ギターヒーロー in よう実 作:右から左へ
ヒロアカ×ぼざろクロスの前に考えていた没設定
あっちの息抜きに投稿
「ぼっち・ざ・ろっく!」の主人公に生まれ変わっていた。
そう気がついたのは幼稚園生の時。
他の園児達が遊ぶ輪に入れず、立ち尽くしていた時だった。
前世ではありえないアホみたいに目立つピンク髪。
名前も「後藤ひとり」で、極度のコミュ障。
前世の記憶が蘇っても、園児相手でさえ緊張して上手く話せない、目も合わせられないからずっと俯いているだけの日々。
そして記憶が戻ってからは、毎日がむちゃくちゃ暇になった。
絵本や子供番組なんて観ていても詰まらないし、玩具で遊んでも虚無だ。
Netflixとかあればアニメや映画で無限に暇が潰せるけど、その手の配信サービスはまだ開始されてない。
何か暇を潰せる物がないかと家を物色していたら、書斎でエレキギターを見つけた。アニメで原作ぼっちちゃんが使っていたギターだ。
ぼっちちゃんと言えばギター。
3年練習しただけでプロレベルの腕前になれる才能の持ち主で、約束された栄光がここにある。
親にねだってエレキギターを借りようとしたけど、大人用のギターは幼児には大きすぎるからと、父親が専用にキッズギターを買ってくれた。親バカで助かる。
その日から、幼稚園から帰ったら脇目も振らずにひたすらギターを弾き続けた。
平日は最低6時間以上、休日は一日中。
小中学に進学してもギターを弾き続ける日々。
そんなギター漬けの生活を送っていたら中学3年になり、高校受験の希望校を決める時期になって、進学先を秀華高校にしようとしたら存在しないのが判明した。
なら下北沢高校にしようとしたけど、下北沢〇〇高校と微妙に違う高校しかない。
あれ? おかしいなと思って、ネットで「下北沢 STARRY」と検索しても、同名のライブハウスの情報はヒットしない。
何かの間違いだろうと志望校を決められずにいた私に、担任が「高度育成高等学校」への受験を勧めてきて気が付いた。
ここ、よう実の世界だったのかと。
◇
春爛漫。
晴れわたる空から降りそそぐ木漏れ日が、車内の揺れに合わせてきらめく。そんな穏やかな景色とは裏腹に、私は憂鬱な気分でバスに身を預けていた。
行き先は高度育成高等学校。未来を担う人材を育成するために設立された、全国屈指の国立の名門校だ。通称「高育」。
あれから諦めきれずに下北沢を色々と探し回ってみたけど、やっぱりここは「ぼざろ」の世界では無かった。
それが分かって自暴自棄になった私は、担任に勧められるまま高育を受験し、やる気がないのでテストも面接も適当にしていたのに何故か受かってしまい、こうして高育行きのバスに揺られている。
私は「ぼっち・ざ・ろっく!」が好きだった。
緩いきらら世界のガールズバンドの百合の中で、青春をエンジョイし直せるのを希望にここまで生きてきたと言っても過言じゃない。
それがご破算になって高育に通うことになるとは……。
よう実はアニメだけ観たことがある。
実力至上主義の高校で、クラス間で競わせられ、勉強面だけでなくスポーツや体力面も必須になってくる。
そして暴力や騙し討ちや誹謗中傷も、バレなければOKというアウトレイジな高校だったはずだ。
(いや、帰りてぇ……)
ギターしか特技が無い私が、そんな高校で上手くやれる自信はないけど、速攻で退学して最終学歴中卒になるのはなぁ……。
せめて高卒の資格は欲しい、世間体的に。
そんな事を悶々と考えていたら、いつの間にか高育に着いた。
高育は東京湾の埋立地に建設*1されているので、ここで降りるのは学校関係者ばかりだ。私と同じ制服を着た新入生と思わしき学生達が、続々とバスから降りていく。
私も降りようとするけど、ギターケースと機材を括り付けたキャリーカートが重くて出口でもたついてしまう。
そんな私を見かねたのか、男子生徒が横からひょいと持ち上げてバスから降ろしてくれた。
「重そうだったからな……余計だったか?」
