Edge of Heart   作:星空エクレア

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 ピザポテトにカービィコラボパッケージ来ましたが、ピザポテトが苦手な自分はスルーします。
 その代わり、カービィの誕生日にカフェプチでケーキ買って帰りました(クルマほおばりとメタナイトのチョコケーキ)。


LEVEL1 はるかぜとともに
STAGE1ー1 L'Oscurita dell'Ignoto


 

 

 「反応がないってことは……も、も、も、もしかして死───」

 「───安心して、息はあるし目立った外傷もない。気絶しているだけ」

 

 反応がない警察官たちを前に顔を真っ青にする少年に対し、素早く脈と呼吸を確認したるるかは冷静に生きていると指摘する。

 

 「あ、るるかさんにマシュタン! 来てくれたんだね」

 「───勝手な行動はしないで」

 「ご、ごめん……」

 

 来てくれたんだと顔を明るくする少年に対し、記憶喪失の身で勝手な行動をされるとまずいので注意する。

 だが、今はそれよりもやらなければならないことがあると前を向く。

 

 「あの人たちは一体───?」

 「最近夜中にバイクで暴走している不良だわ。昼間も迷惑かけるなんてオシャレじゃないわね」

 「でも、様子がおかしいよ! 何か⋯⋯まるで操り人形みたい⋯⋯」

 「───あなたの勘はたぶん当たっている」

 

 そこには最近夜中にこの付近を根城にしている暴走族五人。

 これだけなら彼らが度が過ぎた暴行行為に走っていると思うかもしれないが、黒い霧のようなものが彼らの体を覆っているのと焦点が合ってない瞳から少年とるるかは彼らが正気を失っているのではないかと見ていた。

 

 

 「人を操る闇……!? 聞いたことないわ!」

 「! マシュタン、危ないっ!」

 

 人を操る力を持つ未知の闇を前に驚きを隠せないマシュタンだが、その直後少年に抱えられる。刹那、先ほどまでマシュタンがいた場所を通ったのは金属製の鞭のような何か。

 

 

 「───分銅鎖……彼らが元々持っていた武器」

 「た、助かったわ」

 「ねぇ聞こえる!? 聞こえてたら暴れるのはやめて!」

 

 それは分銅鎖という、遠心力を利用して錘で相手を打ち付けたり、鎖で縛ったりする武器。かつては護身術や逮捕術の道具として使われていた背景を持つ。

 

 

 「…………」

 「くっ、聞こえないってことはやっぱり操られてるんだ……!」

 

 

 そんな鎖型の得物を冷酷な表情で振るう不良達。少年の呼びかけにも一切答えないその様子は無慈悲な戦闘マシンとすら思わせ、少年は自身の推理に確信を感じる。

 

 

 

 「───マシュタンを連れて離れてて」

 

 おそらくこの黒いオーラを祓うか、物理的に気絶させなければならないだろうと判断したるるかは少年に離れるように指示を飛ばしながら、首に下げていた小さな杖のネックレスに触ると、少年を撃ち落とした時の姿に変化する。

 

 

 「分かった! 気をつけてね!」

 

 るるか一人に任せるのは心苦しいが、戦う力を持たない自分では足手まといになってしまうためマシュタンを連れて離れる。

 

 

 「…………!」

 

 それと同時に不良の一人が金属バットを振り下ろしながらるるかに襲い掛かる。

 だが、バットは空を切り、反対に杖で叩かれ武装解除される。何が起こったか分からない不良が反応するよりも前に横っ腹に衝撃が走り吹っ飛ばされる。

 

 

 続けてナックルダスターを付けた不良が素早く飛び込んでくる。得意な間合いを生かせるインファイトに持ち込む気だ。

 しかし、るるかは回し蹴りを放った勢いそのままに今度は杖を短く持ちながらの突きを放ち、相手の攻撃を阻止する。

 

 

 「つ、強い……!」

 「キュアアルカナ・シャドウは最強なのよ」

 

 あっという間に二人を倒したるるかの強さを見た少年は驚きの声を上げる。

 彼女は多数を相手にしても全く苦しそうではない。しかも、黒い光線を使わないあたり操られている彼らに大怪我をさせないように手加減もしているのも含めれば相当の実力者だろう。

