二人は超問題児?(もしよう実世界に「九条の大罪」悪徳弁護士と半グレが入り込んだら〜)   作:きんぴら大根

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遊びの終わり(干支試験編5)

龍園に声をかけられた直後、堀北鈴音が素早く一歩前に出た。

 

「待って。話なら私も同席するわ。九条くんの安全のためにもね」

 

堀北の声は冷たく、九条と龍園の間に割って入るような形だった。

龍園はニヤリと笑い、堀北をからかうように言った。

 

「へえ、そんなに俺のことが気になるか? 鈴音」

 

堀北は眉を吊り上げ、即座に切り返した。

 

「勘違いしないで。九条くんがDクラスの人間だから、放っておけないだけよ」

 

龍園は低く笑いながら肩をすくめた。

 

「まあいい。来いよ」

 

龍園、堀北、そして九条の3人は休憩ラウンジの隅にあるソファ席に移動する。龍園の近くには伊吹も控えている。

龍園はソファに深く腰を下ろすと、九条を正面から見据えた。

 

「無人島試験の件だ。堀北には言ったが、あの結果をもたらしたのは、お前の仕業か?」

 

九条は穏やかな表情を崩さず、静かに首を振った。

 

「違いますよ。伊吹さんも見てましたよね? 僕は鼻炎テープを忘れてしまって、試験中ずっと体調が悪かったんです。そして最初から最後まで、伊吹さんをDクラスで匿うことに反対していました」

 

九条は言葉を区切り、龍園のそばに立っていた伊吹をまっすぐに見据える。

 

「もし僕が伊吹さんを嵌めたかったなら、わざわざ伊吹さんへの警戒をDクラスのみんなに呼びかけたりしませんよ。むしろ伊吹さんが動きやすいよう立ち回る筈でしょ?だから僕は……『放火』なんて知らない」

 

その瞬間、伊吹の反応は顕著だった。

彼女の肩がビクリと震え、目がわずかに見開かれる。九条を睨みつける視線に動揺と苛立ちが混じった。唇を固く結び、歯を食いしばっているのがはっきりわかった。

 

(……なぜ放火が龍園の指示「じゃない」と断定できるんだ?)

 

伊吹は内心で激しく動揺していた。あの無人島での状況、何者かの放火によって、Dクラスを抜け出して情報とカードキーを奪うことが出来たが、あの状況では伊吹に疑いが掛かるのが自然だろう。どうしてそこまで確信を持てる? 胸の内で苛立ちと警戒が渦巻き、拳を強く握りしめた。

その場の空気が一気に凍りつき、緊張が走った。

堀北鈴音が鋭い視線を九条に向け、声を低くした。

 

「九条くん、一体どういうこと?」

 

九条は穏やかな笑みを浮かべたまま、静かに付け加えた。

 

「少なくとも伊吹さんが放火まではやってないんじゃないかという、ただの推測ですよ」

 

龍園は低く笑い声を上げながら、興味深げにその様子を眺めていたが、やがてゆっくりと立ち上がった。

 

「……ふん」

 

龍園は踵を返し、伊吹に短く声をかけた。

 

「行くぞ、伊吹。お前を嵌めたのはこいつじゃない」

 

伊吹はまだ九条を睨みつけながらも、渋々龍園の後ろに従う。龍園は出口に向かいながら、振り返らずに最後に一言を残した。

 

「お前のこともしっかり覚えとくぜ、九条」

 

その言葉には、明確なマーキングの意図が込められていた。龍園と伊吹の背中がラウンジから去っていくと、残された空気は重く淀んだままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲーム大会をきっかけにクラスの垣根が溶け始め、Dクラスの九条や池を中心に、CクラスとBクラスの生徒たちも自然と集まっている。

 

「はい、これ俺の連絡先! あとでライングループつくろうぜ!」

 

池が大声で笑いながらスマホを差し出し、Cクラスの男子と連絡先を交換している。山内もノリノリでCクラスの生徒と話しており、櫛田はいつもの明るい笑顔で周囲の中に溶け込んでいる。その中心に、九条間人の姿があった。