そう言ってキャリーケースを渡してくるのは……主人公だなこの子。確か綾小路……名前は忘れた。
プロアスリート並の身体能力をお持ちで、頭脳も明晰なホワイトルームの最高傑作、人工の天才児だったはずだ。
イケメンだけど何を考えているのか分からない、ぼんやりとした表情でこちらを見ている。
「あ、ありがとうございます……助かりました」
お礼を言うと、不思議そうに主人公が話しかけてきた。
「それにしても、その大荷物は大丈夫なのか? 規定の手荷物以外は禁止されていたはずだが……」
「あ、事前に申請して許可を貰えれば大丈夫なんですけど……し、申請してないんですよね」
「……じゃあ、ダメじゃないのか?」
「だ、ダメ元で持ってきました……許可が降りなかったら諦めます」
高育は完全寮生で、基本的に持ち込みNGだけど、文化的、芸術的な活動をしている生徒は事前に申請すれば可能らしい。
その事を、部屋の隅でくしゃくしゃになっていた書類を入学式直前に見つけて知った。
とりあえずダメ元で持ってきたけど、禁止されたら諦めるだけだ。ギターが弾けない生活なんて考えられないし。
ガラガラとキャリーカートを引いて、そのまま主人公の後ろについて歩き出す。張り出されたクラス分けを見ると、どうやら同じDクラスのようでそのまま教室に入る。
すでに半数くらいの席が埋まり、すでに仲良くなっている者同士でおしゃべりをしている。そんな教室を見渡し、自分のネームプレートが置いてある席を見つけた。
窓際の後ろの方の席。中々当たりの席に満足して腰を下ろすと、私の前に主人公も座った。
「同じクラスだったのか? そういえば自己紹介してなかったな、俺は綾小路清隆。よろしくな」
「ご、後藤ひとり……です」
「友達は別のクラスにいるのか? それともここに進学したのは一人で?」
「と、友達はいたことないので、一人ですね……」
「……そうか」
冗談のつもりで自虐ネタでそう言ってみたら、気まずい雰囲気になって会話が止まってしまう。
「……実は俺も友達がいないんだ。良かったら友達にならないか?」
「は、はい……よろしくお願いします」
主人公……綾小路くんの申し出に了承するけど、正直綾小路くんからそんな事を言ってくるのは意外だった。「最後にオレが勝っていればいい」と、他人を駒のように使い捨てるのも厭わないサイコパスだと思っていたけど……そういえば入学初期だとまだまともだったんだっけ?
担任に脅されて勝つのを強制されてからおかしくなったとか、元に戻っただけとか何とか……アニメしか観てないから、その辺の細かな事情はあやふやだ。
だけど無表情ながらも、どことなく嬉しそうな綾小路くんを見ると不憫に思えた。
確か赤ん坊の頃からホワイトルームに入れられ、一切の娯楽も無く、拷問のような詰め込み教育漬けにされてきたはずだ。
そんな生活から逃げ出して、普通の高校生活を送りたいと思っていたのに、入学したのが「高育」だ。涙を禁じ得ない。人生ハードモードだろ。
「お前も同じクラスだったのか。オレは綾小路清隆、よろしくな」
遅れて隣に座った美少女に綾小路くんが挨拶をすると、美少女は不機嫌そうな表情をしながら応えた。
「……いきなり自己紹介?」
「バスで隣だっただろう、覚えてないか?」
「チラチラと私の方を見ていたのが鬱陶しかったのは覚えてるわ。自己紹介は拒否してもいいかしら?」
「……いや、1年間名前も知らずに隣で過ごすのは、居心地が悪いと思うぞ」
「はぁ……私は堀北鈴音よ。馴れ合うつもりは無いから覚えなくて結構よ」
そう言って美少女……堀北さんは会話を打ち切るように鞄から本を取り出し、読み始めてしまう。
うーん、私とは別ベクトルのコミュ障っぷりだ。
その姿を見た綾小路くんはコミュケーションをとるのを諦めて、私の方に向き直って自己紹介の続きをはじめた。
「あー、俺は特に趣味は無いけど、何でも興味はある。友人は沢山はいらないが、ある程度いればいいと思っている……そんな感じだ」
