トリニティの破壊天使(ゲヘナ生)   作:はちみー気化爆弾

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イオリちゃんの口調が難しくわりと難産でした…
違和感あったら申し訳ないです



破壊天使の初任務-1

 

 

 

翌朝、わたくしは少し早めに自宅を後にする事にいたしました。

制服を整え、いつも通り愛砲を担ぎ、まだ名前を決めかねていますけれど愛銃を取りに……これまでの慣習にならって、アークロイヤル…なんか違います、ならロイアルソヴリン……これは言いづらいですわ、うーん、どう致しましょうか…悩みますわ…

 

あれこれ悩むうちに『アームズ・エデン』へ着いてしまいました。

 

店内に入ると、ミスター・ヴァレンティーノがすでに準備を整えて待っていてくださいました。カウンターの上にはハードケースに梱包された愛銃と、焼きたてのスコーンと紅茶が湯気を立てています。

 

「おはようございます、織宮様。約束通り、ウッドのハンドガードに交換済みです。ドラムマガジン二本と、箱型のマガジンも数本お付けしましたよ」

 

わたくしはケースを開け、受け取ったばかりの愛銃を手に取りました。昨日のものよりもさらに優美な木製ハンドガード、兵器然とした無骨なレシーバー、そして大容量のドラムマガジン……。

 

「まあ……素敵。本当に愛おしい子。ふふっ」

 

スコーンを一つ頰張りながら、わたくしは満足げに頷きました。

やっぱり美味しいですわね。

サクサクとした食感と優しい甘さが、緊張した心をほぐしてくれます。

 

「味も相変わらず絶品ですわ。今日も一日、頑張れそうです。」

 

「くれぐれも、ゲヘナの皆様に迷惑をかけすぎないよう……いや、ほどほどに暴れてください。織宮様の性格では、無理に大人しくするのはかえって危険そうですからな」

 

店主の苦笑いを背に受け、わたくしは『アームズ・エデン』を後にしました。

この子のお名前は…そうですわ、「アールクラス」に致しましょう。

 

─────────

 

詰所に着くと、すでに何人かの委員が朝の準備を始めていました。わたくしが入室した瞬間、室内の視線が一斉に集まります。

机に埋もれるように書類を処理していた空崎委員長が、ゆっくりと顔を上げました。

 

「……ミズキ。昨日は大人しくしていてくれたようね。そのケースは?」

 

「ごきげんよう、空崎委員長。

昨日お約束した新しい装備ですわ。

風紀委員として相応しい、控えめで実用性を重視した子を見繕って頂きました。」

 

わたくしはケースを中央のテーブルに置き、恭しく開けました。

木製ストックに大容量ドラムマガジンを装着したアールクラスが、窓から差し込む朝の光を受けて鈍く輝きます。

 

空崎委員長は数秒無言で見つめた後、深いため息を吐きました。

 

「……明らかに短い銃身にドラムマガジン。『控えめ』という言葉を辞書で引いた方がいいわ。」

 

周囲に居た風紀委員数人が、遠巻きに小声で話し始めました。

 

「ひっ…アイツ昨日の…!」

「デッッッッッッカ…」*1

「羽付きってことはまさか元トリニティ…?」

 

横に居た通気性が良さそうな服を着た青髪の生徒が少し…いえ、かなり顔をゆがめなから言います。

 

「昨日は40ミリ機関砲で、今日はドラムマガジンのアサルトカービン…委員長、本当によろしいんですか?」

 

空崎委員長はこめかみを押さえながら、気怠げに答えました。

 

「まぁ……対空機関砲よりはマシ、というレベルではあるわね。

ミズキ、今日の午後から巡回任務に入ってもらうわ。まずは様子見程度よ。過剰に暴れられたら即クビだから、そのつもりで。」

 

「了解いたしました。

先日の無礼の分は働かせていただきます。どうぞご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたしますわ。」

 

「よろしい。あと、背中のそれは任務の時は置いていって頂戴。」

 

頷いたわたくしは真新しい風紀委員会の制服と腕章を受け取り、詰所を後にします。

空崎委員長は書類の山に視線を落としたまま、最後にぼそりと付け加えました。

 

「……とにかく、暴れすぎないように。」

 

部屋を出てドアを閉める寸前、中から

「新入り、なんかヤバそうだな……」

「背中の鉄塊は何だ…?」

「デッッッッッッッッッッッカ…」*2

といった声が上がりました。

 

一部の声は聞こえなかった事にいたしますわ。

というか正実にいた頃はもっと大きい方がいらっしゃったのですが…

 

わたくしは新しい愛銃を撫でながら、心の中で決意を新たにしました。

初日くらいは、風紀委員として恥ずかしくない働きを見せなければなりませんわ。というか、初日でクビは流石にまずいですわ。

前職の経験も生かせると良いのですけれど…

 

……まあ、誰かが喧嘩を売ってきたら、その時は存分にこの子の試験射撃を始めさせていただきますわ。

空崎委員長はああ仰っておりましたけれど、ゲヘナ唯一のご友人からはそれがこちらの流儀と教わっておりますので。

というか、そろそろ顔を出さなければなりませんね。

 

──────────

 

午後、昼食を食べ終えたわたくしは更衣室で腕章を丁寧に袖に通し、真新しい制服の襟を整えました。

風紀委員の制服はさすが実働部隊といった所でしょうか、見た目よりもずっと動きやすいですわ。

背中の愛砲は委員長のご指示通り、今日の任務中は詰所に預けておくことにいたします。

机に置いた際、何かが軋むような音が聞こえましたがきっと気のせいでしょう。

ええ、帰ってきたら床が抜けてる可能性なんてゼロに等しいでしょうから。多分。

 

巡回任務の集合場所は、ゲヘナ学園校舎の正門近くにある待機所。

到着すると、一人の生徒がわたくしを待っていました。

銀色の長い髪をポニーテールにまとめ、鋭い眼光の赤い瞳。健康的な小麦色の肌が、彼女の存在感をさらに強調しています。

銀鏡イオリさん…ゲヘナ風紀委員会所属の2年生で、話によるとかなりの腕利きらしいですわ。

なんでそんな事知っているのか?

