【未完】そのトレーナー、パチンカスにつき   作:ぽこちー

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みなさん、感想高評価ありがとうございます。
思っていた以上に感想を書いていただいており、全ての感想に返信ができておらず申し訳ありません。
ですが、全ての感想に目を通しており、何度も読み返してモチベが爆上げしております。
本当にありがとうございます!!


自分でパチンカスって言うのは何も感じないんだけど、他人から言われると何かイラっとするよね

 

 

 

「……何してんの、お前ら」

 

 

 トレーナー室に入った瞬間、俺は思わず足を止めた。

 

 机の上いっぱいにカードのパックが広げられ、その中心でやけに真剣な表情のアルダンとテイオーが、黙々と“開封の儀”を執り行っている。

 

 俺はその様子を冷めた目で眺めながら、二人に声をかける。

 

 

「見ればわかるでしょ? トレーナートレカを開封してるの!」

 

 

「なにそれ?」

 

 

「今、ウマ娘たちの間で人気のカードコレクションです♪」

 

 

 アルダンはにこやかにそう言うと、俺に一つパックを差し出してきた。

 

 受け取って表紙を見る。

 

 そこには玉座に腰掛け、『中央を無礼(なめ)るなよポーズ』を決めているシンボリルドルフのトレーナーが描かれていた。

 

 

「なにこれ?」

 

 

「カイチョーのトレーナーに決まってんじゃん! ほら、他にもね〜……じゃん! キングのトレーナーもあるよ!」

 

 

 テイオーが勢いよく差し出してきたカードには、『キングは1人、この俺だッ!』というセリフとともに、天へ指を突き立てるキングヘイローのトレーナーの姿が描かれている。

 

 

「キングはキングでもキング違いじゃねぇーか」ポイッ

 

 

「あぁっ!? ちょっと!!」

 

 

 宙に放り投げられたカードを慌てて掴み取り、テイオーがこちらを睨みつけてくる。

 

 その抗議を完全に無視して、俺は自分の椅子(右側にだけ肘掛けがついているやつ)に腰を下ろした。

 

 そんなやり取りなど意に介さず、アルダンは終始にこにこと笑みを浮かべながら、淡々とパックを剥き続けている。机の横には、トレーナーごとに仕分けされたカードの山が、いくつも築かれていた。

 

 

「なんで捨てちゃうのさー!!」

 

 

「ゴミだから」

 

 

「ゴミじゃないやいっ!」

 

 

「いやゴミだろ。パチンカスにパチンカスの居場所があるように、サテライトのクズ野郎にも相応の場所ってもんがあるんだよ。てかこのカードどうなってんだよ。なんでトレーナーが題材なんだ? 普通はウマ娘だろ。ていうか普通に著作権的にアウトじゃね?」

 

 

「ちゃんと許可取ってるらしいよ? トレーナーもこの前、許可書にサインしてたじゃん」

 

 

「は? 覚えてねぇよ。そういう書類の確認は全部アルダンに丸投げしてるから」

 

 

「うわっ……」

 

 

「うふふっ♪」

 

 

 軽く引くテイオーに対し、アルダンは嬉しそうに笑っている。

 

 

「あぁー、そういや同期のトレーナーが嘆いてたな。『もうお婿に行けないー』とか『人生で一番屈辱的だったー』とか」

 

 

「それはきっとGTRのカードだね」

 

 

「GTR?」

 

 

「ゴッド・トレーナーズ・レアのことだよ! 普通のカードはイラストなんだけど、GTRは実際のトレーナーの写真が使われてるんだ!」

 

 

「つまりブロマイドか」

 

 

「その通り! しかもすっごくレアでね、5BOXに1枚くらいの確率なんだって!」

 

 

「へぇ〜……どこの需要だよそれ」

 

 

 適当に相槌を打ちながら、俺は積み上げられたカードの山から一枚を引き抜いた。

 

 

「げっ……」

 

 

 引き当てたのは、ジェンティルドンナのトレーナーがダブルバイセップスを決めているカード。嫌な記憶が鮮明に蘇る。

 

 

「……最悪だ」

 

 

「そこの山はね、ジェンティルドンナと交換する用のカードだよ!」

 

 

「これが? この20センチくらい積まれてる全部が?」

 

 

「うん!」

 

 

「いらねぇだろこんなに。ただの紙束じゃねぇか」

 

 

