二人は超問題児?(もしよう実世界に「九条の大罪」悪徳弁護士と半グレが入り込んだら〜)   作:きんぴら大根

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タイトルの通りです


スマブラタイム(干支試験編2)

辰グループの会議室は、2日目の議論タイムが始まると一気に緊張した空気に包まれた。

九条間人は隅の席に座り、穏やかな表情を保ちながら室内を静かに見回していた。しかし内心では、予想外の面子に軽い気まずさと呆れを覚えていた。

 

(……神崎くんも、この辰グループだったな)

 

Bクラスの神崎隆二が、腕を組んで壁際に立っている。取引の件が尾を引いてるためか、九条と目が合うと、神崎はわずかに眉を寄せ、視線を逸らした。

さらに、視線を移すと——Aクラスの葛城康平の姿もあった。

 

(葛城まで……)

 

九条は内心で小さく舌打ちした。

 

(龍園、堀北、神崎、葛城……キャラ濃すぎだろ、このグループ)

 

取引相手である神崎と葛城が同じグループにいる上に、最大の警戒対象である龍園と堀北まで揃っている。九条にとって、この組み合わせは正直なところ最悪に近かった。

 

(この面子でずっと過ごすことになるのか……正直息が詰まるな)

 

九条がそんなことを考えていると、龍園翔が悠然と中央に歩み出た。

 

「さて、早速本題に入ろうじゃねえか」

 

龍園はニヤリと笑いながら、グループメンバーを見回す。特に堀北鈴音に視線を留め、下の名前で馴れ馴れしく声をかける。

 

「鈴音、お前はどう思う? 優待者は誰だと思うんだ?」

 

堀北は冷ややかな視線を返した。

 

「いきなり下の名前で呼ぶんじゃないと言ってるでしょう。……それより、あなたが最初に名乗り出るべきじゃないの?」

 

龍園は低く笑い、余裕たっぷりに言葉を続けた。

 

「ははっ、相変わらず口が立つな。まあいい。俺は優待者じゃねえよ。……お前はどうだ、鈴音?」

 

九条は表面上は静かにメモを取るふりをしながら、龍園の挙動を注意深く観察していた。

 

(……意外だな)

 

九条は内心で強く違和感を覚えていた。

 

(壬生くんからの情報の限り、龍園は既に優待者の法則を見破っている可能性が極めて高い。それなのに、わざわざ場を仕切って、皆の反応を探ろうとしている……。法則を見破ったなら、むしろ静かに優待者を特定し、早めに申告してポイントを独占するはずではなかったか?)

 

九条だけが、Cクラス以外で龍園が法則を見破った可能性を強く疑っていた。だからこそ、龍園が積極的に議論の主導権を握ろうとする振る舞いは、九条にとって予想外だった。

 

(心理戦を仕掛けている?それとも、まだ法則を完全に把握しきれていない?……いや、それはない。龍園はここで何を狙っている?)

 

議論が徐々に活発になる中、九条は目立たない位置から、静かにすべての動きを記録し続けていた。

 

 

 

 

 

 

議論が活発になり始めた頃、九条間人は大きな声でくしゃみをして、場の注目を集めた。

 

「へっっくしょん!!失礼、酷いアレルギー鼻炎で・・・失礼ついでに皆さんのご意向を聞きたいんですが」

 

九条の控えめな声に、グループの視線が一気に集まった。彼は少し肩をすくめ、穏やかだがはっきりとした口調で続けた。

 

「結果1を目指すなら、試験終了直前に優待者が名乗り出れば良い話なんで……ここで一々議論する意味とか、なくないですか?」

 

その発言が落ちた瞬間、会議室の空気がピンと張りつめる。

龍園翔がニヤリと笑みを深め、九条を真正面から見据えた。

 

「はっ……議論したくないってことはよぉ、お前が優待者なんじゃねえのか?なかなか面白いこと言うじゃねえか、九条」

 

九条は龍園の視線を受け止め、穏やかな笑みを崩さずに肩をすくめる。

 

「違いますよ。ただ、下手に消耗せず有意義な時間を過ごせるよう、効率的な方法を提案しただけです。……皆さんはどう思われますか?」

 

