異世界転生したカール・マルクス   作:匿名

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第四話

 

私は思案していた。

 

なぜ、元素というものが広く受け入れられ、魔術の理解に用いられるのだろうか、と。

 

 

私の食べた宝石は色から属性が決まっていて、そして赤色と青色の宝石を食べた私は火と水の属性を得ている、とされるらしい。

 

しかし特別な力に唐突に目覚めたという訳でもない。

 

 

相反した属性の宝石力を取り込むと、湿気と乾燥で体調を崩しやすくなる虚弱体質になるか、逆に活力を得続ける強靭な体質になるかで二極化するというのだ。

 

どうやら私は弱くなる方ということで、宝石力の中庸は取れているが、他の属性があまりに弱いとのこと。

 

 

このB地球の常識として生まれ持った属性はある程度人によって偏っているが、それほど極端なものでもない、らしい。

 

 

むしろ属性が極端に偏っていた人間が魔法使いになるらしく、環境にも左右され、たとえば火の属性が非常に強い魔法使いは、海に近寄っただけで気絶するような酷い状態になる、らしい。

 

 

だけど、そこまで極端に属性が反発しあうのも稀で、偏っている上に反発しやすい体質の人間はおおよそ死ぬがために、魔法使いを数えた統計では劇的に少なくなる、らしい。

 

 

本を読めば読むほどこの世界の奇妙さが浮き彫りになる。

 

 

元素とは世界に存在する四つの属性であり、この属性は偏在していると言われる。

 

 

たとえば空気は湿気ている場合は水と風、乾燥している場合は火と風。

 

全ての物体は属性を持っていて、それは人間も例外ではない。

 

 

相反した属性が相克している状態ならば人間は魔法を使えず、どちらかが弱く、どちらかが強ければ魔法を使えるようになる。

 

 

そう、私は当たり前に存在する魔法というものが行使できない。

 

 

火の魔力・水の魔力は存在するが、お互いにお互いを削りあっているために、魔法を行使するために必要な分に達しないとのこと。

 

私には土の魔力はあるが、風の魔力が非常に弱い。

 

このアンバランスさは火と水の宝石力によって相対的に生み出された格差だ。

 

 

土の魔力を用いれば色々なことができる。たとえば刻印だとか金属加工だとか。

 

が、変形させるのには熱が必要だ。

 

そう、火の魔力が必要なのだ。

 

水の魔力との対立に使用されている火の魔力を無理やり使おうとするとギリギリの中庸は崩れる。

 

 

水の魔力が非常に活発になると、火に近寄っただけで体が焦げるような気分を味わうことになる。

 

まあ卑属な平民の仕事を仮にも貴族階級たる私がやる訳にも行かず、私は実質的に微弱な、葉っぱが浮くそよ風を生み出すくらいの魔法しか使えない。

 

 

そんな訳で魔法を扱うことができない。

 

手数が減ったどころの話ではない。

 

もはや右腕を切られたようなものである。

 

魔法が使用できなくとも魔術があると言いたいところだが、宝石によって生み出されている魔力を使わなくては、そのうち膨大な相反する反発力に体が耐えきれなくなり……

 

 

爆発死する。

 

 

魔術は宝石力を直接使う。

 

つまり、魔力が生み出される量が減る。

 

出来れば魔術オンリーで進めたいところではあるが、魔術を行使しすぎると……貴族たる証の魔術が使えない、いわば子供っぽい人間として扱われる。

 

 

なよなよしく頼りない、いわば統治権の根幹たる武力による庇護が行えないと思われた時に反乱は起きる。

 

魔術が扱えるということは貴族社会において継承権の証明でもあるのだ。

 

私は長男であっても継承できないかもしれない。

 

そのような屈辱を受けたとなれば、私は男爵家といえど家門の恥である。

 

 

宝石力は魔力を生み出す心臓のような役割に位置する。つまり、全ての根幹の下部構造は宝石力であり、それによって生み出される副産物が魔力ということになる。

 

 

外部環境によらずとも自分の体内が魔力を直接生み出せるというのは良きことだ。

 

だが、それが私の体を苛む病として発露している今は恨めしい。

 

 

 

魔術は魔法とは違って、少しづつ魔力をひねり出すようなものとは違う。

 

元素そのものを一気に体の外に放出する。そうなれば、体の中庸は崩れ、これまた体調は悪化する。

 

 

 

この詰みの状況をどうすべきかと考えた時、本の中で知ったものは二属性混合魔法だ。

 

これを用いれば体調悪化は防げると思いもしたが!

 

私は確固たるイメージをできない。

 

相反する属性を纏めて一気に魔法として放出する。魔術ではなく魔法のイメージで使用する……それが難しい。

 

 

実物を一回も見たことがないのだ。

 

知っただけで使えるようになるようなものでは無い。

 

知識として見ただけで使えるようになるかは別の話であり、この死へのタイムリミットが私を狂わせる。

 

緊迫感を覚えるべき状況だと言うのに解決策が浮かばず日々を浪費する……クソ、こんな暇はないぞ!