 

 

 「キュア……何だって?」

 「キュアアルカナ・シャドウよ。るるかがプリキュアに変身した時の名前なの」

 

 マシュタンの解説で今のるるかがキュアアルカナ・シャドウという名前であることを理解する少年の目の前では、正にキュアアルカナ・シャドウが不良達を次々とあしらっていく。

 

 

 しかし───

 

 

 

 「……ぐ…………」

 「……ぐぉぉぉ…………」

 「嘘っ!? 手加減しているとはいえ、一撃食らったら普通の人間はすぐに立ち上がれないわよ!?」

 

 地面に倒れていた不良達はまるで効いていないかのように立ち上がり、襲い掛かり続ける。そのゾンビのような姿にマシュタンは恐れおののき驚愕する。

 

 

 「も、もしかして操っている人間の命なんか知ったことじゃないから本当の限界が来るまで動かし続けてるんじゃ……!」

 (───それなら本当に厄介……)

 

 一方、少年とアルカナ・シャドウは『不良達を操っている闇は寄生先を使いつぶすつもりだ』という恐ろしい可能性に行き着く。

 このまま撃退し続けても埒が明かないどころか反対に不良達に取り返しのつかない怪我を負わせかねない。いくら不良とはいえそれは残酷すぎる。

 しかし、反対にこのままでは押し切られてしまうのも事実。一か八か威力を調整した必殺技で一掃するべきか……

 

 

 

 どうすれば良いか一瞬だけとはいえ逡巡してしまったことが凶と出る。

 

 

 「………ぐぉぉぉっ!」

 「! 逃げて!」

 

 金属バットを持った不良がアルカナ・シャドウの横を突破してしまい、少年とマシュタンの方に迫る。助けに行きたくても他の不良達が囲んできて阻止してくる。

 警告が飛ぶ中、少年は……

 

 

 「マシュタン、ごめん!」

 「きゃあっ!?」

 

 マシュタンを掴むやいなや近くの木の上めがけて放り投げる。

 それと同時に振り下ろされる金属バット。自身が助けられたことを悟りながらもその代わり少年が凶行に倒れる未来を予測したマシュタンは思わず目を瞑る。

 

 

 

 

 だが───

 

 

 「くっ………!!」

 (───その動き只者じゃない……)

 

 

 少年は真剣白刃取りの要領で金属バットをギリギリのところで食い止めていた。

 マシュタンを逃がしながらも自分の身も守る素早い動きに、アルカナ・シャドウは少年がただの記憶喪失患者ではないと察する。

 

 

 「るる⋯⋯アルカナさんは戦いに集中して! 一人ぐらいなら相手できる!」

 「───分かった。すぐに助ける」

 

 少年の任せろという言葉に頷き、残りの四人を相手取る。謎は多いが、今は彼らを鎮圧し助けなければならない。

 多少手荒な真似をせざるを得ないと決め、立ち向かおうとした時相手はこれまでにない変化を見せる。

 

 

 

 「ぐおおおおおおおぉぉぉ!」

 「!?」

 

 

 不良達の左手から突如黒色の稲妻が放たれる。

 慌てて転がって避ける少年と、ひらりと回避するアルカナ・シャドウ。

 しかし、その表情は険しい。本来普通の人間は手からレーザーや稲妻など放てないことから寄生している闇由来の力だと想像は容易い。だが、それだけ不良達は闇に蝕まれている状態でありこのまま放っておけば取り返しのつかないことになってしまう。

 

 

 「アルカナ! 多少手荒な真似をせざるを得ないわ!」

 「───うん」

 

 それを見たマシュタンとアルカナ・シャドウは対処の段階を一つ上げることを決める。犠牲は避けたい少年は歯噛みするも自分に口出しできることではないので彼女たちに託すことしかできない。

 

 

 それでも金属バットの攻撃を避け続けていたが、集中を欠いてしまったことにより大きな誤算をしてしまっていた。

 

 

 (まずい……!)

