Fランク「鑑定士」の俺、ゴミ捨て場の「錆びた剣」が聖剣だと気づいてネットオークションに出品したら、宝くじ並みの値段で落札された件 ~ボロアパートから始まる、鑑定スキルでの現代成り上がりライフ~   作:えだのあ

36 / 36
第34話 邂逅

 空が白み始め、長い夜が明けようとしていた頃。

 地下要塞のオフィスでモニターを監視していた俺のスマホが、ブルッと震えた。連絡先アプリ『D・チャット』の通知だ。

 

『透さーん! 言われた通り、探索者たちから武器と防具、全部回収し終わったよ!』

『でも私の空間収納スキルじゃ、さすがに全部は入りきらないよー! 重いし嵩張るから、早く取りに来て!(泣き顔スタンプ)』

 

 あの凄まじい防衛戦の後でも全くテンションの変わらないSランクに苦笑しつつ、俺は『すぐに向かいます』と返信した。

 

「凛、俺はちょっと外に出てくる。セイラさんが回収してくれた貸与品を引き取らないといけないからな」

 

「了解。こっちはギルドからの問い合わせ対応と、次のオークションの準備で手が離せないから、気を付けて行ってきなさいよ。社長が直々にパシリなんてご苦労なことね」

 

「自分の在庫管理は商人の基本だからな」

 

 俺は専用のロッカールームに向かい、以前の会見の時と同じ『Master_Eyeの代理人』の衣装に着替えた。

 漆黒のタクティカルスーツに、顔をすっぽりと覆うミリタリー仕様のガスマスク。首元には音声変調機(ボイスチェンジャー)をセットする。

 正体を隠しつつ、現場でセイラと接触しても不自然ではない格好だ。

 

 ◇

 

 指定されたのは、新宿ダンジョンから少し離れた、避難指示で完全に無人となったオフィス街の裏路地だった。

 薄暗い路地に足を踏み入れると、そこには異様な光景が広がっていた。

 神話級・伝説級の剣、盾、杖、鎧。それらが文字通り『山』のように無造作に積み上げられており、その頂上に、プラチナブロンドの髪を揺らすセイラが足をぶらぶらととさせながら、ちょこんと座っていたのだ。

 

「お待たせしました、セイラさん」

 

 ボイスチェンジャー越しの低い機械音で声をかけると、セイラはパッと顔を輝かせて、ピョンッと軽やかに飛び降りてきた。

 

「あ、透さ……じゃなかった、代理人さん! 遅いよー!」

 

 周囲に人がいないとはいえ、俺の正体を隠す体裁をしっかりと守ってくれる。さすがはプロだ。

 だが、セイラはすぐに頬を膨らませて、ツンと不満げな顔を作った。

 

「もうっ! 本当に大変だったんだからね! みんな、私を見る目が完全に化け物を見る目だったんだよ!?」

 

 セイラは腰に手を当てて、まくしたてるように言う。

 

「私、一応この国じゃアイドル的な人気もあったはずなのにさぁ。『ひぃっ、命だけはお助けをぉ!』って泣きながら伝説の剣を差し出してくるおじさんとかいて、結構凹んだんだからね! 都合よく悪者に使われた感じがして、ちょっと遺憾です!」

 

 プクッと頬を膨らませる日本最強のSランク探索者。

 ヒドラをぶった切った強者とは思えない、可愛らしい反応に、俺はガスマスクの下で思わず苦笑してしまった。

 

「すみません、一番確実で手っ取り早い抑止力が貴女だったもので……あのお祝いの続きとして、今度、寿司でも奢りますよ。もちろん、銀座の回らないやつです」

 

「本当!? やったぁ! じゃあ大トロとウニ、限界まで食べさせてもらうからね!」

 

 自分の金でいくらでも食えるだろうに……食べ物の約束をした途端、セイラの機嫌は一瞬で直った。

 まあ、そもそもガチギレしてたわけじゃないんだろうけど、アイテムを要求してこなかったのは意外だったけど助かる。

 

「ええ、いくらでも。さて、日が完全に昇る前に片付けてしまいましょう」

 

 俺は左手にはめた『亜空間の指輪(アイテムボックス)』に魔力を通した。

 

『――()()

 

 シュンッ、という音と共に、指輪の宝石部分がプラチナ色の光を放つ。

 目の前に積み上げられていた三百人分の神話級アイテムの山が、まるでブラックホールに吸い込まれるように、次々と亜空間のゲートへと飲み込まれていった。

 ものの十秒も経たないうちに、広場は元通りの何もない無機質なコンクリートの空間へと戻る。

 

「おおっ! どうやって武器を撒いたのか分からなかったんだけど……すごいねぇ、それ。私の空間収納スキルでも、容量的にその山は絶対に無理だもん」

 

「ちょっとした手品ですよ。これで貸与品の回収は完了です。本当に、今回は助かりました」

 

