GATE 国防軍 彼の地にて〝最高〟とともに戦えり   作:びよんど

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何かと因縁をつけられたから懲らしめましたって話です。

ちなみに、キャラデザはアニメ準拠です。


第十三話 ゴスロリ少女との戯れ

 

 

<<< ニホン国防軍基地 >>>

 

 

「ねぇキング。私と戦ってほしいのぉ。……ダメぇ?」

 

「うん、ダメぇ」

 

「ひどぉい!!」

 

 

酷いなどと申されても、ダメなもんはダメなんですよぉ。

 

ただでさえ今日の昼飯を何にするか悩んでいるっちゅーのに、俺()の主戦場たる移動式キッチンにまで押しかけて喧嘩を吹っかけるなんて、中々いい度胸してるじゃないの。

 

俺はキング……だが今は〝最高〟のヒーローも地上最強の男も名乗っちゃいない。

 

今の俺は、国防軍から正式な許可が下りたことで生き生きと炊事に勤しむフルタさんを唯一の戦友(とも)とする歴戦の料理戦士長だ。

 

下手に触ると火傷するぜ……?

 

 

「あ、後は仕上げだけなんで、キングさんその娘の相手をしてあげたらどうです?」

 

「えっ……フルタさん?」

 

「あんまり居着かれでもして唾が入ったら事ですからね。ハハハ」

 

 

あ、いや、そのね、フルタさん?

 

この娘……ロゥリィちゃんはね?見た目は12、3歳くらいのゴスロリ女の子なんだけど、中身は多分メチャクチャ強い神官戦士なんだと思うワケなんですよ。

 

そも、あんなでっけえハルバードを軽々持ち上げられる時点で素人の所業じゃないワケで、そんな娘と二人っきりになったら()()()()()どころの騒ぎじゃなくなっちゃうんですよホンマぁ……(震え)

 

 

「………(#^ω^)」ピキピキ…

 

 

それにさぁ、見てご覧よ!あそこの物陰をぉ!!

 

密かに俺を監視しているアレーティアがさぁ、顔中にピキピキと青筋立てて笑ってるんですよぉ!?

 

怖えよマジでさぁ!

手も出してないのに気付いたら三角関係だよもぉぉぉ!!

 

 

「私ぃ、あなたの(これ)で、感じたいわぁ……!」

 

「ハッハッハ、中々おませな娘じゃないですか」

 

「ッ〜〜〜(#^ω^)」ピキピキピキピキッッ!!

 

 

……フルタさん、アンタこの状況で何にも理解できてないのは最早才能だよホント。

 

さらば戦友、あの空の果てでまた会おう。

 

……そんなことを内心嘯きながら、俺は戦場を炊事場から別の場所にすべく、ハルバードをブンブンぶん回すロゥリィちゃんの手を取って移動を始めた。

 

ついでと言わんばかりにアレーティアも付いてきたぉ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

基地から少し離れた丘の中腹辺り。

 

人馬やワイバーンみてぇなドラゴンの死骸が折り重なって地獄の如き様相を呈していたこの場所は今、とある事情によりレレイちゃんを初めとした避難民達の格好の稼ぎ場となっていた。

 

そのおかげか以前より小綺麗になっており、血痕だったであろう無数の大小様々な黒い染みをカウントしなければ、元の原風景を取り戻しつつあるようにさえ思えた。

 

俺とロゥリィちゃん、あとアレーティアは、そんな荒涼な大地の比較的なだらかな場所にて相対している。

 

観客らしい観客など、口元を布で覆って作業しているレレイちゃん達と、ワイバーン等の死骸を人力で撤去している『刑務サポーター』数人くらいしかいない。

 

 

「……そう言えば、もういいのかしらぁ?」

 

「いいって……何をかな?」

 

「ホラ確か……『刑務サポーター』って言われてた男達をあなたが指導しているんでしょう?彼らのことは、もう放っておいていいのかしらぁ?」

 

 

刑務サポーターに〝天職〟を与えてから一週間経つ。

 

その間、俺自身は特にこれと言った本格指導は行っておらず、良く言えば距離感が適当、悪く言えば放任気味な態度で接していた。

 

 

「あぁ……生憎放任主義でね。最低限の基礎は叩き込んだと思うから、後は連中の自主性に任せるつもりさぁ」

 

 