 

 

本から解決策を得るというのは難しいかもしれない。生き残った人間の言葉しか書かれないから、成功したという前提のものがあまりに多すぎる……

 

 

 

第一に、水と火が打ち消しあっている状態というのは何なのだ?蒸気か?

 

何も発生せずお互いの力が減衰している状態がこの私だというのに、結露のことを考えて水の力を弱めろだとか無理難題を言うこの本は愚かだ。

 

 

前提として宝石力を割いて魔術を使ったところで魔力は使われていない。この溢れんばかりの火の魔力と水の魔力は残ったままだ。

 

現在の宝石力を前提として構築された体内の回路が衰えれば、魔力も滞り、循環させている現状は終わり、ボンっと爆発してそのまま死ぬ。

 

 

どうにかこうにか魔法を使うしかないのだが、魔法を使うまでに存在する壁があまりにも分厚すぎる。

 

お互いの魔力を打ち消しあっているから弱くなる?そんなのは宝石力が弱いか、そもそもの過小評価をしている愚者の言葉だ。

 

 

現実として常に湧き出る魔力が生まれては消え、生まれては消えを繰り返し、残った魔力が勝手に体の回路を巡り、制御された循環というものが存在しない。

 

 

 

そんなことができるなら最初から苦労はしない。

 

蒸気魔法として二属性混合魔法を扱うと良い、だなんて言葉が本には書いている。

 

 

実に腹立たしい。二属性混合魔法ができないから困っているのに解決策が二属性混合魔法??????

 

 

 

魔法には出力の仕方によって複数の型がある。

 

発散と収束。

 

火と水は両方とも発散であり、指向性が付けられるものではない。

 

いや、正確にいえば全方向に指向性がある……ということなのかもしれないけれど、そういう細かいことは良い。

 

 

重要なことなのは二属性混合魔法が使えないと何も始まらないということ。

 

イメージができないから不可能だというのに結局必要になるなんてひどい詐欺本だ。出来て当たり前なのかもしれないが私はできない。

 

 

この指導書を書いた筆者とやらはよほど偉い人間に違いない。収束させることくらい出来て当たり前として、元素そのものの発散が人間の制御から逃れた時の対処法を教えないのだから。

 

 

そもそも宝石力が過剰すぎて魔力が溢れているという状態をそもそも想定していないのかもしれないが。

 

 

本来、全ての元素は拡散しようとする性質がある。それを飼い慣らすのが魔法もしくは魔術の収束だ。

 

 

指向性をつけることのアドバイスが一切ない。出来て当たり前だからだ。

 

 

私がそういう収束の経験がないからこそ拡散のみしか扱えぬというのにそのアドバイスが一切ない。

 

 

つまり、求めている情報はこの本にない。

 

蒸気魔法は壮大な無駄遣い。指向性を制御し、膨大な火の魔力と水の魔力を用い、熱い空気が出る。

 

そもそも私は蒸気魔法というものが二属性混合である以上、単属性魔法に救いを見出すべきだ。

 

盲点だった。同時にやらねば体調が悪化するというが、まだ軽いうちにやっておかねばその反動も強くなる。

 

単属性を交互に繰り出す……いや、この本にはおそらくそういう解決策がない。

 

 

後半も読む必要がないな。この救いようのない駄文を繰り返した本の筆者はゴミだ。

 

できないから困っているというのに解決策に二属性混合を提示するのが本当に苛立たしい。

 

 

指向性をつける……どういう要領だ?体内に坂を作って転がすみたいな感じとかフワフワした言葉が多すぎる。

 

私が困っているのは指向性を付けるという段階だ。

 

相殺される魔力が強すぎて制御不可能な状態になり、宝石によって生み出された魔力のうち半分以上が消えている。

 

残りのだいたい三割ほどの魔力でさえ膨大だ。

 

環境の変化に弱くなるなど中庸には欠点が多い……

 

 

そもそも、どうしろと言うんだ?

 

 

有形の、いわば液体か固体の氷は高等技術。無形の霧なら容易いかもしれないが、そうすると火が……ああもう考えるうちにもう欠点が出てきた。

 

 

火が強くなると水の元素が強い環境に弱くなる。

つまり、水の魔法を使った瞬間から、打ち消されなくなった火の魔力によって衰弱していくわけだ。

 

 

やらねば確実に死ぬ。やっても死ぬ可能性がある。

 

 

やるほうが百倍マシだが。






宝石力

魔力を生み出す宝石の出力を表す言葉。

宝石がなければ魔力は乏しい。
宝石によって得た膨大な魔力は継続して放出できない場合、爆死する。

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