ガクテン♪ソフト版   作:不定音高ふたつ

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【前書き】
なぜ記号だらけの楽譜を見て、音にできるのか?
初心者向け楽譜の謎解きエンターテインメント。

● 登場人物(主要な、ハル、ミッツ、ステラ、ショージ、ヤッ子の5人)
♪ ハル:早坂春弥(はやさか・はるや)。中学1年生。男。主人公。ミッツの従弟。手品と謎解きが好き。声変わり前。

♪ ミッツ:蜜霧多岐(みつきり・たき)。中学2年生。女。ハルの従姉。活動的。幼少の頃からピアノを習う。口の表情が豊かで、口が顔の輪郭からはみ出すことが多い。

♪ ステラ:星山空見(ほしやま・くみ)。中学1年生。女。メルヘンが好き。転入して吹奏楽部に入部し、トロンボーン担当になる。老若男女の誰からも、一見して好かれる、無邪気な可愛らしさ。

♪ ショージ:東海林翔児(しょうじ・しょうじ)。中学2年生。男。吹奏楽部でクラリネット担当。恰幅は良いが、デブではない。会話の始まりは紳士っぽいが、話しているうちに、下品な饒舌になる。

この4人の背の高さは、高い方からショージ、ミッツ、ステラ、ハルの順。小学生の高学年から、中学1年生までは、女子の方が平均身長が高いため。

♪ ヤッ子:鍵宮靖子(かぎみや・やすこ)。理科教師(専門は化学)。年齢は30代前半。女。白衣で、すらりとした黒のパンツ姿。プライベートではジャズピアニスト。姉のことが大きく影響。



この作品は、web小説閲覧サイト「小説を読もう」にも投稿しています。

楽譜の読み方「楽典」を、アニメ脚本っぽい形で説明します。
「再放送や、Blu-rayの、長期的な繰り返し需要の視点から、web小説よりも、アニメで説明したい」という気持ちが強いです。




第12話 計算しないが分数だ。拍子がおかしい。
シメジ婆さんの訃報のハガキに書いてあるのは。「ベース」と「ルート」。サクランボのような音符。アッパー・ストラクチャ。コード表記の工夫と、表記のこだわり。音のモアレ模様で、調律とテルミン。


├ ●●第12話 Aパート ( 1 / 4 ) シメジ婆さんの訃報のハガキに書いてあるのは。「ベース」と「ルート」。サクランボのような音符。アッパー・ストラクチャ。コード表記の工夫と、表記のこだわり。音のモアレ模様で、調律とテルミン。

 

■■■■ 第12話。

 

▼ サブタイトル。

 

計算しないが分数だ。

 

拍子がおかしい。

 

この中から1つだけ採用する。

 

 

 

▼ OP曲前。

 

OP曲前の定型。他の登場人物は知らない、過去の出来事。ここでは、定型の「他の登場人物は知らない」ではない。

 

吹奏楽の先生の新婚時代。妻と共に喪服で、道を歩いている。

 

見上げた先に、「シメジ助産院」の看板。そこは、葬儀会場。看板の余白に、小さく「香り松茸 味シメジ」と書いてある。

 

シメジ婆さんの遺影は、光沢があり、顔ははっきり見えない。

 

祭壇の前では、参列者が順に、一言を言う。

 

子供「自転車に乗れるようになりました。ほめてください」一礼。

 

青年「浪人もしましたが、大学に受かりました。ほめてください」一礼。

 

4人程度の、小学生の女の子。小声で「せーの」と息を合わせて。「仲良しです。ほめてください」一礼。

 

吹奏楽の先生。順番待ち。手に持っている、訃報の葉書を、改めて見る。そこには、ひらがなで「ほめてほしいことを おしえてください」とある。

 

吹奏楽の先生「僕は、こんなに素晴らしい人を、妻にできました。ほめてください」

 

妻「夫が、このような素敵な人になってくれたのは、シメジ婆さんのおかげです。ありがとうございます」

 

夫婦で一礼。

 

参列者には、奇声を発し、体を動かし続ける中年もいる。その人の手首を、高齢者がしっかり握っている。

 

廊下には、貼り紙「授乳室 →」がある。哺乳瓶と赤ちゃんの絵、または、授乳中の絵。絵は、簡略化は程々のピクトグラム(子供が見てもわかる)。

 

