GATE 国防軍 彼の地にて〝最高〟とともに戦えり   作:びよんど

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そろそろ本格的な戦闘シーンを書いていきます。


第七話 ゴスロリの使徒

 

 

コアンの森在住のエルフ、ホドリュー・レイ・マルソーの長女テュカは、自分はいま夢を見ていると思っていた。

 

寒冷紗(かんれいしゃ)がかかったような朦朧たる視野。

……その中で人間達が行き交う。

 

何が起きているのか?

感じ取り洞察しうる思考力が働かない。

 

目に映るモノ、耳に入る音を受け容れるだけだった。

 

空に浮かぶ雲や目に映る風景が、時折流れるように動き、止まり、また動き出す。

それに伴って体が揺すられる。

 

どうやら、荷車のようなものに載せられているようだ。

 

動いては止まり、また動いては止まる。

 

荷車の窓から見えるのは、荷物を背負い抱えた人間達が疲れ、そして何かに追い立てられるかのような表情で歩いている姿だった。

 

荷物を満載した荷車がガラガラと音を立てながら通り過ぎていく。

 

また動き出し、そしてしばらくして止まる。

 

暗かった壁が切り開かれて、そこから外の光が差し込んできた。

 

 

「(眩しい……)」

 

 

ふと、視界がぼんやりとした黒い人影で覆われた。

 

 

クロちゃ〜ん。どう?女の子の様子は?

 

イタミ二尉……バイタルは安定してますし、意識は回復しつつありますわ。今もうっすらと開眼しています

 

そりゃあなにより。……はー、しかしまいったなー。遅々として進まない避難民の列、次から次へと湧き上がる問題、増えていく一方の傷病者と落伍者、おまけにこの前の雨で道路状況も最悪。逃避行ってのは、なかなか消耗するものだねぇ。キングさん達がいなかったら、もっと大変なことになってたよ

 

 

そんな会話も、テュカにとっては意味を為さない音声でしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつ来るか分からない自然災害から命を守るために避難するって決断は、体も当然そうだけど心にも相当な負担を強いるものだ。

 

最初に断っておくけど、俺はそういう事前防災はバリバリ肯定派である。

 

来るとあらかじめ分かっている災害は勿論のこと、万が一何事もなかったとしても、平時から災害に備えることは非常に、ひっじょーに大切なことなんだよねぇ。

 

ただまぁ、当たり前の話だけど避難する人達にも心や意思と言うものがあるもんで―――

 

 

「誰か……せめてこの子だけは……ッ」

 

「お、お願い、助けてぇ……」

 

「こんなところで動けなくなったら野垂れ死によ!誰か助けておくれ!!」

 

 

……集団から取り残される、孤独を強いられる、それはいつの時代も〝死〟と同義の残酷なものだ。

 

乏しい水や食料、野生の肉食動物、盗賊……これだけの極限状況下で単独で生き抜くのは、生物的に相当強くなければ難しいだろうねぇ。

 

誰も彼も、自分と自分の家族を庇い立てることで精一杯で他人にまで手を回す余裕がない。

 

人は追い詰められれば屑になる。

しかしそれは致し方のない話だし、自己防衛の観点から見れば理に適ったことなのだ。

 

この場合、見捨てるのが正解で、見捨てられるのが道理なのだから。

 

 

〝錬成〟

 

「お願い助け―――うぇ!!?」

 

 

でもね、ヒーローが()()をやったら不味いワケでして。

 

時と場合によっては、間違った選択であると理解(わか)っていても最後まで貫き通さないといけないのよ。

 

それがヒーローであり、それが俺達なのだ。

 

 

「簡単ですが、道を直しておきました。ほかに何かお困りごとはありますか?」

 

「……あ、あいや、大丈夫だよ!ありがとう……」

 

「き、気の所為か?足で踏んだところから地面が動いて固まったような気がしたが……」

 

「魔法で地面を操っただけですよ。……おっと、失礼しますね!」

 

 

荷車の車軸がぶっ壊れて困ってる人発見、俺出動!

 

……あ、やっべ(汗)

自己紹介するの忘れてたねぇ。

 

俺はキング、今は国防軍の皆さんと一緒になって避難民の救援活動&周辺の警戒をしている地上最強の男だお!

