ガクテン♪ソフト版   作:不定音高ふたつ

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【前書き】
なぜ記号だらけの楽譜を見て、音にできるのか?
初心者向け楽譜の謎解きエンターテインメント。

● 登場人物(主要な、ハル、ミッツ、ステラ、ショージ、ヤッ子の5人)
♪ ハル:早坂春弥(はやさか・はるや)。中学1年生。男。主人公。ミッツの従弟。手品と謎解きが好き。声変わり前。

♪ ミッツ:蜜霧多岐(みつきり・たき)。中学2年生。女。ハルの従姉。活動的。幼少の頃からピアノを習う。口の表情が豊かで、口が顔の輪郭からはみ出すことが多い。

♪ ステラ:星山空見(ほしやま・くみ)。中学1年生。女。メルヘンが好き。転入して吹奏楽部に入部し、トロンボーン担当になる。老若男女の誰からも、一見して好かれる、無邪気な可愛らしさ。

♪ ショージ:東海林翔児(しょうじ・しょうじ)。中学2年生。男。吹奏楽部でクラリネット担当。恰幅は良いが、デブではない。会話の始まりは紳士っぽいが、話しているうちに、下品な饒舌になる。

この4人の背の高さは、高い方からショージ、ミッツ、ステラ、ハルの順。小学生の高学年から、中学1年生までは、女子の方が平均身長が高いため。

♪ ヤッ子:鍵宮靖子(かぎみや・やすこ)。理科教師(専門は化学)。年齢は30代前半。女。白衣で、すらりとした黒のパンツ姿。プライベートではジャズピアニスト。姉のことが大きく影響。



この作品は、web小説閲覧サイト「小説を読もう」にも投稿しています。

楽譜の読み方「楽典」を、アニメ脚本っぽい形で説明します。
「再放送や、Blu-rayの、長期的な繰り返し需要の視点から、web小説よりも、アニメで説明したい」という気持ちが強いです。




第1話 謎解きは余談から。
ハワイアンギター遊びから、倍音は音の幾何学。民族音楽や定義。音楽は、学校の科目の中で、唯一「楽しい」という文字が入っています。中学生は学生ではない。


├ ●●第1話 Aパート ( 1 / 3 ) ハワイアンギター遊びから、倍音は音の幾何学。民族音楽や定義。音楽は、学校の科目の中で、唯一「楽しい」という文字が入っています。中学生は学生ではない。

 

ここは、第1話ということもあり、「定義」「評価の基準」「初心者への気遣い」の話題が多い。楽典の質問は、第2話から始まる。アニメのテンポに合わせ、大幅に情報の取捨選択や、各話構成を行う。

 

■■■■ 第1話。

 

▼ サブタイトル。

 

謎解きは余談から。

 

 

 

▼ OP曲前。

 

OP曲前の定型。他の登場人物は知らない、過去の出来事。

 

第1話なので、OP曲前の定型は用いない。画像と効果音。登場人物の会話や、ストーリーは無い。

 

舞台となる公立中学校の校舎の外観。タイトルの「ガクテン」の文字が、画面いっぱいに大きく表示され、第7話のピコピコハンマーの音と共に、文字が消える。校舎の外観だけに戻る。

 

空に、幾何学的な図形から、日常音などのカオスな状態から、すっと、オープニング曲に変わる。

 

 

 

▼ Aパート。

 

大時計が放課後を指している。画面が引き、中学校の校舎の外観。敷地内の人は、放課後の行動。

 

屋上で、部活動として、UFOを呼ぶ儀式を行っている風景。玄関の前で、玄関のガラス壁を大鏡の代わりに、ダンス練習をしている風景。このような小ネタを設けても良いが、視聴者が混乱する懸念がある。

 

外観は、ドローンカメラのように移動する。窓越しに見た廊下には、ヤッ子と、音楽の先生が、歩いている。音楽室では、ハルがギターで遊んでいる。外観なので、この3人が誰なのか、説明はしない。