九条は穏やかな笑みを浮かべ、Bクラスの生徒と連絡先を交換しながら軽く会話を交わしている。

 

「ええ、ぜひ。今後もよろしくお願いしますね」

 

「九条くん、意外とスマブラ強いね! またゲームやろうよ!」

 

九条は控えめながらも自然に笑顔を返し、次々と連絡先を交換していく。今まで目立たない位置で静かに過ごしていた彼が、急に社交的になり、クラスを超えて積極的に人と繋がっている様子は、周囲にとってかなり意外な光景だった。

 

「全く、クラス対抗で試験している最中ということを忘れたのかしら?本当に緊張感のない・・・」

 

呆れ果てる堀北の隣で、その様子を眺めていた綾小路清隆は無表情のまま内心で強く警戒を強めていた。

 

(……九条)

 

綾小路の視線は、笑顔で連絡先を交換する九条に固定されていた。

 

(今まで徹底的に目立たないように振る舞っていた男が、急にここまで社交的になる?ゲーム大会をきっかけに、クラスの垣根を越えて積極的に人脈を作っている……。多分ただの息抜きや友達作りじゃない、何か明確な意図がある)

 

綾小路は九条の笑顔を冷たく分析した。

 

(龍園や堀北、神崎、葛城がいるグループで、わざわざ目立つ行動を取り、龍園にも警戒される恐れもありながら全く意に介していない・・・)

 

彼の胸中で、九条に対する警戒レベルがさらに上昇する。

 

(お前は何を考えている、九条間人。Dクラスで何を企み、この干支試験で何を狙っている?もし俺の邪魔をするようであれば、徹底的に排除する必要がある・・・)

 

九条がBクラスの生徒と笑顔で連絡先を交換している様子を、綾小路は無言のまま静かに見つめ続けていた。

ラウンジは和気藹々とした空気に満ちていたが、その裏側では各々の思惑が複雑に絡み合っていた。

 

 

 

 

 

 

夜も深まった頃、九条間人は船内の人目につかない非常階段の踊り場で壬生憲剛と密会した。

壬生は壁に背を預け、薄く笑いながら九条を見た。

 

「先生よ……人目につかないよう行動してたのに、随分と大胆に動くようになったな。辰グループでスマブラ大会まで開いて、クラスを超えて連絡先交換とは。俺もびっくりしたわ」

 

九条は鼻炎テープを軽く押さえ、穏やかな笑みを浮かべながら答えた。

 

「龍園くんに対してあそこまで目立った行動した以上、今更大人しくしてたってしょうがないよ。この試験のためだけじゃない、流石にコソコソしてるだけじゃ限界があるし……今後の人脈を広げる種まきだと思ってる。干支試験が終わった後も、役に立つ関係は作っておきたいからね」

 

壬生は低く笑い、興味深げに頷いた。

 

「なるほどな。で、池の件はどうなんだ? あいつをかなり積極的に巻き込んでたみたいだが」

 

九条は静かに視線を落とし、淡々と続けた。

 

「池くんは中々面白いよ。壬生くんのように存在感で圧倒するにしろ、龍園のように恐怖で引っ張っていくにしろ、どういう形であれ人を集められる才は貴重だからね。僕らの計画を進める上で、工作を浸透させるための人脈作りに協力してもらうつもりだ」

 

壬生は腕を組み、ニヤリと笑った。

 

「池を人脈作りの駒にするか……先生、相変わらず冷徹だな。まあ、あいつの性格なら自然に周りを巻き込みそうだ。了解だ、俺もその辺はフォローしておくよ」

 

九条は小さく頷き、夜の海を見つめながら言った。

 

「ありがとう、壬生くん。そうだ、この試験で一つだけ頼みがある。あの法則に則って、Cクラスの優待者がいる1グループだけAクラスの人間に優待者を間接的な形でリークしてほしい。壬生くんが情報を入手した人とは別のグループの人をね。直接的に壬生くんが動いた証拠を龍園に握られると、動きづらくなるだろうから。まだ龍園と決定的に決裂するのは早いだろうからね」

