二人は超問題児?(もしよう実世界に「九条の大罪」悪徳弁護士と半グレが入り込んだら〜)   作:きんぴら大根

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パワーゲーム(高育堕とし編5)

九条を制圧し、現金工作を力づくで止めさせようとする龍園。龍園は九条の髪を掴んだまま、突然背後に現れた壬生を睨みつける。

 

「壬生、てめえ一人で来やがったのか?頭どうかしたんじゃねえのか?」

 

壬生の体格の大きさを加味しても、龍園には小宮、伊吹、そしてアルベルトが付いており、九条は無力化され1対4。そして龍園にはあの体格が壬生にも劣らないアルベルトがついている。龍園は嘲るように笑いながら、九条の髪を離し、壬生に向かって一歩踏み出した。

その目は本気の殺気を含んでいた。

 

九条が息絶え絶えに状況を共有する。

 

「壬生くん、聞いてくれ。『ここ周辺に監視カメラは無い』」

 

龍園は九条の言葉を壬生への警告だと受け取ったのか、語気を更に強めて壬生に詰め寄る。

 

「だそうだ壬生。そのガタイのデカさで何とかなると思ってんならとんだ勘違いだ。それともあれか?今の暴行の瞬間でも動画撮ってたのか?だったら端末ごと奪っててめえをぶちのめしてやるよ」

 

ジリジリと壬生へにじりよる龍園たち。だがそんなことも一向に介さず、壬生は薄く笑みを浮かべ、落ち着いた声で答えた。

 

「ここ周辺にカメラは無いね・・・ありがとよ先生、それは『俺たち』にとって好都合だ」

 

壬生の言葉に僅かに歩みを止める龍園。『俺たち』という言葉に引っ掛かり周囲を見るが、やはり自分たち以外に人はいない。構わず龍園は壬生に一歩一歩近づいていく。だが壬生はそんな龍園たちに、勝利宣言かのような言葉を一言だけ発した。

 

「俺はいつだって用意周到だ」

 

その言葉が終わった瞬間——

突然、小宮が龍園の横顔に強烈な肘打ちを叩き込んだ。

 

「ぐあっ!?」

 

龍園は予想外の裏切りに反応できず、壁に激しくぶつかる。小宮は続け様に、不測の状況で反応が追いついていない伊吹にもボディをお見舞いし、その場で伊吹はうずくまった。

そしてその隙を突き、壬生が爆発的に動き出した。

 

「っらあっ!」

 

壬生は巨体を活かした飛び膝蹴りを山田アルベルトの顔面に叩き込み、続けざまにサッカーボールキックのような強烈な蹴りを頭部に叩き込んだ。

アルベルトの顎がかち上がり、壬生は続けざまにマウントで二、三発殴りつけ、アルベルトは地面に伏して動かなくなった。

 

「悪いなアルベルト。流石にお前相手に手加減してちゃあ、こっちも危ないんでね」

 

一方不意打ちを喰らった龍園はそれでも何とか小宮に喰らいつき、取っ組み合いのような拮抗状態になる。

 

「てめえ、どういうつもりだ小宮あ!」

 

「死ねや龍園!」

 

両者譲らない取っ組み合いの拮抗状態。ポテンシャルとして膂力が上であろう龍園が小宮を上回ろうとしたその瞬間、アルベルトを制圧した壬生が龍園の腹部に蹴りを入れ、動きが止まった瞬間に小宮は思いっきり龍園を殴りつけ、地面に倒れた龍園にのしかかり何度も何度もパンチを浴びせる。

 

「いつもいつも俺をパシリにしてコキ使いやがって……!俺はてめえの犬じゃねえんだよ、龍園!!」

 

小宮は完全に感情を爆発させ、目を血走らせ、倒れかけた龍園に馬乗りになった状態で、拳を雨のように叩きつけた。

少し様子を見た後、壬生が小宮の腕を後ろから掴んで引き剥がす。

 

「その辺にしとけ小宮、あんまやり過ぎんな」

 

壬生の低い、しかし力強い声に、小宮は肩を激しく上下させながらも、ようやく動きを止めた。龍園は床に倒れたまま、口から血を流し、荒い息を吐き、顔は腫れ上がり、目には怒りと驚愕が混じりあう。