広くて長い廊下に、会議机(長テーブル)があり、その上には、子供達が描いたと思われる、似顔絵などが、揃えられずに置かれている。これにより、今日の参列者が置いていることを表す。

 

その紙の1枚には、子供が描いた似顔絵に添えて、大人の文字で「次にシメジ婆さんに会う時に、おみやげをたくさん渡せるように、褒めて欲しいことを増やしています」と書かれている。

 

廊下が広いので、車椅子でも通れる。

 

シメジ婆さんのことを話す時、主に「シメジ婆さんが言ってた」という、人生訓が多かった。しかし、シメジ婆さんの魅力は、「褒めて欲しいことを教えて」や、次に来る口実に、食べ物の器の返却もある。

 

 

 

▽ 場面変更 ● ── ●

 

現在。

 

吹奏楽の先生の部屋。

 

本棚の上には、2つの額がある、1つは結婚式の写真。もう1つは、子供の頃に描いたシメジ婆さんの絵。絵には下手な字で「シメジばあさん」「すき」と書いてある。

 

額の右下のスペースには、シメジ婆さんの顔写真。光沢があり、シメジ婆さんの顔は、はっきり見えない。

 

額の手前には、タロットカードに、黒いリボンが巻かれている。

 

 

 

▼ Aパート。

 

第4話と第5話と第12話では、曲の演奏を行う。他の話は、楽典の説明用のサンプル演奏はするが、曲の演奏は行わない。

 

放課後。理科室。

 

ハルがヤッ子に、ギターを聞かせている。自宅から持参したギター。

 

まだ下手だが、申し訳程度に歌も添えている。コードが変わる時には少し間が開く。右手はほとんど単調だが、楽譜に従うように注意している。

 

ジャンルは、Official髭男dismや、amazarashiのようなもの。または、ハルが父親から教わった「ギターの入門に適している」の理由から、1970年代のフォークソングでも良い。

 

フォークソングは、第10話で、「父が、中学生の頃に先輩からもらった」として、ポケットから出した楽譜のコピーで、歌とギターの縦が揃っていない話がある。

 

ハル。楽譜集の書籍を机上で開き、見ながら演奏している。ヤッ子はハルの後ろから、斜めに楽譜を見ている。

 

ハル「どう? 弾けてる?」

 

ヤッ子「演奏が拙いのは仕方ないが、よく楽譜を読めているな」

 

ハル「まあ、芸術としては楽譜に逆らってもいいけれど、楽譜がちゃんと読めてるか確認してほしかったんです」

 

ヤッ子「うん。残念ながら、小学校では楽譜が読めているかの確認に、「演奏できているか」が用いられているようだが、演奏技術と読譜とは、別物だ」背景に「読譜=楽譜を読むこと」を表示。

 

ハル「そうですよね」

 

ヤッ子「読譜が不十分でも、試行錯誤で楽器演奏ができれば、それで読譜できたと判断するしかないのも実情だ。学校は忙しいからな」

 

ハル「楽譜の、音符だけでなく、コードもちゃんとできているでしょ」

 

ヤッ子「ベース音にも気を付けているんだな」

 

ハル「父に教わりました。ベース音に何が使われているか。根音なら基本形和音、根音以外の和音構成音なら転回形和音」

 

ヤッ子「ふむふむ」

 

ハル「和音構成音以外をベース音に使うこともあれば、ベースがメロディっぽいと、コードネームに表現しないこともある」

 

ヤッ子「ふむふむ」

 

ハル「ベース音が根音なら、コードネームは普通の書き方。ベース音が根音以外なら、コードは分数和音になる」

 

ヤッ子「ふむふむ」

 

ハル「まあ、こんな感じです」

 

ヤッ子「素晴らしい。ここまで説明できれば、申し分無い」

 

ハル「ありがとうございます」

 

ショージ。乱入する。「♪あーーぁりがとう、ございますぅーー」

 

ヤッ子「どうしたんだ、今日は先輩はいないのか?」

 

ショージ「トロンボーン先輩は、卒業しました」

 

ハル「?」

 

ミッツとステラ。手を繋いで、恐る恐る、ミッツが先に入って来る。「あのお、お邪魔して良いでしょうか?」

 

