KH1FM(難易度FMでシークレットムービー解放)をクリアした感想としましては、『ストーリーが面白く、アルテマウェポンやリボンなど作るのに手間がかかる装備がその苦労に見合う以上の対価はきちんとある』『かなり強い隠しボスもティンクやエアロガ、アルテマウェポンなど強力な要素で多少難易度が下がる良調整』ところが非常に面白い一方、マップがなく何をすれば良いのかどこへ行けば良いのかガイドがないなど特有の不親切さ(PS2のゲームなので仕方ないところはありますし開発陣も色々問題点は気づいていたからこそ次作以降に改善されているようです)などもありました。ガードや回避がディスカバリー程信用出来ないのが辛いです。
後、攻略サイト信じて『求める力は杖、差し出す力は盾』をやったら序盤(ワンダーランドとジャングル)でのボス戦で地獄見ました。魔法や召喚が揃ってアクションに慣れてからはだいぶ強くはなり面白くなりました。
今回で宝生ちなみの闇を祓う戦いに決着です。
────やはり、贋作では力不足か。
「───お得意の贋作戦法も私とこの子には通用しない」
「《エレクトリカルムーブ》! ミスティックさん!」
「は、はい! 《ミスティック・リフレクション》!」
生み出された贋作の宝生ちなみ四人を倒したハル達に対し、ブレスを吐きつけるアザゼル。それをハルとミスティックがそれぞれの技で防ぐ。
「恐ろしい闇の力に身をゆだねないで! 藤堂さんもあなたを凄く心配している!」
「うるさい! 奪うばかりの醜い下賤の民によって奪われ続ける、犠牲者の怒りと悲しみ! それが分かるとでも言うの!?」
「────その言葉、そっくり貴方に返す」
その中で諦めずに説得を続けようとするハルの言葉すら跳ね除け、自身から大切なものを悉く奪った者たちへの怒りを主張するアザゼルだが、そこにアルカナ・シャドウが冷たく言い返す。
「何ですって……!? あたくしが下賤の民だとでも言うの!?」
「────藤堂薫さんのような無垢の芸術家を脅し贋作を作らせようとし、そして賄賂や贋作取引で裏社会に汚れた金を流す貴方はある意味では怪盗よりも悪質」
そもそも贋作は
────やはり、贋作では力不足か。
「───お得意の贋作戦法も私とこの子には通用しない」
「《エレクトリカルムーブ》! ミスティックさん!」
「は、はい! 《ミスティック・リフレクション》!」
生み出された贋作の宝生ちなみ四人を倒したハル達に対し、闇のブレスを吐きつけるアザゼル。それをハルとミスティックがそれぞれの技で防ぐのを試みる。強力な念動力と闇のブレスがぶつかった瞬間、ハルの視界が闇に包まれた。
(ここは……?)
闇に包まれているハルは、闇とノイズが入り混じる空間にいた。徐々に少しずつピントが合う中広がったのは、暗く狭い場所。
しかし、それでもどこなのか分からず首を傾げるハルの耳に、突如大声が飛び込んできた。
「おい、出てこいや!」
「貸した金は返す! 常識やろが!!」
(!?)
その如何にもガラが悪く、しかも何度も硬い何かを蹴るような音が繰り返し響く。そして見えてきたのは、小さな女の子────五歳ぐらいだろうか。
戸惑うハルを前に今度は景色が変わる。
「ララちゃん人形で遊ぼ―!」
「うん!」
目の前を通り抜ける数人の女の子────年はまだ7歳ぐらいだろうか。
だが、ハルの横にいる女の子は何も持っておらず輪に入れない。そして、俯きながらトボトボと別の方向へ歩いていく。
(貸した金……目の前の孤独な女の子…………まさか!)
最初は訳が分からなかったが、これまで集めてきた情報を繋ぎ合わせたハルは気づく。一方、景色はまた変わる。
「お金を返していただきたく……」
「その金は善意でくれたんやろうが!」
「この守銭奴が!!」
(やっぱりこれは宝生さんのトラウマだ……!)