 

 

「ダメです隊長、車軸が折れてます」

 

「んー、仕方ないねぇ、村長呼んで―――」

 

「はいはい、失礼しますよっと……〝錬成〟

 

「「 あ、キングさん 」」

 

 

説明しよう、錬成とは―――

 

〝トータス〟に滞在していた頃、某オタク少年と何度か接触する機会があり、その少年が唯一有していた魔法にこっそり()()し、ちゃっかり習得していたものだ。

 

鉱物の加工なんかに使われる一見凡庸な魔法とされているが、ある程度極めればぶっ壊れた車軸を補強したり、ぬかるんだ地面を整備したりすることが出来る汎用性の高い能力へと昇華するのだ。

 

俺オリジナルの〝創造〟も織り交ぜ、荷馬車の車軸はあっという間にその原型を取り戻した。

むしろ以前より頑丈に補強しておいたよ。

 

 

「ありがとう、本当にありがとう……(泣)」

 

「礼には及びません。……次が控えているので、失礼します」

 

「……神は、俺達を見捨てなかった。あんた達と巡り会えた奇跡に感謝を……(泣)」

 

 

泣くくらいならさっさと列に戻ってほしいんだけど。

……まぁ流石にそれは言いすぎだな。お口にチャック。

 

 

「はまってるだけだ、押すぞ!!」

 

「根性見せてみろ! 1、2、3―――」

 

「「「「 そー、りゃっ!!! 」」」」

 

 

よくよく周囲を見渡せば、国防軍の皆さんもあちこちで避難民の救援活動をしておられる。

 

その様は文字通り国防を司る軍人としての高潔さであふれており、泥にも塗れてはいるが不思議と汚らしさは感じられなかった。

 

むしろメチャクチャ卑怯(チート)な手段を使って楽をしている俺より光り輝いておられる。

……ホンット、尊敬するよ。

 

っと、そうだ―――

 

 

ジェノス、最後尾はどうだ?」

 

『移動速度が思ったより早くない以外は、特にこれといった異常はありません。周辺に敵性反応もなく、至って平穏です』

 

「盗賊だとか、最悪ドラゴンが襲撃してくるかもしれん。気を抜くなよ」

 

『了解です』

 

 

……今回の逃避行に際し、俺達ヒーローチーム、っていうかS級三人は、それぞれに明確な役割を定め、敢えてバラけて行動していた。

 

まずはジェノス。

彼には最後尾で避難民が置いて行かれてないかを逐一チェックしてもらいながら、敵性存在が接近してこないかを感知してもらっている。

 

敵性存在とは、さっきも言った通り盗賊とかドラゴンとか色々だ。

……でもまぁ、今んところ敵とかは来てないし、何なら移動速度の遅さに嘆いているくらいには平和だ。

 

次に俺ことキング。

俺のやることは至って単純、困っている人がいればその人を助けに行き、俺の能力の範囲内で出来る限り問題を解決すると言うものだ。

 

ぬかるんだ道を早急に整備したり、車軸のぶっ壊れた荷車を補修したり、怪我人が出たら治癒したり、疲れた人がいれば疲労を緩和したり、子供の遊び相手になったり等、色々だ。

 

要は、俺の活動範囲は避難民の列の長さに比例していると言うことなのよ。

もうほぼ便利屋みたいなもんだねぇ。

 

 

『キングさん、こちらチャイルドエンペラーです。いま大丈夫でしょうか?』

 

「こちらキング、問題発生か?」

 

 

最後にチャイルドエンペラーとセキンガルさん。

 

あの二人は最前方で高機動車に乗っており、避難民の先導&前方の警戒に当たってもらっている。

 

ジェノスほどではないにせよ、チャイルドエンペラーの(アイテム込みの)感知能力は非常に高い。

運転はセキンガルさんに任せつつ、彼は彼でその天才的な頭脳をもってあらゆる事態を想定しているのだ。

 

……余談だけど、こっちの高機動車に疲れて歩けなくなった子供だとか妊婦を乗せているらしく、生憎と俺とジェノスのスペースは残っていないんだって。

 

そんなの気にしてないって二人して笑い飛ばしたけどね。

 

 

『ゴスロリの女の子を発見しました。……様子から見てちょっと怪しいので、出来ればキングさんに立ち会ってもらいたいのですが……』

 

「ゴスロリ?……了解した、すぐに向かう」

 

 

耳の穴に埋め込んだテントウムシみたいな小型無線機からこの場に似つかわしくない単語が飛び出す。

 

いやいや、ゴスロリって……。

……そんな娘、トータスにもいなかったよ?

