幼い頃から、両親に連れられて様々なパーティへ足を運んでいた。
シンボリ家という名門に生まれた以上、それは避けられないことだったのだろう。
自分の名を売るために、幼い俺へ媚びへつらう大人たち。
周囲へ優越感を誇示するためだけに、薄汚れた本心を隠しながら近づいてくる子供たち。
幼いながらも、この世界の窮屈さを知ってしまった俺は——次第に、この目に映る全てをつまらなく感じるようになっていた。
——あの日までは。
「わぁ!? キミ、すっごく速いんだねっ!! それに、他の子と比べてもパワーもスタミナも全然違うっ!!」
それまで俺に近づいてきた人たちとは、まるで違う男の子だった。
整えられていない髪。
どこかサイズの合っていない安物のスーツ。
明らかに、この華やかな会場には似つかわしくない格好。
それなのに——その少年は、真っ直ぐに俺の元へやってきた。
「僕、いろんなウマ娘を
場違いなはずなのに。
その瞳は、誰よりも輝いていて。
誰よりも、優しかった。
「僕の名前はハル!! キミの名前は?」
——その瞳に、俺は焼かれてしまった。
「……スピードシンボリ」
名前を告げると、ハルはぱあっと顔を輝かせた。
「じゃあ、スーちゃんだね!! よろしくね、スーちゃん!!」
そう言って、彼は俺の手を握る。
灰色に染まりかけていた世界へ——初めて、光が差し込んだ。
あの日以降、俺はハルと再会することはなかった。
両親に尋ねても、“ハル”という少年に心当たりはないと言う。
苗字さえ分かれば調べようもある——そう言われたが、俺はハルの苗字を聞いていなかった。
俺は家の者たちに、ハルという少年を探すよう命じた。だが、どれだけ時間が経っても、彼を見つけ出すことはできなかった。
——それから、三年後。
“神の眼を持つ神童”。
そんな少年の噂が、俺の耳に届いた。
所詮は根拠のない噂話。
それでも、俺の直感は確信していた。
——ハルだ、と。
俺はすぐに噂の出所を調べ、その少年が通っている学校を突き止めた。
『秋川ハル』。
その名前と写真を見た瞬間、俺は確信する。
間違いない。
この少年は、あの時のハルだと。
俺は両親に無理を言い、ハルの通う学校へ転入させてもらった。
当然、最初は猛反対された。
けれど、“運命の人なんだ”と説得を続け——どうにか了承を得たのだ。
秋川ハル。
調べた限りでは、成績優秀。
家族関係も友人関係も良好。
誰もが羨むような、理想的な少年。
——だが。
実際にハルを目にした瞬間、俺は理解した。
その情報全てが、上辺だけのものだったのだと。
校舎裏には、十数人もの生徒が倒れていた。
呻き声。
血の匂い。
崩れた地面。
そして、その中心で——ハルは、生徒を殴り続けていた。
「っ……!!」
俺は息を呑む。
恐ろしかったわけではない。
あの優しかったハルが。
誰よりも輝いていた、あの瞳が。
灰色に染まっていた。
もう、あの頃のハルはいないのかもしれない。
一瞬だけ、そんな考えが脳裏をよぎる。
——けれど。
俺は理解した。
拳を振るうハルの瞳の奥にある感情を。
今のハルは——かつての私と同じなのだと。
「そんなことをしても、何も変わらないんじゃないかい?」
「——誰だよ、お前」
俺は歩き出す。
あの日、ハルが俺に近づいてきた時のように。
「綺麗に急所だけを外している。……流石だね」
「だから、誰だって聞いてんだろ……見せもんじゃねぇぞ」
ハルは低い声で吐き捨てる。
鋭い視線。
敵意。
拒絶。
それでも、俺は止まらない。
「けれど、君の力は——こんな風に使うものじゃない」
「………」
ついに、ハルの目の前まで辿り着く。
鋭い眼光が、真っ直ぐ俺を射抜いた。
今にも殴りかかってきそうなほど危ういのに——不思議と、恐怖はなかった。
むしろ。
助けを求めているように見えた。
だから俺は、手を差し伸べる。
あの日、ハルが俺にしてくれたように。
今度は——俺が、ハルを救う番だから。
「その力——俺のために使ってくれないかい?」
超雑だけどスーちゃんの過去話書くっていうノルマ達成したし、んじゃ俺は外伝に戻るから。
あとはよろしく。
貴様ァァァ!! 逃げるなァァァ!!
責任から逃げるなァァァァァァ!!!
いや竈門炭治郎!?!?