俺の指導方法なんて、基礎を叩き込んだらひたすら実戦で心身を追い込む超スパルタ形式しか無いからねぇ。

 

それでも相性が良ければラッキーだけど、当然相性の悪い人もいるもので、実際〝強化訓練〟を受けて心を挫かれたヒーローがヒーロー業そのものを引退する、なんてこともザラにあったものだ。

 

それと同じことを刑務サポーターにも強いるのかと自問自答した結果、最低限の基礎とアドバイスをした後は個々人の自主性に委ねるという方針に決めたのだ。

 

例えば、治癒師を志した連中には医療知識を有するクロカワさんを講師役に据え置いて一から勉学に勤しませたり、結界師を志した連中には『気』で構成された盾が簡単に壊れないようクリバヤシさんに猛撃を仕掛けてもらったり、錬成師を志した連中にはイサム君とともにひたすら武器の部品や弾丸などの製造に従事してもらったり、作農師を志した連中にはとにかく作物と向き合えといった具合に、同じ仲間同士で教え合ったり知識を共有することで親睦を深めてもらっている。

 

結果は今のところ目に見えてないけど、まぁまだ一週間しか経ってないし焦ったところでしょうがないよねぇ。

 

……そんなことより目の前のロゥリィちゃんだ。

 

殺る気だ、殺る気に満ちあふれておる……(汗)

 

 

ドッドッドッドッドッドッ

 

 

「……主神エムロイより、()()()()()があったのよぉ」

 

「お告げって……?」

 

 

割りかし短いスカートを風に靡かせ、クスクスと含み笑いを浮かべながら二の句を告げるロゥリィちゃん。

 

 

今日(こんにち)から数えて七日ほど前。このアルヌスの地を中心として、到底無視できない〝新世界の入滅〟とやらを察知したらしいのよぉ」

 

「七日前……新世界……入滅……あっ」

 

 

も、しかして、それって……!?

 

 

「……夢空間のことを言ってるの?」

 

「ちょま、アレーティア……!」

 

「へぇ……あなた達はそう言っているのねぇ?」

 

 

あーもうアレーティア!!

 

そのことは秘密にしようって……言ってなかったねぇ!!

 

 

「……でも、それでいちいち責められるほどの悪事なんてレイタロウは働いていない。……そもそもお前がレイタロウに馴れ馴れしく接することを許してもいない」

 

「あらぁ?彼とお話をするのに、わざわざあなたの許可がいるのかしらぁ?」

 

「………」ゴゴゴゴ…

 

「………」ゴゴゴゴ…

 

「話が進まないよ全く。……ロゥリィちゃん、君は結局のところ何がしたいんだい?」

 

 

女同士の静かで熾烈な戦いに土足で踏み入るのは勇気がいるよホント……。

 

俺、何かしましたぁ?(某なろう風)

……いやマジで俺何をしたんだろうなぁ……?

 

俺のその言葉を待っていましたと言わんばかりに口角を吊り上げたロゥリィちゃん。

 

手に持っていたハルバードの切っ先を俺に向け、ようやく本題を切り出してくれた。

 

 

「エムロイはこう命じたのぉ。……キング(あなた)の存在そのものが世界の秩序を乱す。だから()()ってねぇ。私があなたと戦う理由は、これでお分かりかしらぁ?」

 

「……うんうんなるほど、よ〜く分かったよ。()()()()()()()()()

 

「っ……」

 

 

本当によく分かったよ。

……ロゥリィちゃんの信仰する神様が、割と理性的な存在だってことがねぇ。

 

でも、それはあくまで建前だろう?

 

神様の意志を建前に使っちゃ、不信心を疑われるぜ?

 

 

「君のその()()()()()()()()()()を見れば一目瞭然さぁ。君はただ、俺と戦えればそれでいいんだろう?」

 

「……凄い顔」

 

 

原作で言うところのソニックスマイルって感じかな。

 

……根っからの戦闘狂なんだねぇ。

 

口紅が黒紫通り越して真っ黒クロスケになってるし。

 

 

「アレーティア。俺が相手をするよ。ちょっと離れてて」

 

「……空間は使うの?」

 

「万全を期すために使ったほうがいいんだろうけど……。これ以上神様の琴線に触れる必要もないよねぇ」

 

「……分かった。どのくらい離れていればいい?」

 

「ちょうどレレイちゃんの居る辺りまでを境界線にしておこっか」

 

「……ん。……あっ」

 

「ん?……あっ」

 

もう我慢できないのぉ!いい加減殺らせてぇぇぇ!!