 

音楽室。

 

外観から、ドローンカメラのように、音楽室の中に入る。

 

ハル。ギターで遊んでいる。備品のクラシックギターを机上に置き、ハワイアンギターのように弾く。左手には乾電池を持っている。

 

乾電池の位置を変えながら弾くので、「ビュィーン、ビャオーゥン」など、面白い音が鳴る。

 

背景に人物紹介。「ハル」「早坂春弥(はやさか・はるや)」「中学1年生」。

 

キャラクターデザインによっては、中学生か高校生か、判別が難しいものもあるので、これにより、舞台が中学校であることを明示する。この後ミッツとステラの人物紹介でも、学年を表示することで、舞台が中学校であることを印象付ける。

 

放課後なので、音楽室には、ハルだけがいる。

 

ハル。1本の弦で、乾電池の位置を移動し、音高を変えたり、隣の弦と交互に高速で鳴らしたり。

 

不定音高で、「しゃべるバイオリン」のように、「謡い」を再現。

 

石焼き芋「♪いぃーしー、やーーーきぃ、いんもーーー」などの辻売り。

 

鉄道の、駅のアナウンス、車内アナウンス。

 

相撲の呼び出し「♪ひがーぁしいいい」

 

時々、弦の中央位置(12フレット目)に乾電池があると、音色が変わるのを面白がって確認する。クラシックギターなので、12フレット目はボディの端、ここからネックだけが飛び出す区切り。

 

この、音色が変わる謎を、ヤッ子に尋ね、倍音の話になる。当アニメでは、「知りたいから尋ねる」「知らないから勘違いしている」を発端にしている。

 

ハルは、弦の長さの半分ということに気付かず、クラシックギターの構造が原因なのかと推測している。電池の位置を移動しながら、弦の長さが半分の位置に来ると、ボディとネックが色分けされる。

 

ドローンカメラのように、音楽室の中から、場面が廊下に移動する。

 

ヤッ子と、音楽の先生が、並んで廊下を歩いている。何かの会話をしていても良い。

 

背景に人物紹介。「ヤッ子」「鍵宮靖子(かぎみや・やすこ)」「理科教師(専門は化学)」。

 

ヤッ子のいつもの服装は、白衣で、すらりとしたパンツ姿。

 

背景に人物紹介。「音楽の先生」。

 

音楽室から、ハルのギターの音が聞こえる。

 

ヤッ子と、音楽の先生。廊下で立ち止まり、音楽室の後ろの戸の窓から、中を覗く。

 

小柄な音楽の先生が、中を見ることができるように、窓が大きい。

 

音楽の先生「面白いことをしていますね」これは、当アニメの記念すべき、最初のセリフ。

 

なお、当アニメの最後のセリフは、ヤッ子の言葉が遮られて終わる。

 

ヤッ子「許可もとらずに、勝手に」

 

音楽の先生「面白いからいいでしょう」歩き始める。

 

ヤッ子。音楽の先生の後を追う。「ギターが痛みます」

 

音楽の先生「2人以上いたら、そのうちに悪ふざけが過ぎることもあるでしょう。でも、あの子は、試行錯誤しながら音を楽しんでいます」

 

ヤッ子「でも」

 

音楽の先生。立ち止まってヤッ子を見上げる。優しく諭すように。「鍵宮先生、音楽は、学校の科目の中で、唯一「楽しい」という文字が入っています」

 

音楽の先生。再び、歩き始める。「楽しみを邪魔するのは、無粋ですよ」

 

ステラ。学校の中で、迷子になっている。

 

背景に人物紹介。「ステラ」「星山空見(ほしやま・くみ)」「中学1年生」。

 

ステラ。ヤッ子と音楽の先生に話し掛ける。「あのぉ、すみませんが、吹奏楽部はどこですか? 音楽室だと思ったのですが」

 

ステラ。メルヘンの小物が、鞄に付けられている。

 

ヤッ子「吹奏楽部は、別館だろう。体育館を通って、その向こう側だ」

 

