GATE 国防軍 彼の地にて〝最高〟とともに戦えり   作:びよんど

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無いなら与えればいいじゃないって話です。


第十二話 天職

 

 

<<< ニホン国防軍基地 仮設道場 >>>

 

 

「……ということで、『刑務サポーター』の皆さんに置かれましては、急な呼び出しにも関わらずお集まりいただき誠にありがとうございます」

 

「水臭えこと言わないでください!」

 

「俺達キングさんのためなら火の中水の中、どんなところであろうと着いていきますぜぇ!!」

 

「どうぞ俺達には、タメ口で喋ってください!」

 

 

夜の闇が世界を覆う時間帯、イタミさんの許可を貰って一時的に貸し切っているここ仮設道場は今、異様なまでの熱気に包まれていた。

 

熱気の発生源は、(すね)に傷持つ強面の野郎共……臭蓋獄の囚人達だ。

 

その数およそ54人と言ったところ。

 

 

「なら遠慮なく。……俺の呼びかけに応じてくれて本当にありがとう。誰一人欠けることなく出席してくれて、嬉しい限りだ」

 

「「「「 そんなの当たり前ェ!! 」」」」

 

 

なんで初対面の時点で好感度カンストしてんの……。*1

 

あっどうも、俺は〝最高〟のヒーローことキングです。

……今は刑務サポーターの面子を仮設道場に呼び寄せ、()()()()()を実行するために来ているよぉ。

 

 

「キングさん……僕達まで呼んだのはなんでですか?」

 

「………」

 

 

そうそう、この場には俺とサポーターの面々だけが来ているワケじゃないんだよなぁ。

 

俺のすぐ近くには、どうして呼ばれたのか分からなさそうにしているチャイルドエンペラーことイサム君と、黙って事の成り行きを見守るユエことアレーティアがいる。

 

ちなみにこれは余談となるが、ある程度の戦力が刑務サポーターを動員することで確保されたことから、自身は予備戦力兼裏方として国防軍基地に留まりたいというイサム君の要望が上がり、セキンガルさんはこれを了承。

 

よって俺を除いた初期メンツは総入れ替えする形となり、代わりに刑務サポーターのバックアップを受けながら、主に俺とアレーティア、ついでにぷりぷりプリズナーで最前線に立つフォーメーションへと切り替わった。

 

 

「何故って?……分かりきったことだエンペラー()()()!俺達にとんでもないモノを見せるために決まっている!そうだろうキングちゃん!!?」

 

「……夜だから、一応みんな静かにしような?」

 

 

そのぷりぷりプリズナーが何食わぬ顔で混ざっている。

 

アンタねぇ、アレーティアとのダブルパンチで空の彼方まで吹っ飛ばしたってのに、平然と戻ってきてんじゃないよホント。

 

……まぁいいや、これで主要なメンバーは揃ったな。

 

 

「……今回君達に集まってもらったのは、端的に言って()()()()()に協力してもらいたいからだ」

 

「「「「 じ、実験!!? 」」」」

 

 

見るからにサポーターの人達の顔色が青褪めたでござる。

 

まぁ俺の言い方が悪いせいもあるんだけどね。ごめんね。

 

 

「っ、キングちゃんそれは一体どういうことだ!?囚人(ハニー)達を使って実験なんて、内容によってはディープキスの刑だぞ!」

 

「勿論、これから説明をさせてもらう。それで良いなら良いし、悪ければ断ってくれても構わない。……俺が必要とするのは君達の同意であって隷属じゃあない」

 

 

俺の言葉を聞いて、何とか平静を取り戻してくれたサポーターの人達は、俺の次の言葉を待つかのように一様に静かになってくれた。

 

彼らの聞く姿勢は万端。

……なら俺は、俺が頭の中で練り上げた構想を言葉で言い表すのみ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君達に是非とも〝キング流気功術〟を習得してもらいたい」

 

「「「「 ……………………………へぇ? 」」」」

 

ウソでしょぉぉぉおおお!!?

 

 

バカァァァァァァァァァァン!!

 

 

えっ!?……な、何!!?

 

クリバヤシさん!!?………とクロカワさん?

 

道場の入り口をぶち破ってダイナミックエントリーを果たしたのは、凸凹コンビの凹のほうのクリバヤシさんと凸のほうのクロカワさん。

 

クリバヤシさんは、それはもう目ん玉をひん剥いて全身で驚きを表現し、クロカワさんもクリバヤシさんほどではないけど驚きを隠せずにいる。

 

……って言うか、立ち聞きしてたってことぉ?

