Fランク「鑑定士」の俺、ゴミ捨て場の「錆びた剣」が聖剣だと気づいてネットオークションに出品したら、宝くじ並みの値段で落札された件 ~ボロアパートから始まる、鑑定スキルでの現代成り上がりライフ~ 作:えだのあ
「お前らが俺の出したあの『黒い石』を使って武器を転送したんだろ!? あの石は俺がダンジョンから持ち帰ってやったんだ! だから、お前らがスタンピードを止めて得た名声も、金も、全部この俺のおかげなんだよ!!」
早朝の裏路地に、血走った目をした剛田の怒声が響き渡る。
俺とセイラが反論する隙すら与えず、剛田は口から唾を飛ばしながら、己の妄想と狂気に満ちた『権利』をひたすらにまくし立てていた。
「さっさとMaster_Eyeをここに連れてこい! 俺が本物の英雄なんだ、俺の手柄を返しやがれ泥棒野郎がァッ!」
そのあまりにも見当違いで自己中心的な主張に、俺はガスマスクの下で呆れ果てていた。
自分の売ったアイテムが活躍したから、自分の手柄? 小学生でもそんな理屈はこねない。しかも、あいつはあれを『価値のないゴミ』としてフリマに叩き売ったのだ。自業自得でしかない。
(いくら落ちぶれたとはいえ、ここまで頭がおかしくなるとはな……)
俺は警戒を解かないまま、右目に意識を集中させ、狂乱する剛田に向けて『
こいつが何を根拠にこんなところまで追ってきたのか、裏に誰かいるのかを確かめるためだ。
――ブォン。
視界に半透明のシステムウィンドウが展開され、剛田のステータスと『真実』が赤裸々に映し出される。
だが、そこに記されていた一行を見た瞬間。俺は心臓を鷲掴みにされたような、冷たい衝撃を受けた。
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【対象】剛田 浩司
【状態】極度の興奮状態・誇大妄想・
【真実】
ダンジョン中層に設置されていた『封印の要石』を、八つ当たりで物理的に破壊し、今回の新宿スタンピードを引き起こした
現在、自らの罪から逃亡する過程で、過去に売却した石の欠片を「Master_Eyeの力の源」と思い込み、手柄を奪い取ろうとしている。
「……ッ」
俺は息を呑んだ。
こいつが、今回のスタンピードの元凶?
東京を火の海にし、何百人もの探索者を死の淵に追いやり、数千億の被害を出した大事件の引き金を引いたのが……この、目の前で「俺は英雄だ」と喚き散らしている小物だというのか。
怒りよりも先に、底知れない嫌悪感が込み上げてきた。
「おい、聞いてんのかテメェ! その薄汚ねぇガスマスク外して返事しやがれ!」
喚き続ける剛田から視線を外し、俺は隣に立つセイラにそっと近づいた。
そして、ボイスチェンジャーの音量を極限まで絞り、彼女の耳元で囁く。
「……セイラさん。こいつが、要石を壊して今回のスタンピードを起こした『真犯人』です」
「えっ……?」
「間違いありません。まだ正式には指名手配されていないようですが、逃亡中の指名手配犯です」
俺の言葉を聞いた瞬間、不快そうに眉をひそめていたセイラの纏う空気が、一変した。
無邪気な少女の雰囲気が消え去り、絶対的な強者――『剣聖』としての、氷のように冷徹な眼差しが剛田を射抜く。
「……なるほどね。あんなにいきなり、おかしいとは思ってたんだよね」
セイラは小さく呟くと、剛田から目を離さずに、左手首に巻かれたギルド支給のSランク専用スマートウォッチを操作した。
特別回線を開き、短い言葉を紡ぐ。
「神宮寺です。……ええ、例の要石破壊の容疑者、剛田浩司。今、私の目の前にいます。……ええ、制圧します。すぐに応援と護送車を回してください」
その通話が聞こえたのか、剛田の顔がピクリと引き攣った。
「ギルド……? おい、テメェら今何をした!? 俺は英雄だぞ、Master_Eyeの恩人だぞ! 俺を無視してコソコソしやがって……ッ!!」
自分を称賛しないばかりか、明らかに敵対行動を取ろうとする俺たちに、剛田の歪んだプライドと焦燥感が限界を突破した。
「舐めやがってェェェェッ!!」
剛田はポケットから安物のナイフを引き抜き、血走った目をひん剥いて俺に向かって飛びかかってきた。大剣を失い、魔力も底を突いた、ただのヤケクソの突進だ。
「危ない、とおっ――じゃなくて、代理人さん」
俺が身構えるより早く。
セイラがため息をつきながら、一歩前に出た。
「ふっ……」
「……ガ、ァッ!?」
一瞬だった。
一切の無駄がない、洗練された足払いと腕の捻り。
剛田の巨体は空中で一回転し、次の瞬間には、裏路地の硬いアスファルトに顔面から叩きつけられていた。
「ぐ、ぎぃぃぃぃッ!?」
背中に回された右腕の関節を完全に極められ、剛田が豚のような悲鳴を上げる。
「動かないで。これ以上暴れるなら、腕の骨、粉々に砕くよ」
ヒドラを真っ二つにしたSランクの圧倒的強者が、冷酷な声で宣告する。その圧倒的な力の差の前に、剛田は地面に這いつくばるしかなかった。