Fランク「鑑定士」の俺、ゴミ捨て場の「錆びた剣」が聖剣だと気づいてネットオークションに出品したら、宝くじ並みの値段で落札された件 ~ボロアパートから始まる、鑑定スキルでの現代成り上がりライフ~ 作:えだのあ
重い石の扉を押し開けると、そこにはドーム状の巨大な空間が広がっていた。
洞窟の天井からは青白い発光苔の光が降り注ぎ、すり鉢状になった空間の底を照らし出している。
そこにあったのは、目を疑うような光景だった。
「うわぁ……なにあれ。お宝の山?」
セイラが思わず声を漏らす。
広大な部屋の中央には、魔物の骨や巨大な魔石、過去の探索者が落としたと思われる朽ちた武具、そして金銀の鉱石が、文字通り小山のように積み上げられていたのだ。
だが、俺たちの視線はすぐに、その「宝の山」の上に降りてきた巨大な影へと釘付けになった。
『グルルルルル……』
喉の奥で岩を砕くような低い唸り声を上げ、その魔物がゆっくりと鎌首をもたげた。
全身を覆うのは、金属のような光沢を放つ赤黒い鱗。四肢は丸太のように太く、背中には蝙蝠のような巨大な翼が折り畳まれている。
体長は優に十メートルを超え、その威圧感は新宿スタンピードの時に現れたアビス・ヒドラすら凌駕していた。
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【名称】
【ランク】S級指定(特異個体)
【状態】極度の興奮状態。自らの宝を守るため、全ステータスが大幅に上昇中。
【詳細】あらゆる財宝や魔導具を収集する業突く張りの竜。吐き出すブレスは岩をも溶かす。弱点以外の攻撃に絶対の耐性を持つ。
【弱点】強固な鱗に覆われていない、胸部中央の『逆鱗』。====================
「
俺の呟きに呼応するように、強欲の竜王が黄金色の瞳でこちらを睨みつけ、鼓膜が破れそうなほどの咆哮を轟かせた。
『ガアアアアアアアッ!!』
ビリビリと空気が震え、洞窟の天井からパラパラと小石が降り注ぐ。
竜は俺たちを「自分の宝を奪いに来た外敵」と認識したらしい。大きく息を吸い込むと、その顎の奥で赤熱した炎が渦を巻き始めた。
「っ、これはちょっと……透、下がってて!」
セイラが俺の前に立ち塞がり、左腕の『アイギスの盾』を構えた。
直後、竜の口から太陽のように眩い極大の業火が放たれる。洞窟の岩肌を一瞬でドロドロに溶かすほどの熱線が、俺たちを飲み込もうと殺到するが、絶対防護盾はその圧倒的な熱量を見事に弾き返し、炎は
しかし──
『グルァアアアアアアアッ!!』
もうもうと立ち込める煙と猛火を物理的に引き裂き、強欲の竜王《グリード・ドラゴン》が突っ込んできた。
自らが放った炎とはいえ、あれだけの熱量をまともに浴びたはずなのに、赤黒い鱗には焦げ跡一つ付いていない。どうやらあの金属質の鱗は、尋常ではない耐熱性と魔法耐性を備えているらしい。
「ノーダメ……! ってことは、さすがに耐性持ちかなっ!」
巨躯に似合わぬ猛烈なスピードで距離を詰めてきた竜が、丸太のような太い腕を大きく振り上げる。
凄まじい風切り音と共に振り下ろされた鋭い爪の連撃を、セイラは最小限のステップと盾の傾きだけでいなしていく。
ギィンッ! ガァンッ!!
金属同士がぶつかり合うような甲高い音が洞窟内に響き渡る。セイラが受け流した爪撃が岩盤をえぐり、紙くずのように吹き飛ばしていった。
「セイラ! 胸の真ん中の逆鱗だ! そこ以外への攻撃は効かない!」
「了解っ! 胸の真ん中ね!」
セイラは軽やかにバックステップを踏み、竜の強烈な踏みつけを紙一重で回避する。
ビュンッ!!
音の壁を突き破るような凶悪な風切り音。
洞窟の壁を深々と抉りながら迫る尾の薙ぎ払いを、セイラは高く跳躍して躱す。
だが、竜はそれを待っていた。空中に逃げ場を失ったセイラに向け、再びその大口を開き、極大の炎を放とうと喉の奥を赤熱させる。
「何回も撃たせると思う? 待ってたよ、それ」
空中にいるセイラは、右手の『聖剣エクスカリバー』に膨大な魔力を注ぎ込んだ。
刀身から溢れ出す光が、限界まで圧縮され、洞窟内を白一色に染め上げるほどの強烈な閃光を放つ。
「耐性があるといってもさ……ブレスのタイミングで、中を突かれたら隙くらいできるよね!」
セイラが空中で身を捻り、無防備に大きく開かれた竜の口内に向けて、聖剣から圧縮された光の刃を一気に解き放った。
『ッ!? ガァアアアアッ!?』
口から炎を吐き出そうとした瞬間に、圧倒的な質量の光が逆流してくる。
外側の鱗がいかに強固であろうと、粘膜剥き出しの内部にまで絶対の耐性があるわけではない。竜の口内で暴発した炎と聖剣の光がぶつかり合い、小規模な爆発を引き起こした。
『ギィヤアアアアアアアアッ!!』
その瞬間、交差して胸を隠していた太い両腕が大きく開き、無防備な胸部――他の鱗とは色が違う、ひときわ分厚く黒い『逆鱗』が完全に露出した。
「いっくよーっ!」
重力に従って着地したセイラは、足が地面に触れた瞬間に猛烈な踏み込みで地を蹴った。
バァンッ! と岩盤が砕け散る音を残し、彼女の姿が文字通り『一筋の光』と化す。
アイギスの盾を構え、竜が苦し紛れに吐き出した炎の残滓を真っ向から切り裂きながら、一直線に竜の胸元へと肉薄する。
「これで……っ!」
渾身の魔力を込めた『聖剣エクスカリバー』が、白銀の軌跡を描き竜に迫る。
「終わりっ!!」
ズドォォォォォォォンッ!!!
神話級の刃が、
ピタリ、と竜の巨体が硬直する。
その直後、胸に空いた大穴から眩い光が漏れ出し、S級指定の特異個体は、断末魔の叫びを上げる間もなく、巨大な光を放出しながら洞窟の地面に倒れ伏した。
竜が倒れた地鳴りの後、チャリン……と、ひときわ大きなS級魔石が地面に落ちる音が響く。
「ふぅ……ちょっと硬かったけど、透が弱点教えてくれたから楽勝だったね!」
セイラはクルッと聖剣を回して鞘に収めると、黒髪のウィッグを揺らしながら満面の笑みでこちらを振り返った。
「お疲れ様、セイラ。相変わらず見事な一撃だったな」
「えへへ……もっと褒めていいよ!」
無事に強敵を打ち倒した俺たちは、視線を正面に向けた。
「さあ、お宝探しの時間だ」
俺は右目の『真贋鑑定』をフル稼働させながら、意気揚々と