二人は超問題児?(もしよう実世界に「九条の大罪」悪徳弁護士と半グレが入り込んだら〜)   作:きんぴら大根

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この主人公、さっきからずっとゲームしかしてない・・・


ゲーム大会(干支試験編4)

干支試験2日目の夜、Bクラスの休憩スペースで一之瀬帆波と神崎隆二が同じテーブルを囲んで座っていた。

一之瀬はいつもの明るい笑顔で神崎に尋ねた。

 

「神崎くん、辰グループはどう? 何か変わったことあった?」

 

神崎はため息をひとつ吐き、珍しく苛立った様子でコーヒーのカップを置いた。

 

「……最悪だ。一之瀬には言いにくいがDクラスの九条のやつ、本当にゲームを始めやがった。結果1を目指すなら今互いが不用意に情報を出し合う必要もない、結果1を目指して皆でプライベートポイントを取りに協力するにしろ、結果2で守りに徹するにしろ、今ゴタゴタ話し合ってもしょうがないから、それまではゲームして時間を潰そうってな。そしたら本当に次の議論タイムで、突然ゲームキューブを持ち出し『スマブラでもしませんか?』とか言い出しやがった。本気で呆れたよ。龍園や葛城もいる中で……正気かと思う」

 

一之瀬は目を丸くした後、ぷっと吹き出して笑った。

 

「ええっ!? 九条くんがゲーム? ふふっ……九条くんって結構面白い子なんだね。想像したらなんか可愛い」

 

神崎は眉間に深い皺を寄せ、呆れたように首を振った。

 

「笑いごとじゃないぞ、一之瀬。龍園や堀北、葛城がいる中でゲームを始めるなんて……。あの状況でよくそんなことが言えるな」

 

一之瀬はまだ笑みを残しつつ、少し真剣な顔になって言った。

 

「ゲームはともかく……話し合い自体は最後にすれば良いっていう提案の主旨は、悪くないと思うよ。早い段階で無駄に情報を出し合って、優待者の特定で消耗して、結果1への合意が遠ざかる事態を避けたいってことだよね?私達Bクラスの戦略にも合ってるんじゃないかな?」

 

神崎は深く息を吐き、苦々しい表情で言った。

 

「……そう簡単に片付けられる問題じゃないんだがな。九条のやつ、ただの馬鹿騒ぎをしてるようには見えなかった。何か計算があってやっている気がして……全く油断ならない」

 

一之瀬は楽しげに笑いながらも、神崎の真剣な表情を見て少し首を傾げる。

辰グループの異様な空気は、Bクラスにも静かに波紋を広げ始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

夜が明け干支試験3日目前半、辰グループの会議室では、九条間人がゲームキューブのコントローラーを握り、画面に集中していた。ファルコを巧みに操作しながら、櫛田とチームを組んで対戦中だ。そこへ、龍園翔が悠然と近づいてきた。

 

「おい、九条」

 

龍園が声をかけるも、九条は画面から一切目を離さず、素早く答えた。

 

「待って、ちょっと今手が離せない」

 

龍園は一瞬、面食らった表情を浮かべた。Cクラスを支配し、他クラスへも圧倒的存在感を放つ彼が、こんなふうに即座に遮られたのは初めてだったのだろう。龍園だけじゃない、堀北や神崎も含め、周囲のメンバーも驚いた様子で息を呑む。

 

「……は?」

 

龍園がわずかに声を低くすると、九条は画面に視線を固定したまま、指を素早く動かしながら続けた。

 

「すみません、龍園くん。続きはどうぞ」

 

龍園は九条をじろりと見下ろし、低く笑った。

 

「随分と余裕じゃねえか。こんな状況で飽きずにゲームなんかやって」

 

九条は依然として画面から目を離さず、コントローラーを握ったまま冷静に返した。

 

「買い被りすぎですよ。むしろ余裕なのはあなたじゃないですか?」

 

彼の指は休むことなく動き、ファルコが弱ジャンプを繰り返しながら攻撃を繰り返し、相手の復帰を妨げ残機を削る。

 

「プライベートポイント獲得と言っても、クラス全体の貢献を考えればたかが知れてます。もっとも期待値の高いのは、優待者を特定しクラスポイントを得られる結果3ですよね?そのために皆を揺さぶる訳でもなく、あっさり僕の提案に引き下がったのは、既に龍園くんにはこの試験の勝ち筋が見えてるからじゃないですか? 僕はなんとなくそれを察して、やけっぱちになってこうしてゲームしてるだけですよ」