 

流石に見間違いでしょ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ゴスロリやん」

 

 

ドッドッドッドッドッドッ

 

 

ごめんね、イサム君の言葉に嘘はなかったよ。

 

まんまゴスロリの女の子がカラスに囲まれながらこちらをジィ〜っと見つめておりまする。

 

年の頃は12、3歳くらいかな?

黒い髪に黒いゴスロリ衣装、それと相反する白い肌がチラチラと見えて眩しい。

 

人形、そう、さながら人形みたいな可愛らしい美少女を見て最初に思ったのが〝不自然〟……というか、なんかおかしくね?っていう感情だ。

 

君ってば、ここまで一人で来たのかな〜?

……にしては、いやに佇まいに汚らしさがないし、逆に、目には見えないけど物凄いレベルの血の匂いが纏わりついてるし、素人は騙せても俺は騙せないんだからね!

 

極めつけはそのデッカいハルバート!!

華奢な女の子が持っていい武器じゃないし、君ってもしかして道中で襲われたら嬉々として敵を殲滅する好戦的なタイプでしょ?きっとそうだ間違いない!!(偏見)

 

う〜ん、ちょっと怪しいなんてレベルじゃないねぇ。

 

 

「うほっ、等身大の球体関節人形!?」

 

「ちょいちょいクラタ、ここはキングさんに任せるぞ」

 

 

興奮するクラタさんを押さえながら諭すイタミさん。

 

……そうだねぇ、あんまり乗り気はしないけど、ここは俺が出張ったほうがいいかもしれないねぇ……。

 

 

「チャイルドエンペラー、一緒に来てくれるか?」

 

「え?……あっはい!」

 

 

高機動車に乗るイサム君に一緒に行かな〜い?と誘い、自主的に助手席から引きずり下ろさせる俺。

 

決して、一人が怖いからとかそういうワケじゃないゾ!

 

そうやって恐る恐るゴスロリ少女の近くに来た俺は、意を決して声をかけた。

 

 

「……やぁ、ご機嫌いかが……?」

 

 

ドッドッドッドッドッドッ

 

 

「………(^v^)」

 

 

か、会話が続かねぇ……。

 

言葉をッ……キャッチボールしてくれよん!!

 

通じてないワケじゃないでしょう、俺の言葉!!?

 

さっきからニコニコ笑いおってからにぃ!!

 

おバカにしてるのかぁ!!?

 

……すると突然立ち上がり、スカートの砂埃をポンポンと払って物珍しそうに俺達を見つめてきた。

 

ゲッ、もしかして俺の心の声が聞こえちゃった!!?

 

すんませんすんません、本心じゃないんで―――

 

 

「ねぇ、あなた達は何処からいらしてぇ、どちらへ行かれるのかしらぁ?」

 

 

……あ、現地の方でしたか。こりゃ失礼しました。

 

 

「あー、えーと、僕達、アルヌスの丘から、やって来ました。ここの土地の人達と、仲良くするために、です」

 

 

割と流暢な現地の言葉で会話を試みるイサム君。

 

卑怯(チート)抜きの純粋な言語翻訳力ではイサム君がダントツではなかろうか。

……な〜んて現実逃避していると、ゴスロリ少女の視線がイサム君から俺に移った。

 

イヤに妖艶に微笑んでいるけど……もしかして誘ってる?なワケないかアハハ。

 

 

「あなた達の後ろにいる大勢の人達はぁ、いったい何なのかしらぁ?」

 

「……あの車に乗っている緑色の服の人達は俺達の仲間です。ほか大勢の人達はコダ村からここに至るまで、炎龍の脅威から逃れるために逃避行をしています。俺達がやっていることはそれの支援ですよ」

 

「ふ〜ん……」

 

 

珍しく他人に対して長く喋ったお……。

 

それはそうと、ゴスロリ少女の表情は〝半信半疑〟を物語っていた。

 

……まぁね、すぐに信じろと言うほうが無理があるから。

 

 

「ホントだよお姉ちゃん!僕達コダ村から来たんだ!」

 

「あっコラ……」

 

 

おいおい、俺がいいと言うまで出てきちゃダメって……言ってなかったねぇ。

 

