【未完】そのトレーナー、パチンカスにつき   作:ぽこちー

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新時代の扉を再度視聴したので初投稿です。



【外伝】貴方に届ける“キセキ”

 

 

 踏み込むたび、左脚に鋭い痛みが走る。

 じわじわと熱が広がり、走るなと全身が訴えてくる。

 

 痛い。

 痛い。

 痛い。

 

 それでも。

 

 それ以上に、辛い。

 

 この怪我で、皐月賞は出られなくなった。

 もしかしたら——日本ダービーも。

 

 日本ダービー。

 私を育ててくれた、ナベさんの夢。

 

 それを叶えられないことが、何よりも辛いのだ。

 

 

「おーい。なーにボーッとしてんだー? そんなんじゃダービー、間に合わねぇぞー」

 

 

 気の抜けた声が響く。

 

 顔を上げると、耳をほじりながらスマホゲームに興じる男の姿があった。

 

 

「くそっ……また最低保証かよ。もう天井じゃねぇか……確率どうなってんだよ……!」

 

 

 大きくため息をつき、スマホをしまう。

 

 ポケットに手を突っ込みながら近づいてきた彼は、私の左脚に目を落とし、そっと触れた。

 

 そのまま軽く揉みほぐしながら、ぶっきらぼうに言う。

 

 

「痛えだろうが、我慢しろ。これ越えなきゃ、ジジイの夢は叶わねぇぞ」

 

 

 顎で「動かせ」と促される。

 

 

「……? 痛みが……」

 

 

「治ってねぇよ。誤魔化しただけだ。ったく、痛えなら言え。俺はともかく、ジジイには伝わんねぇぞ」

 

 

 彼は私の背中をパシッと叩き、再びスマホに目を落とす。

 

 私は走り出した。

 

 ——痛くない。

 

 脚が軽い。

 一歩踏み出すたび、もっと走れと体が叫ぶ。

 

 速く。

 もっと速く。

 

 スピードの領域へ踏み込もうとした、その瞬間——

 

 パンッ!!

 

 乾いた音が響き、意識が引き戻される。

 ゆっくりと減速する。

 アドレナリンが切れ、疲労とともに、左脚に鈍い痛みが戻ってきた。

 

 

「乗り越えろとは言ったが、無理しろとは言ってねぇだろ、バーカ」

 

 

「あいたっ」

 

 

 デコピンが額に弾ける。

 そのまま彼は、私を軽々と抱き上げた。

 

 

「ちょ、ちょっと!? 他に方法はないのかい!?」

 

 

 いわゆる、お姫様抱っこ。

 高校生になってこれはさすがに恥ずかしい。

 だが彼は面倒くさそうに吐き捨てる。

 

 

「これが一番早ぇんだ。文句言うな。そもそも無理したお前が悪い」

 

 

 私はベンチに下ろされ、再び脚に手が添えられる。

 丁寧で、無駄のない動きだった。

 

 

「……随分手慣れているね。何か資格でも?」

 

 

「ジジイに叩き込まれた。『そんな眼を持っててゲーム三昧とは何事だ』ってな」

 

 

「……ふふっ、ナベさんらしいね」

 

 

 思わず笑みがこぼれる。

 だがその後、彼は何も言わず、ただ脚に集中している。

 早朝の静かなグラウンドに、二人分の呼吸だけが響いていた。

 

 

「……どうして、ハルさんはトレーナーに?」

 

 

 私は沈黙に耐えきれず、問いかけた。

 

 

「トレーナーになった覚えはねぇよ」

 

 

「じゃあ、どうして私を見てくれるの?」

 

 

 彼は一瞬だけ手を止めた。

 そして、ぽつりと呟いた。

 

 

「……恩返しだ」

 

 

「恩返し?」

 

 

「俺の親は、俺がガキの頃に事故で死んだ。そのせいで俺は親戚の家をたらい回し。さらにこの眼のせいで良くは扱われなくてな。俺は日が経つにつれて、やつれていくだけだった」

 

 

 淡々とした声。

 けれど、わずかに滲む影。

 

 

「そんな時、ジジイが俺を拾ってくれたんだ」

 

 

 彼の手が止まる。

 

 

「ジジイは俺の眼ではなく、俺自身を見てくれたんだ。母さんや父さんと同じように。……それが、何よりも嬉しかったんだ」

 

 

 そして彼は、私の目を見て言った。

 

 

「だからだよ。“神の眼を持つ神童”ではなく、“()()()()”として扱ってくれたジジイへの恩返し。だから、俺はこうやってお前の面倒を見てる。お前と同じ、ジジイの夢を叶えるために、な」

 

 

「——っ」

 

 

 優しい顔だった。

 今まで見たどの表情よりも、優しく、幸せそうな顔。

 そんな彼に、私は思わず見惚れてしまっていた。

 

 

「……らしくねぇな」

 

 

 そう呟き、彼は立ち上がる。

 気づけば、脚な痛みは消えていた。

 

 

「朝練はこれで終わり。さっさと帰ってシャワー浴びて、学校行け」

 

 

 背を向ける彼に、私は思わず叫んだ。

 

 

「私もっ……!!」

 

 

「あん?」

 

 

 言葉が止まらない。

 でも、それでいいと思った。

 

 

「私も……ナベさんに恩返しがしたい! そして——母のように、夢を届ける存在になりたいっ!!」

 

 

 自分でも何を言っているのだろう、と思う。

 だけど、本心を語ってくれた彼に対し、私も本心を語らなければならない。

 そう思ったのだ。

 

 

「わぷっ」

 

 

 すると、タオルが顔に被さった。

 彼の匂いが、ふわりと広がる。

 

 

「だったら、さっさとその怪我治して日本ダービーで勝利をもぎ取って来い」

 

 

 そう言って、彼は私に笑みを向けた。

 

 トクン、と胸が鳴る。

 じわりと体が熱を帯び、鼓動が速くなる。

 けれど、不思議と嫌な感覚ではない。

 むしろ、心地よさが広がっていく。

 

 そっか。

 この感覚は、きっと———

 

 

「ほら帰るぞ……って、お前なんで手広げてんだ?」

 

 

「あーあー、怪我で歩けないなぁ。()()()()()さん、さっきみたいに運んでくれないかい? 寮まで♪」

 

 

「はぁ? そんな嘘、俺の眼で見ればバレバレだ……って、何? トレーナー?」

 

 

「うん、そうだよ♪」

 

 

「誰が?」

 

 

「ハルさんさ♪」

 

 

「……はぁ。俺はジジイのためにやってるだけで——」

 

 

「——ならさ、見ててよ」

 

 

 舞台でスポットライトを浴びるように、くるりと回り——私は手を差し出した。

 

 

 

 

「誰もが見惚れるたくさんの“キセキ”を、キミに届けてあげるから♪」

 

 

 

 

 





フジキセキも推しです。
パーマーもスティルもシーザリオもラヴズも推しです。
あかん、これじゃ(性癖バレて)患者()が死ぬゥ!!

ナベさんに拾われたパチンカスは、パチンカスではなく課金カスへと進化するようです。
イーブイかよこいつ。

ちなみにこのあと、
・フジキセキ√
・ジャングルポケット√
・ダンツフレーム√
・アグネスタキオン√
・マンハッタンカフェ√
の5ルートに分岐するらしいっすよ??


【追記】
フジキセキの小説書いたから、今ガチャ引けば新衣装フジ出んじゃね??
と思って引いたら20連で引けました。
やったぜ。
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