Fランク「鑑定士」の俺、ゴミ捨て場の「錆びた剣」が聖剣だと気づいてネットオークションに出品したら、宝くじ並みの値段で落札された件 ~ボロアパートから始まる、鑑定スキルでの現代成り上がりライフ~ 作:えだのあ
聖剣エクスカリバーが『創世級』へと至り、俺たちの最大戦力が文字通り限界突破を果たした数日後。
地下要塞の専用端末に、待ちに待った着信が響いた。
『――準備が整った。ギルド本部の地下最深部へ来てくれ』
東郷さんからの連絡だ。
「よし、ついに出発だな」
俺は通信を切り、出発の準備を整えた凛とセイラに向き直った。
凛はいつものタイトスーツではなく、動きやすさを重視したシックなパンツスタイル。セイラは美しいプラチナブロンドの髪を後ろで一つに束ね、腰には神々しいオーラを放つ『聖剣エクスカリバー・アヴァロン』を帯びている。
「向こうに着いたら、いつエデンの連中と戦闘になるか分からない。その前に、一つ決めておきたいことがある」
俺はアイテムボックスから、先日『D・マーケット』のジャンク品から修復した、黄金に輝く十字架を取り出した。
「『防呪の聖十字』。所有者に向けられた呪いを完全に防ぐ伝説級のアーティファクトだ。琴音さんの呪いの事もあるし、アダムスは呪いを扱う可能性が高い。不意打ちの呪殺を防ぐために、俺たちの中で誰がこれを身に着けるかだが……」
俺が二人の顔を交互に見ると、凛は綺麗に整えられた爪を眺めながら、フッと鼻で笑った。
「私は遠慮しておくわ。左腕の『聖女の反逆盾』があるもの。呪いが飛んできても、倍返しで術者に叩き返してあげるわよ」
「私も大丈夫! 『剣聖』のスキルと創世級になったエクスカリバーのおかげで、状態異常も呪いも全部弾けちゃうみたいだから!」
セイラも胸を張って笑顔で答える。
「……そうか」
薄々感づいてはいたが、うちの女性陣の防御力はすでにバグの領域に達していた。
つまり、俺たちのパーティで「不意打ちの呪い」で即死する可能性があるのは……。
「透くん、こればっかりは自覚してちょうだい。うちの会社で一番ひ弱で、戦闘力皆無で、一番狙われやすいのは間違いなくあなたよ。お守りだと思って、あなたが着けなさい」
「……はい、そうさせていただきます」
俺は反論の余地もなく、大人しくその『防呪の聖十字』を首から下げた。
黄金の十字架が、パーカーの胸元で微かに温かい魔力の鼓動を打つ。
『キ、キィィィィィィッ!!』
その瞬間、背後に控えていたカリバーンが、突然金切り声のような共鳴音を上げた。
『主様の胸元という特等席に陣取るなど、生意気な十字架です! ええい、ワタシがペンダントサイズにまで圧縮できれば、そのような成金趣味の十字架など……ッ!』
「お前は背中を守ってくれるだけで十分だって。ほら、行くぞカリバーン」
『アッ、ハイ! 主様の背後という絶対領域、このカリバーンが死守いたします!』
相変わらずのチョロさに安堵しつつ、俺たちは身支度を済ませて地下要塞を後にした。
◇
新宿ダンジョンギルド本部、地下最深部。
厳重なロックが幾重にもかけられた巨大な空間の床には、幾何学的な魔法陣が広範囲にわたって刻み込まれていた。
これが、国家元首や超VIPのみが使用を許される『国家間転送陣』だ。
「来たか」
腕を組んで待っていた東郷さんが、俺たちを見て顎をしゃくった。
「手土産の準備は万端だろうな。シャルルには、ワシの個人的な客がそっちへ向かうとだけ伝えてある。くれぐれも機嫌を損ねるんじゃねえぞ」
「ええ、準備は完璧です。国宝級の芸術品を用意しました」
俺が胸を張って答えると、東郷さんはニヤリと笑った。
「ならいい。……セイラ、琴音のことはこっちでしっかり保護しておく。お前は自分の成すべきことをやってこい」
「はいっ! 仁さんも、いろいろと本当にありがとうございます!」
セイラが深く頭を下げる。
「東郷マスター、私たちが不在の間、日本でのウチのダミー会社の資金繰りと、ギルド経由での『エデン』への牽制、引き続きよろしくお願いします」
「ああ、任せておけ。受けた恩には必ず報いる」
東郷さんの頼もしい言葉を背に受け、俺たちは巨大な転送陣の中央へと足を踏み入れた。
「――起動するぞ」
東郷さんが制御盤のレバーを押し込むと、足元の魔法陣が眩い蒼光を放ち始めた。
空間がグニャリと歪み、身体がフワリと浮き上がるような特有の感覚が俺たちを包み込む。
「エデンの本陣での大暴れ……しっかりマージン稼がせてもらうわよ」
「私も、絶対にお父様を止めてみせる。……二人とも、一緒に行ってくれて、本当にありがとう」
光の奔流の中で、凛とセイラが俺を見て笑う。
俺は胸元の十字架と、背後のカリバーン、そしてアイテムボックスの奥底に眠る『服従の種』の存在を確かめながら、力強く頷いた。
「ああ。琴音さんを救って、エデンの野望を叩き潰す。……行くぞ、フランス!」
――シュァァァァァァァンッ!!
視界が完全に真っ白に染まり。
俺たち『株式会社アンティーク・アイ』の三人は、決戦の地であるフランス・パリへと旅立ったのだった。