 

壬生は九条の提案を快諾した。

 

「了解だ先生。いよいよこの試験も大詰めだな」

 

二人は短く視線を交わし、すぐに別々の方向へ溶け込んでいく。そして最後の議論タイムに備えることとした。

 

 

 

 

辰グループのラウンジは、試験最終日の緊張で張りつめていた。

 

九条間人はいつものように隅の席に座っていたが、最後の議論タイムが始まると、珍しく真面目に口を開く。

 

「皆さん、もう一度提案させてください」

 

九条は穏やかな声で、しかし全員に届くように言った。

 

「結果1を目指しませんか? グループ全員がプライベートポイントをしっかりもらえる形です。

 

方法はシンプルです。試験終了直前、船内ラウンジの角のソファ付近に全員で集まってください。そこでスマホは全員、手から離した状態にします。そして終了3秒前に、優待者の方が手を上げて名乗り出る……これで結果1が確定します」

 

葛城康平が真っ先に反応し、重い声で聞いた。

 

「クラスポイントでリードしているAクラスの我々が、その提案に乗るメリットは何だ?」

 

九条は少し面倒くさそうな表情を浮かべ、肩を軽くすくめた。

 

「プライベートポイントなんて大した差は出ないんですから、堅いこと言わず皆で生活費の足しにすれば良いんじゃないんですか?」

 

彼は淡々と続け、わずかに皮肉っぽい笑みを浮かべた。

 

「まあ、そこまでして結果2をお望みなら、それで良いですけど」

 

その言葉に、場が一瞬静まり返った。

堀北は呆れるように九条を見つめ、「もう好きにしなさい」とため息を吐く。神崎は無言で眉を寄せ、葛城はわずかに表情を硬くした。

龍園だけが低く笑い、面白がるような目で九条を見ていた。九条は穏やかな笑みを崩さず、最後に静かに言った。

 

「ではラウンジのソファにて。結果1を目指すのであれば、またお会いしましょう」

 

 

 

 

 

そして試験終了5分前。辰グループのDクラスとBクラスは既に集合場所である船内ラウンジのソファに集まっている。

少し遅れて龍園率いるCクラス、そして最後に葛城含めるAクラスのメンバーが集まった。

 

「何だよ葛城。あれだけ渋っていて結局きたじゃねえか」

 

揶揄うように龍園が声を掛けるも、葛城は黙ったままだ。

 

「では皆さん揃いましたか?秒読みはこちらのスマホのタイマーで行います。僕のスマホもアラームのセット準備ができましたのでここにおきます。皆さんも同様にテーブルの上へ」

 

辰グループの端末がテーブルの上に置かれ、アラームがセットされる。

 

「では秒読みをします、5、4、3」

 

そしてゆっくりと、辰グループの櫛田が手を挙げる。

 

「2、1、0!これにて試験終了です。皆さん、お疲れ様でした。では異論なければ、皆さんここで優待者の送信、お願いします」

 

全員が優待者の回答を送信し、これにて干支試験の幕が閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

船内中央ホールの結果発表が終わった直後、Cクラスの控室は重苦しい空気に包まれていた。

龍園翔はソファに深く腰を下ろし、発表された数字を睨みつけていた。

 

最終結果

• Aクラス  クラスポイント -100  プライベートポイント +250万

• Bクラス  クラスポイント 変動なし  プライベートポイント +400万

• Cクラス  クラスポイント +100   プライベートポイント +500万

• Dクラス  クラスポイント +50    プライベートポイント +300万

 

龍園の表情が徐々に歪んでいった。

 

「……は?」

 

彼は低く唸り、Cクラスのメンバーに集計させた結果の資料を握りつぶす。

 

(想定と違う……)

 

龍園は優待者の法則をほぼ完全に把握し、Cクラスに最大限有利になるよう采配を振るっていた。最も結果3はAクラスを集中的に狙うため、Aクラスに優待者がいた場合のみ選択したものだったが。結果としてCクラスは+150〜200クラスポイント、プライベートポイントも600万以上を狙う算段だった。

