Fランク「鑑定士」の俺、ゴミ捨て場の「錆びた剣」が聖剣だと気づいてネットオークションに出品したら、宝くじ並みの値段で落札された件 ~ボロアパートから始まる、鑑定スキルでの現代成り上がりライフ~   作:えだのあ

105 / 105
第99話 迎撃

 アルプスの地下、分厚い氷河の下に隠されたエデン・グループの第一魔力吸引プラント。

 中央制御室のガラス越しに見える巨大なタービンは、その駆動音を悲鳴のような高音へと変え、逆流する黄金の魔力光をスイスの本社に向けて射出し続けていた。

 

「逆流、完全に安定軌道に乗ったわ。これで連中のメインサーバーは、今頃パンク寸前の過負荷で火を噴いているはずよ」

 

 コントロールパネルに滑らせていた指を止め、凛がふぅと深く息を吐き出した。額には薄っすらと汗が滲んでいるが、その表情にはかつてないほどの達成感と、彼女らしい不敵な笑みが宿っている。

 だが、安堵の時間は一瞬すら与えられなかった。

 

 ――ビィィィィィィン! ビィィィィィィン!

 

 制御室の天井に設置された赤い警告灯が、血の滴るような光を放ちながら激しく回転し始める。

 鼓膜を震わせるけたたましい侵入者排除のサイレンが、冷たいコンクリートの壁に反響して響き渡った。

 

「まあ、黙ってるわけはないわね。……どうやら、お出ましみたいよ」

 

 凛は素早くキーボードを叩き、監視カメラの映像をいくつかのマルチモニターに分割表示させた。

 画面に映し出されたのは、通路の奥から統制された動きで迫り来る、黒いタクティカルスーツを身に纏った私兵部隊。そして、その背後から無表情のまま銃器を構えて行進する、まったく同じ顔をした少女たちの集団だった。

 

「お父様が造り出した人造クローン兵……ほんっと、どこまでも……」

 

 セイラが、その碧眼に強い怒りと悲しみの光を灯し、腰の『エクスカリバー・アヴァロン』の柄にそっと手を添えた。

 

「フッ……実にもって無粋なオーケストラだ。だが、私の友人の美しい仕事を邪魔させるわけにはいかないからね。……シルヴィ、準備はいいかい?」

 

 シャルルが優雅な手つきで防寒コートを脱ぎ捨て、身軽なシャツ姿になる。その全身から、黄金色のオーラが陽炎のように立ち上り始めた。

 

「いつでもいけます、シャルル様。侵入者の排除、および情報の防衛を実行します」

 

 いつの間にかシャルルの影の中に溶け込んでいたシルヴィが、冷淡な声と共にその姿を現した。彼女の切れ長の瞳は、通路の暗闇を鋭く射抜いている。

 

「よし、みんな。ここからは総力戦だ。凛は制御室でシステムの監視と防衛を……他のみんなは、クローンの対応だ!」

 

 俺は一歩前に出ると、左手の指輪に意識を集中させた。  

 こういう時のために、完璧に修復し調整を終えた古代の遺物。

 

「――『変身』」

 

《古代魔導機装・アガートラーム、展開》

 

 シュイィィン!と清冽な青い光が全身を包み込み、漆黒と白金の流線型装甲が、寸分の狂いもなく俺の身体へと纏われていく。

 バイザーの内側に各種センサーの情報がリアルタイムで投影され、俺の感覚は限界以上に研ぎ澄まされた。

 

「行くぞ!」

 

 俺が叫ぶのと同時、通路の角から私兵部隊とクローン兵の集団が雪崩れ込んできた。

 クローン兵たちは、人間らしい躊躇を一切見せることなく、一斉に手にした魔導アサルトライフルをこちらに向けて構える。

 

「標的を確認。一斉射撃を開始する」

 

 無機質な、重なり合う少女たちの声。  直後、狭い通路を埋め尽くすほどの、青白く高密度に圧縮された魔力レーザーの雨が放たれた。

 

「トオル、ここは頼んだよ!」

 

「ああ、任せろ!」

 

 俺は地を蹴り、アガートラームのパワーアシストによって、弾幕の真っ只中へと割って入った。  両腕を交差させ、絶対装甲の盾を構える。

 

 ガガガガガガガガッ!!!

