Re:TS白黒ストライプバニー老害によるナツキ・スバルの悲喜劇観賞会 作:F・M・T (フランチェスカ、マジ年増)
その後、盗品蔵でフェルトとロム爺を相手に徽章の取り引きを行うが、スバルが付いた嘘が簡単にバレて追い込まれる様を愉しく傍観しながら眺めていると、どこかの謎の銀髪ハーフエルフが盗品蔵に入ってきた。
「おーっ!スバル君がピーンチ!形勢逆転だねっ!ここからスバル君は口八丁手八丁で巻き返せるかなー?ワクワクしちゃうよ!ここからは説得ロールから言いくるめの時間だね!エクストリームが出ればきっとどうにかなるよ!頑張れー!」
「ちょっと静かにして貰えますぅ!?」
そこで女の子二人から自分を嵌めたんじゃないのかだの、あなたはそもそも誰なのとか、詰め寄られてテンパっているスバルがふと気付く。
謎の銀髪ハーフエルフの少女の後ろから、ぬるりと人影が忍び寄っていることに。
「──パック!防げッ!!」
金属同士がぶつかり合う甲高い音が響く。
「なかなかどうして、紙一重のタイミングだったね。助かったよ」
「ナイスだ!パック!」
そこからは、スバルが置いてけぼりの戦闘が始まった。
身体能力も魔法もスバルには出せる訳もなく、激化していく攻防戦に思わずといった調子でスバルが声を上げる。
「な、なあ、フランチェスカ!お前はあの子のフォローとかできねぇか?そうすりゃあ、今の戦況も有利に働くと思うんだけど……」
顔をフランチェスカに近付けたスバルが小声で尋ねた。
「うーん、それはどうかなー。あの大精霊はかなりの格があるから戦い慣れてはいるだろうけど、あの銀髪の子は明らかに戦い慣れてないでしょ?下手に共闘しようとすれば呼吸が合わなくて逆に隙になっちゃうんじゃないかな?『腸狩り』はそんな隙を見逃してくれるような真似はしないから、ズバッ!っとあの子か私のお腹が斬られちゃうだろうね」
「クソッ、連携できなきゃ互いの足を引っ張るだけってことか……」
あの凄腕の暗殺者相手に、即席のパーティーは自殺行為と言われれば納得するしかない。
「それにあの大精霊は魔女の事を多少なりとも知ってそうだし、私が有する魔女の力を使ってたら、今度は彼女達の敵意が私とスバル君に向いちゃうね。キャハハ!三つ巴の殺し合いだよ♡」
「今以上に最悪な状況になんのぉ!?無し無し無し!今、言ったこと全部無しッ!」
氷の槍が射出し、それを時にエルザがククリナイフで斬り砕き、時に身軽なその動きで
決定打がお互いに無い状態が続き膠着し始めた。
だが、スバルは知っている。
パックには時間制限があるのだと。
そして、原作通りにスバルが喚き立てて……もとい、捲し立ててエルザの注意を引き付け、エルザの足を凍らせたパックが最大出力の大氷塊を放つ。
大氷塊が激突して轟音が響き、霜が降りて視界が白く染まる。
大精霊による一撃。
誰が見ても原型が残らず轢き潰されていなければおかしい……が。
「──あらあら、死んでしまうかと思ったわ」
「嘘だろ……あれで生きてんのかよ……ッッ!」
無理やり足を引き抜いたエルザは、適当に砕いた氷を足の下にくっ付けて即席の補助具にする。
その痛みすら即座に許容する行動力と、判断力は歴戦の戦士だからこそだろう。
「ゴメンよ、リア……もう、眠る。いざとなったらオドを絞り出してでも呼ぶんだよ」
「うん、分かった。お疲れ様パック」
胸元の水晶の中にパックが帰っていく。
最大戦力の離脱。
今まで以上に悪い状況なのは明らかだ。
「大精霊のお腹を裂けなかったのは残念だけど、仕事はしやすくなったわね」
「クソッ……状況がどんどん悪くなっていきやがる!これじゃあ、また……っ」
これまで出会った全戦力を投入しても、またしても勝てないのかという諦めがスバルの頭をよぎる。
ーーそんなスバルの前に白黒の少女が躍り出た。
「大丈夫、ダイジョーブ♪これからは私が頑張っちゃうからね!」
場違いにもルンルン気分で歩くフランチェスカは、隙だらけとしか思えない身のこなしで『腸狩り』の前に姿を現す。
「……って、フランチェスカ!?」
その振る舞いを見てぎょっとするスバル。
迂闊すぎるその行動はもう自殺志願者としか思えない。
しかし、彼女には恐怖など欠片も存在せず、おどけた雰囲気で呑気にこちらに話し掛けてくる。
「銀髪のお姉さんも下がっててね。多分、そっちの方が倒せる可能性が高いから」
「えっ!?いや、でも……!」
「さっきも言ったけど、連携とかぜ~ったい無理無理。私なら大丈夫だから安心して。それに、そこのお爺さんそのままだと死んじゃうよぉ?」
