Fランク「鑑定士」の俺、ゴミ捨て場の「錆びた剣」が聖剣だと気づいてネットオークションに出品したら、宝くじ並みの値段で落札された件 ~ボロアパートから始まる、鑑定スキルでの現代成り上がりライフ~   作:えだのあ

75 / 75
第70話 分断

 爆発の煙が晴れた広間に、鮫島の嘲笑が響き渡る。

 

「まあ、ご挨拶はこの辺でええやろ。……やれ」

 

 鮫島が指を鳴らすと、その後ろで、瞳孔が開いた魔法使いの女が狂気じみた笑みを浮かべて再び杖を振り上げた。

 

 その杖は、オークションで俺が修復し、エデン・グループ経由で彼らの手に渡ったアーティファクト『大賢者の杖』だ。

 

(マズい、また広範囲魔法か!?)

 

「させないっ!」

 

 いち早く体勢を立て直したセイラが詠唱を妨害すべく地を蹴った。

 アイギスの盾を展開したまま、全速力で一直線に魔法使いの女へと肉薄する。

 

 だが、そんなセイラを前にしてなお、鮫島の口角が三日月のように吊り上がった。

 

「当然、反応できるのは君だけよなぁ。正しい行動や、戦いっちゅうのをよく理解しとる。けど予想通りや」

 

「――っ!?」

 

「アハハハハッ! 捕まえたァッ!!」

 

 魔法使いの女が狂ったように叫びながら杖を床に突き立てる。

 瞬間、セイラの足元から巨大な魔法陣が浮かび上がり、まばゆい白光が彼女の身体を円筒状に包み込んだ。

 

「くっ、これは……!」

 

 光の檻に囚われたセイラが、聖剣エクスカリバーを振り下ろす。

 神話級の刃が放つ絶対切断の斬撃。だが、その光の檻は物理的な干渉を一切受け付けず、すり抜けるように剣を空振りさせた。

 

「空間隔離……!?」

 

 俺は右目の『真贋鑑定』を通して、その光の正体を瞬時に悟った。

 対象を完全に別次元へと隔離し、外部からの干渉を一切遮断する特化型の結界。

 

「デカブツ! ボーっとしてないでアンタも早く入って!」

 

 魔法使いの女が叫ぶと、鮫島の隣に控えていた前衛の男が、戦斧を担いだまま不気味な笑みを浮かべて光の檻の中へと自ら飛び込んでいった。

 そして女自身も、結界の中心――セイラの目の前へと転移する。

 

「お前ら……!」

 

 セイラが二人を睨みつける。

 だが、魔法陣の光は限界まで膨れ上がり、空間そのものが削り取られるような轟音を立て始めた。

 

「透! 凛! 逃げ――」

 

 セイラの声は最後まで届かなかった。

 

 ――カァァァァァァンッ!!

 

 ガラスが割れるような甲高い音と共に、光の檻は弾け飛び、跡には何も残らなかった。

 セイラ、前衛の男、魔法使いの女。

 三人の姿は、広い地下空間から完全に掻き消えていた。

 

「セイラ……ッ!」

 

 俺は思わず叫んだが、返ってくる声はない。

 右目の『真贋鑑定』が、空間に焼き付いた魔力の残滓を読み取る。

 

 ====================

【残滓】極大空間隔離結界(使い捨て)

【詳細】対象を現次元から切り離された『亜空間の鳥籠』へと強制転送し、隔離する。外部からの干渉、および内部からの脱出は、術者の死亡か魔力切れまで不可能。

 ====================

 

「くそっ、亜空間への隔離だと……!?」

 

「アハハハハッ! 大正解や、Master_Eye君」

 

 静まり返った広間に、鮫島の下劣な笑い声が響き渡った。

 玉座からゆっくりと立ち上がった彼は、俺たちの絶望を味わうように、ひんやりとした目を細める。

 

「君が売った『大賢者の杖』、ほんまにええもんやね。あんなデタラメな魔法、普通の術者じゃ魔力不足で発動すらできへんけど……君のおかげで、一番厄介な剣聖ちゃんを盤面から消せたわ」

 

「鮫島……!」

 

「そんな怖い顔せんといてや。心配しなくてもあいつらじゃセイラちゃんには勝てへんし」

 

 鮫島は肩をすくめ、まるで世間話でもするかのように言葉を続ける。

 

「ただの足止めや。エデン特製の『特製の薬』を致死量ギリギリまで打ってあるからな。痛みも疲れも感じへん、死ぬまで戦い続けるゾンビの出来上がりや。……まあ、あの子なら十分もあれば二人とも細切れにするやろけどな」

 

「……一応仲間なんじゃないのか?」

 

「仲間? あんな使えんゴミども、僕の出世のための捨て駒に決まっとるやろ。ほんま、頭の悪い奴らで助かったわ」

 