 

 

 後ろを見れば身を潜めていた不良が一人。左手は黒い稲妻の発射の構え。

 誘いこまれて挟撃されたことに気づくが避けられない。少しでも衝撃に備えるために身を縮こませる。

 

 

 

 

 

 

 「───《アルカナスターレイン》」

 

 だが、その攻撃はアルカナ・シャドウが放った黒い光線によって相殺されたことで無くなるが代償は重かった。

 

 

 「───くっ!」

 

 少年を助けるために隙が出来てしまったアルカナ・シャドウに分銅鎖を持った三人に右腕と左足、体を縛られてしまった。

 

 

 (助けなきゃ!)

 

 

 それを見た少年は慌てて助けに行こうとするも、横やりを入れてきたナックルダスターの殴打に吹っ飛ばされる。

 

 

 「……っ……」

 

 

 あまりの衝撃に受け身も満足に取れず、しかとうちつけられた体はそのまま倒れ伏す。

 

 

 「……………」

 

 

 不良達は雑魚だと見下した目で彼を一瞥するなり、アルカナ・シャドウを狙いに行く。

 文字通りトドメを刺すつもりだ。

 

 

 

 (この……ままじゃ……!)

 

 

 窮地に追い込まれているアルカナ・シャドウを見て生まれる焦り。

 それでもあきらめない表情の彼女に対し、自分はどうだ。マシュタンこそ避難させられたが、それ以外では足を引っ張ることしか出来てない。

 

 

 (ボクも戦えれば……こんなことには……)

 

 今この瞬間ほど役立たずという言葉しかない事態もそうはないだろう。

 現実は非情だ。記憶もなければ、戦う力もない。目の前の恩人一人も助けられない無力な存在が今の自分だ。

 

 

 

 

 (終わって……しまうのか……)

 

 どうにも出来ない絶望と無力感を前に打ちひしがれ、俯きかけた時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───違います。

 

 

 声がする。自分に呼びかける、自分だけに聞こえる声。

 

 

 ───可能かどうかなど問題ではありません。

 

 

 ───その意思そのものが重要なのです。

 

 

 ───今は忘れていますが、あなたはかつてそれを体現する彼に憧れたのではないですか?

 

 

 意思……憧れ……

 

 

 

 ───あなたはどうしたいのですか?

 

 

 

 そんなの決まっている。

 

 

 (ボクは……るるかさんを、目の前の人たちを助けたい!)

 

 

 心は自分を助けてくれた人と、今謎の力の支配下に置かれている彼らを助けたいと叫んでいる。

 ならば……やるべきことは決まっている。

 

 

 

 「はあああぁぁぁっ!」

 

 拳を握って走り出した。勝算はない。助けられるかわからない。だが、そんなもの理由にならない!

 

 

 「…………」

 

 不良二人がつまらなさそうにしながら阻止に動く。

 

 

 「がっ…………!」

 

 横ステップでかわしながら、少年は鎖を巻き付けられたアルカナ・シャドウに金属バットを振り下ろそうとしていた不良の顔面に拳をたたき込んだ。

 吹っ飛ぶ不良に呆気にとられた分銅鎖の不良達。その隙を突いてアルカナ・シャドウは鎖を破壊して脱出する。

 

 

 

 「出来るか出来ないかじゃない。やりたいと思ったことを、信じると決めたことを貫くんだ!」

 

 

 『旅人』は星が導く心のままに立ち上がる。その瞳には先ほどまでの恐れも、絶望もない。あるのは希望の未来を掴み取る意思と勇気のみ。

 

 

 

 ───今ここにあなたの心は目覚めました。

 

 

 ───もうあなたは蹂躙する術しか知らなかった孤独な存在じゃない。その心のままに自由に歩ける旅人。

 

 

 ───あの日あなたが触れた春風。数奇な運命を辿って辿り着いたこの世界に吹かせて。

 

 

 

 

 「本当に大事なものを思い出したボクと、最強のアルカナさん。二人が揃えば恐れるものは何もない!!」

 「ぐぉぉぉぉぉ……!」

 

 高らかに宣言する目の前の少年を未だただの雑魚だと、脇役以下のモブだと見下した目と共に黒色の稲妻を放つ。

 アルカナ・シャドウは黒い光線で相殺しようとするが、少年はそれを止めて前に出る。

 

 

 (今なら……!)

