衝撃のその先へ…   作:アグD

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続きです。
どうぞ!


第8話:新たな出会い

 

――どうして、こうなってしまったのかは

少し前に遡る。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「ソブリン、着いたぞ!!」

 

『ほげぇ?』

 

「栗東トレセンに着いたぞ!」

 

(え……もう着いたの? やっとか……俺もう疲れちゃったよ……)

 

……え? 「お前は寝てただけだろ」って顔してるな、そこの人間。

 

だまらっしゃい!!寝るのも疲れるんだよ、諸君!!馬だってな、寝るのは仕事なんだよ!!

 

そんな心の中の言い訳をしていると、馬房に案内され、荷物(?)を下ろされ、そのまま放牧地に連れて行かれた。

 

(ふむ……ここが栗東……!広い!空気が違う!なんか強い馬の匂いがする!!)

 

そして俺は思い出した。

 

(そうだ……ここって栗東だよな!?ってことは……サムもどこかにいるかもしれない!!)

 

サム。

俺が美浦に行く前に日高の牧場で仲良くしていた、あの馬だ。

 

(よし……こうなったら探すしかない!!放牧地で走り回って探すんだ!!)

 

俺は勢いよく地面を蹴った。

 

ヤッホーーーーい!!

 

(待ってろよサム!!今行くからな!!)

 

――この時の俺はまだ知らなかった。

 

この“全力疾走”が、

とんでもない存在を呼び寄せてしまうということを。

 

 

 

 

 

 

もうかれこれ30分以上は走り回ってるのに、サムの姿がまったく見つからない。

 

(おかしい……サムなら絶対ここら辺に――)

 

と思って、サムが居そうなあたりを探していたのだが。

 

しばらく俺が走っていると、なぜか後ろから何頭かの馬がついてきてくれる。

 

(えっ、なにこれ……俺、ここでも人気者!?皆がついてくるならもっと走るしかないだろ!!)

 

そして気づけば、サム探しはどこかに吹っ飛んでいた。

 

(ごめんねサム……えへへ……でも走るの楽しいんだもん……!)

 

風を切って、草を蹴って、後ろからドドドッとついてくる仲間たち。

 

(よーし、次はあっちの丘まで――)

 

そう思って方向転換した瞬間だった。

 

 

放牧地の端に、ぽつんと一頭の牝馬が立っていた。

 

まるで、こちらの群れに入りたそうに、でも一歩踏み出す勇気がないような……そんな、寂しげな雰囲気をまとっていた。

 

(あれ……誰だ?)

 

そう思った俺は、一緒に走っていた馬たちに聞いてみた。

 

『おれ、あの仔見たことないっすよ』

『私はたまに見かけるけど……話したことはないわ。でも、私よりずっと前からここにいる仔らしいの』

 

(へぇ……そんなに前からいるのに、なんであんなに目立たないんだ?)

 

ぽつんと立つその姿が、なんだか放っておけなくて。気づいたら、俺は声をかけていた。

 

「一緒に走らない?」

 

すると、その牝馬は驚いたように目を見開いた。

 

「あなた……私に気づいて、声を掛けてくれるの……?」

 

(え?そんなに驚く?)

 

「いや、声くらいは掛けますよ。先輩らしいですし」

 

「……あなた、名前は?」

 

「俺?俺はダークソブリンです!!」

 

「お姉さんの名前は?」

 

「私は……スティルインラブって、人間さんに呼ばれているわ」

 

「そしたらスティルさんですね!よろしくお願いします!!」

 

スティルさんは、ほんの少しだけ微笑んだように見えた。

 

こうして俺たちはスティルさんを仲間に入れて、

また走り始めた。

 

その後、しばらくすると、他の馬たちは飽きたのか、スティルさんを除いていなくなってしまった。

 

(あれ……みんなどこ行った?)

 

でも、スティルさんはずっと俺の隣にいた。

 

「スティルさんって、G1レースを3回も勝ってるんですか!?スゲー!!」

 

「ふふ……そんな昔の話よ。あなた、2歳馬だったのね。体が大きいから同い年かと思ったわ」

 

「え?そうですか!?照れます……!そしたらスティルさ――」

 

「女に年齢は聞かないものよ」

 

「は、はい……!」

 

そんな他愛もない話をしながら、俺の放牧時間は終わり、何か心残りがありつつもスティルさんと別れた。

 

(……なんか、もっと話したかったな)

 

そう思いながら馬房に戻った。

 

次の日。

放牧地に出された俺は、昨日のことを思い出していた。

 

(スティルさん、今日もいるかな……)

 

そんなことを考えていたら――

 

「あら、来たのね」

 

昨日と同じ場所で、スティルさんが日向ぼっこしていた。

 

(いたーーー!!)