 

感心ならないねぇなんて思ってたら、クリバヤシさんが物凄い形相で俺に詰め寄ってきた。怖いよぉ!

 

 

「キングさん!!……さっきのお言葉は流石に冗談ですよね!?秘中の秘とされるキングさんの最強武術〝キング流気功術〟を習得してもらいたいだなんて……!!」

 

「勿論」

 

「そ、そうですよね〜!キングさんにしか扱えないとされている武術を、こんな人達が習得できるワケが―――」

 

「……冗談じゃないですよ」

 

「ふへぇ……?」

 

 

そもそもの話、俺にしか扱えないなんてデマだよぉ?

 

 

「キング流気功術なんて仰々しく呼ばれてはいますが、要は『気』という名のエネルギーを体内で循環させて、必要な時にある程度操作できればそれで上出来な、そんな代物に過ぎないんですよ」

 

「……マ、マジか」

 

「アッサリ喋っちゃったよ……!」

 

「なっ……なっ……!?」

 

 

周囲のどよめきが段々と大きくなっていく。

 

クリバヤシさんも頭を抱えている。

 

 

「ある程度使いこなせれば身体能力の強化や傷口の止血・縫合、索敵、ド○○ンボールのかめは○波を撃てたりできます。……要は、君達サポーターには俺の代わりを務められるだけの存在に育ってもらいたいと考えているんだ」

 

「あ、あの!」ビシッ!!

 

 

サポーターの中から一人、手を上げる者が現れた。

 

ハゲ頭の巨漢……あれ、どっかで見たことがあるような?

 

 

「質問か?……名前を頼む」

 

「は、はい!矮小ながら俺はハンマーヘッドと言います!少し前まで桃源団のボスをやってました!」

 

 

…………………あー、あの急に真っ裸になった連中のボスだった人かぁ!

 

 

「ハンマーヘッド、何か気になることがあるのかな?」

 

「その……〝キング流気功術〟をお教えいただくのは大変光栄なことなんですが、一体どうやって?」

 

 

よくぞ聞いてくれました。

 

そう、ここからが本題なんですよ。

耳の穴かっぽじってよ〜く聞いてくださいねぇ!?

 

 

夢空間、展開

 

『『『『 ?……ッ!!? 』』』』

 

 

仮設道場内を俺の白黒(モノクロ)に染め上げる。

 

その場にいた誰も彼もが辺りをキョロキョロ見渡して愕然としている。

……冷静でいるのはアレーティアくらいなものだ。

 

 

『ここは謂わば精神が交わる場。俺は便宜上〝夢空間〟と呼んでいる』

 

『えっ……えっ!?キングさん、いつの間にこんな凄いことを……ッ!?』

 

『これはずっと以前から出来ていたことだよチャイルドエンペラー。大勢の目があるところでやるのは流石に初めてだけどね。それはそうと、自覚できているかな?』

 

『え………………あっ!』

 

『なんだ、体の内側から(あった)けーもんが……』

 

『スゲー……なんか分からねーけどスゲー!』

 

『な、なんだか無性に田舎にいる母ちゃん思い出してきて涙が……(泣)』

 

『温けー……温けーよぉぉ(泣)』

 

『こ、れが、まさか……!?』

 

『キングさんの気功だァァァァァァァァァイヤッフォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ(゜∀。)ワヒャヒャヒャヒャヒャヒャ』

 

 

夢空間内に引きずり込んだ人達(ぷりぷりプリズナーすらも)に例外なく俺の『気』を分け与えてあげた。

 

あくまで常人が耐えうる最低限度ではあるが、皆が皆、体の内側から突如として湧き上がる未知のエネルギーに無事適合したみたいで一安心だよぉ。

 

……あ、クリバヤシさんとクロカワさんは余計だったか?

 

まぁ今更取り上げるのも忍びないし、そのままにしといてあげますかぁ。

 

 

『いま全員に付与した()()こそが、俺が常日頃から『気』と呼んでいるエネルギーにして、キング流気功術の中核を成す力の正体だ』

 

『キ、キングさん、その……』

 

『何でしょう、クロカワさん』

 

『いま私達を取り巻いているこの状況も含めて、お尋ねしたいことが山ほどあるのですが……まずは一つ、これだけは聞いておきたいことがあります』

 

 

メッチャ真剣な表情でいるクロカワさんの質問だ。

 

……不真面目に答えるワケには、いかないよなぁ!