ヤッ子「おお、蜜霧君が理科室に来るとは、珍しいな」

 

ハル「ミッツ、吹奏楽のトロンボーン先輩が卒業だって」

 

ミッツ「嘘! なになに、卒業って?」

 

ハル「ショージさんが」

 

ショージ「あ、卒業っていうか」

 

ヤッ子「わかるように言ってくれ」

 

ショージ「いや、何か、冗談を言うべき雰囲気かなと思って、何か、口から出まかせを言いました、済みません」首だけペコペコ。

 

ミッツ。驚いてショージを見る。心の声。「(ショージが、謝っている)」

 

お気付きでしょうか、ステラがトロンボーン先輩に失恋した後は、トロンボーン先輩は登場していません。

 

ショージ「で、ギターがあるってことは?」

 

ヤッ子「そう、歌で愛を語り合っていたんだ」ハルの髪の毛を、鷲掴みでゴシゴシする。

 

ショージ「それで、愛は伝わりましたか?」

 

ヤッ子「演奏は下手だが、楽しさは、しっかり受け取れたぞ」

 

ショージ「まあ、ハルの場合、ギターは演奏用ではなく、楽譜の謎解きができたかっていう、確認だもんな。思った通りの音が出たら、楽しいだろう?」

 

ハル「楽しいです。暗号が解けたというか、クロスワードパズルが完成したとか、ルーブゴールドバーグ・マシン(Rube Goldberg machine)が最後まで行ったというか」背景に、それぞれが完成した様子を表示。

 

ショージが、ハルに向かってガッツポーズ。ハルも応える。

 

ミッツ。再び驚いてショージを見る。心の声。「(ショージが、相手の立場を思い遣っている)」

 

ヤッ子。ショージの髪の毛を、鷲掴みでゴシゴシする。「早坂君が楽しいと、東海林君も楽しいんだよな」

 

ショージ「そうですよ」本気で嬉しがっている。

 

ヤッ子「周囲から好かれることを目指すのも良いし、周囲の成功を共に喜ぶのもいいな」

 

ステラ。心の声。「(第6話の、長調と短調の話の時にあった、恋愛対象のことかな?)」

 

ヤッ子「ところで。東海林君は、コードがわかるか?」

 

ショージ「ちょっとだけですが」

 

ヤッ子「ちょっとでも、大したもんだ」

 

ショージ「あれ? この斜めの線は?」

 

ハル「これはベース音。ベースが、根音以外を鳴らす時、この書き方をします」

 

ショージ「根音以外? 根音のことを、英語でベース音って言うんだろ? 違ったっけ?」

 

ハル「え? 根音はコードネームの最初に書かれている単音の名前、ベース音は低音の指定」

 

ステラ。ハルとショージを交互に見る。

 

ヤッ子「この話では、早坂君の方が正しい。おそらく、東海林君の読んだ資料が誤りか、資料の文章の一部だけが印象に残ったのだろう」

 

ステラ。憧れの表情でハルを見る。「早坂さんは、きちんと勉強なさっているんですね」

 

ヤッ子「それもあるが、東海林君がデタラメなのではないぞ。一時的な勘違いは、勉強に付きものだ」

 

ヤッ子「東海林君を褒めるべきなのは、自分の知識が誤りかも知れないという意識だ。時には、自分が正しいから、相手が誤りだと決めて話す人もいるからな」

 

ヤッ子「根音は、英語でルート音だ。数学で、平方根のことを「ルート」と言うだろう」背景に「平方根」と、そのフリガナ。「根音」と、そのフリガナ。両方の「根」に差し棒で「これがルート」と指す。

 

ヤッ子「最低音は英語でベース音だ」

 

ショージ「ベースって、基本という意味だから、根音でしょう?」

 

ヤッ子「これもややこしいから、確認しておこう。「ソプラノ」「アルト」「テノール」「バス」って聞いたことが無いかな?」

 

ミッツ「あります。合唱の、パート分けですね」

 

ヤッ子「その通り。低音を担当する「バス」は、楽器のベースギターの「ベース」と同じだ」

 

ヤッ子。黒板に「ベース」「bass」「低音」と、「ベース」「base」「基礎」を書く。

 

ハル「ややこしい!」

 

