モブちゃん視点
それは、いつも通りの任務のはずだった。
通報を受け、暴徒を鎮圧し、被害者を救護して帰投する。何度も繰り返してきたルーティーンのような業務であり、特にこのゲヘナ学園では日常茶飯事だった。
今日、編入してきたばかりの生徒が不良生徒に恐喝されているという通報があり、私たちは現場へと急行した。
現場に到着した時、視界を埋め尽くしていたのは、硝煙と瓦礫の山だった。
……これが本当に恐喝事件の現場なのだろうか? それとも不良生徒がやりすぎたのか。あるいは、温泉開発部かどこかがたまたま爆破しただけかもしれない。
しかし、前者にしては被害の規模が大きすぎるし、後者ならば周囲に重機や部員がたむろっているはずだ。
例の新入生が、この惨状に巻き込まれていないか心配になった。
ゲヘナに来て早々、こんな厄介事に遭遇するとは、随分と運が悪い。
「あら、貴女方が次の御相手かしら?」
あまりの被害の大きさに応援要請の無線を本部に入れながら、立ち上る黒煙の向こうから、艶やかな声が響いた。
この状況下で悠然と立っていられる者など、ただ一人。この惨状を生み出した張本人に決まっている。
私たちは一斉に銃を構え、黒煙の奥へと向けて鋭く声を放った。
「風紀委員会だ! 大人しく武器を捨てて投降しろ!!」
その瞬間、突風が吹き荒れた。
黒煙が一気に吹き払われ、視界が開ける。
そこに現れたのは——黒い天使だった。
夜の空を切り取ったような漆黒の翼が、ゆっくりと広がっていく。
一枚一枚の羽は炎のように揺らめき、周囲の光を吸い込みながらも、わずかに妖しい光沢を帯びていた。不気味でありながら、目を奪われるほどに美しい。
天使の左手には、血まみれの不良生徒の頭が握られていた。
細い指の間から、赤黒い滴がぽたり、ぽたりと絶え間なく落ち、地面に暗い染みを作っていく。
「風紀委員会ね……フフッ」
彼女は血染めの生徒を無造作に放り投げ、私達を見る。
その瞳は、煤けたような赤色を映し、まるで深淵を覗き込んだかのような、底知れない感情を湛えていた。
人形のように整った顔立ちには、微笑みが浮かんでいて、どこか恐怖すら感じさせる美しさだった。
あの天使を排除しなければ。
引き金を引け。
「ッ——」
風紀委員の何人かが、ほとんど同時に引き金を引いた。
銃声が連続して響き渡り、弾丸の雨が黒い天使に向かって殺到する。
しかし——
弾丸は彼女の体に着弾した瞬間、漆黒の翼の表面で弾かれ、火花を散らして四方へ飛び散った。
一発も貫通しない。傷一つ付けられない。
天使の白い肌は、硝煙に汚れることすらなく、完璧なままだった。
「熱烈な歓迎ね。騒がしいのは好きよ」
彼女はくすくすと笑いながら、優雅に翼を一振りした。
その声は、戦場に不釣り合いなほど甘く、愉しげだった。
次の瞬間、黒い天使は、笑みを残したまま、ゆっくりと左手を右手で保持していた巨大な武器に延ばす。
その巨大な鉄の塊は、彼女の手に最初から握られていた。
ただ、黒煙と翼の影、そして彼女の圧倒的な存在感に紛れて、誰もがその存在に気づいていなかっただけだ。
「待っ───」
砲口が耳を劈くような轟音と共に火を吹いた直後、
何かが私のすぐ真横を通過し、後方から炸裂音が響く。
衝撃波が周囲を薙ぎ払い、何人かが巻き込まれた。
「じょ、冗談じゃない…あんなの直撃したら……っ!!」
「応援要請!至急だ!!空崎委員長を呼んでこい!!!!」
黒煙が再び立ち上る中、漆黒の翼がゆっくりと展開され、黒光りする巨大な砲身が、再び私達を捉える。
次の瞬間、破滅的な衝撃に包まれた私は意識を手放した。
色々資料などとにらめっこしながらそれっぽい文章目指してがんばりました
武器の持ち方は所謂腰だめというか、サイズ感的にもガンダムUCに出てくるネモの170mmキャノンみたいな物を想像してくださるとわかりやすいカナと
5/14 タイトルを「破壊天使はやらかした 裏」から「災害」へ変更