 

 激しい衝突音と、火花。  一発で鋼鉄を容易く消し飛ばす威力の魔力弾が、アガートラームの装甲に触れた瞬間、青い光の粒子となって霧散していく。

 衝撃波は内部の緩衝システムが完全に殺し尽くし、俺の肉体には微かな振動すら伝わってこない。

 

「びくともしないな……! さすがは神話級だ!」

 

『当然です、主様! その程度のブリキの玩具の弾幕など、ワタシたちの防壁の前には無力! さあ、今度はワタシたちからお礼をして差し上げましょう!』

 

「褒めたのはお前じゃないんだけど……まあいいや。頼りにしてる!」

 

『お任せあれ!!!!』

 

 俺の右手に握られたカリバーンが、嬉々として漆黒と白銀のオーラを放ち始める。

 

「シャルルさん、今だ!」

 

「美しきタイミングだね! では、私の舞を披露しよう!」

 

 俺の背後から、黄金の光を放ちながらシャルルが跳躍した。  彼は壁を踏み台にし、狭い通路の天井近くを燕のように滑らかに滑空する。

 

「美の烈脚《ラファール・ドゥ・ボーテ》!!」

 

 空中で体勢を捻り、放たれたのは、嵐のような連続蹴り。

 彼の鍛え抜かれた脚から放たれる黄金の斬撃波が、私兵部隊の防盾をいとも容易く紙クズのように切り裂き、クローン兵たちを後方へと吹き飛ばしていった。

 

 

「……影よ」

 

 混乱する敵の足元から、今度はシルヴィが動いた。  倒れた私兵やクローン兵たちの影が、不自然に波打ち、鋭い黒い棘となって下から一斉に突き上げる。

 

 ズバズバズバッ!

 

 影の棘に貫かれたクローン兵たちは、痛みを感じないまま、ただの壊れた機械のように「システムエラー。魔力供給の遮断を確認」とシステム音を口にしながら、静かに崩れ落ちていく。

 

「じゃあ、残りは私任せて!!」

 

 セイラが『エクスカリバー・アヴァロン』を上段に構えた。

 創世級の真の力が解放された聖剣から、広間全体を白一色に染め上げるほどの、圧倒的な神聖なる光が溢れ出す。

 

「はぁぁぁぁッ!!」

 

 振り下ろされた白銀の刃。

 光の刃は、通路の壁や天井を傷つけることなく、残存していたクローン兵たちの魔導武器と防御障壁だけを正確に、そして分子レベルで消滅させた。

 音すらない、完全なる絶対切断。

 

「……ふう。片付いた、かな」

 

 セイラが剣を鞘に収め、軽く息を吐き微笑んだ。  

 通路には、完全に戦闘能力を奪われ、気絶した私兵と、機能停止したクローン兵の抜け殻だけが残されている。

 俺たちの完璧な連携。神話級、創世級の装備を揃えた今の俺たちにとって、量産型の私兵やドールなど、もはや脅威ではなかった。

 

 だが。

 

 ――カツ、カツ、カツ。

 

 静まり返った通路の奥から、不自然なほど静かで、しかし、大理石の床を深く踏みしめるような重い足音が響いてきた。

 

「……っ!」

 

 セイラがビクッと肩を震わせ、今引いたばかりの聖剣の柄に、再び手をかけた。

 俺の右目の『真贋鑑定』が、通路の曲がり角の奥から、心臓を直接握り潰されるような、悍ましい魔力の気配を感知する。

 アガートラームのバイザーに表示される警告エラーが、激しく明滅し始めた。

 