しかし実際は+100clと+500万pr。期待値よりも明らかに少ない。

 

龍園はゆっくりと立ち上がり、部屋の隅に控えていた伊吹に視線を向けた。

 

「おい伊吹。辰グループの九条……あいつ、試験の後の様子はどうだった?」

 

伊吹は少し表情を硬くして答える。

 

「……普通だった。ゲームで集まった連中と談笑していただけで、特に怪しい動きは見えなかった」

 

龍園は低く笑ったが、その目は笑っていなかった。

 

「ふざけてた、か……」

 

彼は壁を軽く拳で叩き、独り言のように呟いた。

 

「Dクラスが+50cl……。あの九条の野郎、無人島のときから妙に動きやがって……。まさか、あいつが俺の法則を読み、ポイントを調整してやがったんじゃねえだろうな?」

 

龍園の瞳に、明確な疑念と敵意が宿った。

 

(壬生の野郎か?いや、クラスポイントを取られただろううちの優待者、あれは絶対に壬生から漏れることはない・・・グループ内のディスカッションで当てられた可能性も無くはないが・・・九条間人……お前、ただの良い子ちゃんじゃねえな。俺の勝ちを完璧に推測して嫌がった俺の勝ちを削りやがったのは、お前か?)

 

彼は口の端を歪め、低く笑った。

「面白い。次に会ったら、もっとしっかり話を聞かせてもらうぜ……九条」

 

龍園翔は九条間人という存在を、無人島で伊吹をはめた存在Xと同等に、明確に「要注意人物」として認識した。

 

 

 

 

 

 

 

 

船内の人目につかない非常階段の踊り場で、九条間人と壬生憲剛が再び密会した。

壬生は壁に背を預け、満足げに口角を上げた。

 

「先生、結果が出たぞ。Aクラスは最低限のラインで抑えられた。俺が葛城に優待者の情報をリークしたのが効いたみたいだ。奴ら、早めに正解を提出して大損害は免れたらしい」

 

九条は鼻炎テープを軽く押さえながら、小さく頷いた。

 

「Bクラスの方も、神崎くんに『議論は最小限に、最後に意志確認だけする』というアドバイスを伝えておいたおかげで、大きなポイントロスは避けられたようだ。結果的にBクラスはクラスポイント変動なしで済んだ」

 

壬生は低く笑った。

 

「はっ……上出来じゃねえか。龍園の野郎はCクラスで+100cl止まり。AクラスもBクラスも大崩れしなかった。先生の読み通り、俺たちの調整が効いたな」

 

九条は静かに息を吐き、穏やかな笑みを浮かべた。

 

「ひとまず最低限のラインは抑えられたね。還流計画に悪影響が出るほどの大量ポイント獲得は避けられた。これで次の月も比較的動きやすいはずだ」

 

壬生は九条の肩を軽く叩き、ニヤリと笑った。

 

「先生の『種まき』が効いたな。辰グループでゲーム大会やって人脈作ったのも、結局はBクラスへの影響力強化のためだったんだろ?」

 

九条は小さく肩をすくめた。

 

「まあ、それもあるけど・・・やはり今後僕らの人脈に根を張るのが主目的だよ。壬生くんもAクラスに上手くリークしてくれて助かった。龍園には少し不満が残ったかもしれないけど……これくらいのバランスがちょうどいい」

 

二人は短く視線を交わし、互いの成果を確認した。

壬生は低く笑いながら言った。

 

「龍園の奴、先生のことをかなり警戒し始めたみたいだぜ。次はもっと厄介になるかもな」

九条は穏やかな笑みを浮かべつつ、瞳の奥に冷たい光を宿した。

 

「構わないよ。こちらも準備は進めていく。この干支試験は、僕らにとって悪くない結果になった」

 

夜の非常階段に、二人の静かな笑い声が小さく響いた。

 

結果発表が終わり、Dクラスの控室に戻ったメンバーたちの間に、歓声と安堵の声が広がっていた。

 