「でも、担当ウマ娘にとっては喉から手が出るくらい欲しいものなんです♪ カードによっては高額で取引もされてますし。ちなみにさっきのキングさんのカードも、交換用ですよ♪」

 

 

「うへぇ……愛が重馬場だな……」

 

 

 まるで三日間洗っていない靴下でも扱うかのように、ジェンティルのトレーナーカードをそっと山へ戻す。

 

 

「ってことはなんだ? テイオーも俺のカード狙いで剥いてんのか?」

 

 

「そ、そんなわけないじゃん!! アルダンじゃないんだから! ボクはカイチョーのために剥いてるの!」

 

 

 バンッ! と机を叩き、全力で否定するテイオー。

 

 いや、そこまで否定されると普通に傷つくんだが?

 

 反抗期の娘を持つ親って、こんな気分なんだろうな……と、妙な実感が胸に広がる。

 

 俺は苦笑しながら、アルダンの方へ視線を向けた。

 

 アルダンは相変わらず、丁寧な手つきでカードを仕分けている。レアそうなものはスリーブに入れ、まるで宝物のように扱っていた。

 

 そのとき、カードの山の隣に、ひときわ厳重に保管された一枚が目に入る。

 

 透明なプラスチックケース。

 ウマッターでよく見かける、いわゆる“高額カード用”のアレだ。

 

 ……たしか、ローダーとか言ったか。

 

 俺は無意識に手を伸ばし、そのカードをそっと持ち上げた。

 

 ここまで厳重に扱われているということは、相当なレアカードに違いない。

 

 胸の奥が、じわりと熱を帯びる。

 

 まるで、赤保留の演出を待つときのような高揚感だ。

 

 わずかな期待と、どうしようもない不安が入り混じる。

 

 そして俺は、ゆっくりとそのカードへ視線を落とした。

 

 

 

 

 それは———ベンチの上で、真っ白に燃え尽きているパチンカスの写真だった。

 

 

 

 

「いや俺じゃねぇーか!!」

 

 

 反射的に叫ぶと同時に、俺はそのカードを思い切り床へ叩きつけた。

 

 その瞬間、脳裏に、先ほどの会話がフラッシュバックする。

 

 GTR。

 ゴッド・トレーナーズ・レア。

 実写。

 レアカード。

 高額。

 

 嫌な汗が、背中を伝った。

 

 やばい。

 

 慌ててカードを拾い上げ、表面を確認する。幸いにも、ローダーやカードに傷は無いようだ。

 

 ふぅ……と、深く安堵の息を吐いた、そのとき。

 

 

「あ、それ一枚30円くらいだから大丈夫だよ」

 

 

「ゴミじゃねぇーか!!!!」

 

 

 俺は再びカードを叩きつける。今度は迷いなく、全力で。

 

 アルダンがすっとそれを拾い上げた。

 ほんの少しだけ頬を膨らませ、わずかに不満げな表情を浮かべながら、それでも丁寧に埃を払い、まるで貴重品のように机へと戻す。

 

 

「なんだよ30円って!! 人を勝手に盗撮してカードにして、その上30円って舐めてんのか!?」

 

 

「他にもたくさんあるよ?」

 

 

 テイオーは悪びれもせず、ローダー入りのカードを数枚掲げてみせた。

 

 

「これが、エヴァのアゴを一万円札で撫でながら祈ってるトレーナーでしょ? これが、先ロリでビクッてなってるトレーナー。これはLT中に右打ちの間隔あけて乱数調整してるトレーナーでー……」

 

「で、これがLT駆け抜けたあとも右打ち続けてる迷惑なトレーナー。最後が、死んだ顔でATMの列に並んでるトレーナーだよ」

 

 

「全部ただのパチンカスじゃねーか!!!!」

 

 

 俺は思わず頭を抱えた。

 どこを切り取っても救いがない。

 

 

「相場的には……だいたい60円くらいかな」

 

 

「結局ゴミじゃねーか!!!!!!」

 

 

 カスをカード化しても出来上がるのはゴミばかり。

 

 自分でカスと言うのは問題ないが、他人からゴミ扱いされると腹が立つ。

 

 

「てかお前らGTR引きすぎだろ!! どこで運使ってんだ!!」

 

 

「ボクたちの運が悪いわけじゃないよ。これが普通なんだ」

 

 

「GTRのうち、7割くらいはトレーナーさんのGTR(ゴミ・トレーナズ・レア)なんです♪」

 

 