広がるのは眼鏡をかけた男性に対し、意地汚く罵る者たち。
そう、ここは宝生ちなみが抱えるトラウマ────借金取りたちに押しかけられ、流行りのおもちゃを買ってもらえず同級生の輪に入れず、そして善意に付け込んで踏み倒すつもりの醜い者たちによって実の父が摩耗していく光景……
そして、場面は急速に移り変わる。
黒いローブを羽織った正体不明の存在から宝生ちなみの手元に移ったのは、呪いの指輪。それに込められしは他者を欺く力。
───これさえあれば、あたくしはもう奪われずに済む……。強い側に回れる……!
ずっと奪われ続けてきた人生、それは彼女が封印したい過去。この指輪さえあれば強い側に回って支配できる。
それは歪んでいく心の中で、彼が誘惑に屈した瞬間だった……
「───の───! ──────大丈夫ですか!?」
そこまで見た瞬間、強制的に意識が引っ張られる。目を開けると心配した様子のミスティックとアンサー。
「大丈夫ですか!?」
「突然意識抜けたように棒立ちだったけど……」
「ありがと。心配しないで、宝生さんの過去の記憶を見ていた」
「───もしかして見えたの?」
「うん。やっぱり、辛い記憶だった」
心配する二人に対し、ハルは心配無用と話しながら端的に宝生ちなみもまた痛みの中で苦しみ暴走していると述べる。
「恐ろしい闇の力に身をゆだねないで! 藤堂さんもあなたを凄く心配している!」
────うるさい! 奪うばかりの醜い下賤の民によって奪われ続ける、犠牲者の怒りと悲しみ! それが分かるとでも言うの!?
「────その言葉、そっくり貴方に返す」
その中で諦めずに説得を続けようとするハルの言葉すら跳ね除け、自身から大切なものを悉く奪った者たちへの怒りを主張するアザゼルだが、そこにアルカナ・シャドウが冷たく言い返す。
────何ですって……!? あたくしが下賤の民だとでも言うの!?
「────芸術を愚弄するだけでなく、藤堂薫さんのような無垢の芸術家を脅し贋作を作らせようとし、その芸術家達に罪を犯させている貴方はある意味では怪盗よりも悪質」
そもそも贋作が何故許されないのか、芸術品の価値を貶める、文化的歴史に歪みを生じさせるなど理由は様々だ。
だが、今回の件で一番問題なのは『贋作の美術品の制作において、資金援助を餌に犯罪に手を染めさせている』こと。芸術家側は抵抗しにくく、今の宝生ちなみの歪んだ承認欲求を満たすために行われている蛮行。だからこそ、るるかがハルの予告状に『芸術の尊厳を破壊』というワードを入れた。
「────今の貴方のやっていることは、喉が渇いたからと水の代わりに海水を飲むようなもの。結局満たされずに更に行為に及ぶ悪循環」
────うるさい! だまっらしゃい!
アルカナ・シャドウの冷酷な追求に怒り心頭のアザゼルは巨体で突っ込んでくる。標的は────アルカナ・シャドウ!
「させるか、《バニシュ》!」
「────ありがと」
「……言いたいことは分かるけど言い過ぎだよ」
すかさず瞬間移動で彼女ごと避難させたハル。アルカナ・シャドウの発言は正論だが、それ故に心の闇が暴走している宝生ちなみには劇薬ではないかと苦言を呈する。
「……話をしたいから沈静化させるよ、《エレクトリカルムーブ》!」
だが、どのみちアザゼルを倒し、宝生ちなみを元に戻す必要がある。アザゼルの背後に出現することで稼いだ時間の間で強力なサイコエネルギーを生み出し、背後からぶつける。
────どこまでも目障りなガキどもめ! それならば我が芸術品の一部となれ!
強烈な一撃によろめくアザゼルだが、口から白い光線を放つ。
────狙いはアンサーとミスティック!