龍園の挑発的な言葉が響く中、堀北鈴音は明らかに動揺していた。

彼女は目を見開き、珍しく表情を大きく崩して九条を凝視する。いつも冷静で冷徹な堀北の瞳に、驚きと困惑がはっきりと浮かんでいる。口を少し開け、言葉を失ったような顔で九条を見つめていた。

 

「龍園くんの言う通り、僕が優待者かどうかは置いておくとして……結果1でしっかりプライベートポイントを狙うにしろ、結果2で沈黙を守り抜いて安全策を取るにしろ、今この時点でゴタゴタと議論をしてもあまり意味がないと思います」

 

九条は少し視線を下げ、控えめながらもはっきりとした口調で提案した。

 

「最後の日に皆さんの意志を確認すれば十分じゃないでしょうか? どうせこの試験は四日間ありますし……せっかく豪華客船に乗っているんですから、貴重な夏休みを少しは満喫した方が、精神衛生上も良いと思うんですけど」

 

その言葉に、グループ内が再びざわついた。

龍園は面白がるような笑みを浮かべ、九条をじっくりと観察した。

 

堀北の頭の中は混乱していた。

入学以来、目立たない位置で静かに過ごし、必要最低限のことしか話さなかった九条間人。

そんな彼が、グループ討論の序盤で積極的に意見を出し、しかも核心を突くような提案をしてきたことに、堀北は本気で驚愕していた。

 

「……九条くん?」

 

思わず小さく名前を漏らした堀北の声には、いつもの冷たさとは違う、明らかな驚きと戸惑いが混じっていた。

 

龍園は低く笑いながら九条を値踏みするように見つめ、堀北はまだ驚きの眼差しを九条に向けたまま、言葉を失っていた。

 

九条はそんな視線を浴びながらも、穏やかな笑みを崩さず、最後に少し軽い調子で付け加えた。

 

「議論タイムはルール上拘束されるということなら……ゲームでもしませんか? ちょうどモニターもありますし」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、Aクラスの葛城が重い口を開く。

 

「……ゲームなどというふざけた話はともかく、主旨は賛成だ。今この段階で無駄に情報を出し合う必要はない。最後に意志を確認すれば十分だろう」

 

葛城の落ち着いた声に、グループ内に微かな同意の空気が流れた。Bクラスの神崎隆二は腕を組んだまま、終始無言で沈黙を守っている。表情からは何を考えているのか読み取れない。

龍園は面白そうに笑っていたが、特に反論はせず、結局この回の議論タイムは早々に終了することになった。

 

 

 

 

議論タイムが解散となり、メンバーがそれぞれ会議室から出ていく中、堀北鈴音が九条の後を追うように近づいてきた。

 

「九条くん」

 

冷たい、しかし抑えた声だった。九条が振り向くと、堀北は鋭い視線で彼を睨みつけていた。

 

「勝手な真似はしないで」

 

堀北の声には明確な苛立ちと警戒が混じっていた。

 

「あなたがDクラスで何を考えているのかは知らないけれど……今の発言は目立ちすぎるわ。龍園に変な興味を持たれるだけじゃない。Dクラスの立場を考えているなら、もっと慎重に動いてちょうだい」

 

彼女の瞳には、先ほどの驚きだけでなく、明確な不信と苛立ちが浮かんでいた。いつも目立たない位置にいた九条が、急に積極的に発言したことへの強い違和感が、堀北の中で渦巻いているのが伝わってきた。

九条は穏やかな笑みを浮かべ、軽く頭を下げた。

 

「すみません、堀北さん。みんなが疲れているように見えたので、少しでも和やかにしたかっただけなんですが……気をつけます」

 

堀北は九条をもう一度鋭く見つめ、短く息を吐くと、そのまま背を向けて歩き去る。辰グループ2日目前半の議論タイムは、予想以上に波乱の予感を残して幕を閉じた。

 

 

 

 

 

議論タイムが解散となり、メンバーが会議手から散り少し経った頃、九条間人が平田洋介と並んで廊下を歩いていると、背後から柔らかな声がかけられた。

 

「九条くん、平田くん……少しだけ、いいかな?」

 

振り返ると、そこに櫛田桔梗が控えめに立っていた。いつもの明るい笑顔を浮かべているが、目は少し緊張しているように見えた。

平田が優しく微笑んだ。

 

「どうしたの、櫛田さん?」

 

櫛田は周囲を素早く確認し、声をひそめた。

 

