【未完】そのトレーナー、パチンカスにつき   作:ぽこちー

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人生何事も1/2

 

 トレセン学園には、多くのウマ娘が在籍している。朝露の残るトラックを駆ける者、夕焼けの中で息を切らす者。それぞれが、それぞれの夢を胸に抱き、その実現に向けて日々を積み重ねている。

 

 そんなウマ娘を支え、二人三脚で成長していくのがトレーナーの仕事だ。

 

 勝つために、トレーナーと共に成長していくウマ娘。

 勝たせるために、ウマ娘と共に成長していくトレーナー。

 

 本来、両者は表裏一体の存在であるはずだった。

 

 だが、現実はそう単純じゃない。

 

 ウマ娘は、自分を勝たせてくれるトレーナーを探す。

 トレーナーは、できるだけ確実に勝たせてくれるウマ娘を探す。

 

 名家出身のウマ娘が、実績もないひよっこトレーナーを選ぶことは稀だ。

 数々の名ウマ娘を育ててきたエリートが、才能の乏しいウマ娘に目を向けることも少ない。

 

 結局のところ、ウマ娘もトレーナーも人間なのだ。

 

 自分の未来を守るため、より確実な選択を取る。

 理想よりも、結果を優先してしまう。

 

 そして、その現実の中で、俺の「ステータスが見える」という能力は、あまりにも便利すぎた。

 

 数値として示される才能。

 伸び代。限界。適性。

 

 今は低くとも大きく伸びるウマ娘も、逆に完成されているがゆえに頭打ちの近いウマ娘も、すべてが、一目で分かる。

 

 ……いや、()()()()()()()

 

 私利私欲に塗れたトレーナーからすれば、喉から手が出るほど欲しい力だろう。

 

 だが、俺にとっては違った。

 

 確かに、自分の指導によってウマ娘の数値が伸びていく様子を“目で確認できる”のは助かる。手応えが、曖昧な感覚ではなく、確かな事実として積み上がる。

 

 けれど。

 

 どれだけトレーニングを重ねても、伸びないウマ娘がいる。

 

 それは俺の指導が未熟な場合もある。だが、それ以上に多いのは、そのウマ娘の才能が、すでに限界へと到達しているケースだった。

 

 どれだけ努力しても。

 どれだけ願っても。

 

 上限に触れた数値は、それ以上、決して伸びない。

 

 その事実を知りながら、なお「大丈夫だ」と言って導き続けることの残酷さを、きっと理解できるのは、俺だけだ。

 

 さらに俺には、失敗率やケガの確率までも見えてしまう。

 

 たとえば、ケガ率50%。

 

 それは単なる数字じゃない。

 1/2で未来が断たれる、という宣告だ。

 

 一度の故障で、二度とレースに戻れなくなる可能性だってある。夢を失わせる確率を前にして、トレーナーとして選ぶべき道は明白だった。

 

 だが、追い詰められたウマ娘は止まらない。

 後がないトレーナーもまた、数字よりも“今”に縋る。

 

 俺の制止を振り切り、無理なトレーニングを強行する。

 

 その先に何があるかなんて、考えるまでもない。

 

 見えすぎる、というのは残酷だ。

 

 数字に縛られ、確率に縛られ、やがては自分自身に縛られていく。

 

 気づけば、心は少しずつ削れていた。

 消耗していくのは、時間の問題だった。

 

 そんな俺を見かねて、先輩や同期のトレーナーたちは、半ば強引に“外の世界”へ連れ出してくれた。

 

 行列のできる美味い店。

 言葉を失うほどの絶景。

 胸が熱くなる名レースの映像。

 

 数字では測れないものを、次々と見せてくれた。

 

 この“眼”に閉じこもっていた俺に、別の世界があるのだと教えてくれた。

 

 本当に、恵まれていたのだと思う。

 

 あいつらがいなければ、俺はとっくに壊れていた。

 

 だから今、こうして立っていられる。

 

 

「正直、あんまり勧められることじゃないんだが……お前は頭が硬すぎる部分があるからな。たまには良いだろう。ストレスの発散だ。ついてこい。俺がこの世の全てを教えてやる」

 

 

 ゴールド・ロジャーみてぇなセリフと共に、先輩は俺に新たな扉を開かせてくれた。

 

 先輩がその扉を引いた瞬間、静まり返っていた世界が音を取り戻す。

 

 澄んでいた嗅覚に、刺激的な匂いを届けてくれる。

 

 世界が。

 

 全てが。

 

 新たな色に塗り替えられていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『リーーーーチ♪♪』デレレレデレレー

 

 

『ATフィールド全開!!』キュイーン!!

 

 

『さらば! 最大の強敵よ! 拳に込めろ!』ブルブルブルブルブルッッ!!

 

 

『僕は……喰種だ』テレレレー♪テレーレレーレーレー♪

 

 

『貴様の陰我、俺たちが断ち切る!!』テレレレレレー<コングラッチュレーションズ!!

 

 

『さぁ、かなえてよっ! インキュベーター!!』キュイーン!!<コレガワタシノイノリ、ワタシノネガイ!!

 

 

『これが私の、全力だあああああああああ!!!!』キュイイイイン!!

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、新たな俺(パチンカス)が生まれた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「ねぇトレーナー! 常識的に考えて、1/399を当てるのは無理だよっ! この前だって2000回転ハマったって言ってたじゃん!」

 

 

「いいか、テイオー。人生何事も1/2だ。レースに勝つか負けるかも1/2。生きるか死ぬかも1/2。全ては1/2に支配されてるんだ。だから、1/169だろうが、1/259だろうが、1/319だろうが、1/399だろうが、1/539だろうが———結局は1/2なんだよッ!!!!」

 

 

「……ボクたちウマ娘が怪我をする確率も1/2ってこと?」

 

 

「バーカ言ってんじゃねぇよこのすっとこどっこい!! 怪我をする確率が1%でもあるならトレーニングやめて休養すんだよッッッ!!」

 

 

「……これからトレーナーが打ちに行こうとしてる台は?」

 

 

「eとある魔術の禁書目録 一方通行」

 

 

「……図柄揃い確率は?」

 

 

「1/349って表記あるけど、実質1/539」

 

 

「……無理じゃない?」

 

 

「無理じゃねぇ!! 当たるか当たらないかの1/2だッッッ!! そして俺は絶対勝つから確率は1/1!! つまり100%ォォォ!!!!」

 

 

「ワケワカンナイヨォー!! それに、一方通行打つなら絶対喰種のほうがいいよっ!!」

 

 

「こっから先は、一方通行だァァァ!!!!」

 

 

「ああっ、待って!! 待ってよトレーナー!! かむばーーーーーっく!!!!」

 

 

 

 その日俺は、80k負けた。

 

 もうパチンコにはいかない。

 

 そう、心に強く刻み込みながら、電車の中で777Realをやりながら帰った。

 

 そして、決心した。

 

 

 

 

 

 

「そうだ、明日は餓狼を打とう。」

 

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