委員長はギャルを知りたい   作:すっごい性癖

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今回、後書きにお知らせがございます


第20話

 施設内に移動した私たちは、とくに目的もなくフラフラと彷徨っては「あれいいかも」、「あれ見たい!」というミレイさんの興味の赴くがままにショップを巡っていた。

 

 まぁ、いわゆるウィンドウショッピングである。

 

「見る分にはタダだもんね~」

 

 なんてのは彼女の弁だ。確かに彼女の言う通り、見るだけならばお金もかからないので私の懐事情的にはありがたいのだけれども……。

 

 私と違って金銭に余裕がある彼女も見るだけでいいのだろうか、と思ってもしまう。彼女だって服やコスメは大好きなはずだし、それこそ今日だって彼女はすごくおしゃれだ。あんまり今時の流行とかを知らない私でも、華やかだな、とそう素直に受け取るくらいには可愛らしい。

 

「私に遠慮しないで、ミレイさんの好きなように回ってくれていいんだよ?」

 

 私のせいで彼女が我慢をする、なんてことは出来るだけ避けたい。そう思った私は率直に、彼女にそう伝える。先週は私の買い物を手伝ってくれたのだ。今週は私が手伝ってあげたい。……まぁ、私みたいな流行弱者に手伝えるかどうか、自信がないけれども。

 

「いやー、今日はイイかな~。見るだけ、ってのも楽しいしね~」

「……そう?」

「うん。別に遠慮してる、とかじゃなくってね。最近、いろいろ買いすぎちゃったし、今日くらいはゆっくり見て回るだけにしよー、的な?」

 

 ほら、とそう言うと彼女はタタタッ、と軽快な音を立てながら自身のスマホを操作し、こちらに画面を提示する。私は促されるまま、表示された画面に視線を向けて……。

 

「――ッ!?」

「ねー。流石に使いすぎよね~」

 

 そのままブンッ、と下げた頭をもう一度上げて彼女の顔を食い入るように見つめる。なんだか気まずそうな顔をする彼女。一方、私はそれはそれは味のある顔をしているはずだ。

 

「あっ、あの……、ミレイさん!? わ、私の眼がおかしくなってなければ……、こ、これ……」

 

 わなわな、と彼女のスマホの画面を指さす。信じられない、と思えば思うほどブレる指先。けれども、私の眼が狂ったわけでもない。

 

 ――そこにはくっきりと鮮明に『支払総額 \118,600』と、簡潔に表示されていた。

 

「……てへっ♪」

「てへっ、って金額じゃないですよ!?」

 

 ぺろっ、と舌先を出して「ミスった~」みたいなポーズをしても流石に誤魔化せない。確かにそのポーズは可愛らしいけれども、それ以上に可愛らしくない金額が目の前に出てるから隠し切れないのは道理も道理だ。かくれんぼで隠れるための障害物よりも隠れる人の方が大きいようなものなのだから。

 

「何買ったらこんな金額行くんですか!?」

「えーっと……、夏服とか、いろいろ……?」

「それだけでこんな金額行くんですか!?」

 

 服、なんて言ってしまえば布と糸の集合体だ。それを十や二十と買っても、そこまで高くはならないというのが私の中の認識だったのだけれども……。

 

 やはりブランド、ってのはそう言うものなのだろうか。恐ろしい。

 

「あとこれ以外に」

「まだあるんですか!?」

「そりゃあこれ、服メインのブランドのECだし。あとはバッグでしょ? アクセでしょ? 香水にバッグも買ったし……、あとは……」

 

 出てくる、出てくる、彼女の散財の履歴のあれやこれや。家庭の経済レベルが違うとは思っていたけれども、ここまでとは。

 

「トータルでギリ、60を超えてないって感じかなぁ」

「なる……、ほど……」

 

 全く知らない世界の話の様で頭がパンクしそうになる。若干立ち眩みのようなモノさえ感じた気がした。

 

「まー、流石にコレはアタシも買いすぎたって反省してるけどねぇ。ママとかにもすっごい怒られたし。計画性がなさすぎる、って」

 

(今さらですけど、ミレイさんってウチの高校の中でもだいぶお嬢様寄りの人なんだなぁ……)

 

 私立故に裕福な家庭出身の人が多い桐葉高校の中でも、さすがにこのレベルの金銭感覚がスタンダードではない。……はずだ。恐らく、多分。一人一人の金銭感覚何て、調べたこと無いから断言はできないけれども。