 

 

 当たれば無事では済まないその攻撃を前に、決意を込め、右手を翳す。

 

 

 「!?」

 「吸い込まれていく!?」

 

 

 黒色の稲妻は少年の右手に吸い込まれていく。まるで魔法のような光景にアルカナ・シャドウですら驚きの表情を浮かべる。

 

 

 次の瞬間、少年が光った。

 まるで星を思わせる光が止むと同時に高らかに宣言する声が響く。

 

 

 

 「───コピー能力『ビーム』!」

 

 少年の頭には道化師のような派手な二股帽を被り、パーカーも帽子と同じく赤とオレンジの二色に分かれた色合いになる。右手には青い水晶が付いた魔法の杖を持っている。

 

 

 

 

 「変身した!?」

 (───プリキュア、なの?)

 

 まるで自分たちプリキュアのように変身した少年にマシュタンとアルカナ・シャドウは衝撃を受ける。

 自分たちとは違い、妖精もアイテムも無しに変身したように見える。変わったことと言えば、右手を翳しただけ。

 明らかに未知の力である。

 

 

 「……ぐぉぉぉっ!」

 

 一方、『あの忌々しい存在』とよく似た力を目の前の少年が見せたことに危機感を覚えた闇はそれでもただのハッタリだと踏んだのか、黒い稲妻を放つ。

 

 

 

 「《ビームウィップ》!」

 

 それに対し、少年は鞭のようにしなるビームで四方から襲い掛かる黒い稲妻を打ち払う。

 

 

 

 「アルカナ! ここからは一緒に!」

 「───分かった。援護する」

 

 謎が多いが、この事態を突破する鍵になるのは確か。頷いたアルカナ・シャドウは彼に希望を見出す。

 

 

 「ちょっと痛いかもしれないけど⋯⋯我慢してね。助けるから」

 

 突撃してくる不良達に一言謝罪しながら、少年は再びビームの鞭を放つ───狙いは不良達ではなく、武器へと。

 

 

 「……ぉぉ……!?」

 「ぐっ……!?」

 

 たちまちもだえ苦しみ倒れる不良達。それと同時に黒いオーラが彼らの体が昇り始める。

 一瞬驚くマシュタンとアルカナ・シャドウだが、すぐに彼の狙いに気づく。

 

 

 「金属は電気を通す。感電したらすぐには動けないってことね」

 「───冴えてる」

 

 

 不良達は全員金属製の武器を持っている。それを使って電撃で痺れさせ動けない状態にすれば、操っている闇は寄生先から出ざるを得ない。

 最小限の攻撃で、不良達を助けるという少年のファインプレーにやるじゃないという目を向ける。

 

 

 

 

 一方、不良達から抜け出た闇は一か所に集まり大きな球体のようなものに変化する。

 

 

 「本丸が出てきたわ!」

 「こいつを倒せば!」

 「───解決する」

 

 ここまで来れば後もう一押しだと少年は奮起し、アルカナ・シャドウも頷く。

 だが、手負いの獣ほど獰猛で恐ろしい力を持つ。それは狡猾な知恵を持つ闇なら猶更だ。

 

 

 闇は膨れ上がった頭部から巨大な黒い球を放つ。打ち上げられた球は上空で破裂し黒い球の雨となって降り注ぐ。

 避けにくく、しかし避けているだけだと周囲にも被害が及ぶ恐ろしい攻撃を前に少年はベンチを踏み台に空へ飛びあがる。

 

 

 「《レボリューションビーム》!」

 

 そこから杖を激しく回転させながらビームの鞭を放つ。しなるビームの鞭の範囲は広く、尚且つ球体上の軌道によって隙を限りなくカバーしつつ全部撃ち落とす。

 

 

 

 「───大人しくして」

 

 

 そこへ闇にアルカナ・シャドウが強烈な回し蹴りを食らわせる。

 見た目からは想像できないほどのパワーを前に吹っ飛ばされる闇だが、反撃にこれまでよりいっそう強力な黒色の稲妻を放つ。

 

 

 

