二人は超問題児?(もしよう実世界に「九条の大罪」悪徳弁護士と半グレが入り込んだら〜)   作:きんぴら大根

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狼煙(高育堕とし編3)

体育祭当日、グラウンド中央で行われる棒倒し競技は、体育祭の中でも特に激しさが増す種目だった。全クラスでの総当たり戦。須藤健を先頭に据えたDクラスチームは気合十分で臨んだが、開始直後からCクラスの執拗な妨害が始まった。

 

「うおらっ!」

 

Cクラスの生徒たちが故意に須藤の足を引っかけ、肘打ちを入れ、バランスを崩そうとする。龍園の指示による明らかな妨害行為。

 

「てめえら……!」

 

須藤の怒りが爆発した。Cクラスの一人が露骨に須藤の背中を押した瞬間、須藤は我慢の限界を超え、龍園に向かって飛びかかろうとする。

 

「龍園てめえっ! ふざけんなよ!!」

 

須藤の目が血走り、龍園の胸倉を掴もうとする。平田洋介が慌てて須藤の腰に抱きつき、必死に引き止めた。

 

「須藤くん、落ち着いて! ここで暴れたら退場だよ!」

 

平田の声が必死だったが、須藤の怒りは収まらない。

 

その時——Cクラスの他のメンバーたちが、龍園の指示を完全に無視した動きを見せ始めた。彼らはDクラスだけでなく、隣のコートで戦っていたBクラスの棒にも集団で襲いかかり、故意に足を引っかけたり、体当たりを繰り返したりした。Bクラスの生徒たちが「何すんだよ!」と抗議の声を上げる。

龍園の表情が一瞬で歪んだ。

 

「おい、てめえら……! 誰がBクラスに手を出せって言った!?」

 

龍園が咎めようと一歩踏み出したその瞬間——

ドサッ!

Cクラスの自陣の棒が、突然大きく傾き、派手に倒れた。

倒したのは壬生憲剛だった。彼は棒を支えていた手をわざと緩め、倒れた棒を軽く蹴りながら、面倒くさそうに言った。

 

「手首疲れたわ……もういいだろ」

 

そのわざとらしいセリフに、周囲が一瞬静まり返った。龍園が壬生を鋭く睨みつけた。

 

「壬生……お前、何やってんだよ」

 

壬生は肩をすくめ、薄く笑っただけだった。

 

「別に。ただ疲れただけだ。龍園、お前が好きにやってるんだから、俺も好きにさせろよ」

 

Cクラスの陣営は明らかに混乱し始め、龍園の顔に苛立ちがはっきりと浮かんだ。

指示したはずの妨害が、逆に自陣の崩壊と他クラスへの無秩序な攻撃を生み、完全にコントロールを失いつつあった。平田は須藤を抑えながら、苦々しい表情でその光景を見つめていた。九条間人は少し離れた位置から静かにその様子を観察し、小さく笑った。

 

(……壬生くん、いよいよ始めるんだね。僕たちの祭りを)

 

体育祭の棒倒し競技は、予想以上に混沌とした展開を迎えていた。

 

 

 

 

 

体育祭が終わり、Cクラス教室は疲労と苛立ちの混じった空気に包まれていた。龍園翔は教壇に腰をかけ、鋭い視線を教室の後ろに座る壬生憲剛に向けていた。教室にいるCクラスの生徒たちも、気まずい空気を感じながら二人の様子を窺っている。

龍園は低く、しかし全員に聞こえる声で切り出した。

 

「壬生……お前、棒倒しでわざと自陣の棒を倒しやがったな。説明しろ。何のつもりだ?」

 

教室の空気が一瞬で凍りつく。壬生はゆっくりと立ち上がり、長身を活かして龍園を真正面から見据えた。口元にはいつもの薄い笑みが浮かんでいる。

 

「説明、ね……。まあ、いいか。みんなも聞いといた方がいいだろ」

 

壬生は教室全体を見回し、はっきりとした声で宣言した。

 

「みんな聞け!俺はAクラスを目指さない。これからCクラスの中で、俺についてくる奴は、Aクラスへの無駄な消耗戦には参加しない。代わりに——」

 

彼は一呼吸置き、言葉を続けた。

 

「特別試験やテストの工作を、現金で請け負う。AクラスやBクラスの保護者から直接金を巻き上げ、ポイントの調整や、情報提供、さらにはより直接的な工作まで請け負う!さらに、AクラスやBクラスになりうる有力な人材とは、将来のための人脈を築き上げる!・・・要するに、金とコネを稼ぎながら、普通に高校生活を送って卒業する道を選ぶ」

 

