Fランク「鑑定士」の俺、ゴミ捨て場の「錆びた剣」が聖剣だと気づいてネットオークションに出品したら、宝くじ並みの値段で落札された件 ~ボロアパートから始まる、鑑定スキルでの現代成り上がりライフ~   作:えだのあ

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第37話 ギルドマスター

 剛田が重武装のギルド職員たちに連行されていった後。

 俺とセイラは、事情聴取という建前のもと、黒塗りの最高級VIP車両に乗せられ、新宿ダンジョンギルドの総本部へと案内されていた。

 通されたのは、最上階にあるギルドマスターの専用執務室だ。

 

「――此度の未曾有の危機。Master_Eye殿の多大なるご支援により、東京は救われた。日本ダンジョンギルドを代表し、心よりの感謝を申し上げる」

 

 巨大なマホガニーのデスク越しに深々と頭を下げたのは、全身に歴戦の傷跡を残す筋骨隆々の老人。

 日本の全ての探索者を束ねるトップであり、政財界にも絶大なパイプを持つギルドマスター、東郷 仁一朗(とうごう じんいちろう)だった。

 一国の首相にも等しい権力者がいきなり頭を下げてきたということは、現場での俺(代理人)の立ち回りなど、大方の事情はすでに正確に把握されているのだろう。

 

「顔を上げてください、東郷ギルドマスター。私はあくまで主の代理人。今回の支援も、Master_Eyeの『将来の顧客への投資』に過ぎませんから」

 

 俺はガスマスク越しの機械音声で、あくまで底知れないMaster_Eyeの代理人としての態度を崩さずに応えた。正体がバレている可能性は極めて高いが、念には念を入れて設定を守り抜く。

 

「投資、か。逞しいな。だが、三百個の伝説級のアーティファクトを戦場にばら撒くような規格外の投資、ワシの長い人生でも聞いたことがないがな」

 

 東郷さんは鋭い鷹のような眼光で俺を観察していたが、やがてフッと口元を緩め、隣に座るセイラへと視線を移した。

 

「にしても、セイラ。お前さん、相変わらずの暴れっぷりじゃねえか。ヒドラを一刀両断とは、ワシの現役時代でも骨が折れる相手だぞ」

 

「えへへ、お久しぶりです仁さん! でも、一人じゃ絶対に無理だったよ。今回はMaster_Eyeの支援と、この剣のおかげだから」

 

 やはり、日本のトップ同士。二人は昔からの顔馴染みだったようだ。セイラは東郷さんを「仁さん」と呼び、東郷さんも孫娘を見るような目を向けている。

 

 しかし、セイラが自慢するように剣をポンッと軽くたたいて見せると、東郷さんの視線が、セイラの手元――正確には、彼女が大事そうに抱えている『聖剣エクスカリバー』に釘付けになる。

 

「ありえねえと思っちゃいたんだが、やはり……そうとしか思えねえ。おい、セイラ。ちょっと見せてみろ、その剣」

 

「えっ? や、やですよ! これは……Master_Eyeが私専用に直してくれた、私だけの剣です!」

 

「別に取りゃあせん。少しばかり確認したいだけだ」

 

 セイラが警戒して聖剣をギュッと胸に抱きしめる。

 だが、東郷さんは構わずデスクから身を乗り出しながら、セイラに抱えられた剣の刀身をまじまじと見つめた。

 

「いや、やはり間違いない。柄の装飾といい、刀身の反りといい……それ、ワシが現役時代に愛用してた剣じゃねえか!」

 

「……は?」

 

「ええっ!?」

 

 俺とセイラは思わず声をハモらせた。

 日本最強のSランク探索者の相棒が、目の前の老人のお下がりだったというのか?

 

「いやぁ、懐かしいなぁ! 数年前に深層のバケモノの酸を食らってボロボロにサビ付いちまってな。修復不可能って言われたから、新しいのを買うついでに、潜るのが面倒で上層のゴミ捨て場にポイッと捨ててきちまったのよ」

 

 カハハハ! と豪快に笑うギルドマスター。

 俺の頭の中で点と点が完全に繋がった。俺があの剣を拾ったのは、確かに上層のゴミ捨て場だった。つまり、あの時俺が流し台でサンポールを使って必死に磨いたのは、このギルドマスターの不法投棄物だったわけだ。

 

 もしかしなくても、俺にとって大恩人じゃないか……

 

「あの鉄屑がここまで美麗に蘇るとはなぁ……。Master_Eyeの神腕、恐るべしってとこだな。それ返してもらって現役復帰でも目指してみてえ気にもなってくるぜ」

 

 東郷さんがわざとらしくニヤリと笑って手を伸ばすと、セイラは「シャーッ!」と猫のように威嚇して、慌てて剣を背中に隠した。

 

「だ、だめ! これは私がフリマアプリでちゃんと正当にお金を出して買ったの! たとえ仁さんでも絶対にあげないんだから!」

 

「カハハ! 冗談だ冗談。今更、引退したジジイにそんな業物は過ぎた代物だ。セイラが大事に使ってやってくれ」

 

 東郷さんは満足そうに笑うと、再び真剣な表情に戻り、一枚の重厚な『黒いカード』を俺の前に差し出した。

 

「さて、本題だ。いくら投資っても、ギルドとして功労人であるMaster_Eye殿に何の報いもしないわけにはいかない。これは、ギルドの『特A級VIPパス』だ。わざわざ呼びつけたのはこれを渡すためだ。探索者連中と違って、直接的な報酬の管理が出来んのでな」

 

「VIPパス、ですか」

 

「ああ。これがあれば、日本全国のギルド施設のフリーパスはもちろん、ダンジョン産アイテムの取引にかかる税金が全て『免除』される。……悪くない話だろう?」

 

 税金免除。

 その言葉を聞いた瞬間、俺はガスマスクの下で「凛が泣いて喜ぶぞ」と渾身のガッツポーズをした。

 五百億、いや下手すれば今後数千億稼ぐ予定の俺たちにとって、ダンジョン産のアイテム限定とはいえ、税金がタダになるというのは文字通り何百億円もの価値がある最高の報酬だ。

 

「これ以上ない報酬ですが……よろしいのですか?」

 

「ウチらのしくじりの尻拭いで都市一つ救ってもらった報酬としちゃあ、安いもんさ。なぁに、お上とはもう話はつけている。お前さんが販売する武具の効果で日本のダンジョン攻略も活性化する。国としてもメリットがでけえのよ」

 

「そうだよ! 凄いことしたんだから、良いものを貰うのは当然! 遠慮なく受け取るべきだと思うよ」

 

 セイラも俺がVIPパスを受け取ることに肯定的なようだ。

 

「なるほど……分かりました。それでは、ありがたくお受け取りします。主も大いに喜ぶでしょう」

 

「それともう一つ。ギルドの地下にある『未鑑定品保管庫』から、好きなものを一つ持っていってくれ。過去に探索者たちが持ち帰ったものの、呪われていたりサビ付いていたりで使い道のないガラクタの山だが……お前さんの主の腕なら、あるいは宝の山かもしれんからな」

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