二人は超問題児?(もしよう実世界に「九条の大罪」悪徳弁護士と半グレが入り込んだら〜)   作:きんぴら大根

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キリの良いとこまでと思っていたら思ったより長くなってしまいました・・・


爪痕(高育堕とし編その6)

教員室は深夜を過ぎても灯りが消えず、重苦しい空気が充満していた。長テーブルを囲むように座った教師陣と上層部の面々は、誰もが青ざめた顔で資料を睨みつけていた。茶柱佐枝は両手をデスクに突き、星之宮知恵は唇を強く噛みしめ、教頭と副理事長は額に汗を浮かべている。教頭が震える声で切り出した。

 

「これは……もはや内部で抑え込めるレベルではありません。AクラスとBクラスの昇格競争が、完全に『札束で殴り合う工作合戦』に成り下がっています。九条と壬生が外部の人間と仲介し、生徒の保護者からの現金で試験結果を調整している。このままでは学校の看板である『努力と実力による選別』が、笑いものになる」

 

副理事長が勢い込んで言った。

 

「だからこそ、今すぐ内部で収束させるべきです!九条と壬生を個別に呼び出して退学をカードに厳重注意し、現金工作部隊のメンバーを分散させ、特別試験の監視を強化する。公表など絶対に許されません。外部に漏れたら、この学校の信用は地に落ちます!」

 

そこに、茶柱佐枝が冷たい声で割って入った。

 

「収束? もう遅い」

 

彼女は資料を強く叩きつけ、皆の視線を集めた。

 

「九条と壬生はすでに資金を蓄え、A・Bクラスに工作の網を張り巡らせています。今さら『注意』程度で止まると思っているので?彼らは学校の弱みを握っていますし、こうして我々が無様に右往左往しているのだって折込済みです。それをまだ『内部で何とかする』という幻想を抱いているなど……彼らを退学処分にするにしろ、諦めて公表するしかなありません」

 

星之宮知恵が、珍しく真剣な顔で茶柱に同意した。

 

「私も佐枝ちゃんに賛成。もう手遅れよ。Aクラス昇格が金で買えるものになっている事実を、外部に先んじて公表してダメージコントロールするしかない。『生徒の自主的な動きにより、競争システムに課題が見つかった』という形で、

学校側が率先して改革を発表すれば、まだ最低限の信頼は守れるかもしれない」

 

教頭が顔を赤らめて反論した。

 

「馬鹿な!公表などしたら、この学校は終わりだ!保護者からのクレーム、進学実績の暴落、メディアの叩き……すべてが一気に押し寄せる!内部で強硬策を取れば、まだ間に合うはずだ。現金工作に関わる生徒を退学処分にし、関連する試験を無効化すれば——」

 

 

そこで、嫌に落ち着いた一人の男性の声が教員室の空気を支配した。

 

「まあまあ、皆さん落ち着きましょう。」

 

坂柳理事長の後釜で急遽代理として就任した、月城だった。教師陣は皆月城の不自然な人事異動にて彼を不審に思っており、怪訝な面持ちで彼を観察している。

 

「正々堂々と公表してこの学校のあり方を見直す、それも一つの手段ではありますが、一度九条くんと壬生くんの言い分を聞いてみるのはいかがですかな?」

 

その呑気とも言える理事長代理の提案に、教師陣は強く反発した。

 

「代理!彼らの要求を呑むつもりですか!この学校をめちゃくちゃにした連中に、易々諾々と主導権を明け渡すつもりですか!」

 

だがそんな激しい怒りを露わにした教師の声も、月城はあっさりと受け流す。

 

「ですから・・・まず『話』を聞くだけですよ。彼らの要求次第では、この事態を世間に公表せず穏便に収束することだってできるかも知れない・・・既に『エデュケイト・コーポレーション』は我々事務方にコンタクトを取ってきています。教育コンサルベンチャーとして、高育に『業務改善提案』をしたいとね。なのでまずは話を聞いてみましょう」

 

(『業務改善提案』?単なる脅しでしょう?白々しい・・・)