 

龍園の笑みが一瞬、止まった。九条は最後まで画面を見つめたまま、淡々と話し終える。コントローラーのボタンを叩く音だけが、緊張した空気の中で軽やかに響いていた。周囲の空気が凍りつく中、堀北鈴音は驚きの目で九条を見つめ、神崎は無言で眉を寄せ、葛城は腕を組んで静かに二人を観察していた。特に葛城が九条の発言に対し強く反応する。

 

「九条、どういう意味だそれは?」

 

「言葉の通りですよ、今もこうしてゲームできている以上、龍園くんは既に交渉する必要がないと判断しているのかなと思っただけです」

 

龍園は低く笑い声を上げ、九条を値踏みするように見つめた。

 

「へえ……面白いこと言うじゃねえか、九条。お前、どこまで掴んでる?」

 

九条はようやく一戦が終わったタイミングでコントローラーを置き、ただ穏やかな表情で振り向いた。

 

「何となく察しただけですし、それに言ってるじゃないですか?ただのやけっぱちですよ。龍園くんが本気で楽しんでいるなら、僕も少しは楽しもうかと思いまして」

 

龍園は興味深げに九条をもう一度見つめ、ゆっくりと背を向ける。辰グループの議論タイムは、予想外の心理戦の色を帯び始めていた。

 

議論タイムが終了した後も、辰グループの会議室には重苦しい空気が残っていた。

龍園の存在感、堀北の冷たい視線、葛城の重圧、神崎の警戒——誰もが容易に立ち去れず、会議室の中で気まずく固まっている。

龍園が更に何か言い掛けたそんな中、突然会議室のドアが勢いよく開いた。

 

「よーし! 辰グループにスマブラやってるって聞いたぞ!」

 

池寛治が大声を上げて飛び込んできた。その後ろには山内春樹と外村が興奮した顔で続いている。

「マジかよ! 九条がゲームキューブ持ち込んでるって本当か!?」

 

池は迷わず九条のところへ駆け寄り、コントローラーを勝手に掴もうとした。

九条は苦笑しながらも、すでに電源を落としかけていたゲーム機を再び起動させた。

 

「ええと……まあ、せっかくだし、少しだけなら」

 

その言葉をきっかけに、事態は急変した。

 

「待て待て、俺もやる!」

 

「俺も混ぜろ!」

 

Dクラスのメンバーが次々と集まり始め、他クラスの生徒たちも「何やってんだ?」と好奇心からパラパラと会議室に入ってくる。

気づけば、辰グループの会議室は臨時のスマブラ大会会場と化していた。

画面の前に座るのは九条、池、山内、櫛田、そしてCクラスとBクラスの何人か。

龍園は「白けた」と一言吐き捨て部屋を去り、堀北は完全に呆れた顔で腕を組んでいる。葛城は「ふざけるにも程がある……」と呟き、神崎は複雑な表情で九条を観察していた。

 

「よーし、じゃあここまで人集まってきたんだしトーナメントでもやるか!」

 

池が声を上げ、笑い声とボタンを叩く音が響き、さっきまでの張り詰めた空気は完全に吹き飛んでいた。

不思議と池や九条の周りに人だかりができ、Dクラスのみならずゲームに釣られて入ってきた他のクラスの面々ともにこやかに会話を交わしている・・・

 

堀北が九条の近くを通りかかり、小声で吐き捨てた。

 

「……九条くん、あなた本当に何を考えているの?」

 

「堀北さん、今は自由時間ですよ。ただの息抜きです」

 

「息抜きってあなた、さっきからゲームしかしてないじゃない」と堀北は不快感を滲ませた声で、そう吐き捨てて会議室から出ていく。

 

辰グループの会議室は、クラス対抗の試験とは思えないほど、賑やかに、そして和やかになっていた。

しかし、その裏側では各々の思惑が静かに、しかし確実に動き続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

スマブラ大会が一段落し、辰グループのメンバーたちが徐々に散り始めた頃。

九条間人が会議室から少し離れた、船内通路の死角になっている非常階段の踊り場に移動すると、すでに神崎隆二が待っていた。

神崎は九条の姿を見るなり、素早く近づいて低く詰め寄った。

 

