俺の命を守るためなら、お前らを盾にする 作:最高司祭アドミニストレータ
聖女アナスタシアの呪詛を打ち破り、さらにアリシアとの剣の稽古を満喫した翌日。
聖都サンクチュリアの大聖堂は、荘厳な祈りの声と静寂に包まれていたが、勇者タチバナの心は晴れ渡る青空のように陽気で、足取りは羽が生えたように軽かった。
(いやー、最高だ。この聖都での滞在はまさに我が人生の黄金期だな。宿は超一流、飯は美味いし、何より俺の周りの美女たちの好感度が軒並み最高潮に達している。昨日なんか、あのアリシアが俺に顔を埋められて、完全に女の顔になってたからな。ふはははは!)
タチバナは、自らのどうしようもないクズな行いを「指導者としての魅力の勝利」と都合よく変換し、鼻歌交じりに大聖堂の長い廊下を歩いていた、まさにその時である。
曲がり角から、燃えるような赤い髪を揺らしながら、一つの小柄な影が猛スピードで飛び出してきた。
「あーっ! 勇者様、見っけ!」
タチバナが驚く間もなく、その影──天才魔法使いのメグは、弾丸のような勢いでタチバナの左腕にぐいっと自らの両腕を絡めつかせた。
そして、彼女の小柄な体躯からは想像もつかないほどの圧倒的な質量を持つ二つの膨らみを、タチバナの二の腕にこれでもかとばかりに強く押し付けてきたのだ。
(おおお…ッ! いきなりのダイレクトアタック! しかも、この躊躇いのない密着度! さすがメグだ、アリシアのような面倒な建前を必要としない、このストレートな愛情表現! 俺の左腕が、今まさに極上の果実の弾力によって天界の門を叩いている!)
タチバナが内心で歓喜の雄叫びを上げていると、メグはタチバナの腕に抱きついたまま、少し拗ねたように唇を尖らせ、琥珀色の瞳で上目遣いに彼を見上げた。
「ねえ、勇者様! 昨日はアリシアばっかりズルい! あたしとも遊んでよ!」
(遊ぶ!? 最高じゃねえか! どうやって遊ぶんだ!? 室内か!? 野外か!?)
「あたしね、昨日すっごい新しい攻撃魔法の構築を考えたんだ! その威力の実験に、勇者様も付き合ってほしいんだけど…いいでしょ?」
実験。
その言葉を聞いた瞬間、タチバナの脳内に「面倒くさい」「危ない」「疲れる」という警報が鳴り響いた。彼は極度の怠け者であり、痛い思いをすることは何よりも嫌う。
だが。
彼の左腕に絶え間なく押し付けられる、柔らかくも力強い圧倒的な質量。そして、至近距離で見上げてくる、メグのキラキラと輝く純粋な瞳と、花の蜜のような甘い香り。
それらの抗いがたい物理的・視覚的誘惑の前に、タチバナの脆弱な理性と面倒くさがりな性格など、春の雪のように一瞬で溶け去ってしまった。
「…ああ。いいだろう。君の新たな力、この俺がしっかりと見届けよう」
タチバナが完璧な「頼れる指揮官の笑顔」でそう答えると、メグは「やったー!」と歓声を上げ、さらに強くギュッと彼の腕を抱きしめてきた。
(ぐへへへへ…! 素晴らしい! この腕に伝わる弾力がさらに二割増しになったぞ! 俺の判断は常に正しい!)
タチバナが鼻の下を限界まで伸ばしていると、精霊フィリアから絶対零度の思念が脳髄に突き刺さった。
『彼女の思考の波長を解析した結果を報告します。この「魔法の実験」という名目の真の目的は、強力な力を見せつけることで、昨日貴方に密着したアリシア以上に自分を意識させることです。要するに、ただの貴方を巡るアピール合戦ですね』
フィリアの冷徹な解説が響くが、タチバナは全く気にする様子がない。
(望むところだ! もっとやれ! 互いに競争し、俺の気を引くためにその女としての武器を惜しげもなく披露し合うがいい!)
メグに腕を引かれるままタチバナが連れてこられたのは、聖都の郊外に広がる人気のない広大な荒野と岩場であった。
切り立った岩山が連なり、草木もまばらなその場所は、確かに強力な魔法を放つにはうってつけの環境と言えた。
「ここなら周りに誰もいないから、思いっきり魔法をぶっ放せるんだ!」
メグは楽しそうに笑いながら、数十メートル先にある家の一軒ほどもありそうな巨大な岩の塊を指差した。
「あの岩が今日のターゲット! 勇者様は、あの岩のちょっと横の方に立ってて! あたしの新しい魔法がどれだけすごいか、一番近くの特等席で見せてあげるから!」
「(岩の横!? 冗談じゃない、危なくねえか!? もし魔法の狙いが逸れて俺に直撃したら、骨一つ残らないぞ!)」
タチバナの顔面が、一瞬にして青ざめ引きつった。彼は即座に「いや、俺はここで見ているから」と逃げの口実を構築しようとした。
だが、その前にフィリアの思念が割り込んできた。
『ご安心を。彼女の魔力制御能力と術式の構築精度は、この大陸でも最高峰の本物です。彼女が狙いを過たない限り、貴方の身体に魔法の直撃弾が当たることは、万に一つもありません…実に残念なことですが』
(残念とはなんだ! 主の安全を喜べ!)