 

星之宮が苦々しい内心を噛み潰し、他の教師陣も同様の苦渋を味わいながらも、理事長代理という肩書きの決定権を持つ月城に、これ以上何も言えないでいる。

 

「では数日後・・・会議室の準備の方、よろしくお願いしますよ」

 

 

 

 

 

 

その頃Dクラスの放課後では、体育祭後に九条により発せられたAクラス放棄宣言に対して、Dクラスの士気が目に見えて落ちているのを見かね、堀北は彼に付いて行かないようクラス全員に呼びかけるも、皆の反応は芳しいものでは無かった。九条本人、そして既に九条派として現金工作に関わっている池はすでに退室しており、教室にはいない。

 

「皆さん、少し時間いいかしら?」

 

堀北鈴音が静かに立ち上がり、クラス全体を見渡した。声は低く、抑揚を最小限に抑えた冷たい響きを帯びている。

 

「九条くんのAクラス放棄宣言、本当に、それで皆いいと思っているの?」

 

教室の空気がわずかに張りつめた。堀北は視線を、クラスメイト一人一人に這わせるようにゆっくりと動かした。

 

「現金を報酬に上位のクラスから工作の請け負い、またAクラスを目指さず最低限のプライベートポイント確保に留め、学生生活を呑気に暮らす・・・結局のところ、あれはただの逃げに過ぎないわ。この学校が課す実力主義の競争から、最初から降りるつもりだと言っているだけ。努力すら放棄して、システムを誤魔化そうとするなど……そんなの卑怯者の考え方よ!」

 

彼女の言葉に、クラスメイトたちの間に微かなざわめきが起こったが、それは同意のざわめきではない。困惑と、どこか諦めにも似た疲労の色・・・須藤が腕を組んで舌打ちし、平田は苦い顔で視線を逸らす。櫛田は微笑みを貼り付けたまま、目だけが冷めていた。

 

「……どうして誰も、何も言ってくれないの?」

 

堀北の声がわずかに上ずる。Aクラスを目指すという自分の理想が、クラスメイトたちの心に届いていないことを、彼女は痛いほど実感していた。

そのとき、教室の後方から声が上がる。

 

「待って……堀北さん」

 

佐倉愛里だった。普段は人目を避け、クラスではほとんど発言しない彼女が、珍しく席から立ち上がっていた。頰がわずかに赤らみ、握った拳が小さく震えている。

 

「九条くんを……卑怯者だなんて言うのは、違うと思います」

 

クラス全員の視線が、一斉に佐倉へと集中した。彼女がこんな風に声を上げて誰かに反論するなど、入学以来ほとんど見たことがなかった。堀北も一瞬、眉をわずかに寄せた。

 

「佐倉さん……?」

 

「九条くんは、Aクラスを目指さないって言っただけで……逃げてるわけじゃないよ。補習のときだって、須藤くんたちのためにフォローしてくれたじゃない。目立たないように、でもちゃんと……」

 

佐倉の声はまだ震えていたが、堀北から目を逸らさずに続けた。

 

「堀北さんがAクラスを目指すのは、立派だと思う。でも、それをみんなに強要するみたいに、九条くんを責めるのは……おかしいよ。クラス全員が同じ目標を持てるわけじゃないんだから……!」

 

教室にどよめきが広がった。堀北鈴音は唇を固く結び、冷たい視線を佐倉に向けたまま、静かに言った。

 

「……佐倉さん。感情論で物事を語るのは結構よ、現実もちゃんと見てちょうだい。九条くんのような考え方が蔓延すれば、せっかく皆で頑張って築いてきた絆も努力も水の泡よ!そんなことも分からないの!?」

 

彼女の言葉は鋭く、だがもはや聞くものの心を打つには、もはやこの状況では虚しい言葉に成り下がっていた。

 