「そ、そうね。分かったわ!私が治療する!」
「うぐっ、すまんのぉ……」
「大丈夫なのか!?ロム爺!」
それぞれの役割を決めて即座に動く。
エルザに斬られたロム爺はこのままでは失血死してしまうため、そのような役割分担をするしかない。
ロム爺の持っていた木の棍棒を持ち、いざという時のために盾になることしかスバルにはできないが、きっと意味はある筈だと思う。
どちらにしろ、真正面から突っ込めば
「頼むぜ……フランチェスカ」
戦闘をかって出たフランチェスカは、余りにも無防備にエルザの前に立つ。
そんなフランチェスカを見てエルザはどこか拍子抜けしたように見つめた。
「あら、私の前でそんな無防備な姿をしてもいいのかしら?」
異常なほどこの場で浮いているその行動に、エルザは目の前の少女の腸を想像しながら話し掛けた。
「君相手なら全然大丈夫だよ?それこそ、『剣聖』や『青き雷光』が相手だと難しいかもだけどねっ」
「そう……──それが口だけじゃないことを祈るわね?」
その言葉にどこか苛ついたように真顔になると、エルザはフランチェスカに高速で接近する。
そして、手に持つククリナイフがその腹部に向かって振り抜かれる……ことはなかった。
ドサ…………。
「……?」
突如、エルザの腕が動かなくなる。
いや、違う。
軽くなった。
血を溢れ出しながら床に転がる自分の左腕を見て、自身の腕が斬り落とされたのだとエルザはようやく理解した。
「本音を言うと私は戦うことは好きじゃないんだよねー。私はどっちかっていうと、その舞台を整えたりして頑張る人類を見てる方が好きなんだから。そもそも、戦うことも得意って訳じゃないし……ま、嘘だけどねっ!」
そこまでしても、フランチェスカの顔に攻撃的な色はない。
どこまでも道化のようにおどけていて、緊張感が存在しないのだ。
その異質さを見て初めてエルザは警戒をする。
「何だよあれ……?」
そして、スバルは当然のようにそれを外から見ても、理解なんてできる筈もなかった。
「いきなり、エルザの腕が切れた……?フランチェスカの奴が煽っていたから、何か企んでいるとは思ってたけど……これってどういう理屈なんだ……?」
困惑のままにそう言うと、銀髪の少女が悩ましげ答える。
「うーん、もしかして魔法かしら?風魔法でこう……スパッと?」
「いやでも、呪文とか言ってないよな?あれって言わなくても大丈夫なヤツなの?」
「ううん、魔法なら詠唱は必須よ。だから、本当に不思議よね。あの子はどうやって魔法を出してるんだろう?」
その疑問はエルザも同じだった。
「いつの間に風魔法を放ったのかしら?」
「あれれ~?聞こえなかったぁ?ちゃんと言ったんだけどなぁ。何で聞こえなかったんだろうね?」
「……あっ!そうか!」
そこでスバルは思い至る。
「(フランチェスカの『幻術』……それで口の動きと声音を掻き消したってことなのか?視覚だけじゃなくて聴覚まで騙せるのかよ!?もうそれ鏡花水月じゃねぇか!?)」
もしかしたら、他の五感まで幻術を掛けることができるのかもしれないと気付き驚愕する。
そんなチート能力があればあんなに余裕があるのも納得だ。
「しかも、魔法の起こりも見えなかった……ということは、風魔法を空間に固定していのかしら?なかなか、器用なことをするわね」
「もお~!ネタバレが早すぎだよぉ~!」
プンプンと可愛らしく頬を膨らませているが、やっていることは不可視の刃による解体ショーだ。
そのアンバランスに背筋が震えるが、エルザの自慢の機動力は削れている。
このまま考えなしに突っ込めば、空間に設置された風の刃で両断されて終わりだ。
「なら、こうしましょうか」
「うおッ!?何やってんだッ!?アイツ……!?」
切り取られた腕を足の動きだけで蹴り上げ、まだ無事な腕で掴むとそのまま振り回し始めた。
ライブで振り回すタオルか、趣味の悪いグロテスクなスプリンクラーか。
生物的な嫌悪感に襲われるがその意図がすぐに分かる。
「これで分かるようになったわね」
「な、なんだよそれ……イカレてる……」
斬り飛ばされた腕から出ている血で、目印を付けるなんて狂人の発想だ。
周囲の空間に血が不自然に床に落ちず、空中に留まり続けるものが複数存在する。
これでどこに風の刃があるか判明してしまった──そして、新たに風の刃が設置される前に、エルザはその機動力を活かしてフランチェスカの懐に入り込む。
「フフッ、あなたの