Fランク「鑑定士」の俺、ゴミ捨て場の「錆びた剣」が聖剣だと気づいてネットオークションに出品したら、宝くじ並みの値段で落札された件 ~ボロアパートから始まる、鑑定スキルでの現代成り上がりライフ~   作:えだのあ

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第18話 フリマ巡回

「というわけで、お前は俺の部下だ。よろしく頼むぞ、凛」

 

「う、うぅ……鬼、悪魔……」

 

 違約金100億円の奴隷契約……もとい、専属マネジメント契約書にサインを終えた凛は、VIPルームのソファで完全に魂を抜かれていた。

 これで俺の背後は完全に守られた。セイラさんという『最強の盾』に加え、凛という営業担当を手に入れたのだから。

 

「じゃあ、早速なんだけど」

 

「な、何よ! いきなりこき使う気!?」

 

「いや、今日はもう帰っていいぞ。当分は自宅待機だ」

 

「……は?」

 

 凛が涙目のまま、きょとんと首を傾げる。

 

「だって、よく考えたら今、俺の手元に売るための商品が一つもないんだよ。アイギスの盾はセイラさんに譲っちゃったし、星霊のチョーカーも彼女へのプレゼント用だし」

 

「ざ、在庫ゼロ!? じゃあ私、結局収入無いじゃないの!?」

 

「そういうこと。だから俺が新しい商品を仕入れて、修復が終わるまではお前も休みだ。せいぜい海外の富裕層のリストアップでもしといてくれ」

 

 俺はそう言い残し、呆然とする凛をラウンジに放置して、颯爽とタクシーに乗り込んだ。

 

 ◇

 

 新宿のタワマン、35階の自室。

 帰宅した俺は、真っ先にバルコニーへと向かった。

 

 そこには、昨夜から魔力を込めたミネラルウォーターに浸し、天日干しによる浄化を行っていたアイテムが置かれている。

 

 深層のゴミ捨て場で見つけた、伝説級アーティファクト。

 ――『星霊のチョーカー』だ。

 

 水から引き上げ、柔らかい布で優しく拭き上げる。

 すると、薄汚れていた表面の泥が嘘のように消え去り、白銀の台座と、星空を閉じ込めたようなサファイアブルーの宝石が燦然と輝き始めた。

 

《浄化完了:星霊のチョーカーが本来の力を取り戻しました》

《真価:装備者の肉体的・精神的疲労を常時自動回復》

 

「よし、完璧だ」

 

 俺は、この日のために高級ネット通販で取り寄せていた『ベルベット生地のジュエリーボックス(3万円)』に、チョーカーを丁寧に収めた。

 

 15億円のエクスカリバーを百均のプチプチで包んでSランクに手渡ししたあの日から、俺も少しは成長しているのだ。

 

「さて、これで本当に手元のアイテムはゼロになったわけだけど……」

 

 俺はふかふかのソファにダイブし、ノートPCを開いた。

 一番手っ取り早い仕入れは、またダンジョンのゴミ捨て場に行くことだ。だが、俺はFランクで戦闘力は皆無。一人で潜ればモンスターや質の悪い探索者に襲われるリスクが高すぎる。

 

「安全に、確実に、お宝を仕入れる方法……」

 

 そこでふと、先ほどのラウンジでの出来事を思い出した。

 俺は凛が持ってきた『電子データ(PDF)の契約書』を、タブレットの画面越しに鑑定し、隠されたトラップを見抜いたのだ。

 

「待てよ? 画面越しでも『真贋鑑定』が使えるなら……」

 

 俺は弾かれたように起き上がり、探索者専用ネットオークション『D・マーケット』にアクセスした。

 検索窓にキーワードを打ち込む。

 

【検索:ジャンク品 / 詳細不明 / 訳あり / 呪い】

【並び替え:価格の安い順】

 

 エンターキーを叩くと、全国の探索者たちが出品した『ゴミ』の山が、画面いっぱいに表示された。

 ひび割れた杖、錆びた指輪、真っ黒な謎の塊。

 ギルドの鑑定機でも判別できなかったり、修復不可能と判断されて二束三文で投げ売りされているアイテムたちだ。

 

「まさかな……」

 

 俺はゴクリと喉を鳴らし、右目に意識を集中させる。

 モニターの光をじっと睨みつけると――。

 

 ――ブォン。

 

 視界が切り替わり、PCのブラウザ画面の上に、無機質なシステムウィンドウが次々とポップアップし始めた。

 

【ただの石ころ(本当にただの石です)】

【折れたゴブリンの剣(修復不可)】

【スライムの粘液(腐敗進行中)】

 

「……っ! 視える! 写真越しでも、ネットの出品物まで鑑定できるぞ!」

 

 俺は歓喜の声を上げた。

 これなら、危険なダンジョンにわざわざ足を運ぶ必要なんてない。

 安全なクーラーの効いたタワマンの部屋から、全国の探索者が拾い集めたゴミの山を、俺の『神の目』で片っ端から漁ることができるのだ!

 しかも、俺の銀行口座には大金がほぼが手つかずで眠っている。

 

「資金力に物を言わせて、全国のジャンク品を買い漁ってやる!」

 

 俺はマウスのホイールを猛烈な勢いで回し始めた。

 画面をスクロールすること数千件。時間にして二時間ほど経過した時。

 

「……ん?」

 

 一つの出品画像に、俺の目が釘付けになった。

 

『出品名:真っ黒な石?(重いです)ノークレームで』

『即決価格:10,000円』

 

 写真はピンボケ気味で、泥と煤にまみれた黒い塊が映っているだけ。

 だが、俺の『真贋鑑定』は、その奥に眠る真実をハッキリと映し出していた。

 

====================

【名称】亜空間の指輪(アイテムボックス)

【ランク】神話級

【状態】重度の魔力ヘドロによる硬化、偽装

【真価】容量無限・時間停止機能付きの収納空間。装備者のみアクセス可能。

【修復条件】重曹とクエン酸を混ぜた微温湯による発泡洗浄。

【推定市場価格】測定不能(※最低でも20億円~)

 

「……っ!! アイテムボックスだと!?」

 

 俺はPCの前で立ち上がった。

 探索者にとって、荷物の運搬は永遠の課題だ。容量の大きいマジックバッグですら数千万円で取引されるのに、容量無限で時間停止機能付きの神話級だと?

 これがあれば今後の『仕入れ』や『発送』が圧倒的に楽になる。絶対に手に入れなければならないチートアイテムだ。

 

「よし、誰かに気づかれる前に即決落札だ!」

 

 俺は迷わず購入ボタンを叩き、クレジットカードで決済を完了させた。

 しかし、こんな途方もないお宝を、たったの1万円で投げ売りするなんて、どこのどいつだろうか。

 出品者の名前を確認してみる。

 

【出品者ID:Brave_Leader】

 

「……ん?」

 

 Brave_Leader……

 見覚えのある文字列に、俺は思わず苦笑いをこぼした。

 

「……剛田。お前って奴は」

 

 激レアアイテムを、たったの1万円で手放した元リーダーに向けて、俺は画面越しに合掌した。

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