Cクラスの生徒たちの間に、驚きとざわめきが広がった。現金工作の噂、その実がとうとう明らかになった瞬間だった。龍園の目が細くなり、壬生は龍園を真正面から見据え、笑みを深める。

 

「龍園、お前は好きにAクラスを目指せばいい。でも、俺はもうお前の下につく気はない。俺についてきたいと思う奴は、今ここで俺の派閥に来い!一緒に、この学校のルールを利用して、楽に、賢く、儲けながら過ごそうぜ」

 

「てめえ、今何つった?」

 

龍園の声から低く、しかし抑えられない怒りが滲み出ていた。今までCクラスを強固なリーダーシップと恐怖で統率してきた龍園にとって、Aクラスへの昇格を一方的に放棄するという、決して許容できない反乱。好きなやつだけ目指せと言うのはまさしく詭弁。クラスが一眼となって同じ目的を共有しなければ成り立たない仕組みである以上、これは宣戦布告に他ならない。

 

「Aクラスを目指さず金で工作を請け負って、人脈作りだと?ふざけんなこの野郎!」

 

教室が静まり返った。数人の生徒が顔を見合わせ、動揺を隠せないでいる。特に龍園派のコアメンバーたちは困惑した表情を浮かべていた。壬生は最後に、はっきりと言い放った。

 

「今まではそれなりに仲良くやってきたがこれまでだ、龍園。お前がCクラスを支配したいなら、俺を排除するしかない。どうする?」

 

龍園は低く笑ったが、その目は笑っていなかった。

 

「はっ……面白いこと言いやがる。お前、本気でこの俺に喧嘩を売ってるんだな、壬生」

 

壬生は肩をすくめ、余裕の笑みを浮かべたまま答えた。

 

「売ってるんじゃねえよ。ただ、俺は俺の道を行くだけだ」

 

Cクラス教室に、明らかな分裂の予感が漂っていた。

 

そしてこの壬生の反乱を機に、高育全体が創立以来かつてないほどの混乱に陥ることになる・・・

 

 

 

 

 

 

体育祭が終わり、Dクラス教室に戻った生徒たちは疲労と安堵が入り混じった様子で談笑していた。しかし、そんな空気を切り裂くように、一人の生徒が息を切らして教室に飛び込んできた。

 

「やばい! Cクラスで大事件だって!」

 

池寛治が目を丸くして聞き返した。

 

「大事件? 何だよそれ」

 

飛び込んできた生徒は興奮気味にまくしたてた。

 

「壬生が龍園に喧嘩売ったんだって! 教室で堂々と『俺はAクラス目指さない』って宣言して、現金で工作請け負うとか、人脈作るとか言い出したらしい! 龍園がマジギレしてたってよ!

教室が一瞬、静まり返った後、大きなざわめきが広がった。

 

「え、マジで!? Cクラス内で分裂したのかよ!?」

 

「壬生って龍園とずっと対立してた奴だよな……ついに本気で反旗翻したってこと?」

 

山内が目を輝かせながら言った。

 

「すげえ……Cクラス、ガチで内部分裂じゃねえか!」

 

平田洋介は少し困惑した表情で皆を宥めようとしたが、興奮した声は止まらない。須藤健が腕を組んで低く唸った。

 

「龍園の野郎、とうとう子分に裏切られてるのか……ざまあねえな」

 

軽井沢恵も興味津々で話に加わった。

 

「現金で工作請け負うって……本当にあるの? それってヤバくない?」

 

教室のあちこちで生徒たちが集まり、噂を交わし合う。興奮、驚き、不安、好奇心——様々な感情が混ざり、Dクラス全体が大きくざわついていた。窓際の席で静かにその様子を聞いていた九条間人は、穏やかな表情を崩さずに小さく微笑んだ。

 

(……壬生くん、とうとう始めたんだね。こっちもそろそろかな・・・)

 

綾小路清隆は後ろの席から、九条の横顔を静かに観察していた。

 

(九条……お前はこの件を、予想していたのか?)

 

Dクラス教室は、Cクラスでの壬生の反乱の報せによって、体育祭の疲れを忘れるほどの活気に包まれていた最中、九条が教室の前まで歩いて教壇の前に立ち、パン!っと手を叩きクラスの注目を集める。

九条は穏やかな表情を崩さず、しかしはっきりとした声で宣言した。

 

「皆さん、聞いてください。……Cクラスで壬生くんがAクラスを目指さない、そう宣言したようですが僕も同じ考えです。Aクラスを目指すつもりはありません」

その瞬間、教室が水を打ったように静まり返る。九条は静かに、しかし迷いのない口調で続けた。

 