 

 

キャー!?

 

空からハルバードを振るってくる女の子がぁ!!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このくらいあれば十分。感謝する」

 

「おお?そうかい嬢ちゃん。また手が必要だったらいつでも呼んでくれ!」

 

 

一方、正式に国防軍の庇護下に収まったレレイ達避難民はと言うと、アルヌスの丘に無数に転がっていた翼竜の死骸から鱗や牙などを採集する作業に勤しんでいた。

 

傍らには同じ柄の服を着た屈強な男達がいる。

 

彼らが力を合わせて翼竜の巨体を転がしてくれるおかげで、地面に隠れていた鱗も採集することが出来たのだ。

 

レレイは、この一週間で習得した地球の共通語をもって、屈強な男達……刑務サポーターに感謝を述べた。

 

 

「戦場掃除も俺達刑務サポーターの仕事だからな。……それはそうと、このワイバーンみてぇのから鱗なんかを剥ぎ取ってるけどよ、それって金になんのか?」

 

 

サポーターの一人から割とまっとうな疑問が飛んでくる。

 

曲がりなりにもドラゴンだろうが、今や死骸となってとんでもない腐臭を放っている肉の塊でしかない。

 

そんなのから大真面目にせっせと鱗や牙(欠けたり、折れたり、傷付いたり、あるいは小さいものは捨てているが)を採集しているレレイ達の様子を見て、流石に思うところがあったようだ。

 

 

「なる。これは翼竜だから、鱗一枚で良くて銀貨30〜70枚ぐらいになる。銀貨一枚あればヒト一人が五日は食べていける」

 

「「「 おぉ……すっげえ 」」」

 

 

この世界の銀貨一枚の価値に、思わず色めき立ってしまうサポーター達。

 

 

「古代龍の鱗ともなれば、一枚で金貨10枚に相当する。炎龍は更に高い値がつくと思われる」

 

「「「 うっひょー!?すっげー!! 」」」

 

 

レレイの言葉につい心躍ってしまったサポーター達。

 

……人目のない時間に、鱗の一枚や二枚掠め取っておくのも悪くないと、つい悪い考えが脳裏を過るが、そんな盗みを働けば自分達を信じて送り出してくれたキングを裏切ることになると(かぶり)を振った。

 

そんなサポーター達の内心を知ってか知らずか、レレイは現実的な話を口にする。

 

 

「一番安全なのは現金での交換。出来れば大店(おおだな)に任せたいところ。下手な店に出そうものなら安く買い叩かれるのがオチ。こればかりは師匠の()()()()()()に感謝」

 

「「「 そ、そうだよな。ハハハ…… 」」」

 

 

こんな右も左も分からない異世界で、自分達サポーターが心から頼れる〝繋がり〟など限られてくる。

 

当然、特地の質屋との繋がりなど持ち合わせていないために、良くて安く買い叩かれるのがオチだろうと肩を落としてしまった。

 

 

「にしても、嬢ちゃんも随分共通語が上手くなったなぁ。いや、元々この世界にあった言葉か?コネクション」

 

「訂正を求める。私はレレイ。年は15。嬢ちゃんじゃなくて立派な大人。ちなみに、こねくしょんはついさっき知った言葉」

 

「おっと、そりゃあ悪かったなレレイちゃん。俺はハジキってんだ。よろしくな―――」

 

もう我慢できないのぉ!いい加減殺らせてぇぇぇ!!

 

「「「「 ッ!!? 」」」」

 

 

ズドガァァァァァァァァァァン!!

 

 

聞き覚えのある少女の甲高い声と、大地を砕き割らんばかりの震動によって足元を大いに揺さぶられる。

 

精神的に動揺したとかそういうチャチな表現には決して収まっておらず、周囲を見渡すと、自分達以外にも翼竜の鱗や牙を採集していた避難民達やそれの手助けをしていた刑務サポーター達も先程の震動に面食らってキョロキョロしていたのが見て取れた。

 

中には尻餅をついている者もいる。

 

何が原因で地鳴りが起きたのか、と言うより、さきの少女の声の発生源を辿るように視線を泳がすレレイ。

 

そして偶然にも、見つけた。

 

濃い土煙が濛々(もうもう)と漂う中心地に、少女のようなシルエットと巨漢のようなシルエットがあるのを。

 