そして、安全が担保されたと理解した瞬間、彼の極めて悪質でスケベな脳細胞が、一つの「完璧な方程式」を閃き出したのだ。
(…待てよ? 強力な攻撃魔法の実験。ということは魔法が岩に激突した瞬間、当然、凄まじい爆風が周囲に発生するよな…?)
タチバナの口角が、ゆっくりと、そして邪悪に吊り上がっていく。
爆風。それは即ち、人間の力ではどうしようもない「物理的な不可抗力」である。
(その爆風から身を守るという名目で、俺がメグの小さな身体の上に覆いかぶさり、地面に押し倒す。それはもはやセクハラではなく、仲間を思いやる「自己犠牲の救出劇」という完璧な事故の偽装だ! 昨日のアリシアの時と同じ、いや、それ以上に合法的な密着の機会!)
さらに、タチバナの妄想は加速する。
(そして…もし運が良ければ。その激しい爆風の風圧によって、メグが着ているあの布面積の少ないミニスカートのローブが、ビリビリと破れたり、あるいは風で完全にめくれ上がって、下着ごと吹き飛んだりするかもしれない…!)
魔法使いのローブは防御力が低く、強風に弱い。物理法則に則って考えれば、決してあり得ない話ではない。
「(ぐへへへへ…! 最高じゃねえか、この実験! メグ、お前は本当に最高のエンターテイナーだぜ!)」
タチバナは口から垂れそうになる涎を必死に飲み込み、さも「仲間の成長を見守る、頼れる勇者」の真剣な表情を顔面に張り付けた。
ターゲットである巨大な岩の少し横、爆風の影響を最も受けやすく、かつメグとの距離を詰めやすい絶妙なポジションへと歩を進めた。
「よし、メグ! 準備はいいぞ! お前の新しい力、存分に見せてみろ!」
「うん! 行くよ、勇者様!」
メグが手にした短い杖を岩に向けて高く掲げ、古代語の詠唱を開始した。
その瞬間、彼女の小柄な身体の周囲に、凄まじい密度の熱を持った魔力が渦を巻き始めた。
周囲の空気が揺らぎ、小石がフワフワと宙に浮き上がる。その圧倒的なプレッシャーは、彼女の華奢な身体のどこにそんな莫大なエネルギーが隠されているのかと疑うほどであった。
メグの杖の先端に、太陽の破片を切り取ったかのような、白く輝く巨大な炎の渦が形成されていく。
だが、タチバナの目は、その恐るべき破壊の魔法そのものには、もはや一ミリも向けられていなかった。
彼の視線は、強大な魔力の風に煽られて激しく揺れ動く、メグの肉体のみに完全に釘付けになっていたのだ。
魔力の乱気流が、彼女の燃えるような赤いツインテールを激しく波打たせる。
それ以上に彼女が魔力を練り上げるたび、息を吸い込むたびに、ローブの胸元に収まりきらない彼女の豊かな胸の双丘がぶるんぶるんと、極めて激しく、そして魅惑的な軌道を描いて大きく揺れ動いてたのである。
「(おおおおお…! 揺れてる…! 揺れてるぞ! 魔法が爆発する前に、俺の目の前で、極上のダイナマイトが爆発的な揺れを見せている! なんという躍動感! なんという生命の神秘!)」
さらに、下から吹き上げる魔力の風が、メグの極端に短いミニスカートのローブの裾を、容赦なく上へとめくり上げる。
風が吹くたびにチラチラと、本当にあと数ミリで見えそうなほど際どいラインで、彼女の健康的で滑らかな太ももの全貌と、その奥に隠された禁断の純白の領域が、見え隠れするのだ。
「(くっ…! 見えそうで見えない! この絶妙な布の抵抗! 焦らしプレイの極致! お前は魔法の天才であると同時に、男の視線を釘付けにする天才か、メグ!)」
タチバナは目の前の岩が粉砕されることよりも、メグのスカートが風に負けて完全にめくれ上がる瞬間のために、興奮で息を荒くし瞳孔を限界まで見開いていた。
『貴方という人間は、本当に。己の命の危機に瀕する可能性のある極限の状況下でさえ、その思考の全ては常に下半身の欲求の一点にしか向かわないのですね。その一貫したクズっぷり、ある意味で尊敬に値します』
「(褒めるな! これは俺の精神を研ぎ澄ませるための神聖な儀式だ!)」
そして、メグの詠唱が頂点に達し、彼女が鋭い声を張り上げた。
「いっけぇー! あたしの最強の新型魔法! フレイム・ノヴァ!」
メグの杖から解き放たれた巨大な火球が、空気を焼き焦がす轟音と共に一直線に飛び、ターゲットである巨大な岩へと、寸分の狂いもなく直撃した。
ドゴォォォォォォォォンッ!!!