「この学校のポイント主義に縛られて、3年間を消耗するのは間違っていると思います。Aクラスを目指すことが本当に正しいのか……僕は疑問に思っています。学校行事にかこつけた特別試験のたびに、皆が無理に競い合って精神をすり減らすより、それぞれが自分のペースで、勉学に励んだり部活に打ち込んだりして、真っ当に実力を身につけ、社会に出ていく方が、ずっと健全で有意義だと思うんです」

 

堀北鈴音が即座に立ち上がり、目を見開いて九条を睨みつける。恐らく堀北にとって、今までで一番受け入れがない発言であった。

 

「九条くん……今、何て言ったの?」

 

彼女の声は低く、しかし明らかに怒りに震えていた。須藤健も拳を握りしめ、立ち上がった。

 

「はあ!? お前、何ふざけたこと言ってんだよ九条!!Aクラス目指さねえとか、そんな甘っちょろいこと言ってる場合かよ!お前がそんなこと言い出したら、クラスはどうなるんだよ!?」

 

九条は二人の激しい視線を受け止めながらも、表情を崩さずに静かに続けた。

 

「裏切るつもりはありません。ただ……皆が本当に幸せになれる道を選びたいだけです。無理にAクラスを目指して消耗するより、自分に合った生き方を見つける方が大切だと思うんです」

 

その宣言に、教室の反応は様々だった。池寛治は席に座ったまま、驚きと興奮が入り混じった表情を浮かべていた。

 

(九条……ついに言い出したか。俺はもうあいつの計画に乗ってるけど……ここで堂々と宣言するなんて、もう覚悟は決まってるんだな……)

 

池は内心で九条の決意を認めつつも、周囲の反応に少し緊張し、だがこれから起こるであろう出来事に武者震いして笑っていた。

 

一方、佐倉愛里は自分の席で小さく息を呑み、九条を見つめていた。彼女は以前、九条に心の内を打ち明けた時のことを鮮明に覚えていた。

 

(九条くん……本当にその道を選ぶんだ……。私に話してくれた時から、そういう覚悟だったんだ……。どうなるか私は全く予想もつかないけど・・・それでも九条くんを信じたい)

 

佐倉の胸には不安と、九条への信頼が複雑に混ざり合う。

堀北は今までにない激しい怒りを露わに、九条を鋭く睨みつけた。

 

「九条くん……あなた、本気で言ってるの?今までDクラスを支えてきたふりをしておいて、今になってそんな逃げの姿勢を取るというの?信じられない……!」

 

須藤は苛立ちを隠さず、九条に向かって一歩踏み出した。

 

「てめえ……ふざけんなよ!」

 

教室全体が凍りつき、平田が慌てて間に入ろうとしたが、堀北と須藤の怒りは収まらない。

九条の宣言により、Dクラスに明らかな亀裂が入った瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

九条間人の突然の宣言が、Dクラス教室に衝撃を与えた直後。教室の後ろの席で、綾小路清隆は無表情のまま静かにその様子を観察していた。

 

(……ついに、か)

 

綾小路の瞳は、九条の穏やかな顔を冷たく捉えていた。これまで九条は徹底的に「目立たない生徒」を演じ続けていた。無人島では皆の結束がバラバラにならないようフォローを入れつつ、干支試験ではゲーム大会という奇策でクラスを超えた人脈を作り、体育祭ではまた静かに振る舞っていた。

そのすべてが計算された動きだったことは、綾小路にはもう明らかだった。

そして今——九条は堂々と、Aクラスを目指さないと宣言した。

 

(ようやく本性を現し始めたな)

 

綾小路の頭の中で、九条に対する評価が急速に更新されていく。

 

(Aクラス昇格に興味がない、と言う。でも本当の目的は、この学校のポイント主義そのものを崩すこと……。壬生と組んで現金工作を進め、外部のネットワークを利用し、金を流すための準備を着々と進めてきた。すべては、この学校のシステムを内側から腐らせるための布石だ)

 

綾小路は内心で小さく息を吐いた。

 

(茶柱先生……だから言わんこっちゃない)

 

先生は九条を「ただの凡人」「少し調子に乗ってる程度」と甘く見ていたが、綾小路はすでに九条の本質を察していた。あの穏やかな仮面の下に隠された、冷徹で長期的な視点を持つ危険な存在だと。

 

(九条間人……お前はただのDクラスの生徒じゃない。最初からこの学校を「壊す」ために入ってきた……そういうタイプだ。しかも、非常に慎重で、かつ大胆なやり方でこのシステムを崩そうと企んでいる。厄介な相手だ)

 

綾小路清隆の胸中には、九条に対する明確な警戒と、静かな興味が同時に生まれていた。教室のざわめきが続く中、彼だけが、九条の次の動きを冷静に予測し始めていた。

 

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