 

「ありゃあ黒ゴスの娘と……!?」

 

「一体何して―――うぇぇ!!?」

 

 

土煙が晴れ始め、全貌が露わになってきたことで、そこで一体何が起きたのかを察するに至ったレレイ達。

 

開口一番、零れた出た感情は―――〝驚愕〟

 

 

「………………………理解不能」

 

 

レレイですら理解が追いつかなかった。

 

 

「ッ〜〜〜、このぉ〜〜〜ッ!!」

 

 

ハルバードを振り下ろし、その体を二つに切り分けたと確信していたロゥリィすらも、理解が追いつかなかった。

 

 

「……ん、やっちゃえレイタロウ」

 

 

唯一その光景を前にして笑みを浮かべられたのは、彼の化け物っぷりを間近で見続けていたアレーティアのみ。

 

 

「モ、モヒカンで……」

 

「あの馬鹿でけぇハルバードを……」

 

「……受け止めちゃったよ」

 

 

どう反応すれば良いか最早分からない。

 

刑務サポーター達の視線の先には、真っ直ぐに聳え立つ怪獣の背鰭のようなモヒカンを使ってロゥリィのハルバードを引っ掛け受け止めているキングの姿があった。

 

 

「全く、まだ話の途中だってのに……せいっ」

 

「ちょ……キャアァァ!!?」

 

 

そう言って呆れたように首をブンブン振り回し、ロゥリィをハルバードごと遠くへ吹っ飛ばしてのけた。

 

渾身の一撃を受け止められ、あろうことか首の力だけで吹き飛ばされた事実に思わず顔を顰めるロゥリィ。

……が、そこは何百年もの間戦いに身を投じてきた歴戦の戦士にして〝亜神〟

 

可愛らしい悲鳴を上げながら中空に投げ出されても、内心は極めて冷徹にこの事態への最適解を導き出しており、中空にありながら体全体を何度か旋回させることで衝撃を分散、プロの体操選手顔負けのアクロバティックな着地を決め込むことに成功した。

 

しかし、ロゥリィの胸中に喜びはない。

 

むしろキングに対する警戒レベルを最大まで引き上げる。

 

 

「(まさか髪の毛に阻まれるなんて。……いいえ、それよりも私の一撃がことごとく散らされたのは一体どういう理屈なのかしら。髪の毛を伝って衝撃が足元に逃げたとでも言いたいの……?)」

 

 

その場から動かないキングの足元を見やる。

 

……そこには、おそらくロゥリィ自身の初手の一撃によってもたらされたであろうクレーターのような跡が半径5mに及ぶまで地面を侵食していた。

 

自分の体を通り道にして衝撃を足元に逃がした?

……だとするならば、このキングという男、控えめに言って武の天才である。

 

 

「(これ以上のことは、いっそあなたの体に聞いたほうが早いわよねぇ!!)」

 

 

考えすぎて尻込みするなど論外。

 

ハルバードの石突を握り込み、ロゥリィは一陣の風となって疾駆した。

 

……彼女の生来の気質もあるだろうが、この攻めの姿勢は対キング戦を想定する上では実は正解である。

 

仮にキングエンジンが鳴り響いていなくとも、キングの存在、名前そのものが悪しき心に畏怖をもたらし怖気づかせる〝抑止力〟としての威を発揮する。

 

要は、受けの姿勢に入った時点で既にキングの術中に嵌まったも同然であり、そこから勝ち筋を見出すことはほぼ不可能となってしまうという理屈だ。

 

ならば、一気呵成(かせい)に攻め続ければキングに勝てるのか?

 

 

「(今度こそ捉えたわぁ!……さぁどう出る―――)」

 

 

ハルバード全体を使って振るわれた横一文字は、ロゥリィをして防御不能と断言する必殺の一撃。

 

その分隙が多いゆえ、必ず当たると確信したタイミングでしか使わなかった秘中の秘でもある。

 

畑の案山子と化して動かないキング。

 

それは、ロゥリィの得意とする間合いに踏み込んだ後ですら揺らぐことはなかった。

 

だからこその信頼。

……ロゥリィは敵としてのキングを信頼し、横一文字を解禁したのだ。

 

当たる。当たる。当たる。

 

その素っ首にハルバードの刃が食い込み―――

 

 

「あ…れ……?」

 

