Fランク「鑑定士」の俺、ゴミ捨て場の「錆びた剣」が聖剣だと気づいてネットオークションに出品したら、宝くじ並みの値段で落札された件 ~ボロアパートから始まる、鑑定スキルでの現代成り上がりライフ~   作:えだのあ

115 / 115
第109話 秘策

「提案……って、何かしら? ノア」

 

 凛が、壁に寄りかかりながらも鋭い視線をノアに向ける。

 

「改めてまとめると、お父様は、残る四つのプラントの出力を最大にして、ジュネーブ本社の魔力炉心へ直接魔力を送るつもり。それが完了すれば、お父様の『神化』は止められなくなる」

 

「やっぱり、時間との勝負になるね……。でも、残りのプラントは欧州各地に点在してるんだよ? 私でも移動するだけでも数日はかかるよ」

 

 セイラが『エクスカリバー・アヴァロン』を鞘に収め、焦りをにじませて言う。

 

「うん。普通に移動していては、間に合わない……だから、ここ、第一プラントの中枢システムを使う」

 

 ノアは、俺たちの顔を一人ずつ見つめながら、淡々と、しかし一歩も引かない決意を込めて語り続けた。

 

「第一プラントは、エデンの魔力吸引ネットワークの『主結節点』の一つ。ここから逆接続のシグナルを送り、地脈の通信回路を通じて、残り四つのプラントの安全弁を強制的に閉鎖、魔力を逆流させる」

 

「それって、ハッキングで残りのプラントも一括停止できるってこと?」

 

 凛が驚いたように身を乗り出す。だが、ノアは静かに首を横に振り、頭部の角を指した。

 

「システムを通しただけの正規アクセスでは、本社側のメインフレームに一瞬で検知され、遮断される……だから、私の脳内にある、旧魔力リンクのポートを『直接』中継アンテナにする」

 

「ノア……それ、どういうこと?」

 

 セイラが怪訝そうに眉をひそめる。

 

「私はクローンとして、常にお父様の精神波、そしてエデンの魔力ネットワークと微弱に同調するように造られた。角を介して、私の脳の魔力回路を第一プラントのメインフレームに接続すれば、探知されることなく、四つのプラントに『お父様自身の命令』として偽装した逆流シグナルを同時に送り込める……かも」

 

「……待て。その『かも』っていうのは、どういうことだ?」

 

 俺は一歩前に進み出ると、ノアの小さな肩を掴んで、その茜色の瞳を覗き込んだ。

 ノアは一瞬だけ驚いたように瞬きをしたが、すぐに視線を伏せた。

 

「……単純に難しいだけ。大した話じゃない」

 

「嘘言うな。お前、何か隠しているだろ」

 

「……」

 

 ノアは小さく唇を噛み、黙り込んでしまった。

 やはり、何か重大なリスクを隠している。

 俺は掴んでいた手の力を少しだけ緩め、右目に意識を集中させた。

 俺の固有スキル『真贋鑑定』が、ノアの脳内に描かれているその「計画」の真実を暴くために熱を帯びる。

 

 ――ブォン。

 

 視界が軽く歪み、ノアの頭部から伸びる魔力回路のシミュレーション図の上に、冷酷なシステムウィンドウが展開された。

 

 ====================

【対象】ノアの脳内魔力リンク接続計画

【詳細】

 四つのプラントから押し寄せる同期シグナルの負荷が、直接ノアの脳内魔力回路(角の基部)を通過するため、脳に非常に強い負荷がかかる。

 高確率で精神崩壊、あるいは永続的な脳死状態に至る恐れあり。

 ====================

 

「……精神崩壊、脳死の恐れあり、か」

 

 俺が鑑定結果をそのまま口にすると、制御室の空気が一瞬にして凍りついた。

 

「ダメ! 絶対にダメだよ、ノア!」

 

 セイラがノアの小さな身体を強引に抱き寄せ、その顔を覗き込んだ。その碧眼には、今にも零れ落ちそうな涙が浮かんでいる。

 

「やっと、お父様から自由になれたんだよ!? やっと私の妹になれたのに……なんでそんな死んじゃうかもしれないことするの!?」

 

「大丈夫だよ、お姉さま。死ぬつもりはないから……きっと、私なら耐えられる」

 

 ノアは痛々しいほどに力なく微笑み、セイラの涙をその小さな指先でそっと拭おうとした。

 だが、その指先はわずかに震えている。彼女自身、自分がやろうとしていることの恐ろしさを、誰よりも理解しているはずだった。

 

「耐えられるわけがないだろ」

 

 俺は二人の間に割って入るようにして、ノアの前に膝をついた。

 

「脳の魔力回路が焼き切れるなんて、そんなリスクを冒していい理由にはならない。ノア、お前はもう兵器でも人形でもないんだ。自分の命をそんな風に雑に扱うな」

 

「でも、お兄様……これくらいしか、お父様の計画は止める手段がない……出来ることをやらないと、私は……」

 

 ノアの消え入りそうな声が、冷たい制御室に寂しく響く。「役に立たねば存在価値がない」という呪縛が、まだ彼女の心を縛っているのだろうか。

 俺はふっと息を吐き、ノアの頭にそっと手を置いた。

 