音楽室の入り口に貼り紙。「吹奏楽部は部室棟です」と、案内の大きな矢印。

 

ステラ「あ、体育館……って、えーっと。あ、本当だ、ここに貼り紙がありますね」

 

ステラ。心の声。「(吹奏楽部は、ぶしつれん……か)」背景に、「部室棟」と、フリガナの「ぶしつれん」にバツ印、「ぶしつとう」が正しいと添える。

 

ミッツ。別な方向から来て、音楽室の前の戸の窓から覗く。ハルがいるのが見える。

 

背景に人物紹介。「ミッツ」「蜜霧多岐(みつきり・たき)」「中学2年生」。

 

人物紹介が連続しているので、ここで少し遊びを入れても良い。人物紹介で、「謎の少女」と出し、ミッツが二頭身で睨むと、「謎の美少女」に変わる。その後、正しい人物紹介になる。

 

ミッツ。ヤッ子と目が合い、笑顔で軽く会釈。

 

ミッツ。ステラを見て、心の声。「(かわいい子だな。1年生かな?)」

 

ミッツ。音楽室の中に入る。「ハル、何やってんのぉ?」

 

ミッツの胸ポケットには、ボールペンがある。この場面でボールペンが使われるため。ボールペンは、尻をノックすると、ペン先が出たり引っ込んだりするタイプ。

 

ミッツ。音楽室の中に入るので、廊下からは退場。

 

音楽の先生。ステラに向かって。「僕が案内しましょう」

 

ステラ「ありがとうございます」

 

音楽の先生にとっては、これまでとは逆方向に歩き始める。

 

ステラ。音楽の先生の行き先を変えたことで、申し訳ない気持ち。

 

音楽の先生「転入生ですか?」

 

ステラ「はい、今日からお世話になる、星山空見(ほしやま・くみ)です」

 

音楽の先生。ステラと並んで歩き去りながら。「音楽が、お好きなんですね」

 

ステラ「はい、楽器が初めてなので、何を担当するのか、わかりませんが」

 

音楽の先生「好きなことがあるのは、幸せですね」

 

ステラ。申し訳なさそうな表情だったが、明るい笑顔になって。「はい!」

 

ヤッ子。ステラと、音楽の先生を見送る。

 

ヤッ子。音楽室の中を覗く。

 

音楽室。

 

ミッツ。片足ケンケンのように、体を傾けながら、ハルに近付く。

 

ミッツ「ねーえ、なーにをしているの?」

 

ハル「ああ、ミッツか。ちょっと、音楽に目覚めてな」

 

ハル。様々な演奏を楽しんでいる。

 

ミッツ「ちゃんと弾かないのに、鳴らして遊んでるだけじゃ、音楽じゃないでしょ」

 

ハル「音楽は、音で楽しめばいいんだ。ほーら、こんな弾き方でも、楽しければいいんだ」ギターを乱暴に扱う。

 

ヤッ子。ドアを開けて入って来る。「こらっ! 乱暴にしない」

 

ハルの、驚いている顔、申し訳なさそうな顔に被せて、ヤッ子のセリフ。

 

ヤッ子「ところで早坂君、勝手にギターを使っているようだが、音楽の先生に許可はとったのか?」

 

ハル「いいえ」

 

ヤッ子「勝手に借りて、もしも大きな傷が付いたり、壊したら」

 

ハル「でもこれ、音楽の先生の私物じゃない」

 

ヤッ子「個人の所有ではなくても、管理している。教室で、君が使っている机も、個人所有じゃないだろう」

 

ハル「そうだけど」

 

ヤッ子「もし、教室の君の机の上に、ゴキブリの死骸が」

 

ハル「ゴキブリの死骸が」想像する。

 

ヤッ子「並べられて」

 

ハル。ズラーっと並んでいるのを想像する。

 

ヤッ子「並べられて「アホ」と書かれていたら?」

 

ハル。想像する。「いやだぁー!」

 