「やったぜ!Cクラスにリードされたけど、俺たちも結構善戦したじゃねえか!」

 

池寛治が拳を握りしめて大声で喜び、隣の山内がハイタッチを求めてくる。

平田洋介は穏やかな笑顔を浮かべながら、皆をまとめていた。

 

「みんな、本当によく頑張ったよ。特に最終日の調整が効いたね。Cクラスに100cl取られたのは悔しいけど、Dクラスも+50clは十分健闘だと思う」

 

九条間人は少し離れた席からその様子を見守り、穏やかな笑みを浮かべて会話に加わった。

 

「平田くんの言う通りです。Cクラスがリードしたとはいえ、僕たちも予想以上にポイントを稼げました。皆さんの頑張りのおかげですよ」

池が九条の肩をバンバン叩きながら興奮気味に言った。

 

「九条もな! お前が辰グループでずっと議論引っ張ってたんだろ?最後に上手くプライベートポイント取れたんじゃないのか?」

 

平田も頷きながら微笑んだ。

 

「確かに。九条くんが『最後に意志を確認しよう』って提案してくれたおかげで、無駄なリスクを避けられた気がする。Cクラスにリードはされたけど、Dクラスとして悪くない結果だよ。みんな、お疲れ様!」

 

九条がややふざけた形で同調する。

 

「でしょ?僕結構優秀なんで」

 

そこにピシャッと遮るように、堀北のツッコミが入った。

 

「ちょっとあんまり調子に乗ると殴るわよ」

 

九条が「いやいや冗談ですって」と宥めるように言い、平田がその様子に苦笑し池が大笑いする。Dクラスにあった蟠りもほぐれ、暖かな雰囲気に包まれていた。

控室は喜びと達成感に包まれ、池が「よし、今日は少し祝杯だ!」と盛り上げ、平田が苦笑しながらも皆を宥める。

九条はそんな和やかな雰囲気を眺めながら、内心で冷静に思っていた。

 

(……Cクラスにリードされたけど、還流計画の観点からもちょうどいい塩梅に収まった。)

 

Dクラスのメンバーたちは、Cクラスにリードされた悔しさよりも、自分たちが善戦した達成感に浸っていた。

 

 

 

 

 

 

 

干支試験の結果発表が終わり、Bクラスの控室では安堵の空気が広がっていた。

一之瀬帆波は明るい笑顔で神崎隆二のところに近づき、嬉しそうに言った。

「神崎くん! 神崎くんの言う通り、九条くんの戦略を参考にしたかいがあったね!クラスポイントは取れなかったけど、とりあえず安全にプライベートポイントは400万獲得できたよ! すごいよね!」

 

一之瀬は安堵の感情と共に嬉しそうに続ける。

 

「『最後に意志を確認するだけにしよう』って提案のおかげで、無駄なリスクを避けられたと思う。九条くん、意外と頼りになるね!」

 

神崎は表面上、穏やかな笑みを浮かべて頷いた。

 

「ああ……そうだな。一之瀬の判断が正しかったよ。無事にプライベートポイントを確保できて良かった」

 

しかし、神崎の内心は複雑だった。

 

(……九条の戦略、か)

彼は九条の顔を思い浮かべ、胸の中で苦々しい思いを抑えていた。

(本当にただの親切心でアドバイスしてきたのか?それとも、Bクラスを上手く利用して自分の計画を進めているだけなのか……。一之瀬が喜んでいるのはいいが、九条の真意が全く読めない。あの男がDクラスで何を考えているのか、ますます警戒せざるを得ない)

 

一之瀬は神崎の表情の微妙な変化に気づかず、楽しげに笑い続けた。

 

「これで少しは余裕ができたね! 神崎くん、ありがとう!」

 

神崎は一之瀬の笑顔を見て、表面上は優しく微笑み返した。

 

「……ああ、良かったな」

 

内心では、九条間人という存在に対する警戒心が、さらに一層強まっていた。

Bクラスは結果的にクラスポイントを変動させずに済んだが、神崎隆二の胸中は穏やかではなかった。

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