「あ、はい……わ、私はギターが趣味で……友達はいればいいけど、いなくても特に問題はないです……」
前世では少数ながら友人はいた。けど、趣味や話が合わない相手と無理に付き合うくらいなら、一人でいた方が気楽だ。今世はこの
「……ピアノなら多少弾けるな。人並みだが」
「へぇー……ど、どんな曲を弾くんですか?」
「クラシックなら大抵人並みに弾けるな」
「あー……クラシックはあまり詳しくないですね。ロックかポップスなら分かるんですけど」
オタクだったからエヴァの影響で一時期クラシックを聴いていた時期もあったけど、即飽きて聴かなくなった思い出。当時はTV番組でもよくクラシックが流れてたほど社会現象になっていた。
「俺は流行りの曲は聞かないからよく分からないな……」
「そ、そうですか……」
「「…………」」
会話が続かず終了、気まずい沈黙が流れる。
コミュ障同士だと会話デッキが少なくてどうしようもないな。
というか、ホワイトルームはコミュケーション能力は鍛えなかったの? 実社会じゃ一番重要な能力だと思うんだけど。
私は前世じゃそこそこオタクだったから、色々なコンテンツに漬かってきたけど、今世はギター漬けの生活を送ってたせいで音楽関係以外はさっぱりだ。
そして、娯楽も前世にあった物が軒並み無くなり、別な作品に置きかわっている。
つまり、私の会話デッキは天気か音楽関係しか存在しない。お疲れさまでした。
気まずい沈黙に耐えきれず仕方なしに天気デッキでも切るかと思っていると、始業を告げるチャイムが鳴り、同時に担任と思わしきスーツを着た女の人が教室に入ってきた。
「えー、新入生諸君。私はDクラスを担任することになった茶柱佐枝だ。日本史を担当している。この学校では学年ごとのクラス替えはしない。卒業までの3年間、私が担任として……おい、そこの席の……後藤か」
「は、はい!?」
「その荷物は何だ? 申請は無かったと記憶しているが、指定された手荷物以外は持ち込み禁止なのを把握してなかったのか?」
「す、すみません、エレキギターのセットなんですけど申請するのを忘れてて……だ、駄目ですかね……?」
「駄目だな、没収になる。諦めてくれ」
「ぼ、没収になるとどうなりますか……?」
「安心しろ、自宅郵送になるだけだ」
「わ、分かりました諦めます……すみませんでした……」
無理なら諦めよう。
大人しく席を立って教室を出ようとすると、担任から声がかかった。
「待て、何処へいくつもりだ?」
「あ、持ち込みが無理なら入学は諦めようかと……た、退学でお願いします」
「「「「「えっ!?」」」」」
◇
side 綾小路
「待て、何処へいくつもりだ?」
何故か手荷物をまとめて席を立つ後藤さんに、茶柱先生が声をかけた。
「あ、持ち込みが無理なら入学は諦めようかと……た、退学でお願いします」
「「「「「えっ!?」」」」」
いきなり退学すると言う後藤さんに、様子を伺っていた教室中から驚愕の声があがった。
駄目だったら諦めるとは聞いていたけど、まさか入学の方を諦めるとは思っていなかった俺も同様に声をあげた。
ぺこりと会釈すると、後藤さんは重そうな荷物が括り付けてあるキャリーカートを引いて教室を出ていく。
しばらく呆気にとられていた茶柱先生は、ひとつ咳払いをすると、
「ゴホン……まぁ、やる気がない奴は仕方ないか……今から1時間後に体育館で入学式が行われる」
何事もなかったかのように説明に戻った。
いいのか放置して。
追いかけるべきかと一瞬迷ったが、目立つ真似はしたくない。
はじめて友達が出来たと喜んでいたのに、速攻で居なくなるとは思わなかったな……
高育側はギターヒーローの配信を把握してません
なんの取り柄も無い山内と同じ扱いでDクラスです
正直、よう実世界でギターが弾けてもあんまり話が膨らまないし妄想だけしていたら、ヒロアカの方でギターヒーローやった方がハマるんじゃないかと、こっちは没にした設定