「……実は、わたし、この辰グループの優待者なんだ」

 

九条と平田の表情が一瞬、固まった。

櫛田は少し恥ずかしそうに、しかし真剣な目で二人を見つめた。

 

「まだ誰にも言ってないの。もしバレて他の人に狙われたら怖いから……でも、九条くんも平田くんも信用できると思って。どうしようか、二人に相談したくて……」

 

平田が驚きながらもすぐに穏やかな声で答えた。

 

「櫛田さん……よく打ち明けてくれたね。ありがとう」

 

九条は一瞬驚いた顔をした後、すぐにいつもの穏やかな笑みを浮かべ、軽く頭を下げた。

 

「櫛田さん……僕からも例を言うよ、わざわざ僕たちに教えてくれて。本当に助かります」

 

彼は声をさらに低くし、真剣に続けた。

 

「優待者であることは、絶対に他のメンバーには漏らしません。僕と平田くんでしっかり守りますので、どうか安心してください。……信頼してくれて、本当にありがとう」

 

櫛田はホッとしたように微笑み、少し頰を赤らめた。

 

「うん……九条くんがさっき『最後に意志を確認すればいい』って言ってくれたから、安心して話せたよ。ありがとうね」

 

九条は柔らかく頷きながら、内心で冷静に状況を分析していた。

 

(櫛田さんが優待者か……これで法則のサンプルが手に入ったな)

 

表面上は優しい笑顔を崩さず、九条は静かに言った。

 

「これからどうするか、しっかり三人で話し合いましょう。櫛田さんの安全が最優先です」

 

三人は人目につかない場所へ移動しながら、今後の方針について話し合った。

 

 

 

 

 

 

 

干支試験2日目後半。辰グループの会議室にて2回目の議論タイム始まると、九条間人が突然、大きなバッグを抱えて現れた。

 

「皆さん、今日は少し趣向を変えませんか?」

 

バッグから取り出したのは——ゲームキューブ本体とコントローラー4つ、そして『スマブラ』のディスクだった。一瞬、会議室が皆呆気に取られたように静まり返る。

堀北鈴音は目を点にし、呆然と九条を見つめた。

 

「……九条くん? あなた、何を……?」

 

葛城も珍しく表情を崩し、眉間に深い皺を寄せた。

 

「ゲーム……? 今この状況で、そんなふざけたものを……」

 

九条は穏やかな笑顔を崩さず、コントローラーを軽く掲げた。

 

「議論ばかりで疲れてしまいますから、息抜きを兼ねてはどうかと思いまして。ルール上、特別禁止されてることでもないですし……皆さんも、少し頭を休めた方がいい判断ができると思いますよ」

 

そう言って九条はモニターに接続し、すぐにゲームを起動させた。

結局、ゲームをすることになったのは、九条、櫛田桔梗、そしてCクラスから一名、Bクラスから一名の計4人。九条は櫛田とチームを組み、対戦相手としてCクラスとBクラスの生徒を選んだ。

 

九条が軽快にコントローラーを握ると、意外にも上手い操作でフォルコを操り始め、櫛田も楽しげにゲームに熱中する。

 

堀北は腕を組んだまま、完全に呆れた顔でその光景を眺めていた。

 

(……信じられない。本気でゲームを始めている……)

 

葛城もため息をつき、額を押さえながら小さく呟いた。

 

「Dクラスは……一体何を考えているんだ?」

 

「知らないわよ、勝手に一緒にしないで」

 

一方、Bクラスの神崎隆二は壁際に立ったまま、ゲームに興じる九条の様子を鋭く観察していた。

 

(……九条。お前は何を企んでいる?このふざけた状況を作り出して、何を狙っている?ただの息抜きか? それとも、何か別の意図が……)

 

神崎の視線は、九条の指の動き、表情の変化、一切を逃さぬように注がれていた。九条が時折、楽しげに笑う顔を見ても、神崎の警戒は解けることはない。ゲームは意外と盛り上がり、辰グループの重苦しい空気が少しだけ和らいだが、それは表面上のものに過ぎなかった。

 

辰グループの議論タイムは、会議室前方ではゲームが盛り上がり、後方では龍園や葛城といったクラスのリーダー格同士が佇んでいるという、何ともカオスな「スマブラタイム」へと変わりつつあった。

 

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