委員長はギャルを知りたい   作:すっごい性癖

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第11話

 

「そーいやいいんちょー、コンタクトにしないの? 居ないわけじゃないだろうけど、ギャルでメガネってまぁまぁレアよ?」

「コンタクトって使い捨てでも使いまわしでもコスト高いじゃん。眼鏡は一回買えば何年も使えるしさ。それにこれにも愛着があるから中々、ね?」

「そっかぁ……。んまぁ、いざって時だけ外せばいいし別に今回はいっか」

 

 二人並びながらモールの中を歩きながら雑談に耽る。隣に立ち並ぶステラはいくつかの紙袋を手にしており、歩行に合わせるように前後へと揺れていた。

 

 日曜日らしく施設内にはたくさんのお客さんがいるが、とはいえ身動きができないほどに居るわけでもないので少しだけ周囲に気を配ればまぁ、万が一にも事故とかは起きないだろう。場合によってはステラの持つ紙袋をいくつかアタシが持たないと危険だったかもしれないが……。そうではないようで一安心。

 

 今現在、彼女が持っている紙袋は数にして五つ。最初に見に行ったショップで買った服とかに二袋。それに合わせた靴を買ったので追加で一袋。そんでもって小物とかをいくつか買ったときの袋が一つの計五つ、という計算なのだが……。

 

 と、そこでふと気になったことがあったのでアタシは口を開く。

 

「あのさ、いろいろ買ってるけどお金とか大丈夫?」

 

 一応、今日は大量に買う予定だったから一つ一つの店自体は安価な、いわゆるプチプラ系をおススメしていたんだけれども……。

 

 それでもやっぱり全身買いそろえればまぁまぁな金額にはなるし、そこに他に小物や靴、そんでもってこれからメイク用品を足すってなると塵も積もればなんとやら、ってヤツではないだろうか。

 

 だからアタシは恐る恐るステラに尋ねたのだけれども……、しかし彼女はきょとんとこちらを一回見つめ、そしてニコリとこちらに笑いかけてきた。

 

「大丈夫、大丈夫。こんな日の為に長年溜めてきていたお小遣いを解禁したから」

「うぇっ!? 気合い入れてるねぇ」

「そりゃあそうだよ。私の小説の為だしね」

「はぇ~……」

 

 思わず感心して感嘆の声を漏らす。いや、ファッションにお小遣いを全ブッパってのはアタシと何ら変わんないんだけどもね。それはアタシが好きでやっていることだからであって、ステラみたいな全くオシャレに興味ない人間がその溜めたお小遣いを解禁するってのは……、ちょっと想像が難しい。

 

 立場を入れ替えて見て考えると、アレか。アタシがファッションへの理解を深める為に小説を書いてみたい。だけどそんなんを書くための道具も持ってないからお小遣い全部握って電気屋さんでパソコンを買いにいく、みたいな?

 

 ……いや、例えとして悪すぎるわ、コレ。まったくもって立場の入れ替えができてないしさ。パソコン、ちょっと欲しかったりもするし。小説なんかは全く書きたくないけども。

 

 まぁステラ曰く、小説家に憧れたのは小学生くらいの頃ってことだし、それくらいの頃からお小遣いを溜めてたってことになると……。

 

(なーんだ。別にそれならプチプラとか百均のコスメとか、ケチらんくてもよかったかな?)

 

 脳内で簡易的なそろばん……、は使い方がよくわからないので電卓をたたいてみる。一年でもらえるであろうお小遣いがだいたいどれくらいで、それが少なくとも何年分で、きっとステラのことだから無駄遣いもせずにずっと溜めていたであろうことを思うと。

 

(少なくとも五年くらいお小遣いを溜めてるわけだよね? ……じゃあもしかして百万くらいは溜まってる?)

 

 百万って言うと大分な金額っぽいけども、毎月二万円くらいを溜めればそれだけで五年経てば余裕で百万円を超えるわけだし。そこにお年玉とかだって加わってくるとなると、むしろ百万でもちょっと低めに見積もったかもしれない。

 

 アタシは正直、普通の高校生よりはパパやママからお小遣いをもらっている自覚があるけれども……。とはいってもステラだってウチの私立高校の生徒だし、それなり以上には貰っているだろうしね。

 

 てっきりアタシは急に決まった予定だし、先月のお小遣いの残りとかから捻出するのかなぁ、なんて思ってたからのお店のセレクトだったのだけれども。資金に余裕があるんだったら、言ってくれたらよかったのに。

 

 いらないおせっかいだったかな?