「アンサー後ろに! 《ミスティック・リフレクション》!」
それに対し、ミスティックは十八番の防御技を展開し防ごうとするが……
「────逃げなさい!」
「え!?」
「危ないっ! 《バニシュ》!」
表情を少しだけ動かしたアルカナ・シャドウの警告が飛ぶ。呆けるアンサーをハルが瞬間移動で避難させた瞬間、ピンク色のバリアが突破されミスティックが白い光線に包まれる。
そして光が晴れた先には……白くなってまるで彫像のように動かないミスティックの姿があった。
「ミスティック!?」
「───色を奪われると動けなくなる」
「マジヤバっしょ!? こんなの……勝てるわけが……!」
あまりにも残酷な光景を前にアンサーとアゲセーヌの顔に絶望が浮かび、アルカナ・シャドウが冷静に相手の能力を分析。
「色を奪われたならもう一回付ければ! コピー能力『アーティスト』!」
だが、何か策がある様子のハルはポシェットから取り出した絵筆を《キャプチャー》。『アーティスト』能力に変身する。
「《絵筆スラッシュ》!」
白化したミスティックに絵筆を振るうと、たちまち彼女に色が付き動けるようになる。
「あ、あれ⋯⋯?」
「ミスティックさん、動ける?」
「え、えっと⋯⋯ありがとうございます⋯⋯」
「さっきと姿が違う!?」
「ハルはコピー能力によって出来ることが大きく変わるのよ。さしずめ、ワイルドカードといったところね」
ミスティクが復活したこともだが、それよりもハルの姿が変わったら扱う力も変わったことに驚くアンサー。ハルは戦況に応じて最適な能力に変えられる、ワイルドカードの性質を持つのだ。
────願いの破壊者め……! ならば、貴様から我が芸術になれ!
「危ないっ!」
蘇生手段を持ち、最大の敵と見定めたハルを忌々しそうに瞳で捉えたアザゼルは再度白い光線を放つ。ミスティックの手を引き、飛びのくハル。
「《アルカナ・スターレイン》」
────効かぬわ!
アルカナ・シャドウが黒い光線を放つが、アザゼルは鋭い爪で雲散霧消させてしまう。
「一人じゃダメでも二人なら! 《ペインター》!」
それを見たハルはキャンパスを取り出し絵筆を次々と走らせる。描いたのは────
「アルカナ・シャドウ!?」
「最強のアルカナ・シャドウさんがもう一人人いれば心強いもんね!」
アルカナ・シャドウ! ハルは自身が思い描く中で最強の戦士である彼女のコピーを描いたのだ。
「分かってるじゃない、ハル」
「────合わせて」
「………」
本物のアルカナ・シャドウは自身のコピーを一瞥だけして、再度技のチャージに入る。
────させるか!
「おっと、ここは通さないよ! アンサーさん、ミスティックさん!」
「《アンサーアタック》!」
「《ミスティック・リフレクション》!」
鋭い爪を振り下ろし阻止しようとするアザゼルに対し、別々の方向からアンサーがパンチ、ミスティックがバリアを投げつけることで妨害。
「《スカルプチャー》! そこから……《情熱の破壊》!」
「ちょっと! ウソノワール様の像を武器にするんじゃないし!」
更にどこからか巨大な石材を取り出し、のみとハンマーによる素早い手つきでウソノワールの石像を作り上げたハルが軽々とぶん回しながら殴りかかる────狙いは翼。
────甘いわ!
「「きゃあっ!?」」
「────まだまだ! (絵具で目つぶしに切り替える!)」
だが、アザゼルが素早く体を回転させることで弾き返してしまう。吹っ飛んで障壁に叩きつけられるアンサーとミスティックに対し、ハルは石像を踏んで更にジャンプすることで回避。そこから絵筆を一閃の構え。
「────《アルカナ・スターレイン》!」
「……」
更にそこへ、アルカナ・シャドウとそのコピーは一斉に攻撃を放つ。時間稼ぎに成功した攻撃は成功する……と思われたが。
────弱者がいくら群がろうが、関係ないわっ!
「くっ!?」
凄まじい地響きが起き、アルカナ・スターレインが打ち消され、コピーのアルカナ・シャドウが飛沫となって消えてしまう。本物のアルカナ・シャドウもその凄まじさに吹っ飛んでしまう。
「アルカナさん!?」
「ハル、危ないわっ!?」
相棒の安否を心配するハルにマシュタンの警告が飛ぶ。
(マズい!)
振り向くとニヤリと笑ったアザゼルが白い光線のチャージに入る姿! 誘い込まれたことに気づいたハルだが、今の能力では瞬間移動などで避難は不可能! ワイルドカードの性質を持っていても全ての力を一度に使えるわけではないのだ。
「それ貸すし!」
絶望的な状況の中、何かを閃いた様子のアゲセーヌがマシュタンから星明りのプリンセスをひったくる。
「ウソよ覆え! チョベリグにしちゃって、ハンニンダー!」
『ハンニンダー!』
────何っ!?