ヤッ子「しかも、死骸だと思っていたら、うじゃうじゃと動き始めたら?」

 

ここの表現を柔らかくするために、セリフの「ゴキブリ」を電子音[ピー]にし、ゴキブリの姿を、アルファベットの「G」にする方法も良い。「G」にする場合、特徴的な触角で、ゴキブリだとわかるようにする。

 

ヤッ子「楽器には、適した扱い方がある」

 

ハル「ごめんなさい」

 

ミッツ。『幻想即興曲』(ショパン)を弾こうとする。

 

ハル。ミッツの最初の1音を聞いたところで大声。「ショパン! 幻想!」

 

ミッツ「弾こうとしているんだから、邪魔しないの! いつまで経っても、ガキなんだから」

 

ハル「たった1歳だろう」

 

ハルとミッツの2人が画面に入る程度の遠景で、2人に指し棒の字幕。画面左側のミッツに「ミッツ・中学2年生」、画面右側のハルに「ハル・中学1年生」と指し、「従姉弟」と、フリガナの「いとこ」を添える。

 

これにより、登場人物の印象を深める。ハルとミッツの関係性の紹介。ミッツがハルを「ガキ」とし、ミッツが年上と明示。アニメでは、中学校と高校の判別が、わかりにくいこともあるので、中学校であることの明示にもなる。

 

ヤッ子「ところで、何を言い合っていたんだ?」

 

ハル「せっかく楽しんでいたのに、ミッツが「そんなの音楽じゃない」って言うんだ」

 

ヤッ子「それは定義の問題だな。いわゆる西洋音楽かどうかと言えば、その鳴らし方は西洋音楽じゃない」

 

ミッツ「ほーら、音楽とは言わないでしょ」

 

ヤッ子「西洋音楽ではないというだけだ。世界中には、西洋音楽以外にも、様々な音楽はある」

 

ミッツ「でも、変な民族音楽みたい」

 

ヤッ子「「変な」というのは、気を付けたいな」

 

ハル「欧米のファッションを、奇異に感じる国もあるって聞いた」

 

ヤッ子「日本国内でも、山や坂の町や、海に面して舟に馴染みのある町など、地域によってリズム感が違うらしい。これは、地域の音楽観にも関係する」

 

ヤッ子「ついでに言えば、このリズム感のために、靴下の、踵(かかと)か、爪先(つまさき)か、どっちが先に穴が開くかも違うそうだ」

 

ヤッ子「糸井重里は「あらゆる音楽は民族音楽である」と言ったぞ。いわゆる西洋音楽も、私達が慣れ親しんでいる民族音楽とも言える。自分が慣れ親しんでいる文化だけが、世界の標準と思うのは、おこがましいじゃないか」

 

ヤッ子「西洋音楽の中で、早坂君のような演奏を取り入れることがあっても、主役ではない。まあ、これまでの西洋音楽に無い手法が、どの程度なら西洋音楽ではなくなるかは、定義の問題だから、誰かが勝手に決めるんだろうな」

 

ヤッ子「早坂君は、ギターを机に置いた「ハワイアンギター」という西洋音楽の手法だが、さっき私は、西洋音楽ではないと言った。しかし、西洋音楽の何の定義から外れているかは、よくわからない」

 

ミッツ「じゃあ、なぜ「西洋音楽ではない」って、言ったんですか?」

 

ヤッ子「本当は、定義や境界線は、ひとつではなく、曖昧だというのが、目的だ。音楽の定義の話で、言い合いをしたのが、ギターを乱暴に扱った原因だからな」

 

ヤッ子「早坂君と蜜霧君の、どちらの定義が正しいかと、言い合いをしていた。「どちらかだけ」ではなく「どちらも」というのが、私の目的だったのだ」

 

ヤッ子「そこで、方便として「音楽の定義」と「西洋音楽の定義」の、ふたつの境界線があると話したんだ。とはいえ、明確な境界線ではなく、ぼんやりしたものだがな」

 