ヤッ子「だから、ベース音は「低い音(bass)」の意味だ。「基礎の音(base)」「根音(root)」ではないぞ」

 

ショージ「でも、ベース音は、斜め線じゃなく、「on」って書きませんか?」

 

ショージ。黒板に表記の違いの「D/A」と「D on A」を上下に並べる。

 

ヤッ子「どちらの表記もある。更に、こんな書き方もあるぞ」黒板に「D Bass A」と書く。

 

ヤッ子「斜め線の書き方は、ちょっとした弊害もある」

 

ヤッ子。黒板に、上段の歌と、下段のギター、2段の楽譜。理科室なので、楽譜は略した書き方。「4/4」拍子。歌はソの付点2分音符と、4分休符。ギターは、前半の2拍はC、後半の2拍はG。コードネームは上段の上に。

 

ヤッ子「この場合で、コードは、2拍はC、次の2拍がGだとわかる。しかし、もしもギターの楽譜が無くて、歌とコードだけの楽譜なら、どこからGに変わるのか、わからない」黒板の、ギターの分を隠す。

 

ハル「真ん中に書かれていたら、何となく半分だって、わかりますよね」

 

ヤッ子「ところが、こう書く楽譜もある」Gの左側にスラッシュを加え、「/G」とする。「これで、小節の真ん中だと表す場合もある」

 

ショージ「そんなの、見たことが無い」

 

ヤッ子「ところが、実在するんだ」

 

ハル「もし、小節の横幅が狭かったら……」

 

ステラ「小節の半分でコードが変わるのか、ベースの意味なのか、区別ができない……」

 

ヤッ子。別途の楽譜で、小節の幅が狭いので、「C」「/G」が近付き、「C/G」のように書く。

 

ヤッ子「そうなんだ、区別できないんだ」

 

ミッツ「この、斜めの線は、分数の表記を借りているんですよね。だったら、上下に並べたらどうです?」背景に、分数の表現あれこれ。時速の「40km/h」、印刷物のページ「現在ページ番号/総ページ数」、回転数の「3000rpm」なども。

 

ヤッ子「その通り、良いアイディアだ。「分数和音」といって、上下に書かれているものも実在する」

 

ヤッ子。黒板に上下の分数の表記も書き加える。これで、黒板には「D on A」「D Bass A」「D/A」「D/Aを上下の分数の形」の4種類が書かれた状態になる。

 

ヤッ子「上下に書けるなら書いているが、昔の活字の時代、写植の時代、歌詞の上にコードネームを添えるものなどなど、面倒さや、機械の制約や都合などで、様々に表現方法が工夫されて来た」

 

背景に、コードネーム付きの歌詞など、表記あれこれ。

 

ハル「ヤッ子先生、これって、間違いですか?」楽譜集の、別な曲を開く。「G/Am」とある。「これ、ベース音がAmっておかしいですよね。父が言っていたのですが、ベース音は単音ですから」

 

ヤッ子「ああ、これは「アッパー・ストラクチャ」だな」

 

ヤッ子。黒板に、手書きの五線で、ト音記号、玉の積み上げ「ド、ミ、ソ、シ、レ、ファ、ラ」を書く。下の3つに「三和音」、上の3つに「テンション」と添える。

 

ヤッ子「上の3つか4つが、テンションだ。下から4番目は、人によって、テンションと呼ぶか呼ばないかが変わる」

 

ヤッ子「そして、これらの玉のそれぞれに、♯や♭を付けるが」さっきの楽譜の玉を「ド、ミ♭、ソ、シ♭、レ、ファ、ラ」にする。

 

ヤッ子「うーん、これをどうやって、コードネームで表現するか……」わざとらしく、親指で額の端を掻き、悩んだ表現。

 

ハル「だから、数字の前に、♭とか書くんでしょ」背景に、「EM7♭13」など、いくつか思い描く。

 

ここで、「M7」の別な書き方「maj7」を紹介をしても良い。

 

ヤッ子「その場合、すぐに読み解くのが面倒だ。そこで考えられたのが、テンション部分だけを独立したコードのように書くのだ」

 

ヤッ子「これを、「Cm7」と、その上に「Dm」が乗っていると考えると、こう表現できる」黒板に、上下の分数の形、分母に「Cm7」、分子に「Dm」と書く。

 