 

「あ、話変わるけどさ? せっかくなら髪も染めてみない? 1日だけ染めれるヤツとか、エクステ使うって手もあるし」

「髪? たしかに黒髪意外にすると一気にギャルっぽい、かも……。偏見かもだけどね?」

「そ? あたしもギャルは髪染めてなんぼ、って感じするけど。まぁ黒髪ギャルもかわたんではある。ってか、同じくらいに最高だけども」

 

 そう言って脳内で色々な髪色や髪形をしたステラを妄想する。

 

 金髪のステラ、茶髪のステラ、赤髪のステラ、桃髪のステラ。インナーカラーやエンドカラーで持ち前のキレイな黒髪を目立たせるのも可愛いし、ベースカラーを染めてからのインナーも染めて、なんてのも可愛いだろう。

 

 髪型だってそう。今は顎くらいまでの長さだけども、黒髪ロングはもちろんいつの時代だって正義だし、ステラみたいな骨格ウェーブの華奢な感じなら巻いてボリュームを出しても似合うだろう。もちろん後ろで纏めても良いし、なんならツインテとかも可愛いはずだ。

 

 あぁ、いったいどの髪色と髪型がステラにとっての最適解なのか。

 

(……むっず)

 

 アタシはそんな、おそらく東大の入試問題なんかよりも圧倒的に難しいであろう問題に直面し脳みそが働きをストップしてしまう。選択肢ってのは、ある一定のライン以上まで用意されると逆に決められないってものだ。アイスやクレープとかも、フレーバーやトッピングが多い方が悩むし。

 

 あぁ、でもやっぱりここは……

 

「やっぱアタシ、ステラのロングが見たいかなぁ。ウィッグとか、被らん……?」

「ウィッグかぁ」

 

 ここはやっぱり、王道の黒髪ロングでしょ、と断言させてもらおう。

 

 正直、ギャルにとっての王道ってより、委員長キャラの王道だけどもさ。アタシの中でステラはやっぱりいいんちょーって感じだから、そのイメージにイチバン似合う髪ってのも自然と寄ってしまうのだ。

 

「ステラって絶対髪長い方が似合うと思うのに。今のままでもめっちゃ可愛いけど、委員長系や清楚系はやっぱ黒髪ロングしか勝たんね」

「……そういうものなの?」

 

 そうコテン、と歩きながら首を倒してこちらの顔を下から覗き込むステラ。うん、眼福。

 

 ……というのは置いておいて。

 

「そー。逆にステラは伸ばした方が可愛いかな、とか思ったこと無いの?」

「あんまりそういうったことはないかな。この髪だって自分で切ってるし……」

「は!? マジ!?」

「うん。だって短く切ればそれだけ手入れも手軽になるでしょ? 維持費だってバカにはならないしね」

 

 はー……、と思わず溜め息をする。何というか、言葉が見つからない。まるで外国で全く知らない文化を目の当たりにしたかのような気分だ。

 

 髪を切る、ってのはアタシだって当然するけれども……。それはあくまで自分が可愛いと思う、理想の髪型に整えてもらうために切ってもらうのであって、決して手入れが楽になるから、とかお金がかかるから、なんて理由出来ることなんてなかった。確かに面倒に思ったことだって何度もあるけども、それ以上に鏡に映ったばっちり髪を決めたアタシの姿を見る方が好きだから続けられたし。

 

 きっと、こういった些細な点での違いが巡り巡ってアタシと委員長との違いを産んだんだろうな、と思う。髪を大切にする、っていうファッションへの意識を持つようになったのがアタシで、髪を切れば手軽であるって事実の方が大切と言う、快適さを選んだのがステラ。

 

 どっちがいい、とかじゃないのだろうけれども……。

 

 願わくばステラにも今回の件を通して髪を大切にする精神を持ってほしい、とアタシは念じる。

 

 だって……。

 

(せっかくのJKだからね!!)