「やっぱゴミじゃねーか!!!! しかも7割!? 迷惑かけすぎだろ!! ……あれか!? 最近やたら他のウマ娘から殺意こもった視線飛んでくるの、このせいか!?」

 

 

 理不尽すぎる。完全にとばっちりだ。

 

 

「あまりにもトレーナーのGTR(ゴミ・トレーナーズ・レア)が出すぎてね、こんなことになってるんだよ」

 

 

 テイオーが見せてきたのは、学園内の一角を写した写真だった。

 

 そこには、地面いっぱいに散らばった俺たちの顔面。

 

 雑に捨てられ、折れ、重なり、時に踏まれている。

 

 

「うん、まあそうなるよね!! 5000円払って60円のゴミ引いたら誰でもそうするわ!!」

 

 

「だからね、こういう回収BOXが設置されたんだ。納品すると1ポイントもらえて、10ポイントで1BOXと交換できるんだ!」

 

 

「エコ活動みたいに言うな!! 人を勝手にゴミ扱いして勝手にリサイクルすんな!! どんなSDGsだよ!!」

 

 

「ちなみに、集まったGTR(ゴミ・トレーナーズ・レア)の回収は私が担当してます♪」

 

 

「だろうねっ!! GTR(ゴミ・トレーナーズ・レア)の需要はアルダンしかないもんねっ!!」

 

 

 どうせBOXの原資もメジロ家だろう。経済が一人で回っている。

 

 どっと疲れが押し寄せた俺は、椅子に深く座り直す。

 

 『超電磁砲PHASE NEXT』 で900回転ハマってようやく当たりを引いたのにLTに入らなかった時の、あの虚無感に似ている。

 

 

「マジでしょーもないもんにハマってんなお前ら……パチンカスの俺よりギャンブルしてるだろこれ……」

 

 

 呆れ半分、本音半分で呟きながら、俺はスマホを取り出す。来月の新台を確認するために。

 

 そのとき。

 

 

「…………14万円」

 

 

 ぽつりと、テイオーが呟いた。

 

 

「え? なんだって?」

 

 

「このキングヘイローのトレーナーのGTRは、1枚14万円で取引されてるよ」

 

 

 そう言ってテイオーはトレーナートレカの取引サイトを見せてきた。

 

 

「シリウスシンボリのトレーナーGTRは26万円、ダイイチルビーのトレーナーGTRは32万円、サトノダイヤモンドのトレーナーGTRは62万円」

 

 

「そして……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ファインモーションのトレーナーGTRは、120万円だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は無言で立ち上がり、歩き出した。

 

 

「行くんだね、トレーナー……」

 

 

 問いかけるテイオーに、俺は何も返さない。

 

 トレーナー室の扉をゆっくりと開く。

 

 そこから溢れ出す、眩いほどの光。

 

 俺は、その光の中に、ゆっくりと踏み出す。

 

 背後にいるアルダンとテイオーに親指を立てながら。

 

 

 

 

 

「我が名は……ATM(養分)!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っっっっ!!!! つ、ついに出ましたっ!!!! トレーナーさんのLTR(レジェンド・トレーナーズ・レア)がっ!!!!」

 

 

 パチンカスが去った後のトレーナー室で、アルダンが歓喜の声を上げた。

 

 

「ほ、本当っ!?!?」

 

 

 テイオーが身を乗り出す。

 

 

「えぇ……これでようやく、私とテイオーさん、1枚ずつ……」

 

 

 アルダンは、カードを両手でそっと包み込む。その仕草は、まるで壊れ物を扱うかのように丁寧だった。

  

 

「本当に、本当に……長い戦いでした……」

 

 

「やった……やったあああああああっっっっ!!」

 

 

 テイオーは勢いのままアルダンへ飛びつき、二人はその場で抱き合う。

 

 トレーナー室に、歓喜の声が響き渡る。

 

 

 机の上のカードがきらりと光を反射する。

 

 

 そのカードに刻まれた名前は。

 

 

 

 

『神の眼を持つ神童』

 

 

 





本編の感想と同時にそれぞれのパチンカスエピソードも記載してあって草なんですわ。
ではここで私のパチンカスエピソードを一つ。


昨日投稿した話(5時投稿以外)は全部パチンコ(超電磁砲PHASE NEXT)を打ちながら書きました。


え?結果はどうだったかって?
1日中打って、3回LT入れて、1回2万発弱出したけどやめ時ミスって−42kですが何か??
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