「ちゃんと九条くんの言葉、聞いていましたか?『真っ当に実力を身につけて、社会に出ていくことが健全』だって・・・Aクラスになれなかったならどうするの?受験は・・・部活は?皆が皆、特別試験や勉強、部活全てを上手くこなせたりなんて出来ない!私はできない・・・でも九条くんはそんな私でも歩める道を見せてくれたんです、だから・・・私は九条くんに付いていきたい」

 

「佐倉さん・・・」

 

そんな切実な佐倉の心のうちの独白に、堀北は言葉を返せずにいた。Dクラスの亀裂は、もはや修復不可能な段階にまで陥っていた。

 

 

 

 

 

 

 

そして九条や壬生が高育に与えた余波は、Bクラスにも及んでいた。それはDクラスとは全く違う、より深く歪なものであった。

Bクラスの控室に、クラスのリーダーである一之瀬帆波の声が響く。

 

「神崎くん……ちょっと来て」

 

一之瀬の声はいつもより低く、真剣だった。神崎隆二は表情を硬くして、一之瀬の後について控室の奥にある小部屋に入った。一之瀬はドアを閉めると、すぐに切り出した。

 

「神崎くん……本当なの?」

 

彼女は手に持ったメモを神崎に突きつける。そこには、Bクラス生徒数名が「現金での工作」に手を染めているという、具体的な証拠が書かれていた。

 

「DクラスとCクラスの動きに便乗して、Bクラスでも現金工作の依頼……しかも、それを神崎くんが中心になって進めているっていう報告が複数入ってきたわ」

 

一之瀬の瞳には、驚きと失望、そして強い苛立ちが混じっていた。

 

「どういうこと? 説明して、神崎くん」

 

神崎は一瞬、目を伏せたが、すぐに諦めたように息を吐いた。

 

「……全部、本当だ」

 

一之瀬の目が大きく見開かれた。

 

「神崎くん……!」

 

神崎は壁に背を預け、苦々しい表情で続けた。

 

「九条から接触があった。Aクラスからの妨害が激しくなる前に、Bクラスを守るための保険を作っておくべきだと……。現金工作の依頼を先んじてやれば、ポイントに頼らずにクラスを守れる可能性があると説得された。俺は……一之瀬を傷つけたくなかった」

 

一之瀬は唇を震わせ、声を抑えながら言った。

 

「だからって……勝手にそんなことを……!Bクラス全体を危険に晒すような真似をして、私を守るって……それが本当に私のためだと思ってるの?それも・・・家族のお金で試験結果を買うような真似なんて・・・」

裕福でない家庭の出自である一之瀬にとって、現金工作という保護者の金を持って試験結果を操作する行為自体が、受け入れ難いものだった。神崎は神崎で、珍しく感情を露わにした。

 

「一之瀬……お前は優しすぎる。この学校のルールの中で、まっすぐに皆を引っ張ろうとするお前が、AクラスやCクラスの陰謀に潰されるのを、俺は見たくなかったんだ。だから……少しでもリスクを分散させようと・・・」

 

一之瀬は神崎をじっと見つめ、複雑な表情を浮かべた。

 

「神崎くん……私は、あなたにそんなことをしてほしくなかった。Bクラスは、私がリーダーとして責任を持つべきところなのに……どうして私に相談してくれなかったの!?私って、そんなに信用できなかった?」

 

神崎は振りかぶって否定する。

 

「違う!さっきも言ったけど、俺は一之瀬に傷ついてほしく無かっただけだ!みんなも同じ気持ちだ、真っ直ぐにみんなを取りこぼさず、引っ張ってくれる一之瀬のことが好きだから、だから傷つけたくないって!」

 

感情が先走ったのを自覚し、神崎は目を逸らして低く呟いた。

 

「……すまない。だが、もう後戻りはできない。九条のネットワークは、すでにBクラスにも深く入り込んでいる」

 

控室に、重い沈黙が落ちる。一之瀬帆波は、神崎隆二の「守ろうとした行動」が、結果的にBクラスを危険な道に引きずり込んだことを、初めて強く実感していた。

 

 

その晩、一之瀬帆波は、九条間人をBクラス近くの準備室に呼び出した。彼女の表情はいつもより硬く、瞳には怒りと失望がはっきり浮かんでいた。

 

