「ふわぁ…あ…」
朝日と共に、1人の少女が布団から目を覚ます。
すると
「おはよう猫猫」
近くから声が聞こえて、見ればそこには、まるで老婆のような初老の男性が、何やら薬の調合を行っていた。そんな彼の声に少女『猫猫(まおまお)』は目を擦り気怠気に答える。
「おはようオヤジ…」
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それから起床した猫猫は服を着替えると、畑に水をやった後にカゴを背負い薬草を持ち出す。
「薬草届けてくるね」
「うん。最近は女狩が多いから…気をつけていくんだよ」
「大丈夫だって。帰りにまた畑寄ってくるから。いってきま〜す」
そう言いながら猫猫は手慣れた様子でカゴを背負いながら家を飛び出していく。
「ほっほっほっ」
次々と見えてくるのは、不潔な風貌となり倒れている男女や家屋に消えていく男女が蔓延る夜鷹。
そんな光景をまるで見慣れているかのように何の表情も変えることなく通り抜けていく。
そして、
その欲に溺れた通りを潜り抜けていくとそこには______
_____華々な楽園が広がっていた。
周囲には多くの建物が立ち並び、食を売るものや依を売るものそして、色を売るもので溢れかえっていた。
『花街』
男や女の欲が行き交う妓楼や多数の品を卸す商人、観光客に入り乱れる歓楽街だ。いるだけで欲望が満たされるその街は、今日も商人や客人達で大賑わいとなっていた。
その中を猫猫は薬を背負いながら進んでいくと、ある立派な建物へと到着する。
「着いた…っと。婆ちゃん薬草を…ん?」
到着し、店に入ろうとした猫猫は脚を止めた。
「なんだ?何やら騒がしいな」
見ると店前では人だかりが出来ており、そこには、行き先の緑青館の目の前に支配人であるやり手婆が青年と言い合っていた。
○◇○◇○◇
「んなこと知ったこっちゃねぇんだよぉ!!!金がねぇなら腎臓でも玉金でも売って金作らんかいおんどりゃあああああ!!!!」
1人は高級な服に身を包み立派な身なりの老婆。彼女こそ猫猫の探していた『やり手婆』だ。
対して声を荒げているのは小柄かつ気怠気な目を持つ青年であった。
「家賃ごときで喧しいんだよ腐れババァ!!この前、妓楼の屋根瓦タダで直してやったし新しいキセル買ってやったんだからそれでチャラだろぉおがぁ!!!」
「チャラな訳ねぇだろぅ!!そもそもあのキセル前にカッコつけて投げ飛ばしたら屋根に乗っかってそれ以来、ヤニ吸えなくてイライラが止まんねぇんだよぉおおお!!!!」
「知ったことかぁあああ!!!いい年こいてババアがカッコつけようとしてんじゃねぇぇえええ!!!ていうか下手すりゃ大火事だろうがぁああああ!!!!」
「ぎゃああああ!!!皆見なぁあああ!近年稀に見る老人虐待だよぉおおおおおおお!!____
__フンッ!!!」
「ぐべらぁ!?」
その瞬間 やり手婆の拳が胸ぐらを掴んだ青年の土手っ腹に3発
そして
「昇竜けぇえええええんッ!!!!」
「ばふぉおおお!?」
見事なアッパー。その一撃により、青年はぶっ飛ばされ、地面へと倒れた。
ドサッ
「今度滞納したら、仕事量10倍にするからね。オラ何見てんだ!!!見せモンじゃないよぉ!!」
そう吐き捨てながら婆は建物の中へと入っていく。
そして、そんな青年に猫猫は腰を下ろしながら顔を覗いた。
「相変わらずだね。梟鋒(きょう ほう)兄ちゃん」
その声に青年は目を覚ます。
「…あ、誰かと思えば三度の飯より毒が好きでお馴染みの猫猫」
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それから猫猫は用事を済ませるために青年 梟鋒と共に緑青館へと入る。
「えぇ?また家賃滞納したの!?」
「しょうがねぇだろ。あの婆、人使い荒い上に給料もほとんど天引きしやがるし、そんで家賃強請りやがって。こちとら贅沢もできやしねぇ」
「はぁ…そこまでされてよくここで働いてるねぇ…」
理不尽すぎる扱われに流石の猫猫も同情と共に呆れ返る。この小柄な青年『梟 鋒』は自身が物心がついてからしばらくして働き出した男衆である。
見た目は普通であり、背丈も自身より少し高い程度であるため、頼り甲斐があるようには見えない。そんな彼は現在、やり手婆が仕方なく用意した狭い一部屋に住み着いて働いている。
守銭奴な彼女にとって、妓女1人の部屋を奪うのは売り上げが落ちるため、決してない筈だが、珍しいこともあるものだ。
因みに、男衆の役目は妓女の護衛や、お勘定の整理、食事の用意、部屋の整理、運搬など。
対して梟 鋒の役目は______。
すると
「梟鋒〜ちょっと部屋のお掃除お願い〜」
奥から女性の声が聞こえてきた。
「あ、白鈴(パイリン)姉ちゃんからのお呼び出しだよ」
「カァ〜…こちとら全然休めてねぇのによぅ…もう」
そのお呼び出しを伝えると、青年は椅子から立ち上がると頭を掻きながらも向かっていった。
梟 鋒の役割。それは、男衆が行う業務全てだ。それも手際が凄く良く妓女達からも信頼を得ている。困った時に彼を呼び出せばすぐ事が片付くために、『何かあったらすぐ梟 鋒』と言われている程だ。
「さてと。婆ちゃん、薬草置いといたから」
「はいよ。ジジイによろしくなぁ」
それから用事を済ませると、猫猫は帰路へついた。
だが、これを最後に、彼女の姿を見た者はいないという。
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場所は変わり、白鈴から頼まれた仕事や他の仕事をほとんど片付けた梟鋒は医務室へ戻り、猫猫がいない事に気づく。
「あれ?おい婆さん。猫猫は?」
「あぁ?今さっきもう帰ったよ」
「相変わらず速いな。白鈴が会いたがってたってのに」
「それより梟鋒、ちょいと市場までひとっ走り頼むよ。菓子が切れた」
「はぁ!?まだ仕事中だよ!ぶち殺すぞクソババァ!」
「お前が死ねクソガキぃ!!!」
それから嫌々と梟鋒は買い物カゴを手に街へ出掛けていったのであった。
ここは花街の中でも最高級の妓楼『緑青館』
そこに住む青年『梟鋒』は今日も身を粉にして働きこき使われるのであった。
「……あ!!あのクソババァ!!!金持たせなかったな!?俺の金で買えってか!?」
梟鋒(きょう ほう)
見た目:長く癖のある毛を持ち、死んだ魚のような目をしてる童顔な青年
身長:猫猫よりも少し高い程度
体重:猫猫よりも30キロくらい多い
一応、男衆なため、ある程度の護身術や武術などは心得ている。