解に決まってるだろ。人間が設計したものなら、一番頻繁に使うボタンは最も便利な位置に配置する。それが人間工学というものだ)

 

 

 タチバナは、アリシアが止める間もなく、「これだろ」という極めて単純かつ怠惰な理由で、ど真ん中のボタンを迷いなく押し込んだ。

 

 

 ゴゴゴゴゴ…! 

 

 

 重厚な扉が、あっさりと開いた。それが、正解のスイッチだったのだ。

 

 同時にそれは、侵入者を排除するための物理トラップの起動スイッチでもあった。

 

 開いた扉のすぐ足元の石畳が突然パカリと大きな音を立てて開き、タチバナと三人のヒロインたちは足場を失い、真っ暗な斜面──巨大な滑り台のような通路へと落下させられた。

 

 

「「「きゃあああああ!」」」

「うおおおおおっ!?」

 

 

 長い滑り台を猛スピードで滑り落ち、全員が下の階層の広い部屋の床へと、ごちゃ混ぜになって転がり落ちた。

 

 タチバナは、落下の衝撃で一瞬だけ意識を失った。

 

「うぅ……」と呻き声を上げながら、ハッと我に返って目を開けた彼が、真っ先に目の当たりにしたのは、信じられないほどの絶景であった。

 

 彼は偶然にも、転んで仰向けに倒れていたアリシアの、ちょうど両脚の股の間に顔を埋めるような形で倒れ込んでいたのだ。

 

 そして、彼の目の前、数センチの距離には。

 

 落下の風圧によって大きくめくれ上がった金属のスカートアーマーの下。普段は厳重な装甲によって決して見ることのできない、気品あふれる純白のレース生地に包まれた、彼女の秘められた聖域が、一切の障害物なく、完璧な形で眼前に広がっていたのである。

 

 

(…天国は、死後の世界ではなく、この迷宮の地下に存在していたのか…)

 

 

 タチバナはその圧倒的な造形美とレースの隙間から覗く眩しいほどの白い肌を、瞳孔を限界まで見開いて網膜に焼き付けた。

 

 

「タチバナ様? だ、大丈夫ですか…? その、少しお顔が近すぎて、息苦しいのですが…」

 

 

 アリシアが顔を耳の先まで真っ赤に染め、普段の彼女からは想像もつかないようなか細く震える声で言った。

 

 タチバナは「すまん、落下の衝撃で体が動かなかった」と、ここでも完璧な免罪符を盾にして、ギリギリまでその絶景を堪能してから、ゆっくりと身体を起こした。

 

 さらに進んだ先。今度は部屋に足を踏み入れた瞬間、四方の壁がゴゴゴゴと音を立てて迫ってくる古典的な圧殺トラップの部屋であった。

 

 

「壁が…! このままでは潰されます! 床のどこかに、壁を止める魔力回路があるはずです!」

 

 

 アリシア、メグ、セシリアの三人は、冷静に、そして的確に迫りくる壁の魔力構造を分析し、対処法を見出そうとしていた。

 

 タチバナはそんな必死な三人を一瞥すると。

 

 

(暑い。この部屋、密閉されていて空気が澱んでいる。あ、あそこの隅の一角だけ、なんか床の隙間から冷たい風が吹き上げてきて、風通しが良くて涼しいな)

 

 

 という、ただ「快適だから」という極めて個人的な理由だけで、迫りくる壁など意に介さず、さっさとその一点へと移動してしまった。

 

 

「タチバナ様!? 何を…!」

 

 

 三人が驚いて彼の元へ駆け寄ろうとした、その瞬間。

 

 彼らが先ほどまで立っていた部屋の大部分の天井が、轟音と共に崩落し、巨大な石の塊が雨あられと降り注いだ。

 

 迫る壁はフェイクであり、真のトラップは天井の崩落だったのだ。タチバナが「涼しいから」という理由で移動した場所だけが、崩落を免れた唯一の安全地帯だったのである。

 

 安堵したのも束の間。今度は足元の床が、崩落の衝撃に耐えかねて激しく揺れ始めた。

 

 

「うわっ!?」

 

 

 立っていられなくなり、タチバナは大きく体勢を崩し、すぐ後ろにいたセシリアの方へと倒れ込んでしまう。

 

 彼は己の身を守るため、咄嗟に何かを掴んで体勢を立て直そうと必死に手を伸ばした。

 

 その手は運命のいたずらか、あるいは彼に備わった恐るべきスケベ本能の必然か。

 

 セシリアの分厚い僧侶服の上からでもはっきりと分かるほどに、大きく柔らかく究極の弾力に満ちた彼女の豊かなお尻の曲線を見事に、両手でがっしりと鷲掴みにしていたのである。

 

 

「ひゃんっ!?」

 

 

 セシリアの口から今まで聞いたこともないような、そして情動を刺激するような甲高い悲鳴が漏れた。

 

 

(な、なんだ、このマシュマロの究極系のような感触は…!? これが、聖母のヒップ…! 胸の柔らかさとはまた違う、包み込まれるような圧倒的な弾力! 指の腹から伝わる、布越しの滑らかな曲線美! 俺は今、両手に世界の平和を掴んでいる…!)

 

 

 タチバナは、その奇跡的な柔らかさに、己の指先がこのまま同化してしまってもいいと感動すら覚えていた。

 

 彼の、論理的思考とは無縁の、極めて行き当たりばったりで自己中心的な行動が、ことごとく、古代迷宮の悪辣なギミックを打ち破っていく。ヒロインたちは、もはや驚きを通り越して、タチバナに対して絶対的な畏怖の念すら抱き始めていた。

 

 

「すごい…! タチバナ様の直感は、もはや魔力探知を超えた、未来予知の領域だわ…!」

 

 

 メグが、タチバナの背中を見て感嘆の声を上げる。

 

 

「我々がちまちまと古代文字を分析しているのが、ひどく愚かな行為に思えてくるな。真の英雄の眼には、すべての罠の正解が、光の道として見えているのだろう」

 

 

 アリシアが、自らの未熟さを恥じるように首を振る。

 

 

「ああ、タチバナ様…。あなた様についていけば、私たちは、決して、死の恐怖に怯えることなく、正しい道を進むことができるのですね…」

 

 

 セシリアが、頬を赤く染めながら、祈るように彼を見つめている。

 

 彼女たちの思考回路は完全に、自分たちの指揮官を「人智を超えた神」として神格化し始めていた。

 

 その絶対的な尊敬と甘い信頼に満ちた三人の視線を背中に浴びながら、タチバナは得意絶頂の顔で隣の空間にいるフィリアにテレパシーを送った。

 

 

(なあフィリア。見たか? 俺の実力を。これが、選ばれし勇者の力というやつだ! 俺の手にかかれば古代迷宮の罠など、子供の遊び道具に過ぎん!)

 

 

『ええ、拝見いたしましたよ。貴方の、ただの食欲と、怠惰と、醜い生存本能。そして何より、常軌を逸した【有り余る下心】だけを頼りにした、実に貴方らしい、下劣極まりない進軍を。ある意味において、見事なものでした』

 

 

 フィリアの、冷酷な事実を羅列しただけの思念が響く。

 

 

(褒めてんだか、貶してんだか、相変わらず素直じゃない奴だな、お前は…)

 

 タチバナは、自らのセクハラ行為の全てが「天才的な指揮官の采配」として完璧に肯定された事実に酔いしれ、己の欲望の赴くままに、さらなる桃源郷を求めて迷宮の奥深くへと、意気揚々と足を踏み入れていくのだった。

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