ヤッ子「または、「Cm」の上に「B♭M7」が乗っているなら、こう表現できる」黒板に、分母に「Cm」、分子に「B♭M7」と書く。

 

ステラ「どっちでもいいんですか?」

 

ヤッ子「どっちの表現もあるので、どっちが正しいということは言えない」

 

ハル「また、これだ。ヤッ子先生はいつも、どっちも正しいと言いますね」

 

ヤッ子「そうだな。うんざりするが、みんながそれぞれに工夫しているので、否定はしないように」

 

ショージ「あれ? そしたら、「D/A」なら……」背景に、上下の分数の形。「……「A」はベース音か、コードなのか、区別できない」

 

ハル「長和音、メジャーコードは、音名の後に何も付けないから、混乱の元になるんですね」背景に、4種類のコードネーム。「長和音」「メジャーコード」と、漢字とカタカナを併記。

 

ヤッ子「そうなんだ。ベースを表すのか、アッパー・ストラクチャなのかの区別のために、この書き方の区別を使うこともある」黒板の「D on A」と「D Bass A」を指す。

 

ショージ「そうか、「D on A」ならアッパー・ストラクチャの意味ですね」

 

ヤッ子「しかし、ベース音の意味で「D on A」と書いているものもある」

 

ハル、ミッツ、ステラ、ショージ。みんな、顎が力無く落ち、うんざりの表情。顎は角ばっている。「またかー」

 

ヤッ子「これら、コードの表記方法は、こだわりを以って「これが正しいに決まっている。なぜなら、あの表記はあんな欠点がある」と言い張る人もいるから、巻き込まれると厄介だぞ」

 

ハル、ミッツ、ステラ、ショージ。さっきの表情から、顎が円く長く、『叫び』(ムンク)のような顔。腕はだらりと垂れ下がっている。「まじかー」

 

ヤッ子「楽譜の表現の正しさ、楽譜を読む正しさもあるが、現代は、1つの楽譜だけが資料という時代でもない。曲にもよるが、曲の資料となる媒体はあれこれだろう」

 

ヤッ子「そもそも楽譜は、実際の演奏や頭の中の演奏を、頑張って紙に表現したものだ。コードネームは、頑張って文字だけにしたものだ」

 

ヤッ子「伝達手段だから正しさは大切だが、限界があることと、限界があるから表現を工夫していることは、留意しておきたいな」

 

 

 

▽ 場面変更 ● ── ●

 

校内のどこかで、雑談。

 

教室。

 

男子生徒「さくらんぼって、何だ?」

 

女子生徒「あんたのことよ、チェリー君」

 

男子生徒「そうじゃなく、こんな、さくらんぼのような音符があったんだ」棒が下向きの「ド、ミ、ソ」の3つの玉が、さくらんぼのようになっている。「ミ」にアクセントが付いている。

 

女子生徒。じーっと見る。「これって、普通はこう書くんじゃないの?」簡単な楽譜。「ド、ソ」の棒が下向き。「ミ」の棒だけ上向きで、アクセントが付いている。

 

男子生徒。言われて当たり前と気付いたように「ぁ、あ。それもそーだね」

 

女子生徒「こんな楽譜もある」同じ高さの玉が2つ、さくらんぼの形。1つはナチュラル、1つは♯。

 

女子生徒「ファが2つあって、1つはナチュラル、1つは♯」

 

女子生徒「これ、別な資料では「ミ」と「ファ♯」だから」簡単な楽譜を書く。

 

女子生徒「これも、棒を上向きと下向きの書き方にもできるし、ファのナチュラルの代わりに、ミの♯としても同じ」

 

男子生徒「じゃあ、さくらんぼって、何だ?」

 

女子生徒「だから、どうにかして表現しようと苦心してるんでしょ! チェリー君」

 

男子生徒「もう1つ、聞いてもいいかな?」

 

女子生徒「答えられることならね」

 

男子生徒「この2つの表記があるって、覚えているの?」指で表記の違いを指す。

 

女子生徒。急に恥ずかしがって。「いやっ、そんなこと、答えられなーい」もじもじする。

 

男子生徒「は?」

 

女子生徒。素に戻って。「なーんてね。珍しいから、覚えていたの」

 