策謀渦巻くトリニティにおいてあらゆる仮想敵の情報は仕入れておくに越したことはありませんわ。

まぁ、所属が変わった以上仮想敵と仮想味方が入れ替わっているのは些か問題ではあるのですけれど…

 

近くまで歩いていくと、銀鏡さんは腕を組んだまま、こちらをじろりと見上げました。

身長差があるため、少々見下ろす形になってしまいます。

 

「……委員長から話は聞いてるよ。織宮ミズキだな」

 

「ええ、ごきげんよう。

銀鏡イオリ先輩でいらっしゃいますわね。

本日は巡回任務を一緒に担当させていただきますわ。

どうぞよろしくお願いいたします」

 

わたくしは軽く頭を下げ、微笑みました。

銀鏡さんは一瞬、眉を寄せた後、怪訝な表情で話し始めました。

 

「学年はそっちのが上なんだから先輩はやめてよ。

任務中はイオリで構わない。アレ、名乗ったっけ……?

…それより、その馬鹿みたいな銃は何だ? 今日の任務はパトロールだぞ。」

 

馬鹿みたいなとは心外ですわ

これでも結構真面目に選んだのですけれど

 

「本来は違うモノを使っているのですが、空崎委員長に少々苦言を呈されてしまいまして。

今日卸したばかりの新調品ですわ。火力は控えめではありますが、木製ハンドガードがとても優美でしょう?」

 

「……ドラムマガジン付きのアサルトカービンのどこが控えめなんだ…?まさかトリニティではみんなこうなのか?」

 

それに関しては違うと断定できますわ。

皆様わたくしのようにロマンが分かる方々だったらもっと楽しい学園生活を送れるでしょうね…勿体ないですわ。

 

「まあ…いい。どれだけ暴れても、責任は私が取らされるわけじゃないからな」

 

「ふふっ…わたくし、今日は控えめに振る舞うつもりですわよ?」

 

「控えめ、ね……その言葉、あなたが言うと説得力がないんだけど…」

 

銀鏡さんは小さく肩をすくめ、待機していた他の委員の生徒に書類を渡しました。

二人で正門をくぐり、ゲヘナの街区へと足を進めます。

午後のゲヘナは相変わらず騒がしいです。

喧嘩の音、爆発音、遠くから聞こえる機関銃の連射……まるで紛争地帯ですが、これが日常なのですから、歩いていても陰口くらいしか聞こえないトリニティとは随分と勝手が違うのでしょうね。

先程も授業に出席してもわたくし以外に生徒が2人しかいらっしゃいませんでしたし。

わたくしはどちらかと言うと騒がしい方が好みです。

しばらく無言で歩いていましたが、銀鏡さんが、ふと口を開きました。

 

「そういえばトリニティから来たって聞いたけど、本当?」

 

「ええ、正真正銘元トリニティ生ですわ。

まぁ、学園生活に飽き飽きしてしまいまして…刺激が多そうなこちらへ転校して参りました。」

 

他にも色々理由はありますけれど、楽しそうというのはゲヘナを選んだ大きな理由ですわ。

トリニティでは、やれ伝統だの、やれ気品だの派閥だの自由を縛るものが多すぎますから。

 

「ふん。トリニティの箱入りお嬢様が、わざわざゲヘナの風紀委員に? 変わった趣味だな」

 

「ただの成り行きですわ。昨日、少々手違いで風紀委員会にご迷惑をお掛けしてしまいまして…その罪滅ぼしでもありますわね。」

 

銀鏡さんが足を止め、こちらをまっすぐに見つめました。赤い瞳に、わずかな興味と戦慄の色が浮かんでいます。

 

「…まさか、昨日暴れてたのって…」

 

「ふふふ。ただの箱入り娘でしたら、態々風紀委員会になんて入りませんわ。

イオリさんは、以前から風紀委員を?」

 

「う、うん。1年からずっとやってる。

規則違反者は容赦なく叩き潰す。それがわたしの仕事。」

 

彼女の言葉には、迷いというものが一切感じられませんでした。

混じり気のない愚直なまでの熱意はゲヘナらしくて素晴らしい、わたくしは内心で深く頷きました。

 

「では、今日の巡回ではわたくし、しっかりとイオリさんの背中を見せていただきますわ。…向こうで何か騒ぎが起きておりますわね」

 

路地の方から、怒声と発砲音が聞こえてきました。

どうやら不良生徒数名が、路地裏で何かを巡って揉めているようです。

銀鏡さんはライフルを構え直し、口の端を吊り上げました。

 

「ちょうどいい。初めての相手だ。ついてきて。…まず警告だからな?」

 

「ええ、もちろん。…ただし、向こうが撃って来なければ、ですけれど。」

 

わたくしはアールクラスのボルトを軽く引き、薬室内に弾薬が入っている事を確認して微笑みました。

やっとぶっぱなせますわ…!

銀鏡さんが一瞬だけこちらを見て、短く笑ったような気がしました。

 

「トリニティにしては悪くない顔だ。……行くよ、ミズキ」

 

「了解いたしました」

 

わたくし達は路地へと足を速めました。

風紀委員としての、初めての仕事が始まりますわ。

 

 

*1
身長178cm

*2
B93




【アールクラス】
ミズキが保有するアサルトカービン。
短い全長には大量の弾薬とロマンが詰め込まれている。
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