Fランク「鑑定士」の俺、ゴミ捨て場の「錆びた剣」が聖剣だと気づいてネットオークションに出品したら、宝くじ並みの値段で落札された件 ~ボロアパートから始まる、鑑定スキルでの現代成り上がりライフ~ 作:えだのあ
地下要塞に戻った俺たちは、すぐさま欧州ギルマス『シャルル』へ向けた手土産の選定に取り掛かった。
「美の探求者……ってことは、単純に武器として強いだけじゃダメってことよね。見た目が芸術的で、なおかつ歴史的な価値やロマンを感じさせるようなものじゃないと」
凛が腕を組みながら、アイテムボックスから展開した宝の山――先日俺が工場さながらのライン作業で修復したアーティファクトたち――を見渡す。
「そうだな。いくら神話級でも、ゴツい戦斧とか血生臭い魔剣じゃ、一発で転送陣から追い出されそうだ」
『主様!? 今、チラリとワタシの方を見ませんでしたか!? この漆黒と白銀のコントラストが理解できない者など、こちらから願い下げです!』
俺の背後でカリバーンが抗議の声を上げるが、華麗にスルーして目ぼしいアイテムをピックアップしていく。
いくつかの候補を『真贋鑑定』で視ていく中、俺の視線が一つのアクセサリーで止まった。
「……これなんか、どうだ?」
俺が手に取ったのは、手のひらサイズの豪奢なブローチだった。
中央には透き通るような青い宝石が埋め込まれ、それを囲むように白金の細工が繊細な羽根の意匠を描いている。
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【名称】天上の涙《セレスティアル・ティア》
【ランク】国宝級
【状態】完全修復済み。
【真価】かつて国を愛した聖女が遺したとされる幻の宝飾品。装備者の魅力を極限まで高め、周囲の敵意を中和する。宝石の内部には、見る者の心を映し出すと言われる『万華の輝き』が宿る。
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「うわぁ……すっごく綺麗……!」
覗き込んだセイラが、感嘆のため息を漏らす。
凛もその輝きに見惚れたように目を細めた。
「ええ、本当に美しいわね。芸術品としての価値も申し分ないし、『敵意を中和する』っていう効果も、交渉の場にはぴったりじゃないかしら」
「よし、じゃあ手土産はとりあえずこれに決定だ」
欧州へのパスポートとも言える品が決まり、俺はホッと息を吐いた。
これでひとまずの準備は整った。あとは東郷さんからの連絡を待つだけだ。
「そうと決まれば、今のうちにしっかり休んでおかないとね。向こうに着いたら、いつエデンの連中とドンパチになるか分からないんだから」
凛が大きく伸びをしながら言う。
セイラも「そうだね!」と頷き、腰に帯びていた聖剣を外し、丁寧にテーブルの上に置いた。
「私も、こっちにいる間にもっと素振りと型の確認をしておかないと。お父様のところにいる、あの子……『ノア』と戦う時のために」
エクスカリバーの白銀の鞘を撫でるセイラの表情には、確かな覚悟が宿っていた。
自身と同じ遺伝子を持つ、エデンの最高傑作。次に会う時は、間違いなく死闘になる。
俺はテーブルに置かれたエクスカリバーを、何気なく見つめた。
あの日、雨の降るゴミ捨て場で俺が拾った、サビだらけの鉄クズ。
俺の人生を変え、セイラの手に渡り、幾度となく絶望的な窮地を救ってくれた最強の剣。
「……ん?」
ふと、無意識に発動したままになっていた右目の『真贋鑑定』が、エクスカリバーのステータスを俺の視界に映し出した。
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【名称】聖剣エクスカリバー
【ランク】国宝級(SSR)
【状態】リペア済み。呪いによる封印(封印解除率:15%)
【真価】全ての防御を無効化する絶対切断能力。
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「……あ」
「どうしたの、透?」
俺が間抜けな声を漏らすと、セイラが不思議そうに首を傾げた。
俺は目をこすり、もう一度ステータスウィンドウを確認する。間違いない。
「……セイラ。お前、そのエクスカリバーのこと、最強の剣だと思ってるか?」
「え? うん、もちろん! どんな魔物でも、あのアビス・ヒドラだって一刀両断できたんだよ? これ以上の剣なんて、世界中どこを探してもないって断言できるよ」
セイラが胸を張って答える。
凛も「今更何を言ってるのよ」と呆れた顔をしている。
「……だよな。俺もすっかり忘れてたよ」
俺は頭を掻きながら、テーブルの上の聖剣を指差した。
「実はさ。お前と初めて会ってこれを15億で売った時……俺の魔力と、台所用のサビ落としじゃ、この剣にかかってた『呪いの封印』を、15%しか解除できてなかったんだ。ランクもちょっと低いしな」
「…………え?」
セイラの動きが、ピタリと止まった。
コーヒーを飲もうとしていた凛も、カップを口元で静止させている。
「ヒドラをぶった斬ったのも、鮫島の仲間たちとやりあったのも……この剣が本来持ってる力の、たった『15%』の威力でしかないんだよ」
「じゅ……じゅうご、パーセント……?」
「開放率ってよりも、セイラが強かっただけかもしれないけどな」
セイラが震える声でオウム返しにする。
「ちょっと待ちなさいよ!」
凛がテーブルをバンッと叩いて身を乗り出した。
「あれだけデタラメな威力出しといて、まだ15%!? じゃあ、100%封印を解除したら一体どうなるっていうのよ!?」
「さあな。山くらいなら軽く吹き飛ぶんじゃないか?」
『なっ……!? そ、そんな馬鹿な! ワタシという最高傑作がおりながら、その白銀のナマクラがまだ本気を出していないなどと……! ワタシは! ワタシは何%なのですか!?』
背後でカリバーンが信じられないものを見たかのように(目はないが)刀身を震わせている。
「お前は100%だ。……まあ、当時は俺も色々と慣れてなかったし、設備もなかったからな。でも、今の俺の技術と設備、そして何より、ずっと使ってきたセイラの魔力があれば──」
俺はセイラの碧眼を真っ直ぐに見据えた。
「エクスカリバーの封印を完全に解いて、100%の真の姿を引き出せるかもしれない。欧州に乗り込む前に、やってみるか?」
その言葉に、セイラの瞳がパァッと輝いた。
待ち受ける強敵を打ち倒すための、これ以上ない強力な切り札。
「……やるっ! 私、エクスカリバーの本当の力を知りたい!」
セイラが力強く頷く。
俺もニヤリと笑い、作業台の方へと向き直った。
「よし。そうと決まれば、欧州行きまでの特別ミッションだ。聖剣の封印解除……気合入れていくぞ!」
「おー!!」