そこから生み出されたハンニンダーが眩しい光を放ち、アザゼルの攻撃を阻止する。その隙にハルは急降下して着地し退避する。
「アゲセーヌ、助けくれてありがとう!」
「べ、別にアンタに大怪我されたら美味しい料理食べられなくなっちゃうからだけだし! 勘違いするなし!」
「ツンデレだ⋯⋯」
「え、怪盗団の炊事係なんですか?」
助けてくれたことにお礼を言うハルに対し、まるでツンデレの教科書みたいなツンデレな態度を取るアゲセーヌ。元居た時代では割とその言葉が有名なアンサーがツッコミを入れ、ミスティックはハルが怪盗団の炊事係をやっていることに驚いた様子。
「ボク料理が趣味だからね。この戦いが終わったら作りに行っても良いよ。それで、アルカナさん。作戦が───」
そんな彼女達に軽口を叩きながらアルカナ・シャドウに耳打ちするハル。
「────危険すぎる」
「だけどこのままだと押し切られちゃう。なら、一か八かやってみる価値はあるはず」
作戦の有効性は理解するも、危険な要素もあるため難色を示すアルカナ・シャドウ。だが、このまま攻めあぐねて突破されてしまうよりは攻めの姿勢で道を切り開く意思は揺るがない。
「だいじょーぶ、ボク達は負けない」
「……分かった」
半ば押し切られる形ではあるものの、代案を出せるわけではないので彼の作戦を採用する。
「アンサーさんにミスティックさん! それにハンニンダー! ボクの援護を!」
「う、うん!」
「ハンニンダ!」
それを見たハルはアンサーとミスティック、ハンニンダーに援護を妖精しながら前へ出る。
「《ペインター》!」
「《アンサーアタック》!」
────願いの破壊者め!
キャンパスに描くのは、ゴウエモン。実体化した彼は桜吹雪を飛ばす。それに翻弄されながらも憎悪を燃え滾らすアザゼルにアンサーがパンチを叩き込む。出来た隙を狙われるが、ミスティックが障壁を出すことでカバー。
それを見たアザゼルはハルに狙いを変えるも、ハンニンダーがまばゆい光を放つ。
────鬱陶しいわ!
「ハンニンダー!?」
だが、アザゼルは今度はひるむことなく一撃を叩き込む。ハンニンダーは破壊されてしまい元のマコトジュエルと星明りのプリンセスに戻ってしまう。
「《情熱の破壊》!」
しかし、ハンニンダーの犠牲は全くの無駄ではなく、ハルがウソノワールの彫像を作り殴りかかれるようにする時間を作った。重い一撃を脳天に叩き込まれたアザゼルはその巨体をよろめかせる。
「トドメだ! 《ザ・ワールド・ドローペイン》!」
それを見たハルはフィニッシュに移ろうと念じると絵筆が巨大化し、辺り一面を塗ったくる。アザゼルだけではなく、地面や障壁にも絵具が飛んでいく。
しかし────!
────ぬかったな、願いの破壊者! お前から芸術にしてくれる!
「────ハル!?」
こっそりチャージを済ませていたアザゼルが口から白い光線を放つ。光線に包み込まれたハルにアルカナ・シャドウはいつもの冷静な表情ではなく少しだけ青ざめた表情で安否を確認する。
だが、晴れた先には色を奪われたハルが倒れる姿。墓標のように絵具の飛沫が上がる。
「ハル!?」
「ど、どうするっしょ!? ハルが倒れたらこんな化け物止める手段ないっしょ!?」
「そ、んな……!?」
「倒れちゃダメです!!」
受け入れがたい現実を前にマシュタン、アゲセーヌ、アンサー、ミスティックが悲鳴を上げる。だが、アルカナ・シャドウだけはすぐに切り替え《アルカナ・スターレイン》を放つ。
────ははは、効かぬわ!
だが、アザゼルには効果が薄く、吹き飛ばされてしまう。諦めず攻撃を仕掛けるアンサーとミスティックも軽くあしらわれ同様に吹き飛ばされる。
────終わりにしてくれる!
