「トレーナーさんは、タバコは吸わないのですか?」
トレーナー室で仕事をしていると、アルダンがふと問いかけてきた。
なんの話だ? と首を傾げていると、アルダンは続ける。
「パチンコをする人って、基本的にタバコを吸うイメージがあるじゃないですか?」
「あー、なるほどね……確かにパチンカスって吸うやつ多いよな。でも、俺は吸わんよ」
「理由をお聞きしても?」
「だって、健康に悪いじゃん」
そう。
超絶良い子ちゃんの俺は、健康のためにタバコを吸わないのだ。
「それに、これでもお前たちウマ娘を担当するトレーナーだ。匂いでコンディション下げられたら、たまったもんじゃねぇよ」
するとアルダンは、ぱぁっと目を輝かせて手を合わせた。
「私のことを想ってのことなんですね♪♪」
「いや、お前だけじゃなくて……あーもう、めんどくさいからそれでいいよ」
キャッキャと体を弾ませるアルダンに、弁明するのが面倒になり、俺は椅子の背もたれに体を預けた。
「あー、あと酒も飲まねぇな」
「そうなんですか? 他のトレーナーさんとよく飲みに行かれていますけど、その時も?」
「基本飲まねぇな。俺、あの酔う感覚が好きじゃないんだよ。ふわふわして、頭回らなくなる感じが」
「それが楽しいってよく聞きますけど、違うんですか?」
「俺の場合はな。酔って何しでかすか分かったもんじゃねぇし」
「お酒は飲まない、タバコも吸わない……でも……」
「パチンコはする(鋼の意志)」
三大クズ要素の中で、一番ダメなやつに手を出している自覚はある。
それでも脳が、体がパチンコを求めてくるんだ。仕方ないね。
「ふふっ、トレーナーさんらしいです」
でも、こんな俺でも受け入れてくれる人がいる。
その事実がどれだけありがたいか、もっと噛み締めるべきなんだろう。
そう、改めて思った。
「でも、お酒は人の本性を表すって言いますし……私、トレーナーさんの酔った姿、見てみたいです♪」
「本性も何も、これが素だと思うけどな……まぁいいや。アルダンが———お前らが酒飲める歳になったら、一緒に飲んでやるよ」
「約束、ですよ♪」
そう言ってアルダンは小指を差し出してくる。いわゆる、ゆびきりげんまんだ。
「分かった、約束だ」
俺も小指を差し出し、絡める。
アルダンは優しく、けれど逃がさないようにぎゅっと力を込めた。
「ゆびきりげんまん♪ 嘘ついたら借金倍額に増〜やす♪ 指切った♪」
「こわっ!? 針千本より怖ぇよ!!」
「ふふっ♪ では、約束を守ってくださいね♪」
どこか圧のある笑みを浮かべて、アルダンは微笑んだ。
これは、早く借金を返さないといけないな———と、俺は改めて決意した。
「それにしても、“酒は人の本性を表す”か……確かにその通りだったな」
「?? 何か思い当たる節が?」
「いや、昔の話だよ。酔うと酷ぇことする人、何人も見てきたからさ。それ思い出しただけ」
「そうなんですね……でも安心してください♪ 私はそんなことしませんので♪」
「そうだな……なんか俺も、お前たちと飲むの楽しみになってきたよ」
「あと3年ですね♪」
その時を待ちわびるように、アルダンは微笑んだ。
「あー……そうか。タバコを吸いたくねぇ理由も、あの時の“根性焼き”があったからかもな……」
「根性……??」
「あぁいや、大した話じゃねぇよ。こっちの話」
「???」
昔を思い出してつい口にしてしまったが、アルダンは知らない様子だ。
知る必要もないし、知ってほしくもない。
だから俺は、それ以上追及されないよう適当に流した。
———だが。
この一言が、思わぬ騒動を招くことになるとは、この時の俺は知る由もなかった。
【次の日】
「おっはよー! トレーナー!」
「おはようございます、トレーナーさん」
いつものようにトレーナー室へ入ってきたテイオーとケイエス。
だが、そこで彼女たちが目にした光景は———
「あぁ!?!? た、助けてテイオー!! ケイちゃん!! アルダンを止めてくれぇぇぇぇぇぇ!?!?!」
「トレーナーさんっ!! 早くっ!! 服を脱いでくださいっ!!!!」
アルダンに身包みを剥がされているトレーナーの姿だった。
「えぇ……」
「ト、トレーナーさん!? アルダンと一体何をっ!?!?」
「説明は後でするから!! 早く助けてぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「ここも大丈夫……次っ!! スラックスですっ!!」
「だから無いって!!!! 根性焼きの跡なんてどこにも無ぇから!!!! もう昔の話だから!!!!」
「根性……」
「焼き……??」
「あっ、テイオー! ケイちゃん! 早くアルダンを———って、なんでそんな怖い顔してんだ……? な、なんでお前らまでパンツに手を……あっ、ちょ、おまっ……アッ」
「アアアアアアアアアアアアッッッッッッッッッ!!!!!!!!!」
【悲報】: ネタが尽きてきた
気分転換に外伝として他のウマ娘の話でも書いて良いすかね??
(書けるとは言っていない)