 「───合わせて」

 「任せて!」

 

 アルカナ・シャドウの短い言葉に、少年は頷き一つで返す。

 

 

 「《波動ビーム》!」

 「───《アルカナスターレイン》」

 

 

 少しの溜めの後、二人は息を合わせて電撃球と黒い光線を同時に放つ。

 中間地点でぶつかり合った攻撃は少しの拮抗の後、電撃球と黒い光線が打ち勝ち闇へ殺到する。

 

 

 起こる爆炎。それが晴れた後には、闇がもがき苦しむ様な様子を見せた後徐々に光が漏れていく様子。

 

 やがて光の筋が増えた矢先、雲散霧消する。

 

 

 

 

 しかし───

 

 

 

 小さくなった黒い煙は逃げるように立ち昇る。

 形を持たないのに、どこか意思だけは確かにそこにあるような、そんな気配。

 

 

 

 それはまるで、

 

 

 「───まだ終わりじゃない」

 「……これはあくまで前兆に過ぎないってこと?」

 「───きっとそう」

 

 この戦いは大きな災いの始まりに過ぎないと言っているかのようだ。

 少年とアルカナ・シャドウの胸の奥に、言いようのないざわつきが広がっていた。

 

 

 

***

 

 ───三十分後。

 

 不良達も目立った外傷などないことを確認した後、近くの公衆電話で救急車を呼んだ一行は素早く現場を離れ、人気のない森の木の上で休んでいた。

 理由としては面倒ごとに巻き込まれたくないのもあるが、何より今起こったことを警察や救急隊員に説明しても到底信じてもらえないから。

 

 

 

 「とにかく……一先ずは無事にあの人達助けられてよかったよ」

 「和んでいるところ悪いけど、さっき見せた力について説明して頂戴」

 「───コピー能力、見たところ相当強力な力」

 

 途中コンビニで買ってもらったソーダアイスキャンディを美味しそうに頬張る少年にマシュタンとるるかは先ほど見せた力について訊ねる。

 

 

 「うーんとね、不思議な声が聞こえて、思い出せたんだ。右手で吸収したものの力を自分のものにする『コピー能力』を」

 「不思議な声?」

 「うん。なんか……とても懐かしい感じがしたんだ。まるで、ずっと前から友達だったような……」

 

 

 それに対し、少年は今思い出せる範囲の情報をすべて開示する。

 右手で吸収したものの力を自らの力にし戦う『コピー能力』。吸収したものによってさまざまな姿を取り、先ほど見せた『ビーム』能力は杖から鞭のようにしなる性質や強力な威力を持つ電撃ビームで戦うのだ。

 

 

 

 「───プリキュアと妖精、このワードに心当たりは?」

 「プリキュア……妖精……ごめん、やっぱり何もピンと来ない……」

 

 しかし、そんな不思議な力を持つ者は他にいない。不思議側のるるかとマシュタンですら心当たりは全くない。少ないとはいえ、出てきた情報をもとにるるかは少し考えた後、あることを決める。

 

 

 

 「───マシュタン、彼は私たちのところで預かろう」

 「ええ!? あの探偵事務所に預けるんじゃなかったの!?」

 「───そう思ったけど、彼の事情を知る私たちと一緒にいた方が彼も安心すると思う」

 

 

 それは少年を自分たちの下で預かるというもの。

 人間界でも妖精界でもない異なる世界からの異邦人である可能性が高い彼は複雑な事情を抱えており非常にデリケートだ。そのため、事情を少しだけだが知っている自分たちの目の届くところでいさせたほうが彼にとっても良いだろうという考えからだ。

 

 

 

 「嬉しいけど、良いの?」

 「───少し交渉はいるけど……問題ない。私に失敗はない」

 「ありがとう! 本当に嬉しいよ! よろしく、るるかさん! マシュタン!」

 

 

 ありがたい申し出に少年は笑顔を浮かべ了承する。

 夕暮れの木漏れ日が、『旅人』の新たな冒険の始まりをやさしく照らしていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……それで本当の狙いは何なの?」

 

 