絶対の勝利を確信したアザゼルはこれまでよりも強力で範囲も広い白い光線を打とうとする。もはや、絶体絶命……と思われた時だった。
「《エレクトリカルムーブ》!」
突如後ろから巨大なサイコエネルギーがアザゼルを襲う。そして、空間の歪みと同時に割って入ったのは───『エスパー』能力をコピーしたハル!
────何故だっ!? 何故お前がっ!?
「動きが見え見えだよ、《予言者の見極め》!」
存在しないはずの彼を前に動揺したのか爪で切り裂こうとするアザゼルだがその動きは単調であり、カウンターで放たれた凄まじいサイコパワーと電撃の波動に吹っ飛び壁に叩きつけられる。大ダメージで身体を保てなくなったらしく黒い闇をまき散らしながら徐々に小さくなっていく。最後には闇が抜け、元の宝生ちなみに戻る。
「────ハ呪いの指輪を」
「任せて、《サイコキネシス》!」
彼女から外した指輪を念力で破壊。噴き出した闇が晴れるときらきら光る星が付いた杖が落ちていた。
「────これで二つ目」
「後五つね」
「マコトジュエル!」
「ポチっ!」
それぞれ星の杖と、ハンニンダーが破壊されて元に戻ったマコトジュエルと星明りのプリンセスを拾うハルとアンサー達。
「……ってどうしてあなたが動けているんですか!?」
「本当だよ!」
「割と簡単なトリックだけどな」
だが、ミスティックが気づいたように色を奪われ動けなくなってしまったはずのハルが今普通に動いているのはおかしな話。
それに対し、ハルはネタ晴らしを始める。
「アザゼルの不意を突くには一回ボクがやられる必要があった。だけど復活できなきゃ意味がないから予め辺り一面を塗ったくったんだ」
「…………まさか!」
「────そう、予め作った絵具溜まりに倒れるように調整した彼は染み込ませることで元に戻った」
「上手くいくかは半分賭けだったけどね」
彼が自身に施した生還トリックは単純。例え色を奪われても、絵具で色を付ければ元に戻れることをミスティックで知った彼はアザゼルの不意を突くべく『敢えて攻撃を食らって、注意から逃れる』という作戦を思いついたのだ。
「ネタ晴らしは済んだから……宝生さんと話してくるよ」
話し終えたハルは倒れている宝生ちなみに駆け寄りゆさゆさと揺さぶる。
「う、うぅ……」
「大丈夫ですか?」
「も、もう大丈夫なのかな?」
「────彼に任せましょう」
「ええ、ここからはあの子の領域よ」
意識を取り戻した宝生ちなみを不安そうな目で見るアンサーとミスティックに対し、アルカナ・シャドウとマシュタンは彼に任せようと制止する。
「あ、あーた達……うっ………!?」
戸惑っていた宝生ちなみだが、すぐに頭を押さえるとしばらく呻きだす。数分後、痛みは治まったらしいが今度は震え始める。
「ま、まだよ! まだ終わって……! あーた達を警察に突き出して!!」
「……もうやめよう」
そして、まだ醜く抵抗する宝生ちなみに対し、ハルはずっと考えていた思いを話し始める。
「ボクはアルカナさんみたいに賢いわけでも、アンサーさん達みたいな正義のヒーローでもありません。でも……贋作はその作品を作った人の魂と心を侮辱してしまうんじゃないかって思うんです」
ハルが自分なりに考えた贋作がダメな理由は、本物を作った人がその作品に込めた願いを否定してしまうから。
「藤堂薫さんのお婆様が描いた【Nachtflügel】。凄く綺麗でした。かつてのアナタもそう思ったからこそお孫さんである藤堂薫さんを援助していたのではないですか?」
「……」
「いくら奪われたからって、関係ない人から純粋な想いや心を奪って良いわけじゃない。ボクはそう思います」
「うるさい! アンタに何が分かる! ずっと奪われ続けてきたあたくしの苦しみが! 人間は結局醜い内申を隠し続けているのよ!」
宝生ちなみは心の底から叫ぶ。彼の心はずっと幼年時代の牢獄に囚われたままだった。醜い怪物たちに奪われ続けた者はもう取り返しようがなく、それを埋めるためだけに美術品を買いあさり富を誇っていた。
「この美術館に贋作を展示して多くの人を欺く今は、あなたが本当に望んだことなんですか? 本当のあなたはもっと他にしたいことがあったんじゃないですか?」