高機動車から二、三人の子供が出て、ゴスロリ少女の近くに寄って行っちゃった。

 

 

「あの緑色の変な格好の人達はぁ?」

 

「よく知らないけど、助けてくれるんだ。いい人達だよ!」

 

「……この二人はぁ?」

 

 

この二人、つまり俺とイサム君を視線だけで指していた。

 

 

「もっとすごい人達だよ!」

 

「イサムお兄ちゃん、僕よりちょっと年上の子なんだけど頭がすっごく良くてさ!面白いオモチャをたくさん作って見せてくれたんだ!」

 

「このすっごく大きなエルフの()()()()、私やママやパパの怪我をあっという間に治してくれたの!でもすぐにあっちに行ったりこっちに行ったりでそそっかしいんだよ!」

 

 

子供の無邪気で残酷な感想を聞いて胸が痛みそうだよ。

 

エルフ耳なのはともかくとして、おじさんって……俺まだうら若き26歳なのよ?

 

えっ?四捨五入するともう三十路(みそじ)

……よし分かった、ならば戦争だ……!!

 

 

「嫌々連れて行かれてるんじゃないのねぇ?」

 

「うん。炎龍が出たんだ。皆で逃げてきたんだよ!」

 

 

心なしか、ゴスロリ少女の纏う空気が和らいだような気がした。

 

ようやっと信じてくれたようだねぇ……。

 

俺の隣を通り過ぎて高機動車に近付いたゴスロリ少女は、不思議そうにその車を見つめていた。

 

 

「コレ、どうやって動いているのかしらぁ?」

 

「よく分かんない。イサムお兄ちゃんが言うには()()()()()()()()で動いてるらしいけど……でも、荷車と比べたら乗り心地はずっといいよ!」

 

「へぇ〜?乗り心地がいいのぉ?」

 

「「 ……? 」」

 

「ちょっとつめてぇ〜」

 

 

なんと、急にイサム君が座っていた助手席に乗り込みだしたゴスロリ少女。

 

 

「うおっ!?なんだ急に―――ぐふぅ!?」

 

 

デカいハルバートがあっちこっちに引っかかって車体の至るところに傷を付けたり、運転席にいたセキンガルさんにハルバートの切っ先が向けられたりなど危なっかしいことこの上ない。

 

 

「わわっ……なんなのぉ!?」

 

「いっ、ちょっと……!」

 

「狭いよお姉ちゃん……!」

 

「ん〜ちょっと待っててぇ〜」

 

 

いやいや、ただでさえ子供や妊婦が10人以上も詰めてるのに、そのデカいハルバートを置こうとするんだ?

 

これには、さっさと助手席に戻ったイサム君も驚きと呆れを隠せずにいる。

 

結局、車内にいた皆が窮屈な思いをしながら作ったスペースに転がすように置かれたハルバートだったが、肝心の問題が残されたままだ。

……ゴスロリ少女の座る席は?

 

 

「ちょっと、待ってください……(/////////)」

 

「ん〜?」

 

 

そりゃあもう、助手席に座るイサム君の隣以外あり得ないじゃないですかぁ!!(白目)

 

あらやだもー!

耳まで真っ赤にしちゃって、このおませさん!

 

 

「くぅ〜〜!メッチャ羨ましいッス!!(泣)」

 

「あんまし言ってやるなよクラタ?……そりゃあ見てる分には微笑ましいけどさ」

 

「見てないで助けてくださいよ!?っていうか、あなたはそんなに密着しないでください!!(/////////)」

 

「?」

 

 

いやー、ごめんごめんイサム君。

君のチェリーでボーイな反応があまりにも面白いもんで、決して笑い者にしたいワケじゃないのよホントだよ?

 

 

「……もうホントやだ。これだから大人は嫌いなんだ」

 

「いやはや、悪かったねチャイルドエンペラー。集中できないだろうけど、君なりのペースで頑張ってく―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

緊急事態発生ッ!敵性生物、推定・炎龍が出現ッ!!至急避難民の避難誘導を求むッ!!

 

「「「「 ッ〜〜〜!!? 」」」」

 

 

耳の中を突き刺すのは、緊急事態を告げるジェノスの緊迫した声。

 

かくして平和な時間は終わった。

 

ついでに俺の耳も終わった。

 

キーンと、キーンとするのよマジでぇ!!

 




次回、ワンパンマンっぽく戦わせたいと思います。

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