Fランク「鑑定士」の俺、ゴミ捨て場の「錆びた剣」が聖剣だと気づいてネットオークションに出品したら、宝くじ並みの値段で落札された件 ~ボロアパートから始まる、鑑定スキルでの現代成り上がりライフ~   作:えだのあ

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第96話 導き

 アルプスの山肌に埋め込まれるようにしてそびえ立つ、エデン・グループの第一魔力吸引プラント。

 その施設の手前で、俺たちはシルヴィの展開する『影の天幕』の中で再び足を止めていた。

 

「……ここから先は、彼らが設置した『魔力探知障壁』の稼働領域です。ご覧ください」

 

 シルヴィが指し示した先。

 一見するとただの冷たい氷壁にしか見えない空間。だが、俺が右目の『真贋鑑定』に意識を集中させると、視界が歪み、空間をびっしりと覆い尽くす、網の目のように細かく明滅する青白く危険な魔力のレーザー光線が浮かび上がった。

 

「この障壁は、通過する物質の質量、および微弱な魔力反応をミリ単位で常にスキャンしています。さらに、その周波数は不規則に変動しており、完璧に気配を消していても、障壁そのものに触れた瞬間に一発で感知されてしまいます。……私一人では、この流動する隙間を完璧に見極めるのは不可能でした」

 

「なるほどね……。普通の探知器ならハッキングでどうにかなるけど、魔力の直接的な物理障壁となると、私の手には負えないわ」

 

 凛がタブレットを睨みながら、悔しそうに眉をひそめる。

 

「フッ……だからこそ、トオル、君の出番というわけだね。美しき『神の目』の輝き、私に見せておくれ」

 

 シャルルが期待に満ちた目で俺を見つめる。  

 俺は深く息を吐き、右目の『真贋鑑定』を最大出力で稼働させた。

 

 キィィィン……と頭の奥で軽い共鳴音が響き、俺の視界には、ただの青白いレーザー光線ではなく、その一本一本が明滅する「秒数のカウントダウン」と、魔力密度が一時的にゼロになる「安全な隙間」の位置が、正確な座標データとなってリアルタイムで浮かび上がった。

 

 ====================

【名称】エデン製高密度魔力探知障壁・外周網

【周波数】不規則変動中

【解析結果】

 3秒後に、右前方2メートルの区画の魔力密度が1.2秒間だけ消失。

 その直後、左斜め前方1.5メートルに、0.8秒間の安全な隙間が発生。  ====================

 

(……視える。完璧に動きが予測できるぞ。これなら簡単だ)

 

「シルヴィ、俺の指示通りに、迷わず影を動かしてくれ。……みんな、俺の体から絶対に離れるなよ」

 

「わ、わかった!」

 

「透くん、信じてるからね」

 

 セイラが俺の左腕をぎゅっと抱きしめ、凛が右側にぴったりと密着する。

 ……うん、今は集中だ。

 

「いくぞ……3、2、1、右斜め前方に三歩! 進め!」

 

 俺の掛け声と同時に、シルヴィが一切の躊躇なく、滑るように影を移動させた。

 俺たちが足を止めた瞬間、鼻先をかすめるようにして、冷たい魔力の障壁レーザーがヒュンッと音を立てて通過していった。もしコンマ一秒でも遅れていれば、プラント全体に大音量の警報が鳴り響いていたはずだ。

 

「……っ!」

 

 シルヴィの切れ長の目が、驚愕に大きく見開かれる。

 

「次は左だ。二秒後に安全な隙間ができる……そこをすり抜けて、一気に五歩前進……今だ、走れ!」

 

「はいっ!」

 

 俺たちは、不規則にうねる魔力のレーザー迷路の中を、まるで最初からそこに道が存在していたかのように、完璧なタイミングで突破していった。

 右へ三歩、左へ一歩、そして一秒の静止。

 

「これで最後だ。正面のハッチが解除される。……滑り込め!」

 

 ハッ! とシルヴィが影を極限まで縮小させ、俺たちは氷壁に擬態していたプラントの地下搬入口へと、滑り込むようにして滑り込んだ。

 

 重厚な金属ハッチが静かに閉まり、外の猛吹雪の音が完全に遮断される。

 

「……信じられません。あの流動する障壁を、ただの一度も接触せずに、最短ルートで突破するなんて……ソウマ様、貴方の『目』は、文字通り神の領域に達しているのかもしれませんね」

 

 シルヴィは不織布のマスクを外し、驚きと、深い敬意の入り混じった眼差しを俺に向けて頭を下げた。

 

「ただ表示された情報を見てるだけさ。たいしたことじゃないよ」

 

 俺は照れ隠しに頭を掻きながら、アガートラームの格納されている左手の指輪をそっと撫でた。

 俺たちは薄暗い通路を静かに進み、ついにプラントの心臓部である『中央制御室』へと到達した。

 

「……あったわ。あれが、魔力を逆流させるためのバルブね」

 

 凛が防弾ガラスの向こうを指差す。  部屋の最奥、太い青色の配管が複雑に絡み合うその中心に、頑強な真鍮製の巨大なバルブが、静かに鎮座していた。

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