 ウキウキな様子でアイスを頬ぼる彼から少し離れたるるかとマシュタンは小声で会話する。

 マシュタンはるるかが彼を引き取ると決めた理由が他にもあると見抜いていた。

 

 

 「───さっきの闇があの書にも書かれていないイレギュラーなら、彼の力は必要になる」

 

 るるかの真の狙いは先ほど出くわした未知の闇と戦うにあたり重要な鍵となる彼を自分の味方に引き込むこと。

 記憶を失っているためかまだ未熟とはいえ、高い戦闘センスと独自の技を持つ彼と敵対するとなれば非常に厄介だが、偶然とはいえ今の彼は自分に恩義を感じている。ならば、協力関係を結んだ方が得という判断だ。

 

 

 

 「それって彼を利用するってこと?」

 「───悪く言えばそう。でも、助ける代わりにこちらも助けてもらうだけ」

 

 

 マシュタンの言う通り、彼の好意を利用する形だが決して彼から搾取しようとしているわけではない。あくまで助け合う関係だ。

 

 

 「心は痛むけど……闇のこともある以上あの子の力は魅力的ね……。見守りつつ考えましょう」

 

 マシュタンは多少悩みながらも頷く。彼女とて現状協力者が欲しいのは同じなのだ。

 それを見たるるかはアイスキャンディーを完食しながら空を見上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 (───そう、彼の力があれば私の目的も達成しやすくなる。利害は一致する)

 

 

 あの日から決めたのだ。

 

 ───例え全てを裏切ることになってでも。

 ───この身が闇に堕ちたとしても。

 

 

 (私はやるべきことをなす───)

 

 

 

 




 
 【ビーム】

 ムチのように しなるよ ビーム
 うてば サイクル、つかめば
 キャプチャー、回して はなって
 レボリューションだ!
 タメれば ドーンと はどうビーム!


 初登場は『夢の泉の物語』。
 歴史を紐解くと、全コピー能力の中で最も初めに手に入れることのできる能力で、手や杖から鞭のようにしなる電撃ビームを放つ。
 『スターアライズ』からは殆どの技にアッパー調整が入り、ビームマシンガンや波動ビームを主軸にガンガン戦っていける能力へと進化した。

***

 ☆L'Oscurita dell'Ignoto

 キングダムハーツ3Dと3のリミカでのゼムナスとの戦闘で流れる曲。曲名はイタリア語で読みは『ロスクリタ・デッリニョート』。意味は『未知の闇』。


 ☆本作の地の文の法則

 一先ずプリキュア組は普段は本名、変身時はキュア〇〇で書く予定です。
 もし読みにくいなどあればメッセージまでお願いします(感想だと規約違反になってしまう恐れあり)。


 ☆アルカナ・シャドウのフルネームをまだ覚えてない主人公

 元ネタは『スターアライズ』にてザン・パルルティザーヌを誰も正式名称で呼べないネタ(小説版ではバンワドやメタナイトですら覚えておらず、スペシャルページですらパルル呼び)。
 しばらくは変身時はアルカナか本名呼びになります。


 ☆苦戦

 本編だとウソノワールの攻撃を受け止めた時以外は底知れぬ余裕を見せるるるかさんですが、流石に操られた一般人相手には全力を出しづらく苦戦するだろうということで苦戦描写を入れました。
 後は途中まで主人公がお荷物に近い状態だったのも原因です。


 ☆本作のコピー能力周りの設定

 人間態の主人公が吸い込み使えるのは絵面的にあれなので『エアライダー』のように右手を翳すことで対象物をキャプチャーしてコピー能力を得る形になりました。
 コピー能力時の衣装はカービィと同じ帽子を被り、パーカーもその帽子を模した色に変化します(イメージとしては、キングダムハーツシリーズでドライブやフォームチェンジを行った時のソラ)。


 ☆コンビ結成

 るるかさんに思惑はあるものの、一先ずコンビが結成されました。
 この光景を見てカービィシリーズを知っている人はあのキャラとシチュエーションが思い浮かぶかもしれません。その既視感を覚えておいてもらえると後におっと思う展開があるかも?



 評価していただいた

 ☆9:永遠の王様
 ☆5:桶の桃ジュース様

 ありがとうございました。
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