剣、魔法、あるいは のびのびTRPGを添えて   作:神炎飛鳥

3 / 6
番外編は世界観をそのままに思いついたままに書くパートになります。
今回は育ての親編です。



獣使いと育ての親(番外編)

皇帝との死闘を終えて

森の家に戻り、家族である動物達と共に過ごす穏やかな日々に戻っていた。

皇帝の事を教えてくれた獣人は結末を聞き終えると

 

「そうですか…よくぞ無事にお戻りになられました。」

 

そう静かに告げ、身体を直した後何処かに旅立っていった。

命尽きる前に再度お伺いいたします。

旅立つ前のあの顔はどこか憑き物が落ちた顔のようだった。

 

森の奥に小さな広場。

家からそんなに離れてはいないが、場所を知らなければたどり着けないであろう場所。

そこに木の十字架で作られた墓がある。

そこの掃除を済ませ、静かに祈る。

育ての親から教わった方式だが、旅を終えた今ではなんとなくでは無く自分なりの意味を持って祈れるようになった。

そんなことを思い返していると

 

「こんなところに居たのか、探したぞ。」

 

背後からの声。

旅を終えてからの変化はまだある。

死闘に手を貸してくれた金髪の美少女の鬼だ。

彼女はそのまま家に住み着いたのだ。

最初は鬼ゆえの気まぐれかと思っていたが、今ではすっかり家族に受け入れられている。

 

「…よくここがわかったな。」

 

「動物たちに聞いたのだ。そろそろいいだろうといった感じの雰囲気だったが。」

 

「そうか、あいつらがここを教えたのなら完全に受け入れられたのだろう。」

 

「そ、そうか…ところで、それは…墓、か?」

 

どこから変な様子であったが、まあいいだろう

 

「以前話しただろう、育ての親のだ。」

 

「お前の…そうか、これが。」

 

鬼は俺の横に膝を付け、目を閉じ祈る。

しばしの沈黙。

鬼は目を開けると

 

「…なあ。」

 

「なんだ。」

 

「良ければ、その育ての親の話を聞かせてくれないか。」

 

少し驚いた。

一緒に住んでしばらくたつが、過去などはあまり気にしないように思えた。

 

「…別に構わないが、面白い話なんてないぞ。」

 

「ああ、それで構わない。」

 

「そうか…」

 

何から話すか。

 

「こういう話は苦手だ。」

 

だから

 

「最初から、順番に話させてもらう。」

 

近くの木に二人で背中を預け、昔を思い出す。

 

 

 

俺の最初の記憶、いわゆる物心ついた頃の記憶。

それは家族である動物達に慕われ、優しい顔で家族と過ごしている獣人の顔。

穏やかな顔で、家族に接する姿の育ての親だ。

森の恵みを取り、小さな作物を育てる。

そうやって過ごし、たまに、昔の話をしてくれた。

 

「昔は大きな町で働いていたんだよ。」

 

「まち?」

 

「そう、私たち獣人が集まった大きな町。」

 

「ぼくたち以外に獣人がいるんだ!」

 

「今ではすっかり数を減らしてしまったけどね。」

 

「なんで?」

 

「おっきな事件が起きてね、私もそこで戦ったんだけど、ここに逃げてきたんだ。」

 

お前と一緒にね

そう告げた目は今思えば、寂し気な目だった。

 

「たたかう?」

 

「身を守ることだよ。そろそろお前にも教えよう。」

 

「わかった!」

 

当時は無邪気に返事をしていたけど、これがなかったらそもそも生き残れなかったかも、旅も終えられなかったかもしれない。

 

「動きが乱れてる!それでは動きの意味がないぞ!」

 

鍛錬となると、いつもは優しい顔も一気に険しくなる。

最初は急変具合に戸惑って後悔していたけど、それが数年も続けば必要だからと理解できた。

理解できたと伝わったのか、そこからは基礎、動き方中心の鍛錬から戦い方に変わった。

 

「私ごとき超えられず、もしもの時何も守れんぞ!」

 

「…そも、そも、自衛でここまで必要なの…?」

 