凄まじい爆発音と共に家ほどもある巨大な岩が、一瞬にして跡形もなく粉砕され、赤い閃光と黒い噴煙が荒野に巻き起こった。
岩を破壊した直後、行き場を失った灼熱の爆風と衝撃波が、円心状に猛烈な勢いで広がり、タチバナたちのいる場所へと襲いかかってきた。
「(よし来たァァァァァァァッ!!!!)」
タチバナの心臓が、歓喜の絶頂で跳ね上がった。
彼は、己の生存本能とスケベな計算式を極限まで研ぎ澄まし、爆風が彼らの身体に到達するコンマ数秒前、完璧なタイミングで行動を開始した。
「危ない、メグ!」
タチバナは、さも仲間の危機を察知して咄嗟に動いたかのような悲壮な声を上げながら、メグの元へと一直線に駆け寄った。
そして、衝撃波が彼女を飲み込む直前、完璧に計算された軌道と角度で、彼女の小さな身体の上へと覆いかぶさるようにして、共に硬い地面へと倒れ込んだのである。
無論、彼が身を挺したのは、愛する仲間を爆風から守護するためなどではない。
ただ、不可抗力を装って彼女の柔らかい肉体を心ゆくまで堪能するためである。
「ぐっはぁ…! 最高だ、この柔らかさは!」
土埃と爆風が頭上を通り過ぎていく中、タチバナは地面に伏せながら、メグの身体を自らの両腕でがっしりと抱きしめていた。
彼の腕の中にすっぽりと収まる、小柄でありながらも起伏に富んだダイナマイトボディ。薄いローブ越しに伝わってくる、若々しい肌の圧倒的な弾力と、燃えるような高い体温。
タチバナは、アリシアの時とはまた違うその生命力にあふれた極上の感触に、脳髄が痺れるほどの快感を覚えていた。
やがて爆風が収まり、周囲の土煙が晴れていく。
タチバナは密着の快感を味わいながらも、己のもう一つの期待──すなわち、爆風によってメグのローブが破け、下着が露わになっていないか──を確認するため、ちらりと視線を下に向けた。
だが、王国が誇る最高級の魔力繊維で織られた魔法使いのローブは、爆風の衝撃を完璧に殺しており、破れるどころか一切のほつれすら生じていなかった。
(ちっ…! 流石は高級品、布地の耐久力が高すぎる! まあいい! これだけ全身で密着して、彼女の体温を堪能できただけでも、十分すぎる釣果だからな!)
タチバナは、破れた衣服の鑑賞という目的が外れたことに一瞬だけ舌打ちしたが、すぐに気を取り直し、完璧な英雄の顔を作ってゆっくりと身体を起こした。
そしてメグの顔を真剣で、どこか憂いを帯びた表情で見下ろした。
「大丈夫か、メグ! どこか怪我はしていないか!?」
タチバナの腕の中でメグはぽかんと口を開け、琥珀色の瞳を丸くして彼を見上げていた。
彼女は、自分が放った魔法の威力の凄まじさに驚くと同時に、それ以上の衝撃的な出来事──勇者が自分の命を顧みず、身を呈して覆いかぶさって守ってくれたという事実に、完全に思考を停止させていた。
やがて彼女の視界に、自分を覗き込むタチバナの真剣な瞳が映り込んだ瞬間。
メグの顔が耳の先から首筋に至るまで、文字通り火を噴きそうなほど真っ赤に染め上げられた。
「う、うん。大丈夫。勇者様が、あたしを守ってくれたから…」
彼女の琥珀色の瞳は熱く潤み、タチバナを見つめる。その視線はもはや魔法使いとしてのものではなく、完全に心を奪われた「恋する乙女」のそれであった。
自分を身を挺して守ってくれた。その圧倒的な事実と、今も自分を包み込んでいる彼の男らしい腕の力強さに、メグの心は完全に陥落していた。
その無防備で蕩けきったメグの表情を見た瞬間。
タチバナの極めて悪質でクズな脳細胞が、瞬時に「最高のアイデア」を閃き出した。
(いける)
今、このシチュエーションなら。彼女が完全に俺に気を許し、男として強く意識しているこの完璧な流れなら。
タチバナは、メグの小さな身体の上に覆いかぶさった体勢のまま、退くどころかゆっくりと己の顔を彼女の顔へと近づけていった。
「え…?」
メグの大きな瞳が、さらに驚きに見開かれる。
タチバナの顔が迫ってくる。男の熱い吐息が、彼女の顔に直接かかる。