 現れたのは、漆黒の軍服を身に纏い、血のように赤い髪を揺らす、一人の少女。  

 セイラと全く同じ、美しくも無機質な顔立ち。

 だが、その瞳は光を吸い込むように濁った、深い赤色だった。

 

「……オリジナル、およびMaster_Eyeを確認。……確保を開始する」

 

 セイラの完璧なクローン体、ノア。  

 彼女の出現により、空気の温度が急速に下がり、通路全体に濃密な殺気が満ちていった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ダンジョンから帰ったら五十年経ってたんだが。~え?昔の仲間が今や大手ギルドの代表?なにそれ知らん……こわ……~(作者:蝉時雨)(オリジナル現代/冒険・バトル)

 世界にダンジョンという、いくつもの『扉』が出現してから、早五十年。▼ ▼ 人類はこの未知の脅威に対し、慎重に対処をしようとしていた。しかし、その『扉』から現れた異形のモノたちが蹂躙をはじめる。▼ 現代の兵器は異形には届かず、為す術なしかに思われた。▼ だが、人類は諦めなかった。▼ 自ら『扉』に乗り込み、戦果を持ち帰るものが現れ始める。『扉』の先で得た素材で…


総合評価:1068/評価:7.03/連載:31話/更新日時:2026年08月02日(日) 00:00 小説情報

【書籍化決定】クラス転移したけど俺だけステータス表記が違った(作者:星野林(旧ゆっくり霊沙))(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

学校で進路を悩んでいた斎藤隆史(サイトウ タカシ)はクラスに馴染めずに居た。▼そんな最中、突如異世界にクラスごと召喚もとい拉致され、魔王と戦えと言われる。▼そして各自に役職と能力が付与されているからとステータスを開くように言われてステータス画面を見ると……皆が普通のRPG表記なのに、俺だけポケ◯ンみたいにレベル形式だし、技ってのが見える。▼そして始まる異世界…


総合評価:2820/評価:8.14/完結:95話/更新日時:2026年08月06日(木) 10:50 小説情報

底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす(作者:オタリオン)(オリジナル現代/冒険・バトル)

底辺Vtuberの根黒万太郎。▼十年前にやり込んでいたロボゲーの続編やったら動きが変態過ぎて大バズり!▼闘争を求めてやって来る強き変態たちに万太郎は更なるバズりを求める。▼果たして、万太郎は底辺を卒業しトップVtuberとなれるのか?▼(☆):他者視点有りのマークです。▼※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。


総合評価:1407/評価:7.72/連載:79話/更新日時:2026年07月28日(火) 19:59 小説情報

オラリオで娯楽革命を(作者:寝心地)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

オラリオでテレビゲームとか携帯ゲームとかカードゲームとか作って売っちゃう話。▼ダンまちにゲームキャラが転生とかゲームキャラで転生とかはあるけどゲームその物がオラリオにあるのって見ないなぁ〜と思って作りました。▼


総合評価:3137/評価:7.22/連載:122話/更新日時:2026年07月20日(月) 10:00 小説情報

転生したら異世界の宇宙最強の龍でした!〜0から星と生命を作り出して一大文明の支配者になったので現代日本へ帰還します。自分は日本が一番暮らしやすい。〜(作者:電動ガン)(オリジナル現代/コメディ)

目覚めたら無だった。何も無い。宇宙さえも。自分の身体を見る。銀色の甲殻、長い尻尾これモンスターだ!?よく見ると俺の他にも二頭のモンスターが。ドラゴンだこれ!!▼俺たち三頭の女神龍は宇宙創成の前の世界にいる。俺たちを生み出した主神の指示で世界を作り生命を繁栄させることとなったけど・・・・・・それ何年掛かるの?▼何億年も掛けて生命が宿れる星を何個も作り、失敗し、…


総合評価:2408/評価:7.51/連載:127話/更新日時:2026年08月05日(水) 19:21 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>