「九条くん……神崎くんに接触したのは、あなたなの?」

 

一之瀬の声は低く、抑えきれない感情が滲んでいた。九条は穏やかな表情を崩さず、静かに頷いた。

 

「ええ、そうです」

 

一之瀬は拳を強く握り、九条を正面から見据えた。

 

「どうして……?神崎くんはBクラスのために一生懸命頑張ってそれをっ!・・・人の好意や善意につけ込んで、神崎くんを唆したんだね・・・最低だよ、九条くん!」

 

彼女の声は震え、目には涙が浮かんでいた。一之瀬にとって神崎は信頼できる右腕であり、大切な存在だ。その神崎を、九条が現金工作に巻き込んだことが、彼女を深く傷つけていた。だが九条は一之瀬の激しい視線を受け止め、しかしはっきりと言った。

 

「はあ、一之瀬さんって意外に鈍いんですね」

 

やや呆れの混じった九条の呟きに、一之瀬の心はキュッと締め付けられる。

 

「え?」

 

「僕が神崎くんにしたことが最低だってことは・・・それは否定しません。ただ……こうなった責任は、綺麗なやり方をクラスに押し付けて、負担を強いてきた一之瀬さんにも、あるんじゃないんですか?」

 

一之瀬の息が止まる。九条は淡々と、しかし容赦なく続けた。

 

「神崎くんも他のメンバーも、みんな一之瀬さんが大好きなんでしょうね・・・『だからこそ』君に気を遣って言い出すことが出来なかった・・・一之瀬さんはいつも『みんなで頑張ろう』『正々堂々と戦おう』と、綺麗な理想を掲げてBクラスを引っ張ってきましたね。でも、それが神崎くんをはじめとするメンバーに、どれだけの負担をかけているか……気づいていましたか?Aクラスからの妨害、Cクラスからの圧力……綺麗なままでは守れない現実を、無理に押し付けていたのは、誰ですか?」

 

一之瀬は唇を震わせ、言葉を返せずにいた。九条は静かに、柔らかい声で締めくくった。

 

「神崎くんたちは、ただ一之瀬さんを守りたいが為、水面下で僕と手を組んでいたに過ぎません。一之瀬さんも、彼らの考えを否定するでなく、もう少しちゃんと向き合ったらどうですか?」

 

一之瀬帆波は九条をじっと見つめ、胸の奥で激しい葛藤を抱えていた。彼女の理想と、現実の残酷さ。そして、九条間人という存在がもたらした、避けられない選択。準備室の薄暗い照明の下で、二人の間に重い沈黙が落ちていた。

 

 

 

 

 

 

(そうだ、ちゃんと向き合わなきゃ・・・ちゃんと皆んなと話せば、ちゃんと・・・)

 

心の中でまるで自分で言い聞かせるように、そして呪詛のように一人言葉を頭の中で反芻させながら、虚な目で登校する一之瀬。だがそんな一之瀬に対して、追い討ちを掛けるような出来事が起こる。

Bクラスの教室では、異様な緊張が張りつめていた。一之瀬帆波はスマホの画面を固唾を飲んで見つめている。

そこには、彼女の過去——中学時代に万引きをしていたという、詳細な情報が匿名で流されていた。

 

「帆波ちゃん……」

 

白波が心配そうに一之瀬の手の甲に、自らの手を重ねる。

教室にいたBクラスのメンバーたちが、次々と一之瀬の周りに集まる。一之瀬は顔を青ざめさせ、震える声で呟いた。

 

「……どうして……こんなことが……」

 

その時、白波が強い声で言った。

 

「帆波ちゃん、気にしないで。嘘でも本当でも関係ないよ。帆波ちゃんのこと、こんな卑怯なやり方で貶めようとした奴……絶対に見つけて、ぶっ潰してあげるからね!」

 

その言葉をきっかけに、他のBクラスのメンバーたちも次々と声を上げた。

 