「一体何のつもりだ、九条」

 

神崎の声は抑えているものの、明らかに苛立ちと警戒が強く混じっていた。

 

「ゲームを持ち込んで場を和ませる? それともただの茶番か? お前が何を考えているのか、さっぱりわからん。それに龍園の前でのふざけた言動はなんだ?」

 

九条は穏やかな笑みを浮かべ、壁に軽く背を預けた。声は静かだが、はっきりとした調子で答えた。

 

「言葉通りですよ、神崎さん」

 

彼は神崎の目を真っ直ぐに見つめ、続けた。

 

「あのまま下手に優待者を探して消耗するより、安全に結果1でプライベートポイントをもらいにいく戦略を立てただけです……あと、僕の戦略はきっとBクラスの皆さんにも合うと思いますので、他のグループの方々にもぜひ展開することをオススメしますよ」

 

神崎の表情がわずかに硬くなった。

 

「……どういう意味だ?」

 

九条は小さく微笑み、声をさらに低くする。

 

「先ほど一之瀬さんの同じグループにいるDクラスの外村くんに様子を伺ったところ、彼女も結果1を目指しているみたいじゃないですか?最後の議論タイム以外は議論を封印し、それまでは余計なことは一切喋らない。結果3や4のような事態になるような抜け駆けもできないタイミングの、ギリギリになって優待者に名乗り出てもらうことを提案し、皆でプライベートポイントを獲得すればいい。もし神崎さんが真剣にBクラスを守りたいと思っているなら、僕の提案を参考にしてみる価値はあると思います」

 

奇しくも同じことを一之瀬が言っていたことを思い出し、眉間を指で押さえつつも同意する。

 

「……わかった。だが、余計な真似はするな」

 

そう言い残し、神崎は踵を返して去っていく。九条は彼の背中を見送りながら、静かに息を吐いた。

 

(神崎くん……相変わらず僕への好感度低いな。でも、これでBクラス側にも「議論は最小限に」という空気が広がれば、彼らもプライベートポイントをたくさん確保できる。ひとまずポイント還流の契約は果たせるかな)

 

非常階段の薄暗い照明の下、九条の瞳には冷たい計算が静かに浮かんでいた。

 

 

 

 

 

神崎と解散した後、九条間人がラウンジの隅で一息ついていると、堀北鈴音が鋭い視線を向けて近づいてきた。

 

「九条くん」

 

堀北の声は低く、抑えきれない苛立ちが滲んでいた。

「さっきの議論タイムでのあなたの振る舞い……一体どういうつもり? 相変わらずゲームばかりして、Dクラスの立場を考えているの? それに龍園の前でそんな茶番を演じて、何が得られるというの?」

 

堀北は腕を組み、九条を厳しく見据える。だが九条は穏やかな表情を崩さず、静かに首を振った。

 

「堀北さん……じゃあ、あのメンツで真面目に議論して切り抜けますか?」

 

彼の声は柔らかかったが、言葉には明確な棘があった。

 

「龍園だけじゃない、Aクラスリーダー格の葛城や、Bクラスの2番手の神崎もいる。そんな中で龍園の『協力』もあって、安牌である結果1を目指せるのであればそれで上々では?」

 

堀北の眉がピクリと動いた。九条は淡々と続けた。

 

「今の辰グループの空気で、まともに議論をしても龍園くんに全てを呑まれるだけだと思います。だからこそ、最も安全に切り抜けられる方法で乗り切ろうと考えてるだけですよ」

 

堀北は言葉に詰まり、九条をじっと見つめたまま何も言い返せなくなった。

その時——

 

「よう、九条」

 

背後から低い声がかけられた。

振り向くと、龍園翔がニヤリと笑って立っていた。背後には石崎や伊吹も一緒に立って、九条を睨んでいる。

 

「無人島試験について、ちょっと話がある。付き合えよ」

 

龍園の視線は九条を捉え、興味深げに細められていた。堀北はさらに表情を硬くし、九条と龍園を交互に見つめる。九条は穏やかな笑みを浮かべながら、内心で警戒を強めた。

 

(……龍園くん。タイミングが良すぎるな)

 

彼は軽く頷き、龍園に向き直った。

 

「わかりました。ただし話はここでお願いしますよ。人気があるところで話したいので」

 

 

 

 

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