「ぱっぱっぱっぱっぱっぱ♪ とうるっとうる♪」
小唄を口ずさみながら、浮き足立った足取りでトレーナー室へと向かう。
なぜこんなにも気分が良いのかというと———今日はなんと、給料日だからだ!!
それに加え、アルダンたちは学園祭の準備で忙しい。
つまり、誰にも邪魔されず、自由にパチやスロを打てるということだぁ!!(メジロカードローンは使用不可能)
そりゃあ、誰でも気分も良くなる。
最高や!!
とはいえ、万が一アルダンたちがトレーナー室に来た時のために、今日のトレーニングメニューだけは用意しておく必要がある。
だから、さっさとメニューをトレーナー室に置いて、そのままノンストップでパチ屋へ直行、大勝ちするって作戦よ。
ふふっ、完璧な作戦ダァ……
そうしてトレーナー室の前までやってきた俺は、この後の勝利を確信しながら、ゆっくりと扉を開いた。
「「「いらっしゃいませ、ご主人様っ!!」」」
「———え、なにこれ」
扉を開いた先にいたのは、メイド服を身に纏った俺の担当ウマ娘たちだった。
「じゃーん! どう? トレーナー! 可愛いでしょ!?」
「ト、トレーナーさん……おれ、似合ってますか、ね……?」
「……え、なにこれ?」
「何って、トレーナーさん専用のメイドですよ? さぁ、トレーナーさん……いえ、ご主人様♪ こちらへどうぞ♪」
にこやかに微笑みながら、アルダンがソファへと誘導してくる。
いやごめん。マジで脳が理解に追いつかない。
困惑している俺に、ケイちゃんがそっと耳打ちしてきた。
「実は、おれたちのクラスの出し物が飲食系なんですよ。しかも全員。それで、接客の練習も兼ねて、トレーナーさんに評価してもらおうと思ったんです」
「いや、別にメイド服を着る必要ないよね? まさか全員メイド喫茶やるの? 学園で同じ出し物とかセンス無さすぎじゃね??」
「あっ、いえ……メイド服を着ている理由は、その……」
少し恥ずかしそうにごにょごにょと呟くケイちゃん。
そこへテイオーが割り込んできて、俺に指を突きつけた。
「それはね! 最近トレーナーがあのえっちなパチンコ打ってるからだよっ!!」
「……???」
一瞬わからなかったが、すぐに思い当たる。
「あぁ、女神のカフェテラスのことね」
するとテイオーは、口元を押さえてニヤリと笑った。
「にししっ! それにしてもトレーナーがメイド好きだったなんてね〜。やっぱむっつりだよね、トレーナー! 前々から、ボクの脚マッサージしてる時の視線、いやらしいと思ってたんだ!」
「??? ちゃんと視なきゃ分かんねぇだろ」
「またまた〜♪ とぼけちゃってさ〜♪」
「ト、トレーナーさんは……おれの脚にも、興味あるん、ですか……?」
うりうりと肘で突いてくるテイオーに若干イラつきつつ、顔を赤くしてこちらをチラチラ見てくるケイちゃんに、今度は別の意味で困惑する。
するとアルダンが、どこからか運んできた巨大なホールケーキを、俺の目の前にどんと置いた。
「お待たせいたしました、ご主人様♪ こちら、当店特製『愛情たっぷりラブ&ベリー 担当ウマ娘からの愛を込めて♡』でございます♪」
「いやデケェよ。1人じゃ食いきれねぇよ。てか“愛情”と“ラブ”被ってるし多すぎだろ。胃もたれするわ」
「これでも頑張って抑えた方なんですよ? 最初に作った時は、トレーナー室に入りきらなかったんですから」
「うーん、愛が重馬場」
そう言って、アルダンはフォークを差し出してきた。
まぁ、せっかく作ってくれたんだし、食べないわけにはいかないだろう。
そう思い、ケーキに手を伸ばした———その瞬間。
アルダンの豊満な胸が、『愛情たっぷりラブ&ベリー 担当ウマ娘からの愛を込めて♡』を押し潰した———
世界が、スローになる。
圧倒的な質量に押し潰されたクリームが、シャワーのように俺へ降りかかる。
いちごやキウイ、オレンジが、べちゃりと頬や額に張り付く。
スポンジはクリームと共に、トレーナー室のあちこちに飛び散っていた。
まるで、進撃の巨人第1話でカルラが巨人に喰われた時のように。
そして、クリームにまみれたジャグラーのピエロは、まるで鮮血を浴びた殺人ピエロのようだった。
その日、
「超胸乗せ4500です♪」
「———は?」
すると、テイオーが俺の膝へと飛び乗ってきた。
「どーん! 超尻乗せ4500だよっ!」
「———は?」
さらに、背後からケイちゃんがふぅーと息を吹きかけてくる。
「ふっ、ふぅ〜……/// 吐息エアー発生です……///」
「———は?」
脳が理解を拒む。
拒んでいるのだが———これだけは、言わなければならない。
「アルダン、テイオー……」
「はいっ、ご主人様♪」
「なーに? ご主人様?」
「そこに正座」
食べ物を粗末にするの、ダメ、ぜったい。
あ、当然ケイちゃんは別だ。
きっと無理やりやらされてるんだろうし、俺に直接害を与えたわけでもないからね。
【おまけ : ありえたかもしれない世界線】
「やぁ、トレーナーくん♪」
「っっっ!?!? す、すすすすすすすスーちゃん!?!? な、なんでそんな格好……!?」
「何でって……キミが喜ぶと思ったからさ。どうだい? 似合っているかい?」
「えっ、あっ、いやっ!? えっと、その……!?!?」
「……どうして“俺”から目を逸らすんだい?」
「ち、近っ……!?」
「———今は“俺”だけを見てくれよ」
「ンひィ!?………」パタンキュー
パチンカスの秘密①
・ケイエスミラクルには甘い
パチンカスの秘密②
・幼馴染にはめちゃくちゃ弱い