後宮。それは、国を統治する帝の妃達とその子供達が暮らす場所。いわば帝の花園だ。その後宮に一定の階級以下の男性の出入りは許されておらず、いるのは大抵、宦官だ。
そんな後宮に下女として売り払われた猫猫は、ある事件を解決した事で、後宮の中でも位のある4人の上級妃のうちの1人、『玉葉妃』の侍女となり、彼女の為におセッセと働いていた。
「はぁ…親父に兄ちゃん…元気にしてるかなぁ。花街の串焼きも食べたいなぁ…」
そんな猫猫は今日もため息を吐きながら、養父や緑青館の騒がしい兄貴分の顔を思い浮かべるのであった。
すると、
「ねぇ猫猫。前々から聞きたかったんだけど、そのお兄さん、どう言う人なの?」
「え?」
話を聞いていたのか、他の侍女である『桜花』が興味を持ったのか尋ねてきた。それに対して猫猫は「う〜ん」と考えながら答える。
「う〜ん…まぁ、一言で言えば何でも屋ですかね。たった1人で炊事洗濯、何もかも引き受けています。それどころか、夜の警備も。腕っ節は花街でも有名ですからねぇ、揉め事が起きたら一目見ようと人だかりが出来るほどです」
「「「へぇ〜!!」」」
「げ!?」
すると、いつの間にか侍女の数は増えており、貴園、愛藍も聞き耳を立てていた。さらにそのうちの1人であり年上の貴園はワクワクとしながら尋ねる。
「ねぇねぇ!もしかして猫猫はその人のこと好きなの!?」
「はいぃ!?いやいやいやいや!」
その質問に対して、即答で否定する。確かに顔は気怠気味で身長もなんなら自分より少し上程度で玉葉よりも低い。それに反比例するかのように筋肉質であり腕っ節もあるが、1人の男性として見れるほどではない。
それに、既に彼はある妓女から完全にロックオンされている。
「確かに面倒見がいい上に世話になったので、兄のように慕ってはいます。ですが、さすがに“アレ”を1人の男としては…」
「「「えぇ〜!」」」
そう言い否定すると彼女たちは残念そうに肩を落とす。
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そんなこんなで、花街では____。
「んなこと知ったこっちゃねぇんだよぉ!!!金がねぇなら心臓でもオチン○でも売って金作らんかいおんどりゃあああああ!!!!」
いつも通り、緑青館の目の前でババアと梟鋒の朝方の口喧嘩が繰り広げられていた。
「身請け金ごときで喧しいんだよクソババァ!!この前、妓楼の門に縁側タダで直してやったし高級茶菓子 自腹で買ってやったんだからそれでチャラだろぉおがぁ!!!」
「チャラな訳ねぇだろぅ!!そもそもあの菓子美味すぎて食いすぎた結果、体重増えてイライラが止まんねぇんだよぉおおお!!!!」
「知ったことかぁあああ!!!いい年こいてババアが食い過ぎてんじゃねぇええええ!!!!」
「ぎゃああああ!!!皆見なぁあああ!近年稀に見る老人虐待だよぉおおおおおおお!!____
__フンッ!!!」
「おぉっと!?もうその攻撃を喰らうか____グボヘェ!?」
いつも通りババアの右フックを避ける。だが、その直後にババアのハイキックが炸裂し、再び梟鋒の身体が吹き飛ばされ地面へと倒れた。
「さっさと身請け金払って、アイツ引き取りな。じゃないとお前、一生タダ働きだよ」
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「クソ!あの腐れババア!人を扱き使いやがって。おいババア!死神が来たら真っ先にテメェ身請けに出してやるかんな!」
「やってみろクソガキが!こっちこそテメェの魂 地獄なり尸魂界なり売っぱらってやるからね!」
その後、梟鋒は緑青館へと入ると、支度を始めた。
緑青館の仕事は見習いの禿と異なり肉体労働が多い。
メインは妓楼の治安を守る事だ。客の中には妓女に乱暴する者や騙くらかそうとする者もいる。そんな連中から妓女を守り、他の客からの評判を落とさないためにある程度の護身術や筋力が求められる。
更には、洗濯だ。妓女は酒を注ぐのみならず夜伽も行う者もいる。それによって部屋は客と妓女の色で乱れる。
それをキッチリと整理することも仕事の一つである。特に緑青館は高級妓楼なため、その雰囲気を保つことは勿論、いつでも客が来て良いように清潔な風景を崩してはならない。
故に他の妓楼よりも業務は過酷だ。だが、その分給料はキチンと出る。
因みに、梟鋒が請け負っているのは、警備は勿論だが、その他の雑用すべてだ。朝に起きればすぐさま妓女達の扱った布団などを洗い、干して取り替え、更にそこから警備の仕事へとつく。
こうしていくことで梟鋒の1日は終わるのだ。
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「んん〜!!!」
夜になり、賑わっていた花街も静かになると、執務室で整理を終えた梟鋒は欠伸をしながら寝転がる。
「終わった〜明日はようやく休み…久々に露店の串焼きでも食いにいくか」
そう言い肩に乗った疲れをほぐすかのように肩を回していく。
だが、梟鋒の仕事はまだ終わりではない。寧ろここからが正念場である。
すると
「梟鋒〜!」
「ヒィ!?」
背後から艶やかな声色と共に、彼を覆い隠すかのように抱きつく影があった。その声と感触に梟鋒は顔を青ざめながら振り向く。
「ぱ…白鈴…」
そこにいたのは、白鈴であった。だが、いつもの彼女と異なり、頬が赤く、目も少しばかりか蕩けていた。それを見た梟鋒の表情は更に青ざめる。
「ま…まさか…!!」
「うふふ…最近、茶摘ばかりだから溜まっちゃってて。もう仕事はないでしょ?だから…」
そう言い白鈴の手が梟鋒の腕に回される。
「“また”お願い♡」
「はぁあ!?あ、そう言えばまだ業務が___」
すると
「ほい。じゃあ残りは俺がやっとくよ」
どこからともなく右叫が現れ、整理しようとした書類をヒョイと取り上げて、ソソクサと出て行った。
「おい右叫!!テメェこら!!白鈴もそろそろ離せよ!?我慢もそろそろ覚えろよ!?」
「嫌よ〜!それに貴方の挟み甲斐があるもの♪」
「そのせいで何度も何度も連続でされて疲れて前なんて休み2日共に潰れたんだぞ!?」
すると
「なんだい騒がしいねぇ」
今度はやり手婆が現れた。それを見た梟鋒は咄嗟にババアに助けを求める。
「おいババア!良いところに!白鈴どうにかしろ!!」
「おぅ任せときな。ちゃんと給料から天引きしとくから」
「クソババア!!テメェ殺すぞ!?」
もう望みも助け船もなく、白鈴の腕が梟鋒の腕を完全にロックすると引っ張り出した。
「ほらほら、続きは私の部屋で♡」
「ぎゃぁああああ!!振り解けねぇし引っ張られる!!なんでこんな力強いんだよコイツぅうう!!!」
「もう暴れないでよ。また窒息させるわよ?」
それから白鈴に引っ張られた梟鋒は最後まで抵抗するが、恐ろしい執念と我慢の限界に達していた彼女によって、部屋へと引き摺り込まれていった。
梟鋒の最もキツイお仕事。
それは
『白鈴の発散相手』
それからして夜通し、部屋から激しい物音がすると共に、次の日の夕方まで梟鋒は部屋から出てくることはなかったという。