ミッツ「方便ですか」背景に「方便」と、そのフリガナと、意味の「難しい話をする前の、仮の教え」を添える。

 

ハル「晴れと曇りの境界みたいですね」

 

ミッツ「なあに?」

 

ハル「空に雲が無ければ快晴、空の全部に雲があれば曇り、じゃあ、空の何パーセントが雲で隠れていれば、晴れから曇りになるのか」

 

ミッツ「半分じゃないの? だって、完全な晴れ……」

 

ハル。ミッツの言葉にかぶせるように。「快晴な」

 

ミッツ「そう、快晴、100パーセントの晴れと、100パーセントの曇りの中間、50パーセントが、区切り」

 

ここで、全天球カメラの画像を使うのも良い。画像は円形で、円の中心が天頂。円周が地平線で、円周の地面から、円の中心の天頂に向かい、山や鉄塔、建築物が建っている。

 

全天球カメラの画像を3つ用意し、両端は快晴と完全な曇り。中央の画像で、雲が増えたり減ったりし、半分になって止まり、文字の「ミッツの推測」を表示する。

 

ミッツ「だって、6割も7割も雲で隠れていたら、「曇り空で、晴れ間がのぞく」って言うでしょ。だから、境目は半分に決まってる」

 

ハル「それがな、気象庁の基準では、8割までが晴れで、9割から曇りなんだ」

 

ミッツ「8割までが晴れなんて、おかしい。だってさ、8割まで雲があるのに、「今日は晴れているね」なんて言ったら、「曇りだろう」って返される」

 

ヤッ子「良い例を出してくれたな。早坂君や、蜜霧君以外にも、それぞれの理由をもって、それぞれの定義を言うだろう」

 

ヤッ子「ところで、君達は学生かい?」

 

ハル「もちろん」

 

ミッツ「中学生です」

 

ヤッ子「ところが、「学生」と呼ぶのは大学生だ。中学生と高校生は「生徒」で、小学生は「児童」だ」

 

ハル「そうだったんですか?」

 

ヤッ子「これは、文部科学省の基準だな。中学校では「生徒会」だが、小学校では「児童会」だっただろう?」

 

ミッツ「確かに、そうですね」

 

ヤッ子「これとは別に、厚生労働省の基準では、18歳未満を児童としている」

 

ハル「定義なのに、ひとつじゃない」

 

ヤッ子「ついでに言えば、幼稚園は文部科学省で、保育所は厚生労働省だ」

 

ミッツ「え? 名前が違うだけで、どっちも同じだと思っていました」

 

ハル「なぜ、2種類あるのか、不思議だなとは思っていました」

 

ヤッ子「その違いは、幼稚園は小学校の前に、早いうちに学校に通うのに似ている。一方、保育所は、保育に欠ける子供のために、家庭の代わりをするのだ」

 

ハル「保育に、「欠ける」って?」

 

ヤッ子「何らかの事情から、子供の世話が難しいということだ」

 

ハル「ああ、びっくりした。まともに子育てされていないのかと思った」

 

ヤッ子「「まともに子育て」とは、誤解だな」

 

ミッツ。特に興味の無い顔をしている。

 

ヤッ子「それから、「保育園」は、正しくは「保育所」と呼ぶ」

 

ハル「あれ? うちの近くには、「保育園」がありますよ」

 

ヤッ子「固有名詞として、個別の保育所で「保育園」と命名することは、ある」

 

ヤッ子。ハルの、興味を持っている表情を見て、心の声。「(早坂君は、こういった余談が好きなんだな)」

 

ハル「ヤッ子先生。どうしてそんなに詳しいんですか?」

 

ヤッ子「私は、せっかくピアノを弾けるという利点から、保育士か、幼稚園教諭という進路も、視野に入れていた」

 

ミッツ「やっぱり、進路は広く考えていた方がいいですよね」

 

ハル「でも、中学校の先生になったんですね」

 