自分が今、何をされようとしているのか。それを直感的に理解したメグの、戸惑い、驚き、そして微かな期待が入り混じった表情。
タチバナにとってその無防備すぎる反応は、たまらなく彼の加虐心と支配欲をそそるものであった。
タチバナは何も言わず、ただ熱っぽく、どこか強引な視線で彼女を見つめ続けた。
そして、メグが何か言葉を発する前に。
彼はそっと自らの唇を彼女の少しだけ開かれた、柔らかく温かい唇へと重ね合わせたのである。
「…っ!」
最初は、ただ軽く触れるだけの静かなキス。
メグの身体が、ビクンッ! と大きく跳ね上がったのが、抱きしめている腕を通して直接的に伝わってきた。
彼女の小さな手が、タチバナの胸元を驚きで押し返そうとする。
だがタチバナは少しだけ意地悪く、彼女の唇から離れようとせず、そのままの体勢で彼女の反応を待った。
数秒の硬直の後。
メグの身体から、ふっ、と抵抗する力が抜け、彼女の腕が力なく地面へと落ちるのが分かった。
抵抗しない。それはこの行為が彼女に完全に受け入れられたという、何よりの証拠であった。
タチバナは勝利を確信し今度は少しだけ顔の角度を変え、より深く力強く己の唇を押し付けた。
「ん…ぅ…」
メグの口から無意識のうちに、極端に甘く可愛らしい声が漏れた。
普段の元気で快活な彼女からは想像もつかない、完全に女としての本能が漏れ出したようなその艶めかしい声が、タチバナの欲望の導火線に一気に火をつけた。
彼はメグの柔らかい下唇を軽く食むようにすると、その隙間から強引にこじ開けるようにして、自らの舌を彼女の口内へと差し入れた。
「んんっ…!? ふ、ぁ…っ」
初めて深く侵入される感触なのだろう。メグの身体が未体験の刺激に驚き、ビクビクと小さく震えている。
しかし彼女は拒絶しなかった。顔を背けることもなく、むしろ、おずおずと、己の舌を絡ませてそれを受け入れようと応じてきている。その不器用な反応が、タチバナにとってはたまらなく可愛らしく、そして征服欲を満たすものであった。
タチバナは心ゆくまで彼女の口内の甘さを味わい尽くし、彼女の呼吸が苦しくなり始めたのを見計らって、ゆっくりと、名残惜しそうに唇を離した。
二人の唇が離れた瞬間、一本の銀色の糸**が、艶かしく引かれていた。
そのあまりにも官能的で背徳的な光景に、タチバナは思わずゴクリと喉を鳴らした。
メグは完全に腰が抜けたように地面に脱力し、潤んだ琥珀色の瞳でタチバナを見上げていた。
頬は耳の先まで真っ赤に染まり、キスを受け入れた口元は、だらしなく半開きになったままである。
「あ…ぅ…ゆ…勇者…さま…」
もはや天才魔法使いとしての知性の欠片もない。完全に恋の熱に蕩けきった、ただの一人のメスの顔であった。
タチバナは、自らの行為が彼女を完全に陥落させたことを確信し、満足げに
微笑むと、彼女の赤い髪を撫でながら悪戯っぽく耳元で囁いた。
「今の魔法は、本当にすごかったな。これはよく頑張った君への、俺からのご褒美だ」
その甘い言葉にメグの身体が再びびくんと震え、彼女は恥ずかしさで両手で自分の顔を覆い隠してしまった。
『お見事ですね、タチバナ』
タチバナの脳内にフィリアの冷徹な、どこか呆れ果てた称賛の思念が響いた。
『貴方のその、計算され尽くした最低なセクハラ行為と、不意打ちの暴挙が、またしても一人の乙女の精神を完全に掌握しました。彼女の脳内において貴方はもはや、自分を命懸けで守る。そして情熱的に愛してくれる白馬の王子様と同義として、強固に保存されたことでしょう。貴方のその女の心を弄ぶ手腕だけは、人間界の最高峰と認めて差し上げます』
(だろ!? これも全て、俺の圧倒的な魅力と、状況判断能力という実力よ!)
タチバナは、フィリアの痛烈な皮肉を最大の賛辞として受け取り、内心で満足げに頷いた。
そして、完全に骨抜きになり、自らの足で立ち上がることすらできなくなっているメグに向かって、「さあ、帰ろうか」と、どこまでも優しく、爽やかに手を差し伸べるのだった。