Fランク「鑑定士」の俺、ゴミ捨て場の「錆びた剣」が聖剣だと気づいてネットオークションに出品したら、宝くじ並みの値段で落札された件 ~ボロアパートから始まる、鑑定スキルでの現代成り上がりライフ~ 作:えだのあ
翌朝。
俺は小鳥のさえずりではなく、空腹の腹の音で目を覚ました。
時計を見ると、午前10時を回っている。
出品してから約12時間が経過していた。
「……怖くて見れねぇ」
俺は枕元のスマホを睨みつけた。
もし『入札件数:0』のままだったら?
あるいは、『違反報告』が大量に来ていたら?
だが、現実は待ってくれない。
俺は意を決して、画面をタップした。
スリープが解除され、『D・マーケット』のアプリ画面が表示される。
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【商品名】
【真作】聖剣エクスカリバー(リペア済み・封印解除率15%)
【現在価格】
500円
【入札件数】
3件
「……ごひゃくえん」
俺はガクリと膝をついた。
いや、0円じゃないだけマシだ。マシだが……!
「サビ落としとたわし代で648円かかったんだぞ!? 赤字じゃねーか!」
15億円の聖剣が、ワンコインランチ以下。
これが現実だ。エクスカリバーの出品だなんて、誰も信じちゃいない。
コメント欄を開くと、案の定、冷やかしの嵐だった。
『なんだこれw 聖剣(笑)』
『商品名に【真作】とかつける奴ほど詐欺』
『背景がボロい畳なのが芸術点高い』
『500円なら子供のお土産にいいかも。入札しとくわ』
『↑やめとけ、どうせプラスチック製の模造品だろ』
胸が痛い。
物理的な攻撃よりも、こういう言葉の暴力の方が心に来る。
特に「畳がボロい」に対する反論ができないのが辛い。
「もういい。取り下げよう」
俺は諦めかけた。
このまま晒し者になるくらいなら、自分で使ったほうがマシだ。弱いなりに多少は探索者としてやっていけるかもしれない。
出品キャンセルのボタンに指を伸ばす。
その時だった。
ピロン♪
軽快な通知音が鳴った。
新しいコメントがついたようだ。
『ID: Weapon_Maniac(評価:12500)』
『おい、お前ら画像を拡大してみろ。刀身のルーン文字、これただの掘り込みじゃないぞ』
……ん?
なんだこいつ。評価数が1万超えの古参ユーザー?
『ID: Weapon_Maniac』
『そもそも普通のカメラで撮ってんのに、ここまでノイズが乗るのは異常だ。それに、この青い宝石……もしかしてオリハルコンじゃね?』
そのコメントを皮切りに、流れが変わり始めた。
『マニアック氏が反応してるってことは、マジモン?』
『いやいや、ただの加工画像だろ』
『でも、加工にしては光源の反射がリアルすぎないか?』
『俺も鑑定してみた。「詳細不明」って出たぞ。ただの鉄なら「鉄」って出るはずだ』
ざわざわとコメント欄が不気味に動き出す。
俺が呆気にとられていると、再び通知音が鳴った。
今度はコメントではない。
入札通知だ。
ブブッ。
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【現在価格】
1,000円
ブブッ。
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【現在価格】
5,000円
「お、おぉ?」
ブブブッ。
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【現在価格】
10,000円
入札額の桁が変わった。
俺の手の中で、スマホが震えだす。
最初は数分おきだった振動が、数秒おきになり、やがて――。
ブブブブブブブブブブブッ!!!
途切れることのない連続振動に変わった。
まるでスマホが熱暴走を起こしたかのように、画面の数字が目まぐるしく回転し始める。
『現在価格:50,000円』
『現在価格:120,000円』
『現在価格:350,000円』
「ちょ、ええええええ!?」
俺はスマホを取り落とした。
畳の上で、スマホが生き物のように暴れまわっている。
コメント欄は、もう読むことすらできない速度で流れていく。
『祭りキターーーー!』
『本物確定! ギルドの鑑定士にスマホ見せたら「測定不能」って言われた!』
『出品者何者だよ!?』
『100万出す! 俺に売れ! お前ら買うな!』
通知の嵐。
恐怖すら覚えるほどの熱狂。
俺が呆然と見守る中、一際大きな通知ウィンドウが画面を覆い尽くした。
《高額入札者が現れました》
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【現在価格】
5,000,000円
入札者:Gold_Rush(大手買取店)
「ご……ごひゃく、まん……?」
俺の家賃、おおよそ16年分。
それが、たった数分で。
喉がカラカラに乾く。
心臓が破裂しそうだ。
夢なら覚めてくれ。いや、覚めないでくれ!
だが、祭りはこれで終わりではなかった。
500万円という高値を、鼻で笑うような『本物』たちが、動き出したのだ。
ブブッ――ピロリン!
今までとは違う、特別仕様の派手な通知音が鳴り響く。
画面に表示されたのは、一般ユーザーとは違う『金色の枠』で囲まれた入札者名だった。
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【現在価格】
100,000,000円
入札者:■■■■(Sランク探索者権限により匿名)
「い、一億ッ!?」
思考が停止した。
ボロアパートの六畳間で、俺は絶叫した。
隣の住人が壁をドンドンと叩く音が聞こえたが、今の俺には、それが祝福のドラムにしか聞こえなかった。