「作戦を考えてくれただけで十分だよ。ありがとな」

 

 俺はそう言って優しく微笑み、左手の『アイテムボックス』から、ひび割れて静かに眠っている『神魔剣カリバーン』を取り出した。

 

「代わりに、こいつを使う。……こいつは魔力を完全に使い果たして休眠中だ。ノア、お前が接続する際、負荷となる余剰魔力をすべてこのカリバーンに吸わせるんだ」

 

「剣に、吸わせる……?」

 

 ノアが不思議そうに茜色の瞳を瞬かせる。

 

「カリバーンは魔力を吸収、放出する性質を持っている。正式な所有者じゃないノアが持てば、過剰な魔力を勝手に吸って、余った分は勝手に発散してくれるはずだ」

 

 さらに、休眠中のカリバーンに魔力を充填させることもできる。魔力を失った相棒を復活させ、ノアの安全も確保する。まさに一石二鳥の手段だった。

 俺はひび割れた黒と銀の刀身を、そっとノアの小さな手に握らせた。

 

「というわけで、ノア。これを持ってリンクに臨んでくれ。こいつを臨時の避雷針にする。これならお前の脳が焼き切れる心配もないし、ついでにコイツも復活だ」

 

 ノアは両手でカリバーンの柄を握りしめた。

 力を失い、冷たくなっていた黒と銀の刀身。だが、彼女が触れた瞬間、カリバーンはまるでおねだりをするかのように、微かに「チリッ……」と低い共鳴音を立てて震えた。

 その、刀身から伝わる微かな温もりに、彼女の表情から徐々に強張りが消えていく。

 

「……うん。お兄様がそう言ってくれるなら、私、やってみる」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ダンジョンから帰ったら五十年経ってたんだが。~え?昔の仲間が今や大手ギルドの代表?なにそれ知らん……こわ……~(作者:蝉時雨)(オリジナル現代/冒険・バトル)

 世界にダンジョンという、いくつもの『扉』が出現してから、早五十年。▼ ▼ 人類はこの未知の脅威に対し、慎重に対処をしようとしていた。しかし、その『扉』から現れた異形のモノたちが蹂躙をはじめる。▼ 現代の兵器は異形には届かず、為す術なしかに思われた。▼ だが、人類は諦めなかった。▼ 自ら『扉』に乗り込み、戦果を持ち帰るものが現れ始める。『扉』の先で得た素材で…


総合評価:1072/評価:7.03/連載:32話/更新日時:2026年08月09日(日) 00:00 小説情報

底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす(作者:オタリオン)(オリジナル現代/冒険・バトル)

底辺Vtuberの根黒万太郎。▼十年前にやり込んでいたロボゲーの続編やったら動きが変態過ぎて大バズり!▼闘争を求めてやって来る強き変態たちに万太郎は更なるバズりを求める。▼果たして、万太郎は底辺を卒業しトップVtuberとなれるのか?▼(☆):他者視点有りのマークです。▼※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。


総合評価:1430/評価:7.7/連載:79話/更新日時:2026年07月28日(火) 19:59 小説情報

【書籍化決定】クラス転移したけど俺だけステータス表記が違った(作者:星野林(旧ゆっくり霊沙))(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

学校で進路を悩んでいた斎藤隆史(サイトウ タカシ)はクラスに馴染めずに居た。▼そんな最中、突如異世界にクラスごと召喚もとい拉致され、魔王と戦えと言われる。▼そして各自に役職と能力が付与されているからとステータスを開くように言われてステータス画面を見ると……皆が普通のRPG表記なのに、俺だけポケ◯ンみたいにレベル形式だし、技ってのが見える。▼そして始まる異世界…


総合評価:2931/評価:8/完結:95話/更新日時:2026年08月06日(木) 10:50 小説情報

オラリオで娯楽革命を(作者:寝心地)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

オラリオでテレビゲームとか携帯ゲームとかカードゲームとか作って売っちゃう話。▼ダンまちにゲームキャラが転生とかゲームキャラで転生とかはあるけどゲームその物がオラリオにあるのって見ないなぁ〜と思って作りました。▼


総合評価:3158/評価:7.23/連載:122話/更新日時:2026年07月20日(月) 10:00 小説情報

転生したら異世界の宇宙最強の龍でした!〜0から星と生命を作り出して一大文明の支配者になったので現代日本へ帰還します。自分は日本が一番暮らしやすい。〜(作者:電動ガン)(オリジナル現代/コメディ)

目覚めたら無だった。何も無い。宇宙さえも。自分の身体を見る。銀色の甲殻、長い尻尾これモンスターだ!?よく見ると俺の他にも二頭のモンスターが。ドラゴンだこれ!!▼俺たち三頭の女神龍は宇宙創成の前の世界にいる。俺たちを生み出した主神の指示で世界を作り生命を繁栄させることとなったけど・・・・・・それ何年掛かるの?▼何億年も掛けて生命が宿れる星を何個も作り、失敗し、…


総合評価:2493/評価:7.49/連載:131話/更新日時:2026年08月09日(日) 16:51 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>