Fランク「鑑定士」の俺、ゴミ捨て場の「錆びた剣」が聖剣だと気づいてネットオークションに出品したら、宝くじ並みの値段で落札された件 ~ボロアパートから始まる、鑑定スキルでの現代成り上がりライフ~ 作:えだのあ
ダンジョン入り口。
相変わらず探索者たちでごった返している。
俺は帽子を目深に被り、ゲートを通過した。
IDカードをかざすと、『Fランク:相馬 透』の文字が表示される。
受付の職員は俺を一瞥もしない。
好都合だ。
俺は人混みを避け、正規ルートではなく、誰も行きたがらない「廃棄ルート」へと足を進めた。
薄暗い通路。
鼻をつく腐敗臭と、鉄錆の匂い。
以前なら吐き気を催していたこの匂いが、今では宝の山への案内香に感じる。
十分ほど歩くと、開けた空間に出た。
そこには、壊れた武器や防具、効果の切れたポーション瓶などが山のように積まれている。
「さてと……」
俺は変装用に買った右目の眼帯をずらし、スキル『
──ブォン。
視界が切り替わり、ゴミ山が情報の羅列へと変わる。
【鉄くず】
【ひび割れた皮鎧】
【ただの石】
【腐った薬草】
やはり、99%は本当のゴミだ。
そう簡単に国宝級が見つかるわけがない。
聖剣エクスカリバーは、奇跡のような確率だったのかもしれない。
数時間、ゴミ山を掘り返し続け、さすがに腰が痛くなってきた頃だった。
「……ん?」
ゴミ山の奥深く。
ヘドロにまみれた黒い塊から、微かな違和感を感じた。
黄金色ではない。
もっと禍々しい、赤黒いオーラのようなものが漏れ出している。
俺は慎重に瓦礫をどけ、その塊を引っ張り出した。
それは、円形の金属板のように見えた。
表面は汚れきっていて、ただの鍋の蓋にしか見えない。
だが、鑑定ウィンドウには、とんでもない文字が躍っていた。
====================
【名称】アイギスの盾(呪い・破損)
【ランク】伝説級
【状態】呪詛汚染(レベルMAX)、物理的欠損
【真価】あらゆる魔法攻撃を反射する絶対防御。ただし、装備者の精神を蝕む。
【修復可否】可能(※汚染部の浄化と、欠損部の補修が必要)
【推定市場価格】1億3000万円~2億円
「……うわぁ」
俺は思わず声を漏らした。
聖剣の次は、伝説の盾かよ。
しかも今度は「呪い」付き。
「精神を蝕む、か。だから捨てられたのか」
前の持ち主は、呪いに耐えきれずにこれを捨てたのかもしれない。
あるいは、呪いのせいで命を落とし、装備だけがここに流れ着いたのか。
普通なら触るのも躊躇う代物だ。
だが、今の俺には見える。
ウィンドウの下に表示された、頼もしいガイドの文字が。
《推奨アイテム:漂白剤(キッチン用)、重曹、瞬間接着剤》
「また家庭用品かよ!」
俺は思わずツッコミを入れた。
こんな大層な呪いが、キッチンハイターで落ちるのかよ……エクスカリバーといい、庶民派だな。それでいいのか伝説の武具。
それはさておき、やる価値はある。
聖剣には劣るが、これまた億単位。十分すぎる額だ。
それに、「魔法反射」のスキルは、対人戦やダンジョン深層では必須級の能力だと聞いたことがある。
「よし、確保だ」
俺はその「鍋の蓋(仮)」をリュックに押し込んだ。
その時。
背後から、ジャリ……と砂利を踏む音が聞こえた。
「おい、そこのお前」
心臓が跳ねる。
俺はこの場所には誰も来ないと思っていた。
振り返ると、そこには見覚えのある3人組が立っていた。
薄汚れた装備。
疲労の色が濃い表情。
そして、獲物を値踏みするような下卑た目つき。
元パーティ『ブレイブ・ソード』の面々だった。
「……あ?」
剛田が、俺の顔を見て目を丸くする。
「お前……相馬か?」
最悪のタイミングでの再会だった。