男子生徒「ということは、そこまで細かく、楽譜を読んだってことだよな」

 

女子生徒「そうよ」

 

男子生徒。心の声。「(恐ろしい奴)」

 

この2人の役名を、「佐倉」「桜」「チェリー」「智恵理」などに因んだものも良さそう。ED曲でのタイトルクレジットで、この場面を視聴者に思い出してもらうために。

 

 

 

▽ 場面変更 ● ── ●

 

理科室。さっきの続き。

 

ハル。音叉を使って、ギターの調律をしている。

 

ミッツ「ねえ、ハル。ギターを弾いたら、左手の指先が硬くなるって、ほんと?」

 

ハル「ああ、ちょっとだけ」指先を見せる。弦の形に、凹んでいる。

 

ミッツ。ハルの指をつまんでみる。「硬くない。凹んでる。ステラちゃんも来てごらん」

 

ステラ。ハルの指先を触らず、見るだけ。「本当ですね」

 

ハル「弾いてる時は、弦の形に凹んで、硬くはないんだ」

 

ミッツ。ステラに。「硬くないよ、触ってみて」ハルの指をつまんだまま、ステラに差し出す。

 

ステラ。触ってみる。「普通に柔らかいですね」

 

ミッツ「これなら、鼻くそをほじるのに、ちょうどいい」自分の鼻に向かって、ハルの指を引っ張る。

 

ハル。声を出して慌てて、手を引き戻す。

 

ショージ「仕方ない。ステラちゃんには……あ、いいや」手を、胸の位置まで上げたところで、言うのをやめる。

 

ハル。ギターの調律を再開する。

 

ショージ。ステラに説明。「音が合っていないと「ほゎほゎー」が聞こえて、音が合って来るとほゎほゎがゆっくりになって、無くなったら、ぴったりってこと」

 

ステラ「そうなんだ」

 

ハル「このほゎほゎを使って、音楽にできないかな」

 

ヤッ子。にやりと笑う。「あるぞ。テルミンだ」

 

ミッツ「あ、知ってる」

 

ハル。ステラに向かって「「テルミン」って、メルヘンの名前っぽいけど」

 

ステラ「ううん、知らないよ。「ひふみん」は知ってる」背景に、将棋の加藤一二三。

 

ヤッ子「おじさんには違いないが、テルミンは、一度は死んだと思われて、音楽の教科書にも、そう書かれたが、後に、まだ生きていることが発覚した」

 

ショージ「気持ちはわかるなあ、隠れて生きていたいって、思ったり、思わなかったり……」

 

ヤッ子「テルミンおじさんが発明した楽器がテルミンで、音のモアレ模様を使っている」

 

ハル「モアレ模様って?」

 

ヤッ子。窓の外を指す。工事現場で、囲う網を取り付けている、または、囲っている角の部分で、網が2枚重なって見える箇所がある。重なって箇所は、ぼんやりした縞模様が見える。

 

ヤッ子「網が2枚重なっていると、ぼんやりと、縞模様が見えるだろう。あれが、モアレ模様だ」

 

ハル「調律で「ほゎほわー」と聞こえるのが、音のモアレ模様ですか? それを楽器に利用したのが、テルミンですか?」

 

ショージ。妖精ちゃんから渡された、2本のゴムの帯を受け取る。透けているので、重ねて透かして見ることができる。2本とも同じ、細かな縞模様。重ねると、縞模様がぴったり合う。

 

2本のうち、1本を伸ばすと、モアレ模様が見える。

 

ミッツ。驚く。「わあ、本当にぼんやりの縞模様が見えますね」

 

ヤッ子「そう。ゴムの帯の、1つ1つの縞模様は、細かくて見えないが、モアレ模様は認識できるだろう」

 

ショージ「でも、どうやって2つの音を出しているんですか?」

 

ヤッ子「うるさいなぁ。私といえども、何でもかんでも、知ってるわけじゃない。ネットで探したら見つかるんじゃないか?」

 

ショージ「それもそうですね」

 

ステラ「あらゆる答えは、ネットにあるって、誰かが言ってましたよ」何かのアニメで言っていたのを思い出す。

 





次回は …… オーケストレーションの技術あれこれ。美術クラブでは「真剣に」「面白く」「工夫する」。トロール将軍の笛の意味を尋ねる。



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