初投稿です!!
頭に沸いて出て来たものを書きました。
―2006年東京競馬場 ジャパンカップ
――歓声が揺れる。
東京競馬場のスタンドが、地鳴りのように震えていた。
「さあ、最後の直線! 各馬一斉にスパートを開始した!」
「外からディープインパクト! ものすごい末脚だ!」
「内で粘るのはダークソブリン! 黒い皇帝、必死に食い下がる!」
俺は必死に前を向いていた。
視界の端で、観客が波のように揺れている。
耳の奥で、心臓が破裂しそうなほど鳴っている。
蹄が地面を叩くたび、
肺が焼けるように熱くなる。
それでも――走った。
走らずにはいられなかった。
「ダークソブリン先頭!! しかし、外からディープインパクトが迫る!」
「先頭争いはやはり、この二頭だ!!」
風が変わった。
世界が置き去りになった。
あいつが前に出た瞬間、
俺の脚はまだ動いているのに、
心だけが止まった。
届かない。
届かない。
届きたい!!
どれだけ走っても、
どれだけ勝っても、
どれだけ願っても――
あの背中には届かない。
「ディープインパクト外から飛んできた!! ダークソブリンは届かない!!」
「先頭ディープ!! 勇気の翼をいっぱいに広げたディープインパクトォ!!!」
「ディープインパクト、圧巻の勝利! ダークソブリンは二着!」
歓声が爆発する。
その中心にいるのは、俺じゃない。
俺はただ、
あいつの残した風の中で、
必死に呼吸を整えるだけだった。
黒い皇帝なんて呼ばれても、
この現実は変わらない。
――俺は、あいつに勝てない。
その絶望だけが、
胸の奥に深く沈んでいった。
そして、暗闇が訪れた。
――あ、これ死んだな。
そう思った瞬間、世界がスローモーションになった。
就活も終わり、内定ももらって、
「よし、社会人として頑張るぞ」
なんて前向きな気持ちで初通勤をしていた矢先だった。
横から突っ込んできたトラック。
ブレーキ音。
運転手の叫び声。
そして、俺の体が宙に浮く感覚。
「おいおい、ありきたり過ぎるだろ。」
自分でも驚くほど冷静に、そんなツッコミが頭に浮かんだ。
ネット小説でよく見る“トラックに轢かれて死亡”というやつ。
まさか自分がそのテンプレを踏むとは思わなかった。
でも、ここまでテンプレなら――
異世界転生くらいさせてくれよ。
そんな、半分冗談みたいな願いを抱いたところで、俺の意識はふっと闇に沈んだ。
「ここはどこだ?」
意識が戻った瞬間、俺は暗闇の中にいた。暗いのに、どこか温く、柔らかい膜のようなものに包まれている感覚がある。
息苦しくはない。けれど、体が――重い。いや、重いというより、自分の体じゃない。
手を動かそうとする。
動かない。
足を曲げようとする。
位置が変だ。
関節の数が違うような、そんな妙な感覚。
「……え、なにこれ。俺、拘束されてる?」
パニックになりかけたその時、外からぼんやりとした声が聞こえた。
「そろそろ生まれそうだな。テイオーの子だし、元気だといいが」
テイオー?
誰だよそれ。
どこの王様だよ!!
混乱していると、突然、体がぎゅっと押し出されるような感覚に襲われた。
「うわっ、ちょ、待っ――!」
光が差し込む。
世界が開く。
冷たい空気が肌を刺す。
そして――
ドサッ。
俺は地面に落ちた。
いや、落ちたというより“産み落とされた”。
「元気な男の子ですよ。」
誰かの声が聞こえる。視界がぼやけている。でも、はっきり分かることが一つあった。
俺の視界の端に、黒くて丸い“何か”がある。
……蹄だ
『……は?』
思わず声を出そうとしたが、口から出たのは
「ヒヒン……?」
みたいな、どう聞いても馬の鳴き声だった。
俺は震える視線を足元に落とす。
そこには――
四本の脚と、蹄があった。
『ちょ、ちょっと待て……俺、馬になってる!?』
叫んだつもりが、またヒヒンと鳴く。スタッフらしき人が笑いながら俺の体を拭いてくれる。
「いや~ まさかサンデーサイレンスじゃなくて、テイオーをつけるとはびっくりしましたよ。」
いや、それよりも――
なんで俺、馬なんだよ!?
混乱と恐怖と現実感のなさが一気に押し寄せてきた。
こうして俺の“馬生”は、今から始まった。
世代は06世代
3冠はいけるか?
※実況を追加しました。