「そうだよ! 帆波ちゃんが昔に何してたかなんて、俺たちには関係ない!」

 

「誰が流したか知らねえけど、絶対許さねえ。Bクラスで帆波ちゃんを悪く言う奴は、俺たちが全部潰す!」

 

「帆波ちゃんは今、Bクラスのリーダーだ。過去なんて、どうでもいいよ」

 

一之瀬は皆の言葉を聞き、『一瞬』胸の奥が熱くなる。

 

(……みんな……)

 

彼女は小さく安堵の息を吐く。自分の暗い過去が、皆に受け入れられたような気がして、心の底からホッとした。しかし、その安堵のすぐ後に、冷たい恐怖が一之瀬の背中を這い上がった。

 

(……でも……)

 

一之瀬は周囲の顔を、改めて見回した。白波の目には、いつもの優しさではなく、明確な敵意と闘争心が宿っていた。他のメンバーたちも、九条や壬生の影響で変わり始めていた。穏やかだったBクラスが、いつの間にか「敵を許さない」「守るために何でもする」という、強い結束と攻撃性を帯び始めている。

 

「多分Aクラスの連中だろ?あいつらの弱みとかねえのか?」

 

「無ければ現金工作で依頼して、でっち上げでも何でもすりゃあ良い!どうせ碌な連中じゃねえんだ!いっそのこと退学まで追い込んじまえ!」

 

一之瀬は自分の手が小さく震えるのを感じた。

 

(これ……本当に、私の知っているBクラスなの……?)

 

彼女は皆の温かい言葉に囲まれながらも、胸の奥底で、得体の知れない恐怖を覚えていた。

 

(九条くん……あなたが蒔いた種が、こんな風に育っていくなんて……)

 

一之瀬帆波は、自分のクラスが明らかに歪んだ形で「変わり始めている」ことに、深い恐怖を抱いていた。

 

「ちがっ、私はそんなこと・・・」

 

白波や神崎達のことが、酷く恐ろしいものに見えてしまい、そんな自分にも嫌悪さえしてしまう。その教室の空気が耐えられず、思わず走って教室から出て行ってしまった。

 

「待って、帆波ちゃん!」

 

白波の静止も振り切って、ただただ全速力でその場から逃げる一之瀬。その日の夕焼けは、皮肉なことに恐ろしく綺麗な赤に染まっていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

あれ以来、一之瀬帆波は、自室の寮に引きこもっていた。

自分のスマホからはBクラスのメンバーから、何通もメッセージや着信の通知が届いているが、怖くてスマホの画面すら触れずにいる。

 

(……もう、止めて……)

 

スマホの振動ですら、もはや一之瀬にとっては恐怖の対象となって行った・・・

彼女の頭の中では、九条の言葉が何度も繰り返される。

 

『あなたが、その綺麗なやり方を、クラスの皆んなに負担を押しつけていたんじゃないんですか?』

 

その一言が、胸の奥に突き刺さったまま離れない。

 

(私が……みんなに負担を……?綺麗な理想を押し付けて、神崎くんを……皆を、苦しめていたの……?)

 

一之瀬はベッドにうずくまり、震える息を吐く。手段を選ばない先鋭化したBクラス。かつての「みんなで笑顔で頑張ろう」という温かいクラスとは、もう明らかに違う。敵を許さず、守るためなら何でもするという、攻撃的な結束。それは確かに強くなったのかもしれない。

だが、一之瀬には、現金工作で保護者の金すら武器に使い、相手を積極的に貶めてでも勝つと行った今のBクラスの姿勢は、到底受け入れ難いものだった。

 

(どうすればいいの……?私は……このクラスを、どうしたいの……?もう何も、考えたくない・・・)

 

食事もほとんど取らず、誰とも会わず、ただベットにうずくまる日々。

 

そんな中、Bクラス担任の星之宮先生から、一通の留守電が届く。

 

『帆波ちゃん?もし聞いているなら話がしたいの・・・Dクラスの九条くんが、何者かに暴行を受けて、病院に運び込まれたわ』

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