 

……その手に握るハルバードの感触、重みが消えた。

 

否、ハルバードは消えていない。

 

現に、それは今()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「驚いたよ。……君、S級でも十分やっていけるポテンシャルを持ってるねぇ。転職するなら大歓迎だよぉ」

 

 

反射的に身構えるロゥリィ。

 

瞬間、間髪入れずに訪れたのは―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〝死〟

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……さて、一気呵成(かせい)に攻め続ければキングに勝てるのかと先程問いかけたが、その結論(こたえ)を述べさせてもらう。

 

それは至難を極める。以上。

 

死兵となり猪突猛進に突き進んだからと言って、その潔さにキングが乗っかるとは限らない。

 

そもそも―――

 

 

()()()()()は終わりかな?ロゥリィちゃん」

 

「え……?」

 

「戦いたいって言うなら断る理由はないけどね、流石にそこに命のやり取りを含むのは勘弁してほしいんだ。あと全然ルールも決めてなかったからどう落としどころをつけるのかも分からなかったし……」

 

 

……()()()()()()()()()()()()()()()()、であればこれはあくまでじゃれあいの延長線でしかない。

 

よってダラダラと戦いを長引かせる理由もなかったのだ。

 

ロゥリィの顔面すれすれにまで近付けていた巨拳を引っ込め、手に持っていたハルバードを呆然とするロゥリィの前に突き立てると、サッと踵を返して何処かへ行こうとするキング。

 

気付けば正午、お昼の時間になっていた。

 

 

「今日はフルタさんお手製のブリ大根なんだってさぁ。食べに行こうぜロゥリィちゃん」

 

「あ……う、うん」

 

「どったの?……もしかしてそんなにお腹減ってない?」

 

 

今なお固まってハッキリしないロゥリィを気遣い、仕方なくその場で足を止めて振り返ったキング。

 

 

「…………………………………あっ」

 

 

そして、気付いてしまった。

 

何故ロゥリィが、そして周囲にいたであろうレレイ達が固まってその場から動けないでいるのか。

 

アレーティアが頭を押さえて〝やっちまった〜〟みたいなリアクションを取っているのか。

 

 

「……………………………うーわ、またやっちった」

 

 

先程ロゥリィに繰り出した〝寸止め普通のパンチ〟

 

それの衝撃によって周囲に濛々と立ち込めていた土煙が徐々に晴れていき、遠くに見える山脈のいくつかが()()()()()()()()()のを目撃してしまったからだ。

 

 

「何だ今の音とか衝撃は―――って、キングさん!?」

 

「……すみませんイタミさん。山を消し飛ばしてしまいましたぁ……」

 

「え……えぇぇえええええ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「( 次元が違う……!! )」」」」

 

 

イタミにペコペコと頭を下げるキングの後ろ姿を畏怖の念を込めて見つめているのは、レレイほかその場に居合わせていた避難民と刑務サポーター達。

 

 

「「「「( やっぱり、あの緑の服の連中のリーダーはキングさんだったんだ。……でもそうなら、なんでイタミに頭を下げているんだろう……? )」」」」

 

 

避難民達は、強く心優しいキングへの畏敬の念を強めながらも、なぜ見るからにそんなに強くなさそうなイタミに頭を下げるのか不思議に感じていた。

 

……もしかして、イタミって凄い奴なのか?

 

 

「「「( 絶っっっ対、悪さなんかしねぇ……立派に更生しねぇと、キングさんヤベェから……!! )」」」

 

 

刑務サポーターには、分かりやすいほどの飴と鞭が示されたと言えよう。

 

 

「(エムロイ神殿の神官をあしらうほどとは。……俄然キングのことも知らないといけない)」

 

 

一方レレイには、使命感にも似たキングに対する飽くなき探求欲が芽生え始めていた。

 

採集した翼竜の鱗や牙をイタリカと呼ばれる交易都市に売り出しに行く、数日前の出来事である。

 




エムロイ「世界の秩序って奴が〜キングのせいでヤバたんになりそうなんだよね〜。だからチャチャっと成敗してきてよロゥリィ〜。……あっ、無理そうだったら監視するだけでいいからさ〜よろぴく♪」

ロゥリィちゃん「分かったわぁ」通話終了

エムロイ「……っていう建前を用意しておくのが出来る主神って奴なのさ〜。やっちゃえロゥリィ〜☆」
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