二人は超問題児?(もしよう実世界に「九条の大罪」悪徳弁護士と半グレが入り込んだら〜)   作:きんぴら大根

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法曹エリート一家の次男である九条間人、そして幼馴染である壬生憲剛、彼らは奇しくも東京都高度育成高等学校に入学することとなり、二人は別々のクラスながら、実力主義たるこの学校のシステムへと深く入り込んでいく・・・
(物語の都合上、九条は壬生と幼馴染で、九条を法曹一家出身で法律知識が豊富なことから「先生」と、九条は「壬生くん」と呼び合う仲であることとします。原作でいえば鞍馬が本名ですが、分かりやすく九条としました。時系列は一巻から、アンチ・ヘイトタグは保険です。)


「実力主義」の世界へ・・・

春の陽射しが眩しい四月。高度育成高等学校の入学式が終わったばかりの校門前は、新入生たちで賑わっていた。

俺、綾小路清隆は、Dクラスの集合場所に向かいながら、周囲をぼんやりと見回していた。特別な感情は特にない。ただ、今日からここで三年間を過ごす。それだけだ。

隣を歩く堀北鈴音が、いつものように冷めた目で前を向いている。軽井沢恵や須藤健、平田洋介たちも、それぞれのペースで校舎へ向かっていた。誰もが少し緊張した面持ちだ。

その中に、一人の男子生徒がいた。

九条間人(くじょう たいざ)。同じDクラスに配属された、鼻炎テープを貼っている以外に特徴のない、目立たない存在。黒髪を少し長めに伸ばし、制服の着こなしも少し着崩しているもごく普通。表情は穏やかで、どこか大人びた落ち着きがあるが、積極的に誰かと話す様子もない。入学式の自己紹介でも、ただ「よろしくお願いします」と短く済ませ、すぐに席に戻っていた。

俺と同じように、彼もまた、目立たないよう心がけているように見えた。少なくとも、入学初日ではそう感じた。

九条は人混みの中で静かに歩き、クラスメイトの誰かと目を合わせることもなく、Dクラスの教室に入っていった。席は窓側の中ほど。座ると、すぐに窓の外に視線を移し、何かを考えている風だった。

 

一方——。

同じ頃、Cクラスの教室では、少し違う空気が流れ始めていた。

壬生憲剛(みぶ けんご)。こちらも新入生としてCクラスに配属された男。背が高く、肩幅がしっかりしていて、制服の上からでも鍛えられた体躯がわかる。短めの髪に、鋭い目つき。笑みを浮かべているのに、どこか底知れぬものを感じさせる。

入学早々、彼はクラス内で存在感を放ち始めていた。

 

「よお、龍園。お前がこのクラスのボス気取りか?」

 

壬生は、すでにCクラス内で一目置かれつつある龍園翔を真正面から見据え、軽い口調で言った。声は低く、落ち着いているが、挑発的な響きが混じっている。

龍園は椅子にふんぞり返ったまま、ニヤリと笑った。

 

「は? いきなり何言ってんだよ、壬生」

 

教室の空気が一瞬で張りつめた。Cクラスの生徒たちが、二人を交互に見つめる。

壬生は肩をすくめ、穏やかに続けた。

 

「別にボス争いしたいわけじゃない。ただ、俺は俺のやり方でクラスを動かしたいと思ってな。邪魔なら、早めに潰し合うか?」

 

龍園の目が細くなる。入学初日から、Cクラス内に明確な対立の火種が生まれていた。

——九条と壬生は、以前からの知り合いだった。

しかし、今の時点では、二人は別々のクラスで、別々の時間を過ごしている。九条はDクラスで静かに周囲を観察し、壬生はCクラスで龍園と早くも睨み合いを始めていた。

九条は教室の席で、ふと遠くを見るような目をした。

壬生は龍園の前で、余裕の笑みを浮かべたまま。

この高度育成高等学校で、二人の因縁が、再び動き始めることになるなんて——まだ、誰も知らなかった。

 

入学式の翌日、昼休み。

 

九条間人は、Dクラスの教室で一人、弁当を食べ終わったあと、なんとなく校舎を散策していた。まだこの学校の地理に慣れていない。とりあえず上の方へ行ってみようかと階段を上っていると、非常階段の踊り場で、聞き覚えのある声がした。

 

「……先生?」

 

九条が振り向くと、そこに壬生憲剛が立っていた。Cクラスの制服を着た長身の幼馴染は、少し驚いた顔をしていたが、すぐにいつもの薄い笑みを浮かべた。

 

「壬生くん……ここで会うとは奇遇ですね」

 

「俺も今、上の階を探検してたところだ。まさか先生がこんなところでうろうろしてるなんて」

 

二人は自然と足を合わせて、さらに上の階へ向かった。誰にも見られないよう、非常階段を一つ上がり、屋上への扉をそっと押し開ける。

 

屋上は意外と広く、フェンスの向こうに青い空が広がっていた。風が少し強く、制服の裾を揺らす。昼休みとはいえ、誰も来ていないようだった。

 

二人はフェンス際に並んで立ち、しばらく無言で校庭を見下ろした。

 

やがて、壬生が小さく吹き出して、軽い調子で言った。

 

「はっ……俺がCクラスで、先生がDクラスか。何かの冗談じゃないか?」

 

九条は隣で肩をすくめ、いつもの穏やかな笑みを浮かべた。

 

「本当にね。まさか同じ学校に入って、クラスまで別々になるなんて。運が悪いのか、いいのか、微妙なところだよ、壬生くん」

 

壬生はフェンスに両肘をつき、遠くのグラウンドを眺めながら続けた。

 

「先生の家が法曹エリート一家だってのに、Dクラスとか笑えるだろ。俺なんか、ただのガラの悪い奴らに囲まれてるだけなのに」

 

「君の方こそ、入学してまだ一日も経ってないのに、すでに龍園って奴と睨み合ってるみたいじゃないか。昨日、廊下でちょっと見えたよ」

 

九条の言葉に、壬生は鼻で軽く笑った。

 

「ああ、あの短気な奴か。Cクラスは俺がまとめる、とか偉そうに言ってきてさ。俺が黙って下につくわけないだろ」

 

「相変わらずだね、壬生くんは。昔から喧嘩っ早いところは変わらない」

 

「先生こそ、相変わらず目立たないようにしてるみたいじゃないか。Dクラスで地味に溶け込んでる姿、想像つくな」

 

九条は軽く手を振って否定した。

 

「まあ、目立つ必要はないからね。ここがどういう学校なのか、まだよくわからないし……とりあえず様子見だよ」

 

風が二人の間を通り抜ける。屋上には他に誰もおらず、幼馴染同士だけが、久しぶりの再会を静かに味わっていた。

 

壬生が少し声を落として、横目で九条を見た。

 

「……でもさ、先生がここにいるってことは、何か面白いことになりそうだな。俺が面倒ごと抱えたら、また『先生』って呼んでいいか?」

 

九条は空を見上げて、小さく息を吐いた。

 

「勘弁してよ、まだ何も分かってないのに。というかもう面倒ごと起こそうとしてるでしょ、気が早いなあ」

 

二人は顔を見合わせて、くすっと笑った。

 

まだこの高度育成高等学校がどんなルールで動いているのか、二人は知らない。

ただ、Dクラスの地味な生徒と、Cクラスで早くも波を起こしそうな危険な幼馴染が、こうして屋上でこっそり繋がっているという事実だけが、今のところ確かだった。

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