 

 

『この『気』をもってすれば、私達でも怪我や病に苦しむ人達を救ってあげられるのでしょうか……!?』

 

『結論から言って、極めて難しいでしょう。……()()()()()()

 

『っ、その理由を、お尋ねしても?』

 

 

クロカワさんの質問に、俺は出来るだけ懇切丁寧に答えていった。

 

まず大前提として、治癒そのものが極めて高難易度に位置づけられる高等技術であることが挙げられる。

 

そもそも皆、俺が一見冷静そうに他人を治癒している姿を見て〝あ、これなら僕(私)でも出来そう〟とか勘違いしていませんかぁ?

 

それはね、不正解。

 

傷病人の目の前で慌てふためきながら治療を施す医者などいないように、俺も内心では慌てふためきながらもそれを表に出さないように心がけているワケで。

 

当然、人を治すともなれば全神経を集中して大真面目に取り組むに決まっているんですよぉ。

 

ファンタジーに一切依らない確かな根拠に基づいた人体・医学知識はもはや必須スキルであり、俺の場合、そういう知識を習得する環境に恵まれたのもあってその点は無事クリアすることが出来たワケだが、ほかにもまだまだ課題は山積みである。

 

ピンセットで微生物をつまむような繊細で緻密な『気』の操作練度も要求される。

 

手元に医療器具があれば全然それを代用してもらっても構わないんだけど、無い場合、って言うか無い状況のほうが普通なんだけどね。

 

……その場合『気』のみを使って治癒を施すことになるんだけど、ぶっちゃけ傷口の止血や縫合が出来れば俺的には百点満点をあげてもいいくらいにはべらぼうに難しいワケなのよ。

 

この場合の『気』の役割とは吸収性縫合糸であり、傷口から怪我人の体内に侵入した後、脂肪を巻き込まないように傷口同士を縫い合わせて自然に癒着するのを待つまでが一連の流れである。

 

……何が言いたいかと言うと、縫合にすらある程度の専門知識が要求されるというのに、それよりも明らかに難しそうな輸血や病気の治療、手足の再生を『気』だけで容易くこなせるワケがないでしょうということだ。

 

 

『っ……そう、ですわね。出過ぎた真似をしました』

 

『で、でもキングさん!それだと俺達なんて尚更無理な話になってきますぜぇ!?』

 

『そ、そうッスよキングさん!俺達、今まで〝壊す〟ことしかしてこなかったゴロツキしかいねぇんですよ!そんな俺達に突然人を治せって言われても……』

 

『俺達は所詮〝無能〟だから……無理ッス』

 

 

当然の反応、当然の返し。

……()()()()()予想通りだなぁ。

 

 

『……確かに、君達はいまだ有能な働きを示していない。だが、それが無能の(そし)りを受ける理由になってはいけないんだ』

 

『『『『 キ、キングさん…… 』』』』

 

『とは言うものの、飛躍するための取っ掛かりを用意しないのはあまりにも不義理というものだ。……だからこそ、ここは一つ〝ズル〟をしたいと思う』

 

『『『『 ズル……? 』』』』

 

『天職の付与……つまり〝才能の後付け〟だ』

 

『『『『 ………………………えぇ? 』』』』

 

 

エヒトルジュエを〝神域〟もろとも滅殺した際に得た副次的な成果の一つとして、他者への天職の付与能力が挙げられるだろう。

 

軽戦士とか炎術師とか風術師とか、相手に天職という名の才能を任意で分け与えられるこの能力は、もしかしたらメチャクチャヤバい代物なのかもしれない。

 

……が、使えるものはこの際何だって使わせてもらう。

 

 

『……レイタロウ、それはトータスにいた時に?』

 

『そ、ドカンと天にブチかました時に、ね?』

 

『……そう』ニコッ

 

 

悪戯っぽく笑うアレーティアを横目に見つつ、俺は本題を切り出した。

 

 

『今回は申し訳ないが、俺のほうであらかじめどの天職を与えるべきか決めさせてもらった。候補は四つ、希望者には候補の中から一つ決めてもらう予定だ』

 

 

一つ目、治癒師

文字通り治癒を司る天職であり、傷付いた仲間を癒やし救うことが出来る重要なポジションだ。

 

これはエネルギー操作の応用である〝治癒〟で代用可能。

 

二つ目、錬成師

鍛冶職を司る天職であり、武器の製造やぬかるんだ道の舗装なんかもこなせる縁の下の力持ちになるだろう。

 

無難にこれは〝錬成〟一択だな。

 

三つ目、結界師

文字通り結界を張る天職だが、結界と言っても味方を守る盾を展開する程度に留めておいたほうが良いだろう。

 

警察や軍なんかが使っている防護盾(ライオットシールド)をイメージして『気』で形作れば何とかなる、か?