 

 快適さやコスパの良さなんて二の次で、持てる私財の全てを擲って。そして可愛いに全投球するってのがきっと、アタシたちが持つ無限にある青春の選択肢の中で、いちばん正解に近い選択なのだろうから。

 

 

 

 

 

「いやー,買ったねぇ」

 

 買い物も終わり帰宅途中。駅方向へとモールの中を進んでいく。

 

 最終的にステラの獲得した紙袋群は六つとなり、流石に一人で持つのは大変だろうとアタシがその半分を持たせてもらった。小物とか百均で買い漁ったメイク用品一式なんかの比較的軽いモノを持っているだけだから、半分持っている、というとちょっと恩着せがましいかもだけども。

 

 集合時間からだいたい五時間くらい経過してもう昼も過ぎ去り午後の二時半過ぎ。まだまだ夏の暑さは健在だけれども、ピーク時よりは幾分かマシだ。

 

 これからはいよいよ、アタシの家でステラの初メイク、というわけなのだけれども。

 

「あーっ、これ可愛い!!」

 

 そんな最中、ふと視界の隅に入ったショップの中のアクセサリーに興味を惹かれ駆け寄る。

 

 それは、シンプルながら存在感のある細いシルバーのネックレスであった。

 

「たしかに綺麗だね」

 

 そんな駆け足のアタシに遅れる形で寄ってきたステラもそのアクセサリーを確認し、同意の感想を口にした。

 

 商品自体はショーケース内に収められているから手に取ることはできないけれども、しかしケース越しにもこのアクセサリーの良さは伝わってくる。加工が丁寧なのかその反射光に陰りは無く、また細いながらもデザインで存在感を示すよう意匠に凝っていてめちゃくちゃいい。エンドパーツの星もグッド。

 

 てか、星って……

 

「これ、ステラに似合いそう! さっき買った服に合わせたら絶対最強だよ! 星もステラって名前にピッタリだしさ! 値段も――」

 

 そう隣に来たステラにまくし立てながらショーケース内の商品の横に置かれているであろう値札を探す。ステラはアタシの勢いに目を丸くして驚いていて、まるで猫の様だ。

 

 すぐに見つかった値札に視点を合わせ、商品の値段を見てみると……。

 

「うん、うんっ!」

 

 しっかりとした黒インクで「¥22,000」と商品名などと一緒に印字されていたのを見てひとり頷く。

 

「全然手ごろな感じだし、いいじゃんこれ! 買っちゃおうよ!」

「えぇ……? でも、ちょっと値段が……、予算的に……」

「マジ!?」

 

 まさかのステラの発言にこちらが今度は眼を丸くして驚く。結局今日のショッピングは服や靴に小物やメイク用品とたくさん買ったが、全部安価なお店をセレクトしたからトータルじゃあ四、五万円くらいしか使っていないからこれくらい余裕だと思っての発言だったのだけれども。

 

 もしかしてステラん家、あんまお小遣いとかくれないんかな?

 

「うぇ~、もったいないなぁ……。これくらいなら背伸びしちゃったらいけない? 絶対合わせた方がいいのに……」

「残念ながら……。今の手持ちだと逆立ちしてもダメ、って感じかな」

「えー、そっかぁ……。残念」

 

 しかししょうがない。ステラ本人が無理だと言う以上、どんなにアタシが引き下がっても結末は変わらないのだ。

 

 アタシは「ちぇっ」なんて適当に舌打ちのマネなんかをしながら渋々、ショップから離れて先ほどまでの帰路に戻った。

 

(いやぁ、でもなぁ……。アレは、やっぱ買っとくべきだったんじゃない?)

 

 そんな最中も頭の中にあるのは先ほどまで見つめていたネックレスのことだけ。正確に言うと、それを身に着けたであろうステラの姿を、だ。

 

 今日買った黒のトップスに、アレを合わせたら黒と銀のコントラストでイイ感じに引き締まってくれるだろうし。骨格ウェーブなステラのデコルテをある程度晒すんだったら、そこにワンポイント追加した方がバランスも良くなりそうだしさ。

 

 そんでもってステラって名前に対しての星のエンドパーツ。あれはもはや、ステラのためのアクセって言っても過言じゃないくらいだったのに。

 

 ステラだって別に、あのアクセが気に入らなかったってわけじゃない。アタシが「これ買おうよ!」って言ったのに対し、彼女は「タイプじゃない」とか「欲しくない」じゃなくって、あくまで「お金が足りない」って言っていたし。

 

 それってつまりは、お金があったら買ってたってことじゃん……?

 

「……!」

 

 そこで、アタシはとある名案が浮かび上がり足を止める。

 

「……どうしたの?」

 

 ステラは急に足を止めたアタシの方を向き、怪訝そうな表情を浮かべてこちらを見やる。

 

 そんなステラを見てニヤリ、と上がりそうになる口角をなんとか押しとどめて、極めて冷静に、なんてことの無いように口を開いた。

 

「ちょーっち、ウチ、お花摘み行きたくなったから先行ってて?」

 

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