必要とは理解はしても、心は別。

ある程度自分では力が付いたと思っても容赦ない指導。

まだ、幼い自分にはもう無理しなくても、とそんな心が出てきていた。

そうして、戦い方の指導に代わり数年。

大体の鍛錬を程々にこなしていた日々。

それは突然やってきた。

 

「なんだ!?」

 

「なに…?」

 

咆哮

 

それは前触れもない衝撃。

外に飛び出た視界に映ったのは

 

巨大な牙、思わず見上げるほどの巨大な体。

周囲の木をなぎ倒し、そこには大猪がこちらを見ていた。

 

「お前は下がっていろ!」

 

そう告げると共に飛び出していく姿を、動けないまま見送る。

それを追うように家族も飛び出していった。

大猪の周りを翻弄し、少しずつダメージを与えている。

傍目から見ていてもそれはわかる。

だが、こちらは1回でも何か当たれば重症必須。

戦う姿、周囲の環境の様子を見ればそれはわかる。

何かが変われば戦況は変わる。

そう予感したと同時に

家族の一匹に大猪の牙が迫った。

避けれそうとか思う前に、身体が動いた。

咄嗟に抱え、迫った牙をなんとか蹴り、衝撃で離脱しようと試みた。

足が牙に向かう途中

 

何かに触れた。

 

それに触れた衝撃で、身体はその場から離れる。

地面を滑りながら止まり、視線を大猪に向ける。

 

そこには

 

大猪の牙に貫かれる育ての親の姿。

 

何故?

思うと同時に理解する。

迂闊に飛び出した自分を助けようとしたのだ。

向こうからすれば自分は未熟。

なすすべなく貫かれると思われたのだろう。

そして悪あがきで足を出したものだから助けて離脱できる勢いを殺してしまった。

貫かれた姿から、手刀が振るわれる。

大猪の牙が半ばから砕かれ、姿が地に落ちる。

その牙を砕かれ、大猪は森の中に姿を消した。

 

その後の事は正直よく覚えていない。

育ての親は事切れており、やらなければと意識のままに墓を作った。

呆然と墓の前でしばらく過ごしていたことは覚えている。

 

家に戻った際に家族は、鍛錬していた。

あの時の虚しさ、悔しさは戦いに参加していた家族の方が強かったのだろう。

その姿を見て、いつまでも立ち止まっている暇は無い。

いつ戻ってくるかもわからない大猪を、今度は仕留める。

その気持ちと共に鍛錬に励み

そして獣人を助け、旅が始まった。

 

 

 

「そしてお前に会う前に、大猪と再戦し、勝利したってところだな。」

 

「そうか。」

 

「…育ての親の話をしていたらいつの間にか大猪の話までしてしまったな。」

 

「私には、ちゃんとはわからないが。」

 

そう零した鬼の顔は、穏やかな顔で

 

「きっと、お前は大切にされてたのだな。」

 

「…あぁ、きっと。」

 

あの時、最後に言葉を聞けた記憶は無い。

だが、最後の顔は、安心したような顔だった。

 

「そういえば、何で俺を探してたんだ?」

 

「今更か…、飯だよ。ったく、あいつらも待ってるぞ。」

 

「もうそんな時間か。」

 

木から立ちあがる。

しばし墓を見つめ

 

「また来る。」

 

そう呟き、家へと向かう。

 

そんな別嬪と一緒なんぞ、報告無かったじゃないか。

また、今度は二人で来い。

 

聞こえるはずのない声。

既に失われてしまった筈の声に思わず振り向く。

そこには先ほどと変わらない墓、横を向けば鬼。

 

「どうした?」

 

「…いや。」

 

不思議そうな顔をする鬼を見て

 

「次は一緒に来てくれるか。」

 

「なんだ、一緒に来ないつもりだったのか。」

 

どうやら向こうは当たり前のように来るつもりだったらしい。

再び家へ歩き出しながら

 

「次は二人で来るよ、しばらくゆっくり眠れるとは思うなよ。」

 

その呟きに声は聞こえないものの、懐かしい笑い声が聞こえた気がした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。