Fランク「鑑定士」の俺、ゴミ捨て場の「錆びた剣」が聖剣だと気づいてネットオークションに出品したら、宝くじ並みの値段で落札された件 ~ボロアパートから始まる、鑑定スキルでの現代成り上がりライフ~ 作:えだのあ
新宿駅前、第一防衛線。
先ほどまで死の恐怖に支配されていた戦場は、今や探索者たちの歓喜と怒号が支配する蹂躙の舞台へと変貌していた。
「押し返せェッ! 一歩も引くなァッ!」
最前線に立つAランクの盾役が、貸与された伝説級の白銀の大盾を構えて突進する。
衝突。深層クラスのバケモノであるキング・オーガが全力で振り下ろした黒鋼の棍棒と大盾が激突し、凄まじい衝撃波が周囲の瓦礫を吹き飛ばした。
だが、盾役の男は一歩も下がらなかった。それどころか、盾に秘められた圧倒的な反発力がオーガの巨体を撥ね退け、あろうことかビル三階ほどの高さを持つ魔物が、無様に宙を舞って後方へと吹き飛んだのだ。
「す、すげえ……本当に俺の力かよ、これ!?」
「油断するな! 一気に畳み掛けるぞ!!」
盾役が作った巨大な隙を見逃さず、後衛の魔法使いたちが動いた。
彼らの手には、Master_Eyeから転送されたばかりの神話級・伝説級の宝杖が握られている。杖の宝玉から流れ込む無尽蔵の魔力は、彼らの枯渇していたMPを瞬時に回復させるだけでなく、魔法の威力を常識外れの次元にまで引き上げていた。
「
放たれたのは、本来なら数十人の魔導士が儀式詠唱を行ってようやく発動できる戦略級魔法。
それが、たった一人の魔法使いの杖から、無詠唱で放たれた。
新宿の夜空を覆い尽くすほどの巨大な炎の嵐が巻き起こり、押し寄せていた魔物の大群を、悲鳴を上げる間もなく一瞬にして灰燼に帰していく。
剣士たちは紫電や絶対零度の冷気を纏う魔剣を振るい、深層の硬い甲殻を持つ魔物たちを、まるで熱したナイフでバターを切るように次々と切り刻んでいく。
傷を負った者がいれば、ヒーラーが掲げた聖なるメダリオンから光の雨が降り注ぎ、欠損した四肢すらも瞬く間に再生させた。
◇
「……信じられない。たった三百人で、数万の魔物の大軍を一方的に押し潰してるわ」
地下深くに位置する安全なオフィス。
巨大なマルチモニターの前で戦況を見守っていた
「そうだな……」
俺は冷静を装って答えたが、内心では少しだけ冷や汗をかいていた。
修復したアイテムの性能テストはしたことがなかったが、セイラ以外の探索者が扱っても、ここまでデタラメな威力を発揮するとは。もしこれらが悪意あるテロリストの手に渡っていたらと思うと、ゾッとする。
今後は取引をする相手も選ばなきゃいけないかもしれない……
『――GYAOOOOOOOOOOOOOOOOOッ!!!!』
その時。
モニター越しでも空気が震えるのが分かるほどの、耳を劈くような凄まじい咆哮が新宿に轟いた。
「な、何!?」
◇
報道ヘリのカメラが、新宿ダンジョンの崩壊したエントランスゲートを映し出す。
そこから這い出してきたのは、全長三十メートルは優に超える、八つの首を持つ漆黒の邪竜――深層の最奥にのみ生息するとされる厄災指定モンスター『アビス・ヒドラ』だった。
その圧倒的な威圧感と、八つの口から漏れ出す腐食のブレスの予兆に、チート武器を手にして無双していた探索者たちすらも一瞬、恐怖に足を止めた。
だが、その巨大な絶望の前に、たった一人、白銀の光を纏った小さな影が立ち塞がった。
「みんな、下がって! あいつは私がやる!」
日本最強のSランク探索者、
彼女は左腕の『アイギスの盾』を前に突き出し、アビス・ヒドラの八つの首から同時に放たれた腐食と業火の極太ブレスを、真正面から受け止めた。
カアァァァァァァァンッ!!!
魔法反射率100%。街の区画を丸ごと消し飛ばすほどの威力を誇るブレスが、アイギスの盾の表面で完全に弾き返され、ヒドラ自身へと跳ね返る。
自らのブレスで巨体を焼かれ、ヒドラが苦悶の咆哮を上げた。
その、最大の隙。
セイラが右手の『聖剣エクスカリバー』を天高く掲げる。
刀身から迸る白銀の魔力が、夜空を貫く巨大な光の刃となって顕現した。
「聖剣解放……エクスカリバーッ!!ッ!!」
振り下ろされた白銀の刃が、空間そのものを切断するような鋭さでヒドラへと迫る。
音すらなかった。
三十メートルを超える巨大な八つの首が、たった一閃の下に、根本から滑るように斬り落とされた。
ズズンッ……!!
首を失った巨体が地響きを立てて倒れ伏し、黒い血がアスファルトを濡らす。
深層の王のあっけない死を目の当たりにした残存の魔物たちは、完全に戦意を喪失し、悲鳴を上げながらダンジョンの奥深くへと逃げ帰り始めた。
『……や、やりました……! アビス・ヒドラ、討伐! 魔物の群れが退いていきます! 防衛線の維持に……いや、新宿の防衛に、完全に成功しましたァァァッ!!』
報道ヘリに乗るアナウンサーの、泣き叫ぶような実況が響き渡る。
前線の探索者たちも、武器を天に掲げて勝利の雄叫びを上げていた。