「今やっているのは、あたくしのやりたいことよ!」
「それなら……どうしてそんなに苦しそうなんですか?」
だが、ハルには今の彼女が苦しそうに見える。誰も信じられず、形ある富だけをずっと追い続ける中で孤独の中にいるように見える。
「ボクはまだ人の心を理解しきれていないです。もしかしたら闇に負けてしまうのかもしれない。でも……皆がみんな悪いことばっかり企んでいるわけじゃないと思うんです。アンサーさんとミスティックさんは騙されていたけどあなたを助けようとしていたように純粋な想いを持つ人だって多いはずなんだ」
「だから……何だって言うの……! あーたと違ってあたくしの周りはそんな綺麗な人間はいなかったのよ!」
宝生ちなみは心の底から叫ぶ。彼女の心は幼年時代からずっと牢獄に囚われたままだった。誰も信用していなかったらこそ贋作展示などの悪事に手を染めてしまったのだろう。
「……認めます。あなたの怒り。あなたのトラウマを垣間見たからこそ、絶望の中で必死に足掻いてきたってこと分かります。それでも……何かを綺麗だと感じて、それに勇気づけられることは大切な心の営みだからこそ、誰にも侵害が許されない素敵な領域だと思っています。だから……奪われたからって奪って良いわけじゃないとボクは信じています」
その怒りと絶望をハルは認めつつもダメなところはきちんと指摘する。それが今の彼女には必要なのだろうと信じている彼は話し続ける。
「もうやめましょう。嫌な奴らと過去に苦しめられる悪夢も、欺き続ける悪夢も……きっと、あなたは望んでいない。藤堂薫さんのお婆様の絵を見た時のあなたは心から好きだと言っていた時の気持ちを大切にしてほしいですし、心配してくれている藤堂薫さんのような人たちの気持ちを否定してほしくないです」
「……」
それに対し、剣呑だった宝生ちなみの目が少しずつ正常に戻っていく。闇に犯される前、藤堂薫の祖母が生きていた頃の思い出を久しぶりに回顧しているのかもしれない。
「──────贋作をずっと展示し続けたこと、藤堂さん達芸術家の皆さんを脅して贋作を作らせようとしたり作らせていたことを皆さんに包み隠さず話してください。そしてもう一度立ち上がってください。あなたには心配してくれているお友達がいます」
「そう……ね。本当に……ごめんなさい。あーた達をだいぶ傷つけてしまったわね……」
「気にしないでください。探偵さん達以外は土足でこの美術館に入ってきてますし」
「あたくしは……マスコミに謝罪しに行くわ……」
ハルの純粋な心に触れたのだろう。項垂れた彼女は立ち上がって歩き出す。
「……これで良かった……のかな?」
「でも……宝生さんは元に戻れたよね?」
「後は彼女自身のお話よ」
それを後ろで見ていたアンサーとミスティック葉複雑そうな表情を浮かべる中、突如後ろから場違いな声が響いた。
「────実にお見事。流石はハル君だ」
ハル達が後ろを振り向くとそこにいたのは────黒いコートに身を包み、フードで顔を隠した謎の人物だった……
☆アザゼル戦決着
今回の後半戦は色を奪い行動不能にするという『スーパーレインボー』の冒頭を意識した戦法をさせました。ハードを持っていない関係で『スーパーレインボー』は動画勢ですが、カービィとバンワドも一時的に行動不能になるという恐怖映像がOPにあります。
その中で『アーティスト』能力と『エスパー』能力が大活躍する回になりました。
☆戦況に応じて、コピー能力をチェンジ
元ネタはペルソナシリーズの主人公特有の力【ワイルド】より。
これまでの話でもチラリと出てきましたが、ハルはいつも持ち歩いているポシェットにコピー用のアイテムを数種類入れており戦況に応じてより有効な能力に切り替えが可能です。
☆アゲセーヌの助太刀
前回の事件ではかませにしてしまったので今回は助太刀として共にアザゼルに立ち向かう仲間になってもらいました。
ハルを助けるのも「こいつが怪我したら美味しい料理が食べられなくなる」という理由が多めですが、原作より仲間意識は強くなっています。
☆黒コート
本作における大きな謎を握る重要なオリキャラです(現時点での予定では物語において重要な役割を持つオリキャラは、このキャラとハルの二名のみです)。