Fランク「鑑定士」の俺、ゴミ捨て場の「錆びた剣」が聖剣だと気づいてネットオークションに出品したら、宝くじ並みの値段で落札された件 ~ボロアパートから始まる、鑑定スキルでの現代成り上がりライフ~ 作:えだのあ
爆発の煙が晴れた広間に、鮫島の嘲笑が響き渡る。
「まあ、ご挨拶はこの辺でええやろ。……やれ」
鮫島が指を鳴らすと、その後ろで、瞳孔が開いた魔法使いの女が狂気じみた笑みを浮かべて再び杖を振り上げた。
その杖は、オークションで俺が修復し、エデン・グループ経由で彼らの手に渡ったアーティファクト『大賢者の杖』だ。
(マズい、また広範囲魔法か!?)
「させないっ!」
いち早く体勢を立て直したセイラが詠唱を妨害すべく地を蹴った。
アイギスの盾を展開したまま、全速力で一直線に魔法使いの女へと肉薄する。
だが、そんなセイラを前にしてなお、鮫島の口角が三日月のように吊り上がった。
「当然、反応できるのは君だけよなぁ。正しい行動や、戦いっちゅうのをよく理解しとる。けど予想通りや」
「――っ!?」
「アハハハハッ! 捕まえたァッ!!」
魔法使いの女が狂ったように叫びながら杖を床に突き立てる。
瞬間、セイラの足元から巨大な魔法陣が浮かび上がり、まばゆい白光が彼女の身体を円筒状に包み込んだ。
「くっ、これは……!」
光の檻に囚われたセイラが、聖剣エクスカリバーを振り下ろす。
神話級の刃が放つ絶対切断の斬撃。だが、その光の檻は物理的な干渉を一切受け付けず、すり抜けるように剣を空振りさせた。
「空間隔離……!?」
俺は右目の『真贋鑑定』を通して、その光の正体を瞬時に悟った。
対象を完全に別次元へと隔離し、外部からの干渉を一切遮断する特化型の結界。
「デカブツ! ボーっとしてないでアンタも早く入って!」
魔法使いの女が叫ぶと、鮫島の隣に控えていた前衛の男が、戦斧を担いだまま不気味な笑みを浮かべて光の檻の中へと自ら飛び込んでいった。
そして女自身も、結界の中心――セイラの目の前へと転移する。
「お前ら……!」
セイラが二人を睨みつける。
だが、魔法陣の光は限界まで膨れ上がり、空間そのものが削り取られるような轟音を立て始めた。
「透! 凛! 逃げ――」
セイラの声は最後まで届かなかった。
――カァァァァァァンッ!!
ガラスが割れるような甲高い音と共に、光の檻は弾け飛び、跡には何も残らなかった。
セイラ、前衛の男、魔法使いの女。
三人の姿は、広い地下空間から完全に掻き消えていた。
「セイラ……ッ!」
俺は思わず叫んだが、返ってくる声はない。
右目の『真贋鑑定』が、空間に焼き付いた魔力の残滓を読み取る。
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【残滓】極大空間隔離結界(使い捨て)
【詳細】対象を現次元から切り離された『亜空間の鳥籠』へと強制転送し、隔離する。外部からの干渉、および内部からの脱出は、術者の死亡か魔力切れまで不可能。
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「くそっ、亜空間への隔離だと……!?」
「アハハハハッ! 大正解や、Master_Eye君」
静まり返った広間に、鮫島の下劣な笑い声が響き渡った。
玉座からゆっくりと立ち上がった彼は、俺たちの絶望を味わうように、ひんやりとした目を細める。
「君が売った『大賢者の杖』、ほんまにええもんやね。あんなデタラメな魔法、普通の術者じゃ魔力不足で発動すらできへんけど……君のおかげで、一番厄介な剣聖ちゃんを盤面から消せたわ」
「鮫島……!」
「そんな怖い顔せんといてや。心配しなくてもあいつらじゃセイラちゃんには勝てへんし」
鮫島は肩をすくめ、まるで世間話でもするかのように言葉を続ける。
「ただの足止めや。エデン特製の『特製の薬』を致死量ギリギリまで打ってあるからな。痛みも疲れも感じへん、死ぬまで戦い続けるゾンビの出来上がりや。……まあ、あの子なら十分もあれば二人とも細切れにするやろけどな」
「……一応仲間なんじゃないのか?」
「仲間? あんな使えんゴミども、僕の出世のための捨て駒に決まっとるやろ。ほんま、頭の悪い奴らで助かったわ」
ケラケラと笑う鮫島の姿に、俺は背筋が凍るのを感じた。
こいつは異常だ。自尊心と自らの出世のためなら、他人の命を何とも思っていない。
「さて……」
鮫島はゆっくりと、まるで獲物を追い詰める蛇のような足取りで、こちらへと歩みを進めてきた。
「セイラちゃんが帰ってくる前に、僕の仕事も終わらせんとな。エデン様からのオーダーは『Master_Eyeの確保』や。もちろん、五体満足で連れてこいとは言われとらんけど。まあ、手は大事やけど、足はいらんしな?」
鮫島の手の中で渦巻くドス黒い魔力が、鋭利な刃のように形を変えていく。
肌を刺すような本物の殺気。戦闘力皆無の俺では、まともに打ち合えば一瞬でミンチにされるだろう。
「カリバーン!」
『承知しております、主様ッ!』
俺の呼びかけに応え、背後に控えていた魔剣カリバーンが漆黒と白銀のオーラを纏い、俺と鮫島の間へと躍り出る。同時に、俺はアイテムボックスから数少ない使い捨ての結界石を取り出し、いつでも展開できるよう魔力を練った。
だが、鮫島の視線は俺の構えを冷笑するように通り抜け――俺の後ろで息を呑んで立ち尽くす、凛へと真っ直ぐに向けられていた。