壬生はそんな満身創痍の龍園を見下ろし、冷たい声で警告する。

 

「悪いことは言わねえ、これ以上俺たちを邪魔するな龍園。次に手を出したら……今度は本気で潰す」

 

壬生は九条の元に歩み寄り、倒れた九条を起こしながら、九条の肩を支えて立ち上がらせ、小宮と共にそのまま歩き去っていった。

 

一方、口に流れる血の味と身体中の痛みを噛み締めながら、龍園はずっと頭の隅に引っ掛かっていたことについて、痛みに耐えながら反芻する。

 

(小宮が裏切ったこともだが・・・それより連中、なんで外部と平然と連絡を取り合うような真似ができている?曲がりなりにも外部との連絡手段はそれなりに強固に規制されているはず・・・なのに現金工作の口座や、工作を依頼する生徒と保護者との連絡も、いったいどうやって連絡を取らせていた?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「壬生さん流石っす!あの龍園の野郎をこの手でぶちのめせてマジでスカッとしました!でも壬生さんもあのアルベルトをのしちまうなんて、やっぱすげえっすね!」

 

「小宮、あれは不意打ちだから何とかなっただけだ。流石にサシでやればどうなるかは分かんねえよ。それより俺は九条を連れていくから、お前は先戻ってろ」

 

壬生は小宮を金やそして龍園へのフラストレーションを煽ることで自分に寝返らせて、龍園を監視させていた。小宮が石崎に代わり、自ら龍園に積極的に付いていたのもその為だ。

 

九条と二人きりになった壬生は九条に対し、いつもの調子で軽口を叩く。

 

「先生、流石にボディ一発で効き過ぎなんじゃねえか?もう少し体鍛えろよ」

 

「勘弁してよ壬生くん、君らみたいにフィジカルそんなあるわけじゃ無いんだ」

 

ようやくダメージから回復した九条はゆっくりとではあるが、貸されていた肩から離れて一人で歩き出す。

 

「そういえば壬生くん、久我くんは今日も『こっち』に来てる?」

 

「ああ、確か今日がシフトだった筈だ。ケヤキモールの家電販売店の窓口だったかな?しかしまあ先生、よくもケヤキモールの一従業員に俺の後輩潜り込ませるなんてマネ、考えついたな」

 

「・・・まだ入学して間もないころ、その家電量販店の店員からストーカーの被害に遭った子がDクラスにいてね・・・どうやら高育より前からご執心だったらしいけど、ケヤキモールで働く従業員までは一々身辺調査なんてしてないだろうなと想像がついてさ。」

 

九条は佐倉のストーカー事件から、ケヤキモールの従業員として壬生の仲間を潜り込ませる大胆な発想を思いつき、それを実行した。現金工作の顧客となる生徒へは、久我達が持ち込んだプリペイドの端末を与え保護者と連絡を取らせ、また自らも同じく壬生の仲間を経由して得たプリペイドの端末で、外部との連絡を取っていたのだ。

 

「外出したのは夏休みに特別申請で出た一度きりだね。やっぱり外部とのやりとりは学校側も相当慎重になっているせいか、申請もめちゃくちゃ面倒臭かったし、何度もやれば怪しまれるからあれっきりだったけど・・・あとは久我くん達のおかげで滞りなく進められたよ」

 

「久我の野郎には後でちゃんと礼をしないとな・・・今までは学校の目があるからケヤキモール内でつるむわけには行かなかったが、もう良いんじゃねえか?」

 

「どうせ好き勝手やるなら外でも良いんじゃない?モールだけだとラインナップも限られる」

 

後輩を労う焼肉屋選びの雑談、そんな軽口を叩きながら、二人は夜道を進む。そして『高育堕とし』は次の段階へと進もうとしていた。

 

「そろそろ僕らから学校側へ接触するときだね。確率はそう高くないが、いざ彼らに腹を決められる前にこちらから揺さぶりを掛けておきたい」

 

「ああ、ゴタついている間に要求は飲ませるだけ飲ませねえとな・・・そうだな、『学生ベンチャー、エデュケイト・コーポレーションからの高育への業務改善提案』という建前にでもしとくか」

 