 

「スティルさん!おはようございます!」

 

「ふふ……元気ね、ソブリン」

 

そのまま俺はスティルさんの隣に座り、一緒に日向ぼっこをした。ぽかぽかして気持ちいい。スティルさんは静かで落ち着いていて、なんだか一緒にいると安心する。

 

(あれ……俺、昨日よりリラックスしてる?)

 

しばらくすると、スティルさんが立ち上がった。

 

「少し……走ってみない?」

 

「えっ、いいんですか!?じゃあ、軽く行きましょう!」

 

俺は軽く地面を蹴った――つもりだった。

 

「……っ!?」

 

スティルさんが驚いたように目を見開く。

 

「ちょ、ちょっと待って……速いわね、あなた……!」

 

(あ、やべ……本気じゃなかったのに……)

 

「す、すみません!!じゃあスピード落とします!!」

 

「いえ……いいのよ。あなたの“本当の速さ”を見せてちょうだい」

 

(えっ……?)

 

スティルさんの瞳が、昨日よりもずっと強く俺を見ていた。

 

(なんか……嬉しいけど……ちょっと怖い?)

 

その後も何日か、俺はスティルさんと日向ぼっこしたり、並走したり、他愛もない話をしたりして過ごした。

 

(なんか……楽しいなぁ)

 

そう思っていた。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

ある日の午後。放牧地の奥で、もう一頭の牝馬に出会った。黒鹿毛で、キリッとした目つき。どこかクールで、近寄りがたい雰囲気。

 

『あら、新入り?』

 

「えっ……あ、はい!俺、ダークソブリンです!」

 

『私はアドマイヤグルーヴ。よろしく』

 

(グルーヴさん……なんかカッコいい!!)

 

なぜか分からないが、俺とグルーヴさんはすぐに気が合った。

 

スティルさんとは違う、孤独な女王気質な人(?)馬だったが俺に対してはすごく優しくしてくれた。

 

『スティルとは仲良くしてあげてね。あの仔、昔からちょっと……影が薄いのよ』

 

「え、そうなんですか?」

 

『ええ。でも悪い仔じゃないわ。ただ……気に入った相手には、ちょっと重いけど』

 

(……重い?)

(スティルさんが……?いやいや、そんなわけ――)

 

そう思いながら、俺は放牧地の出口へ向かった。

 

その背後で、スティルさんがこちらをじっと見ていたことに、俺はまだ気づいていなかった。

 

 

次の日の夕暮れ時、放牧地に出された俺は、いつものようにスティルさんを探した。

 

(今日も日向ぼっこしてるかな……)

 

そう思っていたら――

 

「あら、ソブリン。来たのね」

 

いつもの場所。

いつもの声。

 

だけど――いつもより、少しだけ近い。

 

(あれ……?なんか距離近くない?)

 

「おはようございます、スティルさん!」

 

「ふふ……今日も元気ね」

 

スティルさんは微笑んでいる。でも、なんだろう……昨日より“目の奥”が鋭い気がする。

 

(気のせい……だよな?)

 

俺が隣に座ろうとした、その瞬間。

 

「ねぇ、ソブリン」

 

「はい?」

 

「昨日……誰と話していたの?」

 

(……え?)

 

「黒鹿毛の……クールなあいつよ。あなた、楽しそうに話していたわね?」

 

(あ、グルーヴさんのことか)

 

「あぁ、アドマイヤグルーヴさんです!すごく優しくて――」

 

「優しいの?」

 

スティルさんの声が、ほんの少しだけ低くなった。

 

(え……?)

 

「あなた、あの仔と……仲良くなったの?」

 

「え、えっと……まぁ、その……はい?」

 

スティルさんはゆっくりと立ち上がり、俺の正面に回り込んだ。

 

「……そう。仲良くなったのね」

 

(な、なんか怖い!?)

 

「スティルさん……?」

 

「ねぇ、ソブリン。あなた、私といる時より……楽しそうだったわ」

 

(いやいやいやいや!?なんでそんなこと知ってるの!?)

 

「私……ずっと見ていたのよ?」

 

(見てたの!?)

 

スティルさんが一歩、近づく。

 

「あなたが誰と話して、誰と笑って、誰と走っているのか……全部」

 

(全部!?)

 

「だって――」

 

スティルさんの瞳が、ぞくりとするほど深く、暗く、熱を帯びた。

 

「あなたのことが……好きだから」

 

(ひっ……!?)

 

「さあ!!思う存分!!ワタシを愛して!!!!」

 

「ほぎゃーーーーーーーー!?!?」

 

俺は全力で逃げ出した。

 

放牧地に悲鳴が響き渡る。

 

本当にどうしてこうなった……。

 

 

 

 





ウマ娘であれだけ重いんだから、これくらいでも大丈夫だよね?…ね?

※誤字修正しました。
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