 

四つ目、作農師

農業全般を司る天職であり、前線で戦う俺達を〝食〟で支える、ある意味一番重要なポジションだ。

 

これは……地面や植物に対象を絞って〝強化〟で成長を促していけば、或いはいけるんじゃないか?

 

うんうん、ほぼその場の思いつきだったけど、何とかなりそうじゃないッスかぁ!

 

……どれもやりようによっては攻撃に転ずることも出来る非戦系天職ばかりだけど、本来のサポーターの趣旨から外れてしまうため敢えてこの場では公言しない。

 

 

『特定の天職を付与することで才能の方向性を定め、それに向けて知識習得・技術向上に邁進してもらうのが今回の実験の概要となる』

 

『『『『 ………ッ!! 』』』』

 

『なお、刑期満了を迎えるまでよほどの問題行動が認められない場合、付与した『気』と天職を剥奪するような真似はしない。ただ願わくば、その力を悪しきことではなく世のため人のために行使してもらいたいと思っている』

 

 

ちなみに、この場にいないけど、既にセキンガルさんやイタミさんには事情を説明してある。

 

俺ってば実は他人に才能を与えられるんですよグヘヘヘ、と説明した時の二人の反応は、それはもう驚きを通り越して呆然だったと記憶している。

 

結論から言って返事はOKだった。

……ちゃんと責任持てよと言外に言われたが、そこら辺は抜かりないから大丈夫と返してある。

 

セキンガルさんはヒーロー協会に、イタミさんはこの基地にいるお偉方に、それぞれ()()()()()()()()()()()()()()()()の説明をするために大忙しだ。

 

 

『……お、俺、やりますぜ!結界師になってみてぇ!』

 

 

一人のサポーターが名乗りを上げる。

 

すると我も我もと手を上げる者が続出し、道場内は活気ある声で瞬く間に埋め尽くされた。

 

 

『お、俺も俺も!俺はモノ作りがしてみたいから錬成師になりてぇです!』

 

『俺は治癒師ってのになりてぇ!お願いしますキングさん!』

 

『じ、実は俺、農業に憧れてまして……出来れば作農師になりたいんスが……』

 

『頑丈さが取り柄の俺が結界師になれば、それはもう無敵ってことッスよね!?俺もやりたいです!』

 

私も!結界師になりたいですッ!!

 

『私は、出来れば治癒師に……』

 

『キングさん。僕も、その、可能であれば、錬成師に、なってみたいです……』

 

『キングちゃん、俺はキングちゃんや囚人(ハニー)達を癒せる治癒師になりたいッ!頼めるかッ!!?』

 

 

当然、強制などはしない。

 

集団圧力に屈している様子もない。

 

それでもアレーティアを除く、その場にいた全員がやる気を示してくれたことに内心胸を撫で下ろした。

 

 

『……よろしい。それじゃあ早速、天職の付与を始めるとしよう。付与が終わり次第、軽く瞑想を行って自らの『気』を自覚してもらい、今日は解散とする。明日以降から本格的な訓練を実施するから、そのつもりでね』

 

『『『『 はいッッッ!!! 』』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天職の付与自体はすんなりと上手く行った。

 

クロカワさんやぷりぷりプリズナーを筆頭として治癒師は18人。

 

イサム君を筆頭として錬成師は13人。

 

クリバヤシさんやハンマーヘッドを筆頭として結界師は22人。

 

残り5人は作農師、といった具合だ。

 

……皆一様に頭を抱えて痛がっていたが、何の代償もなく才能を得られるんだから文句はないよね?

 

フッ、明日から忙しくなるなぁ……!

 

*1
※ワンパンマン:REY 十四王目参照!




クリバヤシさん狂喜乱舞の回とも言う。

ちなみに、原作と比較して展開に変わりがない場合バッサリと切り捨てていくつもりです。

例えばロゥリィの鮮烈デビューとかピニャ殿下とデュラン藩王の痛々しい邂逅とか……。

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