 ケラケラと笑う鮫島の姿に、俺は背筋が凍るのを感じた。

 こいつは異常だ。自尊心と自らの出世のためなら、他人の命を何とも思っていない。

 

「さて……」

 

 鮫島はゆっくりと、まるで獲物を追い詰める蛇のような足取りで、こちらへと歩みを進めてきた。

 

「セイラちゃんが帰ってくる前に、僕の仕事も終わらせんとな。エデン様からのオーダーは『Master_Eyeの確保』や。もちろん、五体満足で連れてこいとは言われとらんけど。まあ、手は大事やけど、足はいらんしな?」

 

 鮫島の手の中で渦巻くドス黒い魔力が、鋭利な刃のように形を変えていく。

 肌を刺すような本物の殺気。戦闘力皆無の俺では、まともに打ち合えば一瞬でミンチにされるだろう。

 

「カリバーン!」

 

『承知しております、主様ッ!』

 

 俺の呼びかけに応え、背後に控えていた魔剣カリバーンが漆黒と白銀のオーラを纏い、俺と鮫島の間へと躍り出る。同時に、俺はアイテムボックスから数少ない使い捨ての結界石を取り出し、いつでも展開できるよう魔力を練った。

 

 だが、鮫島の視線は俺の構えを冷笑するように通り抜け――俺の後ろで息を呑んで立ち尽くす、凛へと真っ直ぐに向けられていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ダンジョンから帰ったら五十年経ってたんだが。~え?昔の仲間が今や大手ギルドの代表?なにそれ知らん……こわ……~(作者:蝉時雨)(オリジナル現代/冒険・バトル)

 世界にダンジョンという、いくつもの『扉』が出現してから、早五十年。▼ ▼ 人類はこの未知の脅威に対し、慎重に対処をしようとしていた。しかし、その『扉』から現れた異形のモノたちが蹂躙をはじめる。▼ 現代の兵器は異形には届かず、為す術なしかに思われた。▼ だが、人類は諦めなかった。▼ 自ら『扉』に乗り込み、戦果を持ち帰るものが現れ始める。『扉』の先で得た素材で…


総合評価:1024/評価:7/連載:27話/更新日時:2026年07月05日(日) 00:00 小説情報

オラリオで娯楽革命を(作者:寝心地)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

オラリオでテレビゲームとか携帯ゲームとかカードゲームとか作って売っちゃう話。▼ダンまちにゲームキャラが転生とかゲームキャラで転生とかはあるけどゲームその物がオラリオにあるのって見ないなぁ〜と思って作りました。▼


総合評価:3098/評価:7.46/連載:108話/更新日時:2026年07月06日(月) 10:00 小説情報

争いは他所でやってくれ!最後は平穏無事に過ごしたい(作者:大気圏突破)(原作:ハイスクールD×D)

 サービス残業・休日出勤・パワハラで疲弊していたサラリーマンはデスクワーク勤務中に心臓の鼓動が止まり亡くなってしまった。憐れんだ神は第2の人生として彼を『リリカルなのは』の世界に送るつもりだったが書類の手違いで『ハイスクールD×D』の世界に送ってしまった▼ 神は送る直前に間違いに気付き彼に与えた力の他に原作主人公の能力を奪って付与させた。赤龍帝になってしまっ…


総合評価:1714/評価:6.47/連載:63話/更新日時:2026年07月06日(月) 22:21 小説情報

底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす(作者:オタリオン)(オリジナル現代/冒険・バトル)

底辺Vtuberの根黒万太郎。▼十年前にやり込んでいたロボゲーの続編やったら動きが変態過ぎて大バズり!▼闘争を求めてやって来る強き変態たちに万太郎は更なるバズりを求める。▼果たして、万太郎は底辺を卒業しトップVtuberとなれるのか?▼(☆):他者視点有りのマークです。▼※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。


総合評価:1319/評価:7.8/連載:69話/更新日時:2026年07月01日(水) 17:23 小説情報

☆1キャスターの俺、現代ダンジョン出現当日、F級ダンジョン60個を周回特化自爆スキルで焼き払ってたら低レア最強パーティが育っていた〜アーラ◯ュ系周回スキルで人類全員を育成し尽くします〜(作者:ちんこ良い肉)(オリジナル現代/冒険・バトル)

火賀灯真は、世界が終わる日を知っていた。▼正確には、世界が“サービス終了する”日を。▼午前十時。▼現代日本にダンジョンが出現し、人類の一部にレアリティとクラスとスキルが配られる。▼世間は混乱し、国家は対応に追われ、凡人は怯え、英雄願望のある者は浮かれる。▼そして俺は、ゲームの周回で猛威を振るった、自爆宝具…もとい戦闘不能と引き換えに繰り出す超火力広域攻撃スキ…


総合評価:5546/評価:8.01/連載:35話/更新日時:2026年06月21日(日) 23:26 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>