ヤッ子「そう。今から思えば、どういう訳だか、こうなったな」または「幼児教育に、自信が無かった」

 

ヤッ子「ところで、幼稚園の先生も、中学校の先生も、職業の名前としては、「教員」の中の「教諭」、「教え諭す」なんだ」

 

ハル「あ、そういうことだったんだ」

 

ミッツ。ハルを一瞥する。

 

ハル「テレビで昔の小学校の校内を見たら、教室のドアの上の札に、「マルマル教諭」って書いてあったんだ」背景に、校内風景。「○年○組」の札には、2行目に「○○教諭」と書かれている。

 

ヤッ子「そんな名前の職業に、私がなるとは、身が引き締まる思いだ」

 

ハル「「保育所」と「保育園」とか、「教諭」と「先生」とか、定義は定義としてあるけど、それとは別な名前を付けることは、あるんですね」

 

ヤッ子「定義は、誰かが勝手に作って、でも、それを知らなくても、困らないのであれば、定義を強要することもないだろうし、「お前の言ってることは、デタラメだ」と非難する必要も無い」

 

ヤッ子「単なる言葉の認識、用語の定義の違いだからな、相手の言葉の主旨を汲み取ろう」

 

ミッツ「それでも定義なのかな?」

 

ヤッ子「定義だと思って話す人はいる。自分のいるコミュニティで、当たり前に通じているから、てっきり世界標準、少なくとも日本標準だと勘違いすることはある」

 

ここで、アニメとして長くならなければ、以下の話を挿入しても良い。

 

映画『華麗なるヒコーキ野郎』。「自在レンチを貸してくれないか」「モンキースパナのことか?」「ああ、こっちでは、そう呼ぶのか」

 

工事で使う「一輪車」「ネコ」「ネコ車」。直角に曲がった物差し「曲尺(かねじゃく)」「さしがね」。排水口の「ドレン(ドレイン)」「ピーコック」。

 

台風は、沖縄に「上陸」しない。「上陸」という呼称は、北海道、本州、四国、九州のみに用いる。沖縄には「通過」の呼称をする。

 

ものによっては、よく似た違うもので、その違いを表すために単語が別々にあったりする。「プラスドライバー」と「マイナスドライバー」など。

 

ハル「方言もありますし。あ、「自分のいるコミュニティ」って「自分のいる方言」と同じか」

 

ミッツ「違うでしょ」

 

ハル「そりゃ、違うけど、主旨が同じってこと」

 

ヤッ子「そうだぞ。「蚊に刺される」「蚊に食われる」「蚊に咬まれる」。あれこれあるが、これまで自分が使っていた言い方が方言だと知ったのはいいが、慣れ親しんでいない言い方には、違和感が残ったりする」

 

ヤッ子の背景に、出身地が様々な、複数の男の思い出。もう、過去の男で、惚れっぽいヤッ子が片想いしただけなので、顔も服装もうろ覚え。それぞれ、「蚊に刺される」「蚊に食われる」「蚊に咬まれる」など、様々な言い方。

 

ミッツ「言い方の違いを指して、「蚊には歯が無いから、咬むことはできない。言うことがデタラメ」と非難することじゃないんですね」

 

ヤッ子「例えば、アメリカの寿司は、日本では見たことも無い形のものも、あるらしい。それを「寿司」と呼ぶか、誰かが定義するんだろうな」

 

ハル「日本の寿司と区別するために「アメリカ寿司」って呼ばれたりして」

 

ミッツ「そんなに名前が増えるから、覚えるのも大変なんだよ」

 

ヤッ子「学校の授業時間も限られているからな」

 

ミッツ「ちょっと名前が違うだけで、「それ違う」なんて言われるし」

 

ハル「「アメリカ寿司」と似てるけど、「広島風お好み焼き」なんて言うと、不機嫌になるらしいですね」

 

ヤッ子「広島かあー」少し静かになる。「広島県の男は……いいなあ」

 