 

 正直、私も彼女も校内では外れ値寄りの金銭感覚をしていそうだし……。

 

 あぁ、もうやめよう。友達と二人でいていつまでもお金のことを考えているのも不健全だ。

 

 私は無理矢理めに話題を変えることにした。

 

「そういえば、カラーコンタクトのことなんだけど」

「ん? カラコンがどしたの?」

 

 サイズが合わないとか? と尋ねられるも「いや、そうじゃなくって」と首を横に振る。

 

「いやね。先週、生まれて初めてこういうものを買ったから気になったんだけど。カラーコンタクトって買う時、同意書を書く必要があるんだなぁ、って思ってさ」

「あー、それね。確かに最初に買いに行った時は面食らうかも。アタシもそうだったし」

 

 簡単な個人情報や行きつけの眼科などの情報を書いて提出してから購入できたカラーコンタクト。それは今も私のよう目の中に着けられているのだけれども、まさかオシャレのための道具を買うのに同意書がいるとは思わなかった。

 

「いくらオシャレ、っていっても目に入れる以上、視力矯正のコンタクトと同じ扱いをしないとダメ、ってことなのかな?」

「そうなんじゃない? 詳しい事とか調べたことないけど」

 

 そんな適当な……、と思わなくもないが、まぁそういうところもミレイさんらしい。

 

「あっ、あの映画おもしろそー」

 

 ふと、彼女が近くの映画のポスターに駆け寄る。確かこの施設には映画館も併設されていたはずだから、そのための広告だろう。

 

 なんてことはない、よくある主演キャストが大きく印刷された恋愛映画のポスターであった。美人な女優さんが二人、抱き合う様にして中央に位置している。

 

「原作の小説は読んだことあるけど、面白かったよ」

 

 そんな彼女に後ろから近づき、声をかける。一昨年くらいだっただろうか。中学生の頃、学校の図書室で読んだ覚えがある。女性同士の恋愛をテーマにした恋愛小説、というものが当時の私には珍しかったので記憶に濃い。

 

「へー……。今度、見に来ようかな」

「私もせっかくだし、久しぶりに読み返してみようかな」

 

 映画化するくらいの話題作なら、きっとうちの図書室にも仕入れられているだろうし。

 

「……てかステラも恋愛小説とか読むんだ。恋愛とか、興味ない系だと思ってた」

「ミレイさんってたまに私のこと、ロボットか何かと思ってない?」

 

 まぁ確かに、今の私には恋愛に割けるほどの余裕がないから興味がない、と言っても差し支えは無いけれども。今はできるだけ、自作小説に力を入れたいし。

 

「それでいうとミレイさんはどうなの?」

「ん、アタシ? なーに、ステラってばコイバナやりたい系か~?」

 

 そうニヤニヤとこちらを見てはツンツン、と脇腹の辺りをつついてくるミレイさん。普段の制服なら何ともないのだけれど、今日は露出が激しめで布地も薄い服を着ているので普通にくすぐったい。変な声が出そうになるのを堪えて表情を保つ。

 

「やー、まぁアタシもそういうんは無いかなぁ。告られたことは何回かあるけど、あんまピンと来なかったしさ。ウチ、超面食いだし」

 

 それは、正直に言ってしまうと意外であった。

 

 偏見、なのだろうか。彼女たちのようなギャルと呼ばれる人たちというのは、そういった恋愛には奔放なイメージがあった私には、今まで誰とも付き合ったことがないという彼女の言葉に大きな衝撃を受けてしまう。

 

 しかし言われてみればたしかに、現在お付き合いしている相手が居たらこんな風に何度も日曜日に時間を空けてくれたり、毎日夜に大量のメールを送ってくることもできないはずだ。ということは、彼女の言っていることは事実なのだろう。

 

「……意外」

「あはっ、よく言われる」

 

 そう言って彼女は近づいていた映画のポスターから距離を取る。もう行こう、ということなのだろう。

 

 私はそんな彼女の仕草に従って、横に並んで日曜日のモールの中、人ごみを掻き分けるようにして前に進むのだった。




あと5話ほどで現在投稿中の第一章が完結いたします

それにともない、本作はハーメルンでの更新を終了する予定です ここまで読んでくださった読者の皆様 ありがとうございました
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