くつくつと二人が薄く笑い合う声は、夜の空へと静かに消えていく。高育から生まれ出でた突然変異の二匹の怪物達を止める者は、もはやどこにもいなかった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人の怪物が波打った波紋は、高度育成高等学校の上層部にも及ぶ。高度育成高等学校の理事長室は、九条と壬生が起こした反乱の対応に追われ、夜遅くにもかかわらず明かりが灯っている。Aクラスの坂柳有栖の実父である坂柳成守は執務机に座り、静かに書類を眺めていた。

そこへ、ノックもせずに月城常成が部屋に入ってきた。冷たい表情で見下ろし、理事長の前に悠然と立つ。

 

「理事長」

 

坂柳理事長はゆっくりと顔を上げ、月城を睨みつける。

 

「月城……貴様一体何の用だ!?」

 

月城は一歩前に出て、はっきりとした声で坂柳理事長を糾弾するかのように言った。

 

「九条間人と壬生憲剛の件についてです。彼らの行動はもはや看過できるレベルを超えています。現金による工作請負、実力主義による競争の機能不全……これは学校の根幹を揺るがす行為です」

 

坂柳理事長は月城の言葉に言い返そうとするも、事態の大きさを突きつけられ言葉に詰まる。

月城はさらに続けた。

 

「理事長……この件の責任を取っていただきたい。即刻、理事長の座を降りていただきます。そして、しばらくの間、事態の収拾のため私が代理を務めさせていただきます。これは教育委員会からの決定事項です」

 

部屋に重い沈黙が落ち、月城の一方的な戦力外通告に坂柳理事長は苦々しい表情を浮かべつつも、月城の目を真っ直ぐ見据え言葉を返す。

 

「月城……随分と強気だな。私が降りた後、貴様はこの学校をどうしたいというのだ?」

 

月城は表情を変えず、冷たい声で答えた。

 

「この学校の『実力主義』を、徹底的に守るだけです。九条と壬生のような、システムを内側から腐らせる者を、徹底的に排除します。理事長が今まで甘く見過ごしてきたツケ……私が清算します」

 

その月城の嘘か本当かわからないその言葉の真意を反芻するも、坂柳理事長はゆっくりと立ち上がり、月城の顔を正面から見据えた。

 

「わかった。私の責任として、理事長の座からは離れよう。ただし……月城。貴様が何を考えているかは知らんが、代理になったからと言ってこの学校を好き放題できると思うなよ」

 

月城は深く頭を下げ、冷たい声で答えた。

 

「ご理解いただき、ありがとうございます。これより、私がこの学校の代理を務めさせていただきます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月城は理事長室の扉を静かに閉め、長い廊下を歩き始める。彼の唇の端に、冷たい笑みが浮かんでいた。

 

(……渡りに船だったな)

 

月城は内心でほくそ笑んだ。本来の計画では坂柳理事長を失脚させるため、もっと複雑で危険な偽装工作を仕掛ける必要があった。しかし、九条間人と壬生憲剛の存在が予想外の好機をもたらし、不正をでっち上げる偽装工作の手間も省け、本来の計画よりも数ヶ月も前倒しで代理に就任することが叶ったのだ。

 

(あの二人がここまで派手に動き出すとは……。現金工作、外部とのネットワーク、Aクラス昇格放棄宣言……。完璧な材料だ)

 

月城は廊下の窓から夜の校舎を見下ろしながら、静かに思考を巡らせた。

 

(高育については……鬼島派の息のかかった学校など、いくら腐り落ちようが構わない。私にとってはどうでもね・・・)

 

鬼島派の敵対派閥である綾小路篤臣の指示のもと、息子を引き戻すために送り込まれた刺客として、既に次の一手を考えている。

 

(ついでだ・・・九条間人、そして壬生憲剛・・・彼らにはこのまま汚れ仕事を担ってもらおう。彼らに手を汚させ、綾小路清隆を連れ戻す算段を立てる。いや・・・)

 

少し思案し彼ら二人の資料を眺め、冷徹な思考を巡らせる。九条と壬生、二人の同質性と相違点・・・そして、彼はある一つの決断に至る。

 

(私が握るナイフは、『一つだけ』で良い・・・)

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