ミッツ。心の声。「(ヤッ子先生って、どんな恋愛遍歴をして来たんだろう)」

 

ハル「寿司とは逆に、日本の菓子パンに違和感がある人もいるらしいですね」

 

ミッツ「そうだね。音楽に限らず、食べ物や風習も、地元ならではってありますね」

 

ハル「そもそも、「あんなもの、食べ物じゃない」ってことは、文化によって大きく異なりますよね」

 

ヤッ子「それを、昔の人は「口に合わない」とか、ご馳走する側は「お口に合えば良いのですが」って言ったな。互いに、相手の文化を尊重する言い回しだ」

 

ヤッ子「正しさを決められないことも、あるってことだ」

 

ハル「ミッツ。栗と、トマトと、イチゴと、リンゴ。それぞれ、果物か野菜か、どっちか知ってるか?」

 

ミッツ「それは知ってる。木に生るのが(なるのが。実るのが)果物で、草に実るのが野菜。クイズ番組で出題されそうだけど、知っていることを自慢する以外に、実益も無いし、実害も無い」

 

ハル「やっぱり。「ただ分類しただけ」としか、思っていないんだ」

 

ハル。ヤッ子に向かって。「ヤッ子先生は、関税のことを、知ってますよね」

 

ミッツ「関税? 何かの税金?」

 

ヤッ子「関税とは、ゆーしゅーつーにゅうに掛かる税金だ」背景に「輸出入」の、漢字とフリガナを表示する。

 

ミッツ。面白がる。「ゆーちゅーちゅー」

 

ハル「ミッツの方が、間違ってる。「輸出入、輸出入、輸出入!」だろ」

 

ハル「税金が違うから、どっちに分類するのかで、裁判もあったらしい。でも、そもそも、そんな分類をしなければ、「ただ、分類しただけ」なんてことにも、ならなかっただろうに」

 

ヤッ子「さすが、余談が好きな、早坂君だな。一般に、知識の取得は「広く、浅く」と「狭く、深く」のどちらかと言われる。広い範囲で手の平で押すのと、狭い範囲の指先で押すことの比較だ」

 

ヤッ子「早坂君は、指先よりも、もっと狭い範囲として、竹串を、あちこちに刺している。その、穴と穴の間は、「未確認であることを認識した推測」だから、勉強も上手くいくだろう」

 

ハルとミッツ。褒められているのか、どうか、ちょっとわからず、茫然とする。

 

ハル「ヤッ子先生。ギターで、不思議なんですが」

 

ヤッ子「どうした」

 

ハル「ギターのここの区切りの位置に、電池があると、音色(ねいろ)が違うんです。ホラ」鳴らしてみる。指盤は、ボディとネックに亘ってあるが、ボディとネックの境目で、音色が変わる。

 

ハル「ギターの本体から外れた範囲と、本体の範囲で、何か違いがあるんですか?」ギターの「ボディ(本体)」「ネック」の部分が色変わりし、指し棒で名称を表示する。

 

ヤッ子「それは、ギターの構造ではなく、弦の長さの由来する。その場所は、弦の長さの、ちょうど半分の位置だ」

 

ハル「半分の位置ですか。目の錯覚があるのか、よくわかりませんが、モノサシを使えば、ちょうど半分なんですね」

 

ヤッ子「2分の1の場所で、音色が変わるのは、倍音だな」背景に「倍音」と表示。

 

ミッツ「あ、知ってる、倍音!」

 

ハル「「バイオン!」って、アニメのタイトルか?」背景の「倍音」に、「ばいおん」を添える。

 

ヤッ子「早坂君の興味に寄り添うと、ピタゴラスが発見した、うーん、音の幾何学かな?」

 

ハル「音楽が幾何学?」

 





次回は …… フレットの幅とゴム紐。倍音の2倍の2倍の……は、同じ名前。自宅で倍音を鳴らして遊ぶ方法。響き具合のグラデーションを分類。白鍵と黒鍵の並び方が、同じパターンが、オクターブの繰り返し。



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