Fランク「鑑定士」の俺、ゴミ捨て場の「錆びた剣」が聖剣だと気づいてネットオークションに出品したら、宝くじ並みの値段で落札された件 ~ボロアパートから始まる、鑑定スキルでの現代成り上がりライフ~ 作:えだのあ
「これだけあれば、何かしら使えるものもあるだろ」
俺は目の前に広がる巨大な『宝の山』を見上げて、小さく息を吐いた。
強欲の竜王《グリード・ドラゴン》が倒れた後に残されたのは、まさに欲望の結晶だ。金銀財宝や、弱肉強食に敗れたモンスターたちが遺したと思われる武具が文字通り小山のように積み上がっている。
「すごいね! ピカピカの宝石とか、高そうな剣がいっぱいあるよ! 透、使えそうなものは見つかった?」
セイラが目を輝かせながら、足元に転がっていた豪奢な装飾の剣を拾い上げてぶんぶんと振り回す。
「見た目が綺麗なやつは、大抵ただの換金用アイテムみたいなもんだ……まあ、それはそれで凛へのお土産にいいかもしれないけどな」
「あはは、確かに。喜びそう!」
「とにかくだ。俺がいま探してるのは……鮫島の嘘を暴くのに使えそうな何かだ」
俺は右目の『真贋鑑定』をフル稼働させながら、堆積した宝の山に視線を走らせた。
視界には次々とステータスウィンドウが浮かび上がるが、その大半は一般的にお宝と呼ばれる類のものばかりで、特別な効果があるものは中々見つからない。
「……これでもない。綺麗だけど、これも違う」
俺は山をかき分け、奥へ奥へとガラクタを掘り返していく。
十分、二十分と時間が過ぎていく。額に汗が滲んできた頃、セイラが大きな赤い宝石を両手で抱えて俺の横にやってきた。
「透! これなんかどう? すっごく魔力を感じるよ!」
「ん? どれどれ……いや、それはただの『巨大な発光石』だ。夜に光るだけで、特別な効果はないな」
「むぅ……そっか。じゃあ、こっちの杖は!?」
「それは『ゴブリンの骨杖』。呪いがかかってるから触らないほうがいい」
「うえっ、ばっちい!」
セイラが慌てて杖を放り投げる。
彼女なりに一生懸命手伝ってくれているのだが、やはり見た目や表面上の魔力だけで本質を見抜くのは難しいらしい。
「うーん……お宝探しって、難しいね。透の鑑定スキルは本当にすごいんだなぁ」
セイラが感心したように俺の顔を覗き込んでくる。
彼女の言葉に少しだけ気恥ずかしくなりながらも、俺はふと、宝の山の「底」――強欲の竜王が先ほどまでとぐろを巻き、一番守るように抱え込んでいた中心部分に目を向けた。
(待てよ。本当に価値のあるものは、表面じゃなくて一番底に隠してるんじゃないか?)
「ちょっと底まで掘り返してみたい。手伝ってくれ」
「了解!」
俺はセイラと一緒に、その中心部の瓦礫や金貨をガシャガシャと掘り進めた。
そして、底の岩肌が見えかけたその時。指先にひときわ冷たく、ズシリと重い感触が伝わった。
「――っ、これか!」
俺が引きずり出したのは、泥と埃にまみれ、金属部分が錆び付いて真っ二つに折れた『古ぼけた天秤』だった。
「透、それ……魔力はあんまり感じないけど?」
「ああ。でも、鑑定の結果は最高だ」
俺は震える手で、そのガラクタを握りしめた。
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【名称】ひび割れた裁定者の天秤
【ランク】神話級(欠損状態)
【真価】かつて神々の法廷で使われたとされる真実の天秤。
容姿、名称、現在地を把握している対象の隠している『嘘』と『その裏の真実』を 強制的に引きずり出し投映する。
【修復条件】強欲の竜王《グリード・ドラゴン》の鱗を市販の『酸性トイレ用洗剤(サンポール等)』に付け込んで馴染ませ、溶け出した成分を研磨剤および接着剤のペーストとして塗布し、修復を行うこと。
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ステータスウィンドウに表示された修復条件を見て、俺は小さく頷いた。
神話級アイテムの修復にトイレ用洗剤。相変わらずそれでいいのかとも思うが、家にある余りで済むのだから大変ありがたい。
「透、それ直せそうなの?」
俺が天秤を持ったまま頷いていると、セイラが覗き込んできた。
「ああ、完璧に直せるはずだ。これで鮫島の化けの皮をひっぺがせるぞ。……ただ、直すのにあっちに倒れてる竜王の『鱗』が何枚か必要なんだ。セイラ、状態のいいやつを剥ぎ取ってきてくれないか?」
「鱗だね! 任せて、馬鹿みたいに固かったけど、動かないなら簡単に剥がせるよ!」
セイラは快諾すると、聖剣エクスカリバーを抜いて竜王の残骸へと向かった。
ザクッ、ザクッというなんとも言えない解体音を響かせながら、彼女は俺の要求通り、赤黒く硬質な鱗を数枚ほど見事に切り出してきた。
「はい、透! これでいい?」
「ああ、バッチリだ。ありがとう」
俺はセイラから鱗を受け取り、先ほど拾った『幻影竜の逆鱗』や『蜃気楼の蜘蛛糸』と一緒にアイテムボックスの奥深くへと大切に仕舞い込んだ。
さらに、凛が喜びそうな装飾の施された剣や、換金用の金銀財宝も適当に見繕って放り込んでおく。
「よし、これで探していたものは全部揃った。目的達成だ」
「やったぁ! じゃあ、これでようやくあの嘘つきたちをやっつけられるね!」
セイラが嬉しそうに両手を挙げて背伸びをする。
俺は頷きながら、東郷さんから渡されていた支給品の通信機を取り出した。
「ああ。……東郷さん、こちらMaster_Eyeです。諸々の回収が完了しました。帰還用のゲートをお願いします」
『おう、早かったじゃねえか。どうだ、いいもんは見つかったか?』
「ええ、とびっきりのが手に入りましたよ。ギルドの職人たちの腕に期待してます」
『任せとけ。っと、雑談してる暇はねえか。待ってろ、今ゲートを開く』
通信が切れると同時に、空間が微かに歪み、俺たちの足元に見慣れた転送陣の眩い光が展開され始め、再びフワリとした浮遊感に身を任せた。