「ううん、私の方こそ楽しかったよ! 久々に大物も斬れたしね。それじゃあ、お寿司の約束、絶対に忘れないでよー?」

 

「ええ、近いうちに必ず」

 

 俺がガスマスク越しに頷き、踵を返そうとした、その時だった。

 

「……見つけたぞ!!」

 

 静まり返った早朝の裏路地に、場違いなほど荒々しく、そして酷く聞き覚えのある怒声が響き渡った。

 ビクッとして振り返ると、路地の入り口に一人の男が立っていた。

 血走った目。ボロボロの衣服。ひどく荒れた息を吐きながら、幽鬼のような足取りでこちらに近づいてくる男。

 

「お前……そのふざけたガスマスク……! テレビで見たぞ! 『Master_Eye』の代理人だな!?」

 

 その顔を見た瞬間、俺はガスマスクの下で思わず息を呑んだ。

 剛田浩司。

 俺を無能と罵り、パーティから追放した張本人。

 それが、なぜか俺たちの前に姿を現したのだ。

 

「……何の用だ。ここは現在、立ち入りは制限されているはずだが」

 

 俺はボイスチェンジャー越しの低い声で、あくまでMaster_Eyeの代理人として冷徹に応対した。隣に立つセイラも、突然現れた不審者に警戒し、スッと目を細めている。

 だが、興奮した様子の剛田はそんな威圧感にも気づかず、狂気に満ちた笑みを浮かべて俺を指差した。

 

「とぼけんじゃねえぞ!! お前らが俺の出したあの『黒い石』を使って、武器を転送したんだろ!? あの石は俺のもんだ! 俺がダンジョンから持ち帰ってやったんだ! だから、お前らがスタンピードを止めて得た名声も、金も、全部俺のおかげなんだよ!!」

 

 剛田は口から唾を飛ばし、完全に常軌を逸した妄想を喚き散らす。

 

「俺は英雄だ! 東京を救ったのは俺なんだよ! 俺の手柄と栄光を返しやがれ泥棒野郎ォォッ!!」

 

 あまりにも見当違いで、身勝手で、醜悪な主張に怒りを通り越して、ただ困惑するばかりだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

異世界転生したので本物のくっころが見たい! ~悪役を演じているのに、なぜか女騎士たちがみんな俺に落ちていた~(作者:砂乃一希)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

あるところにくっころガチ勢がいた。▼収入のほとんどをくっころの漫画や同人誌に使い込むほどの筋金入り。▼しかしひょんなことから早死にしてしまい異世界転生することになる。▼異世界での名はジェラルト=ドレイク。▼剣が主流のこの世界でジェラルトが思ったのは……▼「この世界でなら本物のくっころが見れる!」▼しかもジェラルトは誰かのおこぼれではなく自分が悪役を演じて女性…


総合評価:355/評価:7.5/連載:45話/更新日時:2026年04月03日(金) 07:05 小説情報

底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす(作者:ロボワン)(オリジナル現代/冒険・バトル)

底辺Vtuberの根黒万太郎。▼十年前にやり込んでいたロボゲーの続編やったら動きが変態過ぎて大バズり!▼闘争を求めてやって来る強き変態たちに万太郎は更なるバズりを求める。▼果たして、万太郎は底辺を卒業しトップVtuberとなれるのか?▼(☆):他者視点有りのマークです。


総合評価:1240/評価:7.86/連載:50話/更新日時:2026年05月26日(火) 17:28 小説情報

小さな巨人の転生小人族(作者:桃です)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

レジ系の特典を貰った転生者が小人族(パルゥム)になって暗躍する話。


総合評価:570/評価:7/連載:3話/更新日時:2026年02月11日(水) 12:50 小説情報

争いは他所でやってくれ!最後は平穏無事に過ごしたい(作者:大気圏突破)(原作:ハイスクールD×D)

 サービス残業・休日出勤・パワハラで疲弊していたサラリーマンはデスクワーク勤務中に心臓の鼓動が止まり亡くなってしまった。憐れんだ神は第2の人生として彼を『リリカルなのは』の世界に送るつもりだったが書類の手違いで『ハイスクールD×D』の世界に送ってしまった▼ 神は送る直前に間違いに気付き彼に与えた力の他に原作主人公の能力を奪って付与させた。赤龍帝になってしまっ…


総合評価:969/評価:6.46/連載:23話/更新日時:2026年05月27日(水) 22:35 小説情報

ドラクエ3の女賢者さんが、遊び人になってダンまち世界に転移してきたよ(作者:ポップ)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

ドラクエ3で勇者一行の一員だった女賢者さんが、大魔王ゾーマを倒した後に遊び人になって、お酒を飲んでいたらダンまち世界に転移してきた話。


総合評価:3288/評価:8.01/